雪が、雨へと変わる
足元の雪も、どんどんと溶かされていく
足元の雪も、どんどんと溶かされていく
……己が、不利になったはずの、状況
しかし………メルセデスは、笑うだけだ
裂邪の挑発を、楽しげに受け止める
しかし………メルセデスは、笑うだけだ
裂邪の挑発を、楽しげに受け止める
「あぁ、そうだなぁ?俺はとっくに「バルディエル」に飲まれている。雹と霰を司る俺じゃあ、こうも暑くされちゃあ敵わねぇなぁ?」
つ、とメルセデスが指を動かす
メルセデスが何をやろうとしているか、カイザーは瞬時にそれを理解して
メルセデスが何をやろうとしているか、カイザーは瞬時にそれを理解して
「っ逃げなさい、今すぐに!」
裂邪とレクイエムに、慌ててそう声をかけるカイザー
だが、間に合わない
だが、間に合わない
「《カルトフォーレ》」
----ぴしぃっ!!
裂邪の足元にできていた、巨大な水たまりが……瞬時に、凍った
それだけではない
氷は鋭い刃となって飛び出し、まるで、地面から無数の刃が生えたような状態になる
それだけではない
氷は鋭い刃となって飛び出し、まるで、地面から無数の刃が生えたような状態になる
そう
………………足元が、そんな状態になったのだ
通常ならば、その刃に全身を貫かれるところだろう
………………足元が、そんな状態になったのだ
通常ならば、その刃に全身を貫かれるところだろう
だが
その刃は、裂邪に届かなかった
周囲に展開された火の玉が、即座にその氷を溶かしつくしたからだ
その刃は、裂邪に届かなかった
周囲に展開された火の玉が、即座にその氷を溶かしつくしたからだ
「っははははは!!面白ぇ、普通の氷じゃ効かねぇか!!」
「あぁ、そうさ。カキ氷野郎。お前の攻撃は俺には届かない!」
「あぁ、そうさ。カキ氷野郎。お前の攻撃は俺には届かない!」
火の玉が、メルセデスに襲い掛かる
だが、その全てが……メルセデスの背負う棺桶に、受け止められた
一切、表面に焼け跡すらつくことがない
まるで、都市伝説の攻撃を無効化しているかのようだ
だが、その全てが……メルセデスの背負う棺桶に、受け止められた
一切、表面に焼け跡すらつくことがない
まるで、都市伝説の攻撃を無効化しているかのようだ
けらけらと、メルセデスは楽しげに笑う
久方ぶりに、戦いがいのある相手が見つかった
そうとでも言うように
久方ぶりに、戦いがいのある相手が見つかった
そうとでも言うように
「そうか、そうかぁ!!ならば「アイスマン」 メルセデス・オラーリャ、ちょいとばかし本気でいかせてもらうぜぇ!!」
メルセデスの手元に、辺りの水分が集まっていく
それはビキビキと音を立てて凍っていき
それはビキビキと音を立てて凍っていき
「《カルトシュナイデ》」
鋭い、氷の刃へと変わった
地を蹴り、裂邪へと接近していく!
地を蹴り、裂邪へと接近していく!
「そんな刃………」
「避けなさい!その刃は、熱では溶けません!!」
「避けなさい!その刃は、熱では溶けません!!」
-----え?
カイザーからかけられた、警告の声
確かに……間近まで接近して、しかし
メルセデスの手に納まった氷の刃は、一切、溶ける事なく形を保っていて………
確かに……間近まで接近して、しかし
メルセデスの手に納まった氷の刃は、一切、溶ける事なく形を保っていて………
「うわっ!?」
慌てて、攻撃を避けた裂邪
っぴ、と髪が数本、宙を舞う
っぴ、と髪が数本、宙を舞う
「っちぃ………カイザー、邪魔すんじゃねぇ!!」
「…相手は、子供です………ここで戦う必要など、ないでしょう」
「…相手は、子供です………ここで戦う必要など、ないでしょう」
ざ、と
カイザーが、メルセデスと裂邪の間に、割り込む
これ以上、メルセデスに裂邪を攻撃させまいとするかのように、そこから動こうとしない
カイザーが、メルセデスと裂邪の間に、割り込む
これ以上、メルセデスに裂邪を攻撃させまいとするかのように、そこから動こうとしない
「おい、あんた…」
「……そちらの少女を害してしまった事、私から謝罪します………申し訳ありません」
「……そちらの少女を害してしまった事、私から謝罪します………申し訳ありません」
裂邪に、そう告げたカイザー
メルセデスに対する警戒を解かずに、続ける
メルセデスに対する警戒を解かずに、続ける
「…お願いです、どうか、退いてください。確かに、あなたの能力は、メルセデス相手に多少は相性がいいようです……それでも、完全に打ち勝つには………あなたにはまだ、少々、経験が足りないようです」
裂邪を、レクイエムを
カイザーは、ここから………メルセデスから、逃がそうとしている
そんなカイザーの態度に、メルセデスは面白くなさそうに、言い放つ
カイザーは、ここから………メルセデスから、逃がそうとしている
そんなカイザーの態度に、メルセデスは面白くなさそうに、言い放つ
「正当防衛も許されないってか?餓鬼相手だろうが、相手が攻撃してきたなら、身を護るくらいいいだろう?………それとも、エイブラハム様の考えに逆らうか?」
「……どうせ、あなたから挑発したのでしょう?そうではなかったとしても、今は派手な行動は慎むように言われているのです…………ここで、彼らの命を奪う必要は、ありません。あの方の考えにも、反しないでしょう」
「……どうせ、あなたから挑発したのでしょう?そうではなかったとしても、今は派手な行動は慎むように言われているのです…………ここで、彼らの命を奪う必要は、ありません。あの方の考えにも、反しないでしょう」
カイザーの言葉に、メルセデスはやや不満げだったが……
……何か、思いついたのだろうか
にぃ、と笑って
にぃ、と笑って
「っ!?」
ぐい、と
カイザーの腕を引き、自分の元へと引き寄せた
カイザーの腕を引き、自分の元へと引き寄せた
そして、ピタリ
氷の剣の切っ先を、カイザーの首筋に当てる
氷の剣の切っ先を、カイザーの首筋に当てる
「っ何を……」
「あぁ、動くなよ?動いたら、あの餓鬼共、俺達の目的を邪魔する「異教徒」として、処分するぞ」
「あぁ、動くなよ?動いたら、あの餓鬼共、俺達の目的を邪魔する「異教徒」として、処分するぞ」
メルセデスの言葉に、カイザーは動きを止めた
……この状況でもなお、メルセデスはその気になれば、裂邪とレクイエムを殺し得る行動をとれる
それを、カイザーははっきりと認識しているからだ
……この状況でもなお、メルセデスはその気になれば、裂邪とレクイエムを殺し得る行動をとれる
それを、カイザーははっきりと認識しているからだ
「何考えてんだ?」
警戒を強めながら、メルセデスを睨む裂邪
レクイエムが人質にとられたならともかく……
レクイエムが人質にとられたならともかく……
「……餓鬼、その燃えた拳で、こいつごと俺を貫いてみるか?お前なら、できそうだなぁ?」
にやにやと笑いながら、メルセデスは裂邪を見下ろす
……何を、企んでいる?
