小ネタその20 フォレストクイーン
しとしとと雨の降る夜
『それ』は、腹を空かせていた
『それ』が喰らうべきは家畜、人に飼われている生物
本来なら牛馬が好ましいのだが、こうして存在してしまった以上は贅沢は言えない
全長18メートルにも及ぶ巨体をうねらせてブロック塀に圧し掛かり、あっさりと破壊してしまう
巨体の割には短い足で瓦礫を乗り越え、体長の半分以上を占める長い尻尾で瓦礫を打ち払い
『それ』は小学校の校庭へと踏み込んだ
目的は、校庭の隅に設置されたニワトリ小屋とウサギ小屋
この町に存在する数少ない餌に、『それ』は耳元まで裂けた口を歪めて笑みを浮かべる
だが、その笑みはすぐに引けていく
餌の詰まった小屋の前に、腕を組んで仁王立ちした人影があったからだ
既に待ち伏せでもされていたのかと『それ』は警戒の色を露わにするが、ただ一人その人影を除いて何者の気配も感じられない
『それ』は、腹を空かせていた
『それ』が喰らうべきは家畜、人に飼われている生物
本来なら牛馬が好ましいのだが、こうして存在してしまった以上は贅沢は言えない
全長18メートルにも及ぶ巨体をうねらせてブロック塀に圧し掛かり、あっさりと破壊してしまう
巨体の割には短い足で瓦礫を乗り越え、体長の半分以上を占める長い尻尾で瓦礫を打ち払い
『それ』は小学校の校庭へと踏み込んだ
目的は、校庭の隅に設置されたニワトリ小屋とウサギ小屋
この町に存在する数少ない餌に、『それ』は耳元まで裂けた口を歪めて笑みを浮かべる
だが、その笑みはすぐに引けていく
餌の詰まった小屋の前に、腕を組んで仁王立ちした人影があったからだ
既に待ち伏せでもされていたのかと『それ』は警戒の色を露わにするが、ただ一人その人影を除いて何者の気配も感じられない
「ソコヲドケ。オマエモクワレタイカ?」
人間のような造形をした顔のせいか、それとも『都市伝説』として存在したせいか
片言ながら人語を放つその巨大生物『タギュア・タギュア・ラグーン』に、対峙した人影は全く怯んだ様子を見せずにつり上がった目で睨み返す
ステージ
「人様の縄張りでナニ上等クレてやがんだコラ?」
片言ながら人語を放つその巨大生物『タギュア・タギュア・ラグーン』に、対峙した人影は全く怯んだ様子を見せずにつり上がった目で睨み返す
ステージ
「人様の縄張りでナニ上等クレてやがんだコラ?」
雨に濡れた白いその服は、余りにもぼろぼろだった
「このニワトリやウサギに何かあるとなぁ……飼育係の子がいじめられたりすんだよ」
ビキビキと音を立てて、端正な顔が歪み口元が対峙する『タギュア・タギュア・ラグーン』に負けず劣らず裂けていく
「許せねぇよなァ? いじめっつーのはよ? その原因を作ろうとする奴も……なァ?」
体格差というのもおこがましい、160センチと18メートルの差
それをものともしない気迫で睨み付ける女、『ひきこさん』
それをものともしない気迫で睨み付ける女、『ひきこさん』
「引き摺られてェかコラァ!」
フォレスト クイーン
『都市伝説』『喧嘩上等』『怖嗚霊巣闘苦印』などの刺繍で彩られた白い特攻服を翻し、『タギュア・タギュア・ラグーン』へと躍り掛かる
狙いは、長い鉤爪を生やした足である
掴んで、引き摺る
それだけの単純な行為が『ひきこさん』の絶対的な攻撃方法
フォレスト クイーン
『都市伝説』『喧嘩上等』『怖嗚霊巣闘苦印』などの刺繍で彩られた白い特攻服を翻し、『タギュア・タギュア・ラグーン』へと躍り掛かる
狙いは、長い鉤爪を生やした足である
掴んで、引き摺る
それだけの単純な行為が『ひきこさん』の絶対的な攻撃方法
「ナメルナ、ショウドウブツガ」
「ナメてんのはどっちだ、デカブツが!」
「ナメてんのはどっちだ、デカブツが!」
突き出される鉤爪を掻い潜り、その足に迫る『ひきこさん』
