「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 夢幻泡影-69

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Retsuya

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だれでも歓迎! 編集
俺を夢から引きずり出してくれたのは、唇に触れた優しく温かいキスだった

「ご主人様、お早うございます♪」

目を開けると、宇宙一可愛い俺の嫁、ミナワの笑顔が見えた
無邪気な笑顔と朝日が眩しい
俺の一日は、こうして始まる

「ん…お早うミナワ、それと」
「えッうひゃんっ!?」

俺はミナワの背と首に腕を回すと、抱き寄せてベッドに誘う
ミナワの声は可愛い、顔も可愛いし容姿も性格も反応も何もかもが可愛くて愛しい
そんな彼女が朝からエプロン姿で目覚ましキスなんてしてくれるとね、心と下半身が元気になっちゃう訳で

「唯一無二の我が嫁に感謝を込めて…頂きます」

俺に覆い被さるような状態になった彼女に、俺はキスのお返しをしてあげた
舌と舌を絡め合い、互いの口の中の唾液を奪い合う

「ふあっ……や、やらぁもぉ、裂邪ったらぁ///」
「ウヒヒヒヒ、ご馳走様でした」

惚けた目をして涎を拭いながら抗議するミナワに、俺は陽気に笑いかけた
でもキスだけじゃ物足りない

「やっぱり御代わり」
「ひゃっ、あんっ、そこはらめぇっ♪」

何処を弄ったり揉んだりしているかは読者の想像にお任せしよう
あー、ミナワのここ柔らけー♪

「……マタ始マッタゾ、朝ノ儀式ガ」
「良いじゃありゃせんか、仲が良いのは喜ぶべき事でい」
「これは仲が良いどころじゃすまないと思うバクけどね、ナユタのターンバクよ」
『毎朝こんな光景を見てて君達は発狂しないのかね?
 …む、『ヴァイロン・オメガ』をシンクロ召喚しよう』
「ギャー!?」
「待てお前ら!? 幾つかツッコませろ!
 何で朝から遊戯王やってんだよ!?
 何でナユタが勝手に出てんだよ!?
 何で俺の試作ヴァイロンデッキ使ってんだよ!?
 誰だこいつにルール教えた奴!?
 てかリム事故りすぎだろ!? ガラ空きじゃねぇか、『ドラグニティ』だろお前!?」
「ヨク出来マシタ」
「うるさい!?」
「いやぁ、余りに暇だったからそこに置いてたベルトで試しに呼びだして即行でルール教えたバクよ」
「私が起きたのは朝4時くらいでしたけど、既にやってらっしゃいましたよ?」
「えっと……2時間以上も!?」
「飲み込みが早くて驚きでい」
『なかなか面白い札遊びだ、気に入ったよ
 あ、『プリズム』2枚を装備した『オメガ』で直接攻撃する』
「5200のダメージ……負けたバクorz」
『ギハハハハハ、もっと強い者はいないのか?』
「甘いバクよ……オイラは四天王の中でも小物……
 新勢力であるエクシーズモンスター『ヴォルカザウルス』を投入して火力を増したウィルのヴォルカニックバーンデッキ、
 『ガガガマジシャン』でエクシーズもアドバンス召喚も狙う黒のお兄さんの邪神デッキ、
 未だ勢い衰えない『トリシューラ』や『ブリューナク』が飛び出すお姉さんの氷結界デッキ……どれも結構強いバクよ?」
「まぁ、あっしは『ラヴァル』も入れやしたけどねぇ」
「私ノデッキハ未ダ改良ノ余地アリダガナ」
「私も『フィッシュボーグ-ガンナー』が禁止になってからちょっと……」
『そういえばこのデッキにもエクシーズモンスターが入っているようだな、次はこれも狙ってみようか』
「馴染み過ぎだろおい!? 言っとくけど俺はまだ許した訳じゃないからな!?」
『「「「「ツンデレご馳走さまでーす」」」」』
「ええい黙れ黙れぇ!!」

