ギザ十と幽霊少女とご先祖様と組織の狗 28
【スカイフィッシュの少女】
私を殺した、でも直ぐに自分の仲間になれば私を生き返らせると約束してきた変な奴。
最初は大嫌いだった、でも短い間だったけれど一緒に暮らす内に
いつの間にか、私の中でアイツの存在がどんどん大きくなっていた。
アイツとご先祖ちゃんと私、途中から太郎さんも加わって、
みんなで一緒の目標に向かって計画を立てて、たまに息抜きに馬鹿やって
そんな風に、私に初めて「家族」を教えてくれたアイツが
私の目の前で、黒服の振るう禍々しい凶刃に胸を貫かれ倒れた。
目の前に広がる赤、まるで人形の様に動かなくなった私の大切な人
頭がクラクラする、視界が真っ白になり、耳に何も届かない
気がつけば限界まで開いた私の口が何かを叫んでいた
でも自分が何を叫んでいるのか分からない、聞こえない。
ただコマ送りのように、ゆっくりに動く視界の中で、
私の心に反応するように、凄まじい速度で黒服へと向かっていくスカイフィッシュ
でも、そんなスカイフィッシュの一撃を軽々と、手に持った刀で受け止めると
黒服は、口を小さく歪め、何かを言ったように――――衝撃。
側頭部への激痛と共に世界が急転していくのを眺めながら、私は地面を数度転がる。
痛みに、呻きながら視線を上げると、至近距離に黒服の女。
反応するよりも先に胸を踏み抜かれ、衝撃で喉から込み上げたものを吐き出してしまう。
自分の口から広がる深紅に顔を汚し、あまりの痛みと悔しさに流れ出る涙に顔を濡らす。
それでも尚、敵意を漲らせ、相手の顔を睨み付け――涙?
私を打ちのめし、今なお私の身体を足蹴にする彼女の顔は、
とても冷徹で冷血で冷淡な無表情、でもその瞳からは、音もなくただ涙だけを流している。
どうして泣くの? 何が悲しいの?
あんたはアイツを裏切ったんでしょ、あんたは心を無くした人形なんでしょ?
その問いかけは声に出ず、開いた口から出るのはただ赤く染まった嗚咽だけ。
結局何も口に出す事もできず、私の意識は闇に飲まれていった。
私を殺した、でも直ぐに自分の仲間になれば私を生き返らせると約束してきた変な奴。
最初は大嫌いだった、でも短い間だったけれど一緒に暮らす内に
いつの間にか、私の中でアイツの存在がどんどん大きくなっていた。
アイツとご先祖ちゃんと私、途中から太郎さんも加わって、
みんなで一緒の目標に向かって計画を立てて、たまに息抜きに馬鹿やって
そんな風に、私に初めて「家族」を教えてくれたアイツが
私の目の前で、黒服の振るう禍々しい凶刃に胸を貫かれ倒れた。
目の前に広がる赤、まるで人形の様に動かなくなった私の大切な人
頭がクラクラする、視界が真っ白になり、耳に何も届かない
気がつけば限界まで開いた私の口が何かを叫んでいた
でも自分が何を叫んでいるのか分からない、聞こえない。
ただコマ送りのように、ゆっくりに動く視界の中で、
私の心に反応するように、凄まじい速度で黒服へと向かっていくスカイフィッシュ
でも、そんなスカイフィッシュの一撃を軽々と、手に持った刀で受け止めると
黒服は、口を小さく歪め、何かを言ったように――――衝撃。
側頭部への激痛と共に世界が急転していくのを眺めながら、私は地面を数度転がる。
痛みに、呻きながら視線を上げると、至近距離に黒服の女。
反応するよりも先に胸を踏み抜かれ、衝撃で喉から込み上げたものを吐き出してしまう。
自分の口から広がる深紅に顔を汚し、あまりの痛みと悔しさに流れ出る涙に顔を濡らす。
それでも尚、敵意を漲らせ、相手の顔を睨み付け――涙?
私を打ちのめし、今なお私の身体を足蹴にする彼女の顔は、
とても冷徹で冷血で冷淡な無表情、でもその瞳からは、音もなくただ涙だけを流している。
どうして泣くの? 何が悲しいの?
あんたはアイツを裏切ったんでしょ、あんたは心を無くした人形なんでしょ?
