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連載 - 我が願いに踊れ贄共・咎負い人-11

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 その日も、学校町は雪が降っていた
 はらはら、はらはら
 雪が、街を白く染め上げる

「しっかし、この街は雪が多いな…」

 さく、さく、と雪を踏みしめていきながら、メルセデスは小さく呟いた
 油断すると、棺桶に雪が積もって重たくなって困る
 ただでさえ、結構な重量だと言うのに

「……まぁ、この方が、俺に取っちゃ便利か」

 雪は、己の武器にできる
 雪が多く積もっているこの街は、彼にとって非常に有利なバトルフィールドになりえた
 だからこそ、余裕がそして油断が生まれる
 感じ取った気配に、彼は楽しげに笑うだけだ

「二日連続か、神のお導きかね?」
「……さて、どうだろうな」

 姿を現す、少女
 白いセミロングの、豊かな胸元の少女…先日、メルセデスが遭遇し、軽く戦闘行為を行った相手だ
 「組織」RNo上位 R-No.4 レクイエム・リッケンバッカー
 あからさまな敵意を向け、睨み付けてくる彼女を前に、メルセデスは笑みを崩そうとしない

「今回は逃がさんぞ」
「まいったな。昨日のアレでも、頭の固い同僚に怒られたんだよ。派手な事はまだ控えろ、ってな」

 くっくと笑い、レクイエムを見下ろすメルセデス
 「まだ」、とメルセデスはそう口にした

 だが、それは……後になれば、派手な行為が許されるということ
 やはり、この男……ここで処分しなければ、危険
 レクイエムは胸元から小瓶を取り出し、素早くふたを開ける

「昨日のようにはいかんぞ!《ディエス・イレ》」

 先日と同じように、レクイエムは腕に死霊をまとわせ、幼気で剣へと変える
 メルセデスは、やはり同じように、棺桶でその攻撃を防ごうとして

「-----っ!」

 一瞬
 ほんの、一瞬で…レクイエムは、メルセデスの懐に、もぐりこんでいた
 《コンフュタティス》による、一瞬の移動
 レクイエムの剣が、メルセデスの心臓めがけて突き出され……


 ------バキンっ!!


「何!?」
「---っぶね。思ったよか速いな」

 剣の、その切っ先は……メルセデスが司祭服の上に纏うコートの表面で、止まっていた
 ビキ、ビキ……と
 切っ先から、ゆっくりと………剣が、凍っていっている

「《カルトフォーレ》」

 メルセデスが、小さく呟く
 直後……ビキビキビキビキッ!!と、剣が氷に覆われていく速度が速まった
 ……このままでは、自分も凍りつかされる!?

「っち!?」

 《ディエス・イレ》を解除
 メルセデスから距離を取ったレクイエム

 ……相手は、冷気を、氷を、自在に操るというのか
 先日も、レクイエムの足元の雪を凍らせて、動きを束縛してきた

 冬という季節
 降り積もった雪
 ……すべてが、メルセデスに有利に働く

「手加減すんの、めんどくせぇんだよ。退いてくれるか?」

 それを、理解したうえで
 メルセデスは、楽しげに笑う

 あからさまな、挑発行為

「誰が退くものか………《トゥーバ・ミールム》!」

 ふわり
 レクイエムの周囲に、死霊が展開されていく
 そして、それらは彼女の幼気によって刃へと変わり、四方八方から、メルセデスに襲い掛かる

 ぶん、と
 メルセデスは、棺桶を軽く振り回した

 迫りくる刃は、特殊素材で作り上げられているその棺桶で、叩き壊されていく
 棺桶が届かなかった刃は、そのままメルセデスに迫るが……しかし、それは彼に届く前に凍りつき、砕けていってしまう