そんなこんなで制服に着替え、ミナワと一緒に1階の食卓に向かった
台所ではお袋が朝食を作ってくれていた

「あら裂邪、おはよ♪」
「お早う母さん」
「今朝もお熱ぅ~いヤツ、やってたの?」
「っち、ちょっとお義母様!?///」
「少しは自重しろよ!?///」
「うふふ♪ 若いわねぇ~」

いつもいつも、何でお袋には筒抜けなんだろうか
そんなことを考えながら俺はテーブルに着き、フレンチトーストにかぶりついた




     †     †     †     †     †     †     †




「じゃ、行ってきまーす」
「行ってらっしゃいませ、ご主人様♪」
「シェイドちゃん、裂邪の事宜しくね♪」
「…裂邪ノ母君ヨ、ソロソロ『ちゃん』付ケハ止メテクレナイダロウカ?;」
「うふふ♪ あ、そうそう裂邪、帰ったらお遣い行ってくれない?」
「良いよ、メモに書いといてくれよ」
「ありがと、ついでにミナワちゃんとデートする?」
「母さんっ!?///」「お義母様っ!?///」

俺の朝はいつも騒がしい
まぁ明るい家庭だから良いんだけれども
正義は俺より早く出るから、一緒に登校する事はまず無い
普段7時に出る俺より早く起きて早く出てんだけど、
何かどっかで「恐怖のおっさん」と一緒に修行だの何だのやってるらしい
俺は力は無いけど個の力じゃなくて皆の力を信じてるからそんなのどうでもいいや

「ん、おーい藍那!清太!」

見覚えのある2つの後ろ姿に駆け寄る
一人はクラスメイトの水無月 藍那、もう一人はその弟であり俺の弟子(?)でもある清太だ

「たっ黄昏クン…お、お早う」
「師匠、お早うございます」
「おう、けど早くないか? もうクラブ行かなくていいんだろ?」
「図書室で友達と試験勉強するみたいなんすよ、もうすぐだし
 体操着の姉ちゃんが見られないのは残念だなー」
「こら清太! 人前でそんなこと言うんじゃないの!」
「ごめんなさいっ!?」
「…ッハハ; んじゃ、俺日直だから、学校で!」
「うん、気をつけてね黄昏クン!」
「お前らもなー!」

手を振りながら、俺は学校へと向かった
ところで、藍那の顔がやけに赤かったけど、熱でもあるんじゃないのか?
後で保健室に行くよう勧めてみよう

「黄昏クン………///」
(くっそ、師匠マジもげろ!!)





     †     †     †     †     †     †     †





登校、そして俺は廊下を歩いて3階の教室へ
さっきの会話の通りで俺もとうとう中学3年生、2月には高校受験が控えている立派な受験生です
俺としては中央高校を狙っている訳で
最近の高校受験は早々落ちないらしいけど、ノー勉はまずいよなぁと感じつつ少しずつミナワに数学と物理を教えて貰っている
ところで何故試験教科に保健が無いのだろう
性教育に関しては多分どの中学生よりも詳しいと思うんだよ、俺

「裂兄ぃ、お早う」
「ウヒッ!? な、何だ漢か脅かすなよ!?」
「ごっごめんなさいっ!?」
「いや謝んなくても良いよ!?」

長い黒髪ストレートの似合うセーラー服の少女――――に見えるが騙されてはいけない
こいつは正真正銘“男の娘”、俺の従兄弟である神崎 漢だ

「あれ、でもいつもより早くないか?」
「うん、その、今日僕も、日直だから……」
「……あぁ、そういやそうだった」

俺のクラスは男女1組で日直をやるルールになっている
信じられるか?
漢は生物学上“男”なのに、この学校は社会的にこいつを“女”としてしまっているんだ
どうなってんだこの学校、いやどうなってんだこの町は
ともあれ、俺は漢と並んで教室へ向かった……待て誤解すんな、彼女じゃねぇからな!?