その問いかけは声に出ず、開いた口から出るのはただ赤く染まった嗚咽だけ。
結局何も口に出す事もできず、私の意識は闇に飲まれていった。
【B-No.001】
目の前に倒れる二人の侵入者の姿に口元をつり上げ嗤う。
最初にして最後の邪魔者を消去し、ついに計画は最終段階へと移行した。
実際には現在も、まだ「人型」を潰しては無駄な努力をしている侵入者達が居るが、その損害も微々たるもの
この学校町の総人口の十倍の数、約百万体の「人型」をこの短時間で破壊するのはまず不可能であろう。
既に、返された砂時計の砂は最後の一粒のみを残すのみである。
私は、驚喜に逸る胸の高鳴りを押さえながら、手に持った「エペタム」を振り上げた。
カタカタカタカタと、まるで歓喜に震えるかのように、妖刀の刃鳴りが響き渡る。
それに反応するように、いや実際に呼応して、周りに立ち並ぶ、「人型」の目が開かれ
口を開き、狂気に震えながら狂乱に塗れながら狂信の赴くままに狂声を上げていく。
カプセル状の機器の中から、神々しい白い光が、彼らの歌声と共に発せられる。
それは、まるで私という名の指揮者に合わせて歌う聖歌隊のようでもあった。
狂信的な殉教者たちに讃えられるように、私は自らの分身を振り上げる。
「さあ、今こそ「鮫島事件」よ! 我々を、心などという不要物の存在しない完成されし世界へと誘うがいい!」
狂笑を浮かべ、世界を包みこむ狂想曲の中で、私は宣言する。
その言葉と共に、侵入者による強襲によって止まっていた、B-No.002の能力「鮫島事件」が動き出す。
「A-No.1000000までのレスポンスを全て収得しました総合接続ライン数1101192、最終フラグチェックに移行します、……10%…30%……60%……90%……100%…フラグチェック完了、「鮫島事件」への肯定的レスポンス率91%……」
口々にB-No.002より紡がれる甘美な調べを聞き酔いしれる様に私は天を仰ぐ。
全ては、全ては整った、我が産まれ出でて因りの命題、今こそ成就せん!
「都市伝説「鮫島事件」を発動せよ」
「了解、都市伝説「鮫島事件」に―――」
目の前に倒れる二人の侵入者の姿に口元をつり上げ嗤う。
最初にして最後の邪魔者を消去し、ついに計画は最終段階へと移行した。
実際には現在も、まだ「人型」を潰しては無駄な努力をしている侵入者達が居るが、その損害も微々たるもの
この学校町の総人口の十倍の数、約百万体の「人型」をこの短時間で破壊するのはまず不可能であろう。
既に、返された砂時計の砂は最後の一粒のみを残すのみである。
私は、驚喜に逸る胸の高鳴りを押さえながら、手に持った「エペタム」を振り上げた。
カタカタカタカタと、まるで歓喜に震えるかのように、妖刀の刃鳴りが響き渡る。
それに反応するように、いや実際に呼応して、周りに立ち並ぶ、「人型」の目が開かれ
口を開き、狂気に震えながら狂乱に塗れながら狂信の赴くままに狂声を上げていく。
カプセル状の機器の中から、神々しい白い光が、彼らの歌声と共に発せられる。
それは、まるで私という名の指揮者に合わせて歌う聖歌隊のようでもあった。
狂信的な殉教者たちに讃えられるように、私は自らの分身を振り上げる。
「さあ、今こそ「鮫島事件」よ! 我々を、心などという不要物の存在しない完成されし世界へと誘うがいい!」
狂笑を浮かべ、世界を包みこむ狂想曲の中で、私は宣言する。
その言葉と共に、侵入者による強襲によって止まっていた、B-No.002の能力「鮫島事件」が動き出す。
「A-No.1000000までのレスポンスを全て収得しました総合接続ライン数1101192、最終フラグチェックに移行します、……10%…30%……60%……90%……100%…フラグチェック完了、「鮫島事件」への肯定的レスポンス率91%……」
口々にB-No.002より紡がれる甘美な調べを聞き酔いしれる様に私は天を仰ぐ。
全ては、全ては整った、我が産まれ出でて因りの命題、今こそ成就せん!