 ぱさぱさと、棺桶に積もっていた雪が飛び散る
 その雪からも、レクイエムは距離を取った

 先日も、振っていた雪を一か所に集め、凍らせてきたのだ
 …足場すべてが相手の武器になりえる状態
 さらに、武器になりえるそれをばらまかれてはたまらない

「退けっての。この季節にこの天気。俺の方が有利なんだからな」
「だが、派手な事はできないのだろう?」
「………そうだな、だが」

 にぃ、と
 メルセデスが、邪悪さをにじませて、笑う

「相手が「組織」上位ナンバーだったら、これくらいは許されると思うんだがね」

 …レクイエムの視界に入ってくる、振り続ける、雪
 その形が…変わっていくことに、気づく
 雪から、霰へ、そして雹へ

 ……そして
 鋭い、小さな、無数の氷の刃に

 そう
 レクイエムが使用した《トゥーバ・ミールム》に、どこか似た技
 空から降る雪、その全てが………細かな、無数の刃になって

「《カルトレーゲン》」

 メルセデスが、楽しげに呟いたのと、ほぼ同時に
 その無数の刃は、一斉に……レクイエムに向かって、高速で降り注いだ


 何かが砕ける音が、断続的に響き渡る


「…………へぇ?」

 おや、と
 楽しげに、楽しげに笑うメルセデス

 ……《カルトレーゲン》は、相手の命を奪うような技じゃない
 むしろ、相手に細かい傷を無数につけ、出血させて弱らせる技だ
 この寒い中、体中に傷がつけば、そうそう身動きできまい
 そう考え、この技を使ったのだが

「防ぎやがったか」

 そう
 レクイエムは、その攻撃を防いで見せた
 …完全無傷、と言う訳ではない
 だが、体には傷一つない
 代わりに、纏っていた服がボロボロだ

 迫りくる氷の刃を、レクイエムは避けきれないと判断
 《トゥーバ・ミールム》を展開し、ぶつけ、相殺させようとしたのだ
 だが、すべては相殺しきれなかった

 降り注いだその刃を、レクイエムは必要最低限の動きで回避を試みた
 結果、服が切り裂かれ、胸元が露出する結果となったものの、体に傷を負う事にはならなかった

「………くそ」

 小さく舌打ちするレクイエム
 傷こそ負わなかったが、服がこの状態では、まともに戦うことなどできない
 寒さが、彼女の体力を容赦なく奪っていく

「あれじゃ、足止めにならないか……仕方ねぇな」

 軽く、メルセデスが指を振る
 天から降り続ける雪が、また、形を変えていく

「《カルトシュテ………」
「---っ止めなさい!!」

 かけられた、静止の言葉
 ん、と、メルセデスの表情が変わった
 雪の変化が止まり、元の雪へと戻っていく

「何……?」

 かろうじて残る布で胸元を隠しているレイクエム
 彼女の前に、何者かが降り立った

 紫色の髪に、司祭服の男の後ろ姿が、彼女の視界に入り込む
 先日……と言うよりは、もう、今日になっていた時刻だったか
 「組織」内で渡された資料で、その姿を確認した覚えがある

「…何だよ、止めるなよ、カイザー」

 そう
 カイザー・ライゼンシュタイン
 来日した「13使徒」の中でも……危険だと認識されている内の一人が、そこにいた

「………何をしているのです、メルセデス。相手は、子供ですよっ!?」

 だが
 目の前のカイザーからは、警告された危険性が、あまり感じられなかった
 味方であるはずのメルセデスを非難しているその声には、レクイエムを気遣っている様子すら、窺える

「何って、攻撃されたから、反撃したまでだ。正当防衛だろ?」

 それに、と
 ……メルセデスが、浮かべた笑みは
 今までレクイエムが見た中で………一番邪悪で、残酷で、楽しげな笑みだった

「そいつは、俺と同じで完全に飲まれてる。見かけ通りの年齢じゃねぇよ…………『お前があの時救えなかった餓鬼共』とは、違うぞ?」
「------っ」

 …小さく、カイザーの体が震えたのが、わかる
 それでも、彼はレクイエムを庇うように立つその位置から、動こうとしない

「……派手な行動は慎むように言われています。退きますよ、カイザー」
「やだね。昨日はこっちから退いてやったんだ。今回は向こうに退かせる……向こうに退く気がないってんなら、そのまま排除するしかないだろ?」

 レクイエムの前で繰り広げられる押し問答
 ……自分は、どうするべきだ?
 寒さで体温を奪われながら、レクイエムは己がとるべき最善の行動を、必死に模索し始めた      





to be … ?




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