「そういやお前、高校どうすんの?」
「えっと、一応中央高校志望だけど…」
「なんだお前もか。しっかしあれだな、点数マイナスの悪夢から逃れられると思うと心底ほっとするよな」
「れっ、裂兄ぃ、人の悪口は良くないってば」
「よお裂邪、神崎」
「お早う黄昏くん、神崎さん」

振り向くと、制服の(当然だわな)男女が2人、にこやかに挨拶してきた
クラスメイトの仲橋 光陽(ナカハシ コウヨウ)と、その幼馴染の松葉 美菜季(マツバ ミナキ)だ

「あ…仲橋くん、松葉さん、お早うございます」
「おっすゲンガー、今日も夫婦揃ってのご登校ですか」
「だからゲンガー言うなっ!?」
「そっそれに夫婦じゃないから///」

順を追って説明すると
俺はこの仲橋 光陽のことを“ゲンガー”と呼んでいる
由来は勿論、ポケモンのゲンガーだ
何故かというと、「GENGA HA NAKAHASHIKOYO」という都市伝説がありまして
初めて名前を聞いた時にそれを思い出したのと、単純に髪型がゲンガーに似てるからだ
因みにこの2人は都市伝説と無関係のようだ、少なくとも契約はしていない
あと夫婦呼ばわりしてるのは、このゲンガーは美菜季の家に居候しているから、というガキのような理由で
ゲンガーの両親は彼が幼い頃に他界していて、2人の友人だった美菜季の父親が身寄りの無かった彼を引き取ったのだそうだ
何で朝っぱらからこんな湿っぽい解説をしなきゃならんのだ俺は
ついでに美菜季の親父さんは喫茶店の店長だ、俺もちょいちょい行ってたりする
だからこの状況で『夫婦』発言すると自分に返ってくるのをふと忘れていた事に気がついた

「お前だって、彼女いるのに浮気なんてして良いのかよ?」
「浮気ィ? 誰と?」
「いや、神崎とに決まってるじゃん」
「お前しばくぞコラァ!! 言っとくけどこいつはおとkムグッ」
「オト?」
「あ、あのっ、ぼ、僕のお父さんは小さい時に死んじゃってるから……」
「うん、知ってるよ? それで、光陽と意気投合したんだよね」
「そ、そうそう、あはははは……そ、それじゃ」

苦しい
口を塞がれたまま、俺はそのまま引きずられるようにして2人から離されていった
暫く歩いていくといよいよ死にそうになったので、漢の腕を振り払った

「おっ、お前殺す気か!?」
「だ、だって! 僕が男だって分かったら、僕が変な人に見られちゃうからっ!」
「実際変な人だろうが! そりゃ、まぁ、お前は、ほら、可愛いよ? 可愛いけど男は男だろ!?」
「か、可愛い、だなんてっ……や、やめてよぉ……」
「バカやめろっ! 照れるな顔を赤らめるなっ!?」

くそっ、何で男だって分かってんのにときめいちまうんだよ!?
……朝は人が少ないから、ここで襲いかかるの一興か?
何気なさそうな素振りで周囲を見渡す
ダメだ、人いたわ

「おう、お早う極」
「あ……お、お早うございます、新田さん」
「お早うございます」

素っ気なく挨拶を返してきたのは新田 極、俺の同級生
こっちは契約者だけど、何と契約してたっけな、「ルルドの泉」と……危なげなお姉様だったっけな
あんまし自分の事は語らない、というか人付き合い悪いし言葉に心が篭ってないってのか、
冷たいと感じられる事もあるので何かと敬遠されがちなんだけど俺は気にしてない
漢はこの通り、怖い印象があるのか子供みたいに俺の後ろに隠れてぷるぷる震えてるんだけど

