「組織」
第×区画内 第126番通路
第×区画内 第126番通路
「レンコ、ちゃん?」
口の中がからからに乾いている
喉の奥から出て来たのはかすれた小さな声だ
喉の奥から出て来たのはかすれた小さな声だ
暗い通路、狂女の哄笑の中で、レンコは乱堂の方へと顔を向けた
「いっ……嫌っ、凛々さん、見ないでっ!」
肩口、いや、切断されたもとをもう一方の手で押さえ
まるでこちらに見せないかのように身を捩り、後退り出した
彼女の肌や顔を覆っていた包帯は所々血で赤く染まり、
顔の緩んだ隙間からは恐れに歪んだ表情が垣間見えた
広がり始める血溜まりの中でビクビク蠢いている