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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 正体不明-12

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Elfriede

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正体不明 12


「おやおや、どうにもこうにもなんだかんだで結局懐かしい面子が勢揃いですか」

 髪を短く刈り上げた和装の女性が、扇子で口元を隠しころころと笑う、『本所七不思議』七夜本丸

「儂はちょくちょく来とるがのう。将門公がこの地に御住まいであらせられる故にな」

 編み笠をくいと押し上げた着流しの女、『屋島の禿狸』屋島太三郎

「まあ勢揃いって言っても、三人やられて入院中らしいし。呼べばすぐ来るのに水臭いねさっちゃんってば」

 存在感が希薄な白髪の少女、『煙々羅』八巻燻

 総勢三名が学校町を訪れたのは、結局のところ詩卯の決意を折れなかったサロリアスが、作戦のサポート役として電話で呼び出してから三十分後の事
 彼女達からすれば、急ごうと思えば距離の問題はあまり無いらしい

「でもさあ、今回の相手は火が効かないんでしょ? あちき役に立たなくない?」
「相手は骨肉を喰らい尽くす化物という事です。食べようがない貴女のような存在は何かと役に立つのでは?」
「まあ考えるのはサの字の仕事じゃ。儂らは言うままに動きゃあいい」
「確かに、細かい事は現地でという話でしたね」

 ぱちりと扇子を閉じて袂に仕舞うと、するりと取り出した拍子木をちょんと打ち鳴らす
 途端に本丸の姿は掻き消え、ただ気配だけが遠ざかる

「少々急ぎましょうか。ではお先に」
「あ、ずっけ! 先にさっちゃんに会う気だろ!」

 すぐさまふわりと空中に浮き上がり、燻の身体は風に吹かれる煙のように散り流れていく

「せっかちじゃの。まあ急ぎとは言われとったがなぁ……儂だけ遅れるのも格好がつかんか」

 そう言うと太三郎は、やや大柄な体躯ですら不釣合いな大きな胸を揺らし、ひょいと跳び上がり空中で一回転
 ぼふりと煙が舞い上がったかと思うと、その中から一羽の隼が夕暮れ時の空へと舞い上がっていった

―――

 学校町の外れにある、野原と言っても差し支えが無い広大な空き地
 町境に近く結界やらのせいか、『組織』の勢力範囲やらに関係あるのか、人も都市伝説も素通りするばかりで留まるものはほとんど居ない
 そんな場所に突如現れたのは、地上に打ち揚げられた小型の潜水艦のような『それ』は、本来埋設して使うはずの核シェルターである

「頑丈な物件とは言ったが、こんなもんがホイホイ出てくるもんか」
「そりゃあ『組織』のコネは相応のものだからね」

 煙草を咥え、呆れた顔でそれを眺めているサロリアスと、物資と人員を用意したイクトミ

「あと、この子が欲しがってた人材。といっても最近来たばっかりなんだけどね」

 見た目は中学生か、大人びた小学生か
 丈を詰めた黒服と大き目のサングラスがどこかアンバランスな印象を与えてくる中国系の少女
 何故か大きな木製の椅子を引き摺るように抱えているのが、さらに滑稽な様子に拍車をかける

「やれるか?」
「ハイ、コレグライナラ、多分問題ナイデス……実際コノ能力ヲ使ウノハ初メテナンデスガ」

 サロリアスの問いに、少女は核シェルターの方へと椅子を引き摺りながら歩み寄り
 椅子を置き、座面、背もたれと踏み台にして壁面をよじ登ろうとする

「手伝ってやらねぇのか」
「まだ時間もあるし、一人で色々できるようになってもらわないとねー」

 そんな事を言っている間に、少女の足元で椅子がぐらりと傾いて

「ひゃっ!?」

 少女は素っ頓狂な悲鳴を上げるが、地面に転げ落ちる事はなかった
 少女の代わりに地面に落ちたのは、まだ随分と余裕を残した火のついた煙草

「登るならそんな不安定で高さ足りねぇモン使わねぇで、脚立なり梯子なり用意しろ」
「ス、スミマセン……」

 サロリアスに抱き留められる形になって、わたわたとうろたえている少女

「よじ登れる高さじゃねぇだろうが。道具調達してくるまで待ってろ」
「ハイ」

 頭を掻きながら、顰めっ面で踵を返すサロリアス

「そういうモンぐらい用意しとけ、イクトミ」
「こっちは人手と物資を調達しただけ。指揮権はそっち、Zナンバーだろ? 斬九郎はどうしたのさ」
「あいつはちゃんとした『黒服』だからな。あいつの仕事がある」
「ふぅん?」
「そもそも俺も、人手を貸すだけの立場だ。『組織』の仕事に直接関る気は無ぇよ」
「『ソニー・ビーン一家』とかには随分と積極的に関ってたみたいだけど?」
「あれは巻き込まれただけだ。お前らがしっかり仕事してねぇからだろうが」

