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連載 - 我が願いに踊れ贄共・彼は閃光のごとく-07

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だれでも歓迎! 編集
 呼吸を整える必要は、なかった
 「教会」最速のトライ・ミニッツ・ライトニング
 ほんの数秒、軽く駆けた程度、特に呼吸は乱れていない

「……こちらも、撒いたようだ」
「…監視を気にしていましたのね」

 小さく、ローゼが苦笑する
 どうやら、こちらの挑発の意図を理解してくれていたようだ
 話が早く、助かる

「………尋ねたい事があるのだろう?」
「えぇ…「教会」エイブラハム傘下「13使徒」であるあなたに、聞きたい事が、いくつか」
「…答えられる範囲で良ければ、答えよう」

 ありがとうございます、とローゼは小さく微笑む
 そして、聞き出すべき事を頭の中で整理しているのだろう、やや、間をおいてから、改めて口を開く

「まず、初めに……「13使徒」全員が、エイブラハムに忠誠を誓っている訳ではありませんの?」
「……それを答える前に、こちらからも一つ、尋ねよう。何故、そのような事を尋ねる?」
「あなたと会う前に、他の「13使徒」の方を見ましたわ……そのうちの一人は、どうにも、自分の意思でエイブラハムに仕えているようには思えませんでしたの」

 …あぁ、そういう事か
 先ほど確認してきたカイザーの様子を思い出す

「…カイザー・ライゼンシュタインの事か」
「えぇ……あの方が、心からエイブラハムに忠誠を誓っているようには思えませんわ」
「………あの男に心から忠誠を誓っている者など、果たして「13使徒」にどれだけ、いるだろうな」

 トライ・ミニッツ・ライトニングのその言葉に…ローゼが小さく、首をかしげたようだった
 だが、彼はそのまま、言葉を続ける

「……何らかの事情で、無理矢理従わされている……と言う意味で答えるならば。カイザー・ライゼンシュタインと、イザーク・シーフェルデッカーが、それにあたる」
「やはり、あの方は無理矢理従わされていますのね…」

 どこか、同情したような声
 あの男が子供を庇った事を、庇おうとした事も、把握しているのか

「…もっとも、カイザー・ライゼンシュタインも、元は己の願いを叶える事を代償に、従っていたようだが……今では、その願いは半ば諦めている。故に、今は強制的に従わされている」
「願いをかなえてもらう。その為に従っていた……その過去を、脅しの材料にされていますのね」
「………いや。それよりも、リュリュ・クーヴレールやマドレーヌ・クーヴレールと言った、幼い者達の存在が足枷になっている。あれは、未成年に甘い」

 あの双子だけではない
 レティにクラリッサ、そして、ニーナ
 ……それに、今まで「13使徒」に加えられ、そして、切り捨てられた少年少女達
 それらの足枷が、カイザーを「13使徒」に縛り付け続けている

「………次に、イザーク・シーフェルデッカー。あれは、ジョルディ・ムダーラの存在が糧になっている。詳しい事情は知らないが……ジョルディ・ムダーラの命を、エイブラハムに握られているも同然の状況であるようだ」
「命を…?どういう事ですの?」
「……イザーク・シーフェルデッカーは、警戒心が強い。今以上に他人に弱みを握られないよう、我々を警戒している」

 だから、これ以上はわからなかった
 もっとも、彼としては、イザークが強制的に従わされているという事実さえつかめれば問題はなかった為、必要以上に首を突っ込んでもいないのだが

「その、ジョルディと言う方は、エイブラハムに忠誠を従っていますの?」
「……と、言うよりも、イザーク・シーフェルデッカーについてきているだけだな。あれが心から信頼しているのは、イザーク・シーフェルデッカーただ一人なのだろう」

 ただ、それについてきているだけ
 傍にいるために、「13使徒」に入った、それだけ
 逆に言えば、ただそれだけの為に。「13使徒」に入れるだけの力を身に着けた、とも言うが…

「……「強制的に」従わされているのは、その二人だけだ。もっとも、他にも騙されて従っている者もいるだろうがな」
「そう、ですの……」

 俯く、ローゼ
 それを見下ろしながら……周囲を、警戒する
 そろそろ、まずい、か

「……「13使徒」、いや、エイブラハム・ヴィシャスは、探しものが見つかり次第、この街を焼き尽くす…もしくは、氷漬けにする」
「探しもの……?それは、何ですのっ!?」
「淫魔。かつて、エイブラハム・ヴィシャスが飼いならし、しかし、逃げ出した一匹の淫魔。あの男が探しているのは、それだ」

 名前や姿までは知らない
 ただ、「裏切りの淫魔」だの「原初の淫魔」だのと言う呼び方をしていた
 それが淫魔である事は、確かなようだ

「その方は、この学校町にいますの…?」
「いる。だからこそ、エイブラハム・ヴィシャスは、わざわざこの街に来た」

 その淫魔を捕える為に
 苦しめる為に
 あの男は、「教会」から重い腰を上げてきたのだ

 今が
 チャンスなのだ

「……っもう一つ!どうして、この街を焼き尽くす必要が…もしくは、凍りつかせる必要がありますの!?」
「…そこまでは、知らない。ただ、ソドムとゴモラやノアの大洪水に見立てようとしている点から……この街を贄に捧げて、「教会」での地位をさらに確実にしようとでもしているのかもしれない」
「………っ!!」

 そう
 ただ、それだけの、為に
 この街の命すべてを、犠牲にする
 あの男が考えているのは、そんな事だ

「…あなた、は……何故、エイブラハムに、従っていますの?」
「……任務だからだ」

 任務だから
 ただ、それだけ
 ……自分には、それしかないのだから

「………俺は、任務に従い動くだけだ。この街がどうなろうと、知らない」
「な……」
「……だから」

 自分は、任務に従う事しかできない
 だから

「だから………この街を救いたくば、お前達が勝手にするがいい。街の住人を逃がすなり、なんなり……お前たちのやり方で、勝手にやればいい……俺は、それに干渉しない」


 この街を救うのは、自分の任務ではない
 自分の役目ではない

 それは、この街の住人達と
 ……「組織」など、この街に深くかかわっている組織の者達の、役目だ


「……そろそろ、監視者の目や耳が届く………お前も、退いた方がいい」
「ぁ………」

 刹那の閃光と共に、トライ・ミニッツ・ライトニングの姿が消える
 直後、派手な破壊音と共に、木が数本、なぎ倒された
 まるで、戦闘を行った形跡を、残そうとしたように

 そして、ローゼですら追いつくことのできぬ……それこそ、光の如き、スピードで、トライ・ミニッツ・ライトニングは、その場から離れていった

 己の任務へと、戻るために



 エイブラハム・ヴィシャスの命を奪う
 そのチャンスを、見逃さないために








to be … ?




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