「都市伝説「鮫島事件」を発動せよ」
「了解、都市伝説「鮫島事件」に―――」
「重大なエラーが発生しました」
…………なん……だと?
【B-No.002】
B-No.001が途方に暮れたように、此方を見ている。
惚けたようなその表情はまるで、長い間、欲しかった玩具がやっと手に入ると思った、その直前に、
何ものかに横からそれを掻っ攫われてしまった子供のようにも見えた。
しかし、そんな彼の姿を視界に入れながらも私は淡々と口を開く。
冷徹に、冷血に、冷淡に、そう在るべしと作り替えられたその姿のまま無情に声を上げる。
「都市伝説「鮫島事件」へ、外部より予期せぬラインの接続を確認しました、その数、不明……これよりアンノウンの解析開始します
…1000、10000、100000、1000000、10000000、100000000、1000000000、10000000000、100000000000、1000000000000……
「鮫島事件」の処理限界を突破しました、プログラムファイルの一部に破損を確認、修復開始………ファイルの修復に失敗しました
これにより予期せぬ致命的なエラーが発生しました、安全の為、セーフティ機能を起動、アンノウンへの解析プログラムを強制終了します
総合接続ライン数∞、最終フラグチェックに移行します……10%…30%……60%……90%……100%…フラグチェック完了、「鮫島事件」への否定的レスポンス率99%……」
私の口から紡がれる言葉の羅列を聞き、私の前で混乱の極地にあったB-No.001の眼が驚愕によって極限まで開かれる。
「無限だと? 馬鹿な!まさか「首塚」か「表層部」……いや「同盟」の仕業か!? いや、しかし「鮫島事件」に対抗しうる強大な都市伝説は全て監視済みのはず
ではなんだ? 我々の情報網をすり抜ける程の「何か」がこの学校町に存在したという事だというのか、まさか、そんな事がっ!?
くっ……しまった、まて、このままでは「鮫島事件」が!? 発動を中断し――!?」
「……そのまま「鮫島事件」を発動しろ」
突如、自らの胸を貫いた、鈍光りする刃に声を途切れさせるB-No.001。
その背後には、私の大切な人、記憶には無いが、心が覚えている。
例え、人を止め、「組織」の繰り人形と化した今となっても、彼への想いは忘れる事はない。
口から流す赤い液体を、床に吐き捨て、B-No.001の背から胸にかけて貫通させた妖刀を傷口を抉るように捻りながら抜く彼の言葉に応えるように、最後の言葉を紡ぐ。
「「鮫島事件」発動しました、「第10724世界線」からのレスポンスを確認しました、
――以下、世界にかわりまして鮫島事件がお送りします、「釣り乙」――以上、都市伝説「鮫島事件」の展開を終了します」
B-No.001が途方に暮れたように、此方を見ている。
惚けたようなその表情はまるで、長い間、欲しかった玩具がやっと手に入ると思った、その直前に、
何ものかに横からそれを掻っ攫われてしまった子供のようにも見えた。
しかし、そんな彼の姿を視界に入れながらも私は淡々と口を開く。
冷徹に、冷血に、冷淡に、そう在るべしと作り替えられたその姿のまま無情に声を上げる。
「都市伝説「鮫島事件」へ、外部より予期せぬラインの接続を確認しました、その数、不明……これよりアンノウンの解析開始します
…1000、10000、100000、1000000、10000000、100000000、1000000000、10000000000、100000000000、1000000000000……
「鮫島事件」の処理限界を突破しました、プログラムファイルの一部に破損を確認、修復開始………ファイルの修復に失敗しました
これにより予期せぬ致命的なエラーが発生しました、安全の為、セーフティ機能を起動、アンノウンへの解析プログラムを強制終了します
総合接続ライン数∞、最終フラグチェックに移行します……10%…30%……60%……90%……100%…フラグチェック完了、「鮫島事件」への否定的レスポンス率99%……」
私の口から紡がれる言葉の羅列を聞き、私の前で混乱の極地にあったB-No.001の眼が驚愕によって極限まで開かれる。
「無限だと? 馬鹿な!まさか「首塚」か「表層部」……いや「同盟」の仕業か!? いや、しかし「鮫島事件」に対抗しうる強大な都市伝説は全て監視済みのはず
ではなんだ? 我々の情報網をすり抜ける程の「何か」がこの学校町に存在したという事だというのか、まさか、そんな事がっ!?