「相変わらず微笑ましいですね。風紀が乱れないと良いですけど」
「硬ぇ事言うなよ、恋愛は自由だrって違う違う違う何言わせてんだ!?」
「れ、裂兄ぃが勝手に喋ってたような…」
「やかましいっ!」
「ひゃんっ!?」
「やりすぎて先生にどやされても知りませんよ。というか、今日は日直じゃなかったんですか?」
「そうだった! 行くぞ漢!」
「え、あ、ま、待ってよ裂兄ぃ!」

俺達は急いで教室に走った
ところで気の所為ならそれで良いんだけどさ
極と話してると、あいつの目がなんか獲物を狙う猛獣の目かそれに近いものに見えるんだけど

「あ、神崎さん、今度僕と一緒n」
「すまん!間に合ってる!」
「あの、裂兄ぃ? 今のは僕への――――」
「良いんだよ!」

特に漢に対して……と思ってたんだがどうやらそうでもないらしい
うん、気の所為なら良いな、気の所為なら
とにかく、俺の学校生活はいつもこうやってドタバタしながら始まる
昼休みは酷いもんだ
漢と一緒に歩いているだけで背中に麻夜ちゃんの膝蹴りが突き刺さって保健室へ直行したり
かなり運が悪い時は、望ちゃんにパンかジュースを奢らされるか現金持ってかれたり
今なら、かの有名なそげぶの高校生に同情できるかも知れん
まぁ、そんな酷い一日だからこそ、放課後が楽しみだったりするんだよなぁ






     †     †     †     †     †     †     †





「ん~、これで全部だったか?」
「えぇと……はい、大丈夫です」
「有難う、それじゃレジに行こうか」
「はい、ご主人様♪」

放課後
俺はスーパーマーケットで、お袋に頼まれた買い物をこなしていた
勿論、我が愛しの嫁であるミナワと一緒に

「あー、俺達も結婚したら、子供も一緒に連れて買い物に来るんだろうなぁ」
「やだっ、も、もぉ、ご主人様ったらぁ……気が早すぎますよぉ///」
「そうか? まぁ確かに、18にならなきゃ結婚できないけど……って、ミナワ、お前幾つだ?」
「へ?………そ、そうですね、幾つになるんでしょう?
 というか、都市伝説って年齢あるんでしょうか?」
「だよな、ローゼちゃんみたいに都市伝説に飲まれたんなら分かるけど、純粋な都市伝説って……
 ま、いっか、それこそローゼちゃん達「組織」に聞けば分かるだろ」
「そうですね;」
「でもあと3年かぁ、そんなに待ちきれないなー」
「私はそれまで花嫁修業でもしてますね♪」
「じゃ、まずは子作りの練習だな」
「もぉ~///」

我ながら、これは外でする話じゃないな
これが日常茶飯事だと知られたらどうなることやら
でも、俺はこの時間が一番癒される
ミナワと2人っきりでいられる時間
辛い事や苛立った事、嫌な事があっても、彼女の笑顔を見るだけで、声を聞くだけで何もかも忘れられる
現実逃避だと非難されても良い
俺はこの瞬間が……いや、ミナワが好きだから
それは揺るぎない真実だから

「……ご主人様、どうかされました?」
「え、あ、いや、別に? お前に見惚れてただけだよ」
「もぉ、調子良いんですからぁ♪」

レジでの支払いを終え、買った物をエコバッグに詰めながらミナワは笑った
そうそう、この顔が好きなんだよ

「よいしょっと、終わりました」
「ん、有難う、じゃあ俺が持つわ」
「いえいえ、私が持ちますから」
「今日は荷物多いだろ、重い物をお前に持たせる訳にはいかないよ」
「ご主人様に荷物を運ばせるなんて、私には……」
「よし分かった、なら2人で持とう」
「はい、ごしゅjへっ!?///」
「嫌ならお前をお姫様抱っこして帰ろうか」
「れ、裂邪のばかぁ///」