やや後方に退きながら、レクイエムも警戒する
……何を、企んでいる?
やや後方に退きながら、レクイエムも警戒する
「できるなら、やってみろよ、さぁ!!もっとも、こいつは俺やそっちの嬢ちゃんと違って、完全にゃあ人間をやめてないがな!」
「え……」
「ッメルセデス!!」
「え……」
「ッメルセデス!!」
メルセデスの意図を正確に理解し、カイザーはメルセデスの言葉を止めようとした
しかし、メルセデスは邪悪に笑い、言葉を止めようとしない
しかし、メルセデスは邪悪に笑い、言葉を止めようとしない
「こいつは、飲まれかけではある、人間の理から外れ始めている………だがなぁ!!まだ完全に飲まれていない、完全に人間止めた訳じゃねぇ!!こいつを殺したら、お前は殺人犯だなぁ??」
そう
先ほど裂邪は「お前、都市伝説に飲まれてるんだってな? だったら・・・焼き殺しても殺人扱いじゃねぇよなぁ!?」と、そうメルセデスに告げた
……都市伝説契約者ではあるが、まだ、人間を殺した事はないのだろう
その裂邪に、メルセデスは殺人と言う「罪」を犯させようとしている
先ほど裂邪は「お前、都市伝説に飲まれてるんだってな? だったら・・・焼き殺しても殺人扱いじゃねぇよなぁ!?」と、そうメルセデスに告げた
……都市伝説契約者ではあるが、まだ、人間を殺した事はないのだろう
その裂邪に、メルセデスは殺人と言う「罪」を犯させようとしている
「ほら、どうした?……あぁ、そっちの嬢ちゃんでもいいぜ?こいつごと、俺を殺して見せろよ。『お前達を気遣って逃がそうとした優しいこいつ』ごと、殺して見せろよ」
「……っ貴様」
「……っ貴様」
あからさまな挑発
この状況を……メルセデスは、はっきりと楽しんでいる
この状況を……メルセデスは、はっきりと楽しんでいる
「殺せないなら、退きな。退かないなら、俺がお前達を処分する、もしくは………」
氷の剣の、切っ先が
カイザーの首筋に、かすかに傷をつけた
つ……と、血が流れ始める
カイザーの首筋に、かすかに傷をつけた
つ……と、血が流れ始める
「お前達のような、危険分子を庇った、助けようとしたこいつの首を、切り裂いてやろうか?お前達を助けようとした、優しい優しいこいつのなぁ!!」
裂邪とレクイエムの反応をうかがうように、メルセデスは笑う
そうした上で、楽しげにカイザーに告げるのだ
そうした上で、楽しげにカイザーに告げるのだ
「お前は動くなよ?行動するなよ?なぁ、カイザー……お前が大人しくしてりゃあ、あの二人共、見逃してやるよ。エイブラハム様にも、報告しないでおいてやる」
「………っ」
「………っ」
…メルセデスの、その言葉に
カイザーは、小さく、体をはねらせる
カイザーは、小さく、体をはねらせる
「……偽りは、ありませんね……?」
「あぁ、今回は嘘じゃない。ちゃんと約束は守ってやるぜ?」
「あぁ、今回は嘘じゃない。ちゃんと約束は守ってやるぜ?」
…メルセデスの答えに、カイザーは隙を見て逃れようとするその行為を、諦めた
耐えるように、その拳は強く握られていて…肩が、悔しげに、小さく震えている
耐えるように、その拳は強く握られていて…肩が、悔しげに、小さく震えている
「さぁ、どうするぅ?お前らに決めさせてやる。さぁ、選べよ。ここから退くか、それとも、お前らを助けようとした、優しい優しい、人間を止めきれてないこいつを見捨てるか?」
雨が降り続ける
冷たい、ぴぃんとした空気が張り詰める、そんな中
冷たい、冷たい悪意が………裂邪とレクイエムに、突きつけられた
冷たい、ぴぃんとした空気が張り詰める、そんな中
冷たい、冷たい悪意が………裂邪とレクイエムに、突きつけられた
to be … ?