目の前の少年からの相談に、カインは考える
迷えるものに手を差し伸べることもまた、自分の役目
相談したいことがあるというのなら、それにこたえるのは当たり前だ
迷えるものに手を差し伸べることもまた、自分の役目
相談したいことがあるというのなら、それにこたえるのは当たり前だ
そして
その相談事が深刻であればあるほど………己の責任は増す
それを理解し、カインは慎重に考え、答えるべき言葉を考える
その相談事が深刻であればあるほど………己の責任は増す
それを理解し、カインは慎重に考え、答えるべき言葉を考える
(……友人が、か)
ふと、カインの脳裏に浮かんだのは、先ほどまで一緒にいたカラミティの事
生まれついて罪悪感を持っておらず、親元から離れた後は悪魔に育てられたあの友人は、いい事と悪い事の判別があまりつかない
世間一般で言う「悪い事」をしてしまった事も、しそうになった事も、何度もある
そんな時、自分がどうしたかを、思い出しながら…答える
生まれついて罪悪感を持っておらず、親元から離れた後は悪魔に育てられたあの友人は、いい事と悪い事の判別があまりつかない
世間一般で言う「悪い事」をしてしまった事も、しそうになった事も、何度もある
そんな時、自分がどうしたかを、思い出しながら…答える
「そうだな、俺なら……まずは、自分で、できる限り友人を止めようとするな」
だが、と、続ける
「お前が言うように、自分の力ではどうする事もできないならば……誰かの力も借りねばならないならば、その者の力も借りるな」
……以前、カラミティがあまり良くない事をやらかそうとしている事を、カラミティの周囲の悪魔が、こっそりと教えてくれたことがあって
それを止めるのに、カラミティの師匠や、他の悪魔の協力を仰いだことがあった
…そうしなければ。カラミティの場所までたどり着けなかったから
それを止めるのに、カラミティの師匠や、他の悪魔の協力を仰いだことがあった
…そうしなければ。カラミティの場所までたどり着けなかったから
「そう…ですか」
カインの答えに、まだ悩んでいるように、声を沈ませている悠司
その悠司に、カインは続ける
その悠司に、カインは続ける
「だが」
「………?」
「決して、その者に任せきりにはしない。自分も、最後までその友人を止める為に、力を尽くすさ」
「………?」
「決して、その者に任せきりにはしない。自分も、最後までその友人を止める為に、力を尽くすさ」
少なくとも、自分はそうした
アモンやデモゴルゴーンに任せきりにはせず、自分でもできる限りのことはした
アモンやデモゴルゴーンに任せきりにはせず、自分でもできる限りのことはした
「一度、声が届かなくとも。諦めることなく、声をかけ続ければ………声が届くことだって、あるのだからな」
一度だけでは、カラミティはそれが悪いことだと理解できなかった
けれど、根気よく話を続けたならば、きちんと理解してくれたのだ
……何故悪いのか、その根本的なところはさっぱり理解できなかったかもしれないが
それでも、「悪い事」である事は理解して、止まってくれたのだ
けれど、根気よく話を続けたならば、きちんと理解してくれたのだ
……何故悪いのか、その根本的なところはさっぱり理解できなかったかもしれないが
それでも、「悪い事」である事は理解して、止まってくれたのだ
一度説得できなかったからと、諦める事はない
何度でも、諦める事なく説得を続けたならば……きっと、それは通じる
カインは、そう信じていた
目つきや言葉遣いは悪いカインだが、根っこは純朴な青年なのだ
何度でも、諦める事なく説得を続けたならば……きっと、それは通じる
カインは、そう信じていた
目つきや言葉遣いは悪いカインだが、根っこは純朴な青年なのだ
そんな、カインらしい答え
それを受けて…悠司は、何を思っただろうか
心を、思考を読み取るような能力は、カインにはない
それを受けて…悠司は、何を思っただろうか
心を、思考を読み取るような能力は、カインにはない
ただ
まだ、悠司が不安を抱えている
それだけは、理解できた
だから、こそ
まだ、悠司が不安を抱えている
それだけは、理解できた
だから、こそ
「…あぁ、そうだ」
せめて、少しでも安心させようと考えて
ちゃら、と、それを取り出す
ちゃら、と、それを取り出す
「悠司、これを」
「………?これは…」
「………?これは…」
カラミティから渡された、ファーティマの手
三つのうちの一つ、それを、悠司に手渡す
三つのうちの一つ、それを、悠司に手渡す