ミナワは観念したようで
結局、バッグの取っ手を俺が左手で、彼女が右手で持って帰ることにした
未だにミナワの頬は真っ赤に染まっていた

「えへへへ……や、やっぱり恥ずかしいですぅ///」
「今更これくらいどうって事ないだろう?
 覚えてるか? 去年『フェアリーモート』でローゼちゃん達とケーキ食べてた時――――」
「きゃあああああああ!? ら、らめっ、その話はらめぇ!?///」
「あとはそうだなー、今年の初詣は着物姿のお前と人混みの中で……」
「ぐすっ……裂邪のいじわるぅ………」
「ご、ごめんごめん、俺が悪かったよ;」

泣いちゃった嫁の頭を撫でる
泣いてる彼女も好きだけど、やっぱり俺は笑ってて欲しい
それでもこうしてちょっと虐めたくなるのは、やっぱり俺にはSっ気があるからだろうか
そんな事を考えながらスーパーを出ると、空が燃えているように真っ赤になっていた

「わあ、綺麗な空……」
「あぁ……あ、そうだ、ミナワ、あの場所へ行ってみないか?」
「あの場所?っわ、ち、ちょっと裂邪ぁっ!?」

バッグ越しにミナワの手を引いて、人目のつかない日陰の方へ向かった

「シェイド、例の場所に『シャドーダイブ』」
「オイ、オ遣イハ良イノカ?」
「んじゃ荷物はお前が先に置いてきてよ。俺は暫くしたら帰るから」
「面倒ナ……了解シタ」

俺はミナワと一緒に影の中に飛び込んだ
影の中は良い
どんなに距離があろうと、目的地には一瞬で辿りつける
昔はこの中に入るのでさえ気分悪いわ疲れるわで大変だったが、今ではこの通り
飛び出してみれば、景色は町の中から町の外になる
北区にある山の頂上付近だ
この辺りは開けていて、邪魔な木が生えていない
だから、ここから見る景色は絶景だ

「わあ……あ、また言葉が出なくなっちゃいました;」
「ッハハ、言葉に表せなかった程綺麗だったって事にしとこう;」

暫く2人で夕陽を見つめる
煌々と沈みかける太陽は、空を赤に、大地を金に染め上げている
この町に海があったらもっと綺麗だったろうなぁ
そんな贅沢は言わないつもりだけど
ずっと夕陽を見ていると、気分が良くなって、つい、ミナワを抱き寄せた

「ふあっ……れ、裂邪?」
「ごめん、何となくこうしたかったから…雰囲気ぶち壊したかな?」
「…いいえ、こういう方が私は好きです
 それと、その…………き、キス、とか、ど、どうですか?///」

只でさえ陽光で赤いのに、一層顔を赤くするミナワ
そんな上目遣いで訴えかけないでくれ
心臓ごと奪われてしまいそうになる

「ウヒヒヒ、折角2人きりだし、キス以上のことでも良いけど…?」
「ホントですか? 去年は『ないわ~』って仰ってたじゃないですか」
「いやぁお前がノリ気だと思わなかったから、俺は外でも良いよ。でも出すもんは中に出すけどね」
「あ、その、今日は……危ないです///」
「あらら、じゃあ後ろにしようか、それともゴムつけようか?」
「うぅ………き、キスして考えましょうよぉ」
「お前どんだけキスして欲しいんだよw」
「どんな形でも良いから、今すぐ裂邪が欲しいんですぅ♪」
「ええい贅沢な奴め♪」

夕陽をバックに、俺とミナワの視線が合い、徐々に距離を詰める
長く伸びた2つの影は、やがて一つになった
と、なかなか良い雰囲気だったのに

「………ミナワ、」
「はい、分かってます……都市伝説、ですね」
「すぐそこだな、かなり小さいから気付かなかった…お前はどう思う? 俺には戦意が無いように思えるが」
「というか、動いてないみたいですけど……行ってみますか?」