くっ……しまった、まて、このままでは「鮫島事件」が!? 発動を中断し――!?」
「……そのまま「鮫島事件」を発動しろ」
突如、自らの胸を貫いた、鈍光りする刃に声を途切れさせるB-No.001。
その背後には、私の大切な人、記憶には無いが、心が覚えている。
例え、人を止め、「組織」の繰り人形と化した今となっても、彼への想いは忘れる事はない。
口から流す赤い液体を、床に吐き捨て、B-No.001の背から胸にかけて貫通させた妖刀を傷口を抉るように捻りながら抜く彼の言葉に応えるように、最後の言葉を紡ぐ。
「「鮫島事件」発動しました、「第10724世界線」からのレスポンスを確認しました、
――以下、世界にかわりまして鮫島事件がお送りします、「釣り乙」――以上、都市伝説「鮫島事件」の展開を終了します」
これで、全てが終わりました、そして、あなたの望みも終わりですB-No.001――いえ、お兄ちゃん。
【ギザ十】
黒服の身体から籠釣瓶を引き抜くと、まるで其れを待っていたかのように彼の身体から鮮血が噴き出す。
明らかに致命傷を負っているであろう、彼はしかし幽鬼のように振り向くと、自身もまた満身創痍である俺に問いかけてくる
「馬鹿な……確実に心臓を貫いた……はずです……何故、生きて……いるのです?」
ゴボゴボと吐血しながらも心底不思議そうに首を傾げる黒服、その顔を隠すサングラスが落ちる。
そうか……やっぱり、あんただったのか……
嘗ての俺の大切な宝物の一つ、大切な人の兄であり、俺自身にとっても大切な友人だった、彼。
十数年前に、都市伝説「鮫島事件」によって失われた、俺の大切なものの片割れ……
「これだよ……そうだな月並みな言い方だが……こいつが胸ポケットに入れていなければ即死だった」
盛大に俺の血に塗れ真っ赤に染まり、斬撃によって歪な形に変形してしまった「ギザ十」を取り出し見せる。
胸ポケットに仕舞っていた十円玉のお陰で、飛来した妖刀の軌道が逸れ、辛うじて致命傷には至らなかったのだ。
「そ……んな……矮小な都市伝説に……私の……エペタムが……」
「確かに、矮小で、最弱で、ショボ過ぎる都市伝説だがな……こいつには、あんたが否定した「人の心」が詰まっている、「俺の想い」が籠もってる、
あんたが不要だと、必要ないと切り捨てた存在が、あんたの計画を最後の最後で狂わせたんだ……」
静かに、子供に言い聞かせるように、語る俺の言葉に、彼は顔を歪ませ嘲るように嗤う。
「ふ……ふふ……そんなもの……私はただの甘い幻想と……思っていましたが……ね」
そうかもしれない、それは只の俺の妄想で、只単に運が俺に傾いたと言うだけなのかもしれない。
だが……
黒服の身体から籠釣瓶を引き抜くと、まるで其れを待っていたかのように彼の身体から鮮血が噴き出す。
明らかに致命傷を負っているであろう、彼はしかし幽鬼のように振り向くと、自身もまた満身創痍である俺に問いかけてくる
「馬鹿な……確実に心臓を貫いた……はずです……何故、生きて……いるのです?」
ゴボゴボと吐血しながらも心底不思議そうに首を傾げる黒服、その顔を隠すサングラスが落ちる。
そうか……やっぱり、あんただったのか……
嘗ての俺の大切な宝物の一つ、大切な人の兄であり、俺自身にとっても大切な友人だった、彼。
十数年前に、都市伝説「鮫島事件」によって失われた、俺の大切なものの片割れ……
「これだよ……そうだな月並みな言い方だが……こいつが胸ポケットに入れていなければ即死だった」
盛大に俺の血に塗れ真っ赤に染まり、斬撃によって歪な形に変形してしまった「ギザ十」を取り出し見せる。
胸ポケットに仕舞っていた十円玉のお陰で、飛来した妖刀の軌道が逸れ、辛うじて致命傷には至らなかったのだ。
「そ……んな……矮小な都市伝説に……私の……エペタムが……」
「確かに、矮小で、最弱で、ショボ過ぎる都市伝説だがな……こいつには、あんたが否定した「人の心」が詰まっている、「俺の想い」が籠もってる、