だが掴もうとしたその巨大な足が、両方同時にふわりと浮く
だが掴もうとしたその巨大な足が、両方同時にふわりと浮く
「ツブレロ」
「――っ!?」
「――っ!?」
跳ね浮かせた『タギュア・タギュア・ラグーン』の巨体が、全体重に落下のエネルギーを加えて『ひきこさん』を押し潰す
地響きと共に、訪れる沈黙
濡れた地面からぐちゃりと胴体を引き剥がし、その下で地面にめり込み押し潰された『ひきこさん』の姿を確認し
地響きと共に、訪れる沈黙
濡れた地面からぐちゃりと胴体を引き剥がし、その下で地面にめり込み押し潰された『ひきこさん』の姿を確認し
「ショセンハザコカ」
二本の尻尾が動かなくなった『ひきこさん』の身体を器用に地面から引き剥がす
獲物を捕らえておくというその尻尾を器用に巻きつけ、泥まみれのその姿を嘲笑い
獲物を捕らえておくというその尻尾を器用に巻きつけ、泥まみれのその姿を嘲笑い
「どっちがだよ」
そんな余裕ぶった『タギュア・タギュア・ラグーン』に
それまでぴくりとも動かなかった『ひきこさん』が、泥まみれの顔を上げてにたりと笑った
それまでぴくりとも動かなかった『ひきこさん』が、泥まみれの顔を上げてにたりと笑った
「つぅかまぁえたぁ」
身体を締め上げられたまま、その手が尻尾に触れたかと思うと
『タギュア・タギュア・ラグーン』の身体が、ふわりと浮いた
『タギュア・タギュア・ラグーン』の身体が、ふわりと浮いた
「ナニィ!?」
『ひきこさん』を押し潰した時の倍以上の勢いで、身体をひっくり返して地面に叩きつけられる巨体
キアイ
「密度が足りてねェなァオイ! そんなんだからよォ!」
キアイ
「密度が足りてねェなァオイ! そんなんだからよォ!」
仰向けに転がった『タギュア・タギュア・ラグーン』を、尻尾を掴んでぐいと引っ張る『ひきこさん』
ずるり、と
濡れた地面を引き摺られる感触に、慌てて体勢を立て直そうとするが
ハードラック ダンス
「 不運 と 踊っちまうんだよォ!」
ずるり、と
濡れた地面を引き摺られる感触に、慌てて体勢を立て直そうとするが
ハードラック ダンス
「 不運 と 踊っちまうんだよォ!」
引き摺る
ただそれだけに特化したが故に
その行為は他の追随を許さない
その行為は抗う事を許さない
ただそれだけに特化したが故に
その行為は他の追随を許さない
その行為は抗う事を許さない
巨獣の悲鳴と女の哄笑が
雨音に紛れて夜闇に消えていった
雨音に紛れて夜闇に消えていった
―――
「あの……姐さん」
白いマスクと赤い特攻服という姿の『口裂け女』が、遠慮がちに訊ねる
「あァん?」
小学校を見下ろす山の中腹のパーキングエリアで、『ひきこさん』は気だるげにそれに応える
温かい日差しの下、欠伸をしている『ひきこさん』が背中を預けている巨獣
胴体から頭部にかけて鬣や鱗が剥げた『タギュア・タギュア・ラグーン』の姿に、武闘派でならした都市伝説レディース『怖嗚霊巣闘苦印』の面々も流石にドン引きである
温かい日差しの下、欠伸をしている『ひきこさん』が背中を預けている巨獣
胴体から頭部にかけて鬣や鱗が剥げた『タギュア・タギュア・ラグーン』の姿に、武闘派でならした都市伝説レディース『怖嗚霊巣闘苦印』の面々も流石にドン引きである
「そいつ、なんなんですか」
「んー……舎弟?」
「んー……舎弟?」
そう言ってまた、欠伸を一つ
「こいつ弱ェんだもん。弱ェ奴いじめるのは趣味じゃねぇし、悪さしないように躾とこうかと思ってな」
都市伝説は、己の存在を示す物語に依存する
かつてその特異な外見でありながら、人間に生け捕りにされたという記録が残るこのUMAは、こうして生け捕りにされる運命だったのかもしれない
かつてその特異な外見でありながら、人間に生け捕りにされたという記録が残るこのUMAは、こうして生け捕りにされる運命だったのかもしれない
おわり