ミナワの提案に頷いて答え、俺達は気配の感じる方へと歩いた
本当にすぐ近く、数歩歩いた先の茂みの向こうからだった
草を掻き分け、気配の根源を探す

「「あ!」」

見つけた
2人で身を乗り出してその元に駆けつける
だが見つけたものは、不思議なものだった

「……これって…おもちゃ、ですかね?」
「うーん、にしては重厚感があるな…」

ピッタリな表現は、灰色がかった金属で出来た“蛇型のロボット”
大きさとしては、トミカくらいの大きさの奴が70~80個くらい繋がってるような
キャタピラのついた箱状の物体が電車みたいに連なって、先頭車両にはドリルがついてる感じ
おもちゃにしては出来過ぎてるし、何よりこの“気配”
さっきから探ってるのだが、どうもゴチャゴチャしてて分かりにくい気配だ
こんな感覚は初めてだな……一体何なんだろう
あと気になったのが

「ん、これ、石が詰まってるな。壊れた部分に入り込んだのか」
「あ、ホントですねッてご主人様何を!?」
「大丈夫だよ、何も起こらないって」

俺は蛇型のロボットのボディに詰まった小石を取り除いた
その時だった
石を取り出した後の傷口が、何もなかったかのように見る見る内に復元…いや、“再生”と言った方が正しいのか?
とにかく、それは元の形に戻っていった
と同時に、蛇は起きあがり、キョロキョロと辺りを見回した
驚くミナワを庇うようにして、俺は彼女と一緒に立ち上がる
蛇はこちらを見据えると、暫くじっと睨むようにしていた

「ご、ご主人様…」
「待て、まだ大丈夫だ」
《……生体反応確認…該当Data,皆無》
「「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!」」

まさか喋るとは思ってなかったわ
いや、そりゃまぁこっちは変な生き物や変な剣が喋ったりするけどさ
しかし何やら怪しい雰囲気、どうやら俺達を敵と見做しているらしい

《目標補足……攻撃態勢移行》
「まーまー待て待て落ち着け、俺達は敵じゃない」
《問答無用》
「えらく武士っぽい奴だな……あれだ、俺達は一応恩人だぞ?」
《……恩,人?》
「あの、ご主人様?」
「まぁ、俺に任せとけ
 そうそう恩人だ恩人、何かゴミが詰まってたからそれを取ってあげたんだ、そしたらお前は起きあがった
 ここに俺が来なかったら、永遠に動けないままだったぞ?
 ほら、そんな物騒なもん仕舞って、何か話そうや、平和に」

金属の蛇は暫し悩んでいるようだったが、
機関砲らしきものを下げると、ゆっくりとこちらに近づいてきた

《……会話mode移行………移行,完了
 救助サレタ事,恩ニ着ル,デアリマス》
「お、ちゃんと喋れるのか、ちょっとあれだけど
 礼なんて良いよ、それより分かって貰えて何よりだ」
「す、凄いですね……あの、お名前とかあるんですか?」
《形式番号ハ,β10-MidgardSchlange-ArtificialIntelligence+MicroSystem-MachineGun+BearingBallet-Land&Sea-1935228,デアリマス》
「………へ?」
「うん、もう1回言ってくれ」
《β10-MidgardSchlange-ArtificialIntelligence+MicroSystem-MachineGun+BearingBallet-Land&Sea-1935228》
「よし分かった、β10-MidgardSchlange-ArtificialIntelligence+MicroSystem-MachineGun+BearingBallet-Land&Sea-1935228?
 面倒だからビオで良いな?」
《ビオ? 自分ハβ10-MidgardSchlange――――》
「良いんだよ、お前は今日からビオ! 少なくとも俺はそう呼ぶぞ!
 俺は黄昏 裂邪だ、宜しくな」
「わ、私はミナワと申します」
《……理解不能,何故貴官ノ名ヲ明示スル,デアリマスカ?》
「面白い事訊くなぁ、気に入ったぞ、俺と契約しようぜ」
「ご主人様!?」
「冗談だよ; そりゃあビオあれだよ、もう俺達は友達だろ?」
《友達?》
「そ、お前は俺達に名前教えてくれたんだし、そのお返しに俺達も名前教えただろ?
 互いに自分の事を教えあうってのは、相手を信じてるってことだろ?
 お前は俺の事を信じてくれたから、俺達もお前を信じてる
 なら、俺達はもう友達じゃん」
(何だか強引な気もしますけど;)
《……貴官ハ人間,自分ハ機械,デアリマスガ》
「関係無いよ、俺なんかみょうちくりんな生物と人魂が家族だぜ?」
「そ、それは理夢さんとウィルさんが可哀想です…」
「ごめん、後で謝っとくわ、In my heart」
「心の中でですか!?」