 そんな会話の流れを制するように、何処からともなく軽快な拍子木の音が鳴り響く

「お久しゅうございます、七夜本丸ここに参上仕りました」

 何処からともなく現れて、羽織の裾をふわりと翻し、足元へと傅く本丸
 その雰囲気を台無しにするかのように、空で渦を巻いた煙が人の形を為してサロリアスの頭の上に落ちてくる

「八巻燻ちゃん、参上ー! さっちゃんおっ久ぶりー!」

 サロリアスの口から文句の言葉が出るよりも早く、一羽の隼が燻の傍らで風を切ったかと思うと
 ぼふりと煙を巻き上げて、サロリアスから燻を引っぺがし小脇に抱えた太三郎がにかりと笑みを浮かべて片手を上げる

「久しいのぅ、サの字。しかしまあ、もっと早く呼んでくれても良かろうに」
「元々俺の仕事じゃねぇよ。斬九郎に言いやがれ」
「その斬の字は何処におるんじゃ。この場におらぬなら一番偉いのは御主じゃろ?」
「あいつは別働中だ。そして偉いだけならイクトミの方が偉いだろうが」
「そうは言われても、儂らは御主の部下であり縁者であったのであって、『組織』の雇われではないしの」

 ぷいとイクトミから視線を逸らす太三郎

「そう言うな、小夜の件も片付いた……まあ俺達が何かしたわけじゃないがな」
「ふむう? あの童め無事であったか。重畳重畳、仔細は後で宜しく頼む」
「後々本人を交えてじっくり語っとけ。まずはちゃっちゃと仕事を片付けるぞ」

 そう言って新しい煙草を咥え、火をつけるサロリアス

「目標は一切合財攻撃が通用しねぇ。そして触りゃあ即喰われてお陀仏な上に、喰った相手を丸ごと取り込む化物だ」
「んー? それじゃあちきが囮かな?」
「いや……目標はとある一般人の女にご執心だ。そいつが囮を引き受けている」
「それでは、その女性を守りつつ……これに誘い込み閉じ込める、と」

 核シェルターを眺める本丸の言葉に、サロリアスは煙草のフィルターをぎちりと噛む

「本人の意向はそうだがな」

 その言葉と態度に、太三郎がやれやれといった調子で肩を竦める

「委細承知。本丸と儂なら問題なくこなせよう。だが……囮でないのなら、燻は何のために呼ばれおった?」
「まあ皆が集まってるのに村八分では可哀想ではありますが」
「ああ、そいつはな」

 サロリアスの視線が、運ばれてきた梯子でシェルターの上へと登った黒服少女に向けられる
 梯子を運んできたモブ黒服達に手伝われ、古びた意匠の中国椅子をがたがたとシェルター上部に設置しているところだった

「誰か座ってないと、飛ばせねぇそうだ」

―――

 現れた斬九郎を前に、ぺこりと頭を下げる詩卯

「我侭を言ってすいません。今回は宜しくお願いします」
「いや、謝るのはこちらの方だ」

 それは、一般人を巻き込んでしまった事
 そして

「人の想いは時として我々の力を遥かに凌駕する。何時か思い出す時があれば、俺を恨むといい」
「へ? それってどういう」

 斬九郎の手元で、ちきりと鯉口を切る音がする
 一般人の詩卯には、何が起きたのか理解する暇も無かった
 鞘から滑るように抜き放たれた刀は、そのまま柄尻を華奢な身体の鳩尾へとめり込ませていた
 声すら上げられずにその場に崩れ落ちる詩卯を、斬九郎は優しく抱き留める

「Z-No.999」
「はい」

 物陰からゆらりと現れたZ-No.999が、意識を失いぐったりとした詩卯を預けられる

「最初からこうしておくべきだったのかもしれないな」
「すんません。俺の不手際でした」
「いや……都市伝説の存在を理解してくれる人間が増えて欲しいというのは、都市伝説側の立場に居る者としては当然の欲求だ」

 どこか寂しげで、諦めの混じった声

「記憶処理を。都市伝説に関る一切合切を消しておけ」


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