「ファーティマの手…と、言うものだそうだ。俺もよくは知らないのだが…悪意がこもった視線を防ぎ止める意味があるそうだ。古くからある、護符の一種だな」
それは、どちらかと言えばイスラム圏で伝わっている護符だ
「教会」の人間であるカインが持っているには、やや………いや、はっきりと不自然な物なのだが、カインは特に気にしていない
悠司が、その不自然さに気づけたかどうかは、わからない
「教会」の人間であるカインが持っているには、やや………いや、はっきりと不自然な物なのだが、カインは特に気にしていない
悠司が、その不自然さに気づけたかどうかは、わからない
「悪しきものを退けるような力がある。念のため、持っておけばいいだろう」
「い、いいんですか?僕が受け取っても」
「かまわない。俺も、まだ同じものを持っているからな」
「い、いいんですか?僕が受け取っても」
「かまわない。俺も、まだ同じものを持っているからな」
じゃら、と、それを見せてやるカイン
古いビーズで作られたそれは、考古学的意味の価値がある物と同時に、魔法的な意味でも貴重である
…「組織」で調べれば、その強い魔よけの力……特に、「魔眼」や「邪眼」を退ける力があることが判明する事だろう
古いビーズで作られたそれは、考古学的意味の価値がある物と同時に、魔法的な意味でも貴重である
…「組織」で調べれば、その強い魔よけの力……特に、「魔眼」や「邪眼」を退ける力があることが判明する事だろう
「気休め程度には、なると思うが…」
「…あ、ありがとうございます……受け取らせていただきます」
「…あ、ありがとうございます……受け取らせていただきます」
じゃら………と
小さく音を立てて…悠司は、それを受け取った
大切そうにそれを手にした悠司の姿に、カインはかすかに微笑む
…その微笑みは、やはり、どこか寂しげなものだ
どうしても、カインは心から、笑みを浮かべることができない
…………姉という唯一の家族を失ってから、カインはずっとそうなのだ
それでも、何とか前を向いて未来に進もうとする意志を失わずに済んでいるのは、姉を失ったその直後に、カラミティと言う友人を……新たな心の支えを得ることができたからなのだろう
だからこそ、カインはカラミティに感謝し、彼を支えようと、助けようとするのだから
小さく音を立てて…悠司は、それを受け取った
大切そうにそれを手にした悠司の姿に、カインはかすかに微笑む
…その微笑みは、やはり、どこか寂しげなものだ
どうしても、カインは心から、笑みを浮かべることができない
…………姉という唯一の家族を失ってから、カインはずっとそうなのだ
それでも、何とか前を向いて未来に進もうとする意志を失わずに済んでいるのは、姉を失ったその直後に、カラミティと言う友人を……新たな心の支えを得ることができたからなのだろう
だからこそ、カインはカラミティに感謝し、彼を支えようと、助けようとするのだから
「他にも、何か相談事があれば、いつでも言ってくれればいい。俺で良ければ、いつでも相談にのろう」
「…ありがとうございます」
「…ありがとうございます」
ほんの少し、笑ってくれた悠司
カインは少し、ほっとする
カインは少し、ほっとする
「……あ、そ、そうだ」
「うん?」
「あの、カインさんと一緒にいた、司祭さんですけど…」
「カイザー司祭の事か?」
「うん?」
「あの、カインさんと一緒にいた、司祭さんですけど…」
「カイザー司祭の事か?」
カイザーと一緒にいた時に、悠司と顔を合わせた事を思い出す
なぜ、悠司が彼の事を尋ねたのか、特に不審には思わず、カインは答えた
なぜ、悠司が彼の事を尋ねたのか、特に不審には思わず、カインは答えた
「カイザーさん、と言うんですね。カインさんとは、親しいんですか?」
「あぁ……俺にとっては、先輩にもあたるな。いい人だよ」
「あぁ……俺にとっては、先輩にもあたるな。いい人だよ」
正直に答えるカイン
契約している存在に飲まれかけているカイザーは、あの見た目通りの年齢ではない事も、カインは知っている………詳しい年齢までは知らないが
契約している存在に飲まれかけているカイザーは、あの見た目通りの年齢ではない事も、カインは知っている………詳しい年齢までは知らないが
「いい人、ですか?」
「あぁ。真面目だし、親切な人だからな。少々、子供に甘い面はあるが……」
「あぁ。真面目だし、親切な人だからな。少々、子供に甘い面はあるが……」
自分も、「教会」に入りたての頃は随分と親切にされた、それを思い出しながら、カインは答えた
………悠司が抱えた、複雑な感情に、気づくこと、なく
………悠司が抱えた、複雑な感情に、気づくこと、なく
to be … ?