ヒヒヒ、と笑っていると、ビオは何だか訳が分からなさそうに首(?)を傾げていた
こうして見ると案外可愛いかも知れん

《……理解不能……シカシ興味深イ,デアリマス》
「そうか、じゃあ―――――――」

もっと色々話したかったんだけどなぁ
何かに気づいたように、ビオは咄嗟に反対方向を向いた

《…通信受信……了解,直チニ帰還スル,デアリマス》
「帰還?」
「何だ、帰っちまうのか……まだ名前しか聞いてないのになぁ」

呟くと、ビオはちらとこちらを見た

《……Tasogare Retsuya…Minawa……input完了》

とだけ言い残して、ドリルで穴を開けてその場から姿を消した
山に残ったのは小さな穴だけ
でも、その姿だけは、俺の目と、心に強く残った

「……ご主人様、どうして“ビオ”なんですか?」
「ん、あぁ、特に深い意味は無いんだけどさ
 最初に“β10”って言ってただろ? それで、1文字ずつ似た形のアルファベットに置き換えたんだ
 βはB、1はI、0はO…“BIO”、これでビオになる……それと、」

茂みから出て、もう一度夕陽を見に行った
もう燐光程度しか見えない、完全に沈む一歩手前だった

「何かさ、機械に機械っぽい名前つけるのって嫌じゃん?
 それにあいつ、何か機械っぽく思えなかったんだよな
 あれが一種の生き物みたいに見えたんだ」
「生き物、ですか?」
「うん、心を持った生き物に
 まだちょっと不安定だけど、いつかきっと感情豊かになるんじゃないかな
 そんな願いも込めて…『バイオ(生物)』から取ってみた、なんてね
 あーやっぱ俺ネーミングセンスないよなーw」

「『電王』の見過ぎかな?」等と自嘲していると、後ろから優しく抱きしめられた
そのまま俺はゆっくりと振り返ると、彼女は笑っていた

「裂邪の名前、とても良いと思いますよ?
 私にくれた“ミナワ”という名前も、私はとても大好きです♪」
「…そっか、有難う、ミナワ」

そっと、俺は彼女を抱き返した
夕日は完全に沈んだ
昼が終わり、夜が始まる

「子供が生まれたら、その子の名前も裂邪が考えて下さいね♪」
「むぅ、困ったなぁ、何人生まれるか分かったもんじゃないし」
「それどういう意味ですかぁ///」
「ウヒヒヒヒヒw まぁ、まずは子作りの練習だな」
「さっきの続き、ですね…それじゃあ、早くぅ♪」
「分かった分かった」

ようやくこの時が来た
闇の中でもはっきりと見えるあどけない唇に狙いを定め、
俺は己の唇を、彼女のそれに近づけた――――――

「早ク帰ルゾ、モウスグ夕飯ダ」
「寝る前にしよっか;」
「そうですね;」

こうして、俺の一日は幕を閉じる


   ...To be Continued

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