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連載 - 我が願いに踊れ贄共・翡翠色の目の司祭-11

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 その電話が来たのは、朝の祈りが終わった後
 今、住居にしているここの電話番号は、あまり人に知らせていない
 だから、てっきり……カイザーかヴァレンタインから、ニーナの居場所がわかったという知らせでも来たのかと、そう、カインは判断して、受話器に手を伸ばした

 ……ものの、3分もしないうちに
 受話器は、彼の手から、滑り落ちた



「イツキッ!!」

 カインが病室に飛び込んだ時、そこにはすでに先客がいた
 日本人の、青年
 カインよりもずっと背の高い、すらりとした体格の青年だった
 …カインは、見覚えのある姿だと、気づく
 いつぞや、樹と迷惑極まりない喧嘩をしていた男だ

「……お前は、あの時の」

 あちらも、カインに気づいたようだ
 …部屋の奥で寝台に横たわり、目を閉じている樹に近づくカインを、じっと見つめてくる

 そう
 樹は、病室の奥で寝台に横たわり、眠っていた
 体中包帯まみれで、体のあちこちに管がつながれ、近くの機械が、彼が生きているということをかろうじて示すように、ピッ、ピッ、と電子音を鳴らしている

 全身傷だらけの樹が、この病院に担ぎ込まれたのが、先日の事
 その時点ではかろうじて意識があったらしいのだが、すぐにその意識は途絶え………そのまま、目を覚まさないのだという
 命には、もう、別状はない
 ただ、意識だけが……戻らない

 カインの元に連絡が来たのは、樹の所持品に、カインへの連絡先が書かれたメモがあったから
 樹の家族への連絡先だと、病院側が判断したからだ
 …確か、樹は、「自分には家族はいない」と言っていた覚えがある
 家族ではないものの、親しい間柄だということで、カインはすぐに来るよう、呼ばれたのだ

「全身に、無数の打撲と切り傷。その切り傷が原因での出血多量。生きているのが、不思議な状態だったそうだ」

 先に病室に来ていた青年が小さくそう呟いた
 医者から、そう告げられたのだろう

 カインは、のろのろと顔を上げ、青年を見つめる
 ……あぁ、今の自分は、ずいぶんと情けない顔をしているだろうな…と、そう自覚した

「…どうし、て、イツキは、そんな、大けがを」
「わからない。師匠を病院に運んできたやつも、詳しいことは話さなかったそうだ」


 あぁ
 自分は、また、知ることができないのか
 親しかった者が……どこか、親のようにも思っていた人が、こんな状態になったというのに
 自分は、その原因すら、知ることができないのか

 姉の死の真相が、いまだわからぬように
 自分は……また、蚊帳の外なのか


 暗い考えを、何とかカインは振り払おうとした
 改めて、青年を見つめる
 ……そういえば、名前も知らなかったな、と、ふと思い出した

「…名乗りが遅れて、申し訳ない。俺は、カイン・ディーフェンベーカー……イツキの、弟子だった」
「カインか……そう言や、師匠から聞いた事があるな」

 す、と
 青年が、手を差し出してきた

「清川 誠。禰門 樹の二番目の弟子だ……よろしく」
「…よろしく」

 そっと、青年……誠の手を取り、握手する

 ……こちらと、同年代くらいだろうか
 賢そうな青年だ
 短く触れた手の感触で……彼が、日ごろから鍛錬を怠っていない事実を、感じ取る

 あぁ
 彼は、自分とは違い……樹に、どこまでも教えられたのだな
 カインは、そう感じた
 才能のない自分と違い、技のすべてを教えられたのだろう
 ほんの少し………羨ましさを、感じる

「……イツキを、ここに運んでくれた、人は」
「俺達と同じ、師匠の弟子だってよ。つい最近できた三人目。師匠も名前を言ってなかったが、どんな奴なんだか」
「…そうか」

 ……その人物ならば
 樹が、このような状態に陥った原因を、知っているのだろうか

 寝台の上、眠り続ける樹
 生気のないその顔に………もう、命に別状はないのだと、聞かされても
 しかし、樹が、もう二度と目覚めないのではないか
 そんな恐怖が、湧き上がってくる

 ……自分の契約している能力で……
 いや、無理だ
 小さく、頭を振るカイン
 樹の、「怪我」はすでに治療されている
 自分の能力で、意識を取り戻さぬ者の意識まで呼び戻せるかどうか………カインには、わからない
 意識戻らぬ状態が、「病」と認識されるかどうか、確信が持てないのだ

 ……肝心な時に、自分は、何もできない

「……師匠は、死なねぇだろ」

 ぼそり、と
 そう、呟くように、誠が口を開く

「あと半世紀は生きるって言いきってたんだからな。そう簡単に、くたばりゃしねぇだろ」
「……だが」
「そこまで、この人は弱かねぇ。お前も、師匠の弟子なら、それはわかってるだろ?」

 わかっている
 樹の強さは、カインもよくわかっていた

 しかし、だからこそ、同時に不安なのだ
 彼に死が訪れる瞬間など、とても予想できなかった
 でも、彼は自分達よりもずっと年上で……自分達の親か、祖父母レベルの年齢だ
 表面上はそう見えなくとも、体のどこかにガタが来ていた可能性だってある
 それが……今回の件で、表面化した可能性だって、あるのだ

 …………それでも
 今は、信じるしかない
 樹は、いつか、目を覚ましてくれる、と

 ………そう信じる事でしか、希望は持てない



 病室の外、窓の向こう側
 木の枝に、小鳥が一羽、羽を休めるように止まる

 病室の中のカイン達を、小鳥はじっと見つめる


 ………その小さな瞳は、金色に輝いていた








to be … ?




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