あんたが不要だと、必要ないと切り捨てた存在が、あんたの計画を最後の最後で狂わせたんだ……」
静かに、子供に言い聞かせるように、語る俺の言葉に、彼は顔を歪ませ嘲るように嗤う。
「ふ……ふふ……そんなもの……私はただの甘い幻想と……思っていましたが……ね」
そうかもしれない、それは只の俺の妄想で、只単に運が俺に傾いたと言うだけなのかもしれない。
だが……
「だが、俺はそんな甘い幻想を信じている、あんたの妹に教えて貰ったオマジナイの幻想を」
「私の……妹……?」
心底、心底不思議そうに呟く彼のその姿は、まるで大切なものを無くした迷子の子供のようで。
「覚えて…無いのか…」
先ほどから彼の側で涙を流し続ける人形の様な彼女の手を、彼の元へと優しく導く。
「昔、昔、遠い昔に小さな女の子が言いだした、俺たち三人だけの小さな秘密の都市伝説……覚えてないか?」
視線を彷徨わせ死に向かう彼は、不思議そうに首を傾げた後、小さく頷いた。
「ああ、思い出した、確か「 」が俺たちに教えてくれたオマジナイ、『勇気が出ない時にコインを弾いて、もし表が出れば必ず良い結果になる』」
「『もし裏が出たらどうすれば?』」
「『そんなの、表が出るまで何度でも弾けばいいだろう?』」
咳き込みながら、血塗れの二人の口から渇いた小さな笑い声が漏れる。
「俺は、何度も弾いたよ、ここに来るまでに、何度も何度も、表が出るまで」
「そうか……だったら、私が負けてしまったのも……仕方が……ない……な……」
苦しそうに咳き込みながらも、まるで昔に戻ったような微笑を浮かべる彼。
「なぁ……どうして、こんな事を……したんだ……」
「さぁどうなのだろう……ただ私は忘れたかったのかもしれない…辛い現実の中では、
心の中にしか存在しない色褪せた幸せは、辛すぎる…だからかもしれない……だから私は…全てを…」
彼と彼の妹の手を包み込むように握り問いかける俺に、返す彼の呟く言葉は儚く、徐々に小さくなり途切れる。
彼は嘗ての俺たちを見ていたのだろうか、視線を何処か遠くに映しながら語っていた。
学校町の人々を脅かした「暗部」の怪人は、自身の妹と、嘗ての友人の手の中で静かに逝った。
「私の……妹……?」
心底、心底不思議そうに呟く彼のその姿は、まるで大切なものを無くした迷子の子供のようで。
「覚えて…無いのか…」
先ほどから彼の側で涙を流し続ける人形の様な彼女の手を、彼の元へと優しく導く。
「昔、昔、遠い昔に小さな女の子が言いだした、俺たち三人だけの小さな秘密の都市伝説……覚えてないか?」
視線を彷徨わせ死に向かう彼は、不思議そうに首を傾げた後、小さく頷いた。
「ああ、思い出した、確か「 」が俺たちに教えてくれたオマジナイ、『勇気が出ない時にコインを弾いて、もし表が出れば必ず良い結果になる』」
「『もし裏が出たらどうすれば?』」
「『そんなの、表が出るまで何度でも弾けばいいだろう?』」
咳き込みながら、血塗れの二人の口から渇いた小さな笑い声が漏れる。
「俺は、何度も弾いたよ、ここに来るまでに、何度も何度も、表が出るまで」
「そうか……だったら、私が負けてしまったのも……仕方が……ない……な……」
苦しそうに咳き込みながらも、まるで昔に戻ったような微笑を浮かべる彼。
「なぁ……どうして、こんな事を……したんだ……」
「さぁどうなのだろう……ただ私は忘れたかったのかもしれない…辛い現実の中では、
心の中にしか存在しない色褪せた幸せは、辛すぎる…だからかもしれない……だから私は…全てを…」
彼と彼の妹の手を包み込むように握り問いかける俺に、返す彼の呟く言葉は儚く、徐々に小さくなり途切れる。
彼は嘗ての俺たちを見ていたのだろうか、視線を何処か遠くに映しながら語っていた。
学校町の人々を脅かした「暗部」の怪人は、自身の妹と、嘗ての友人の手の中で静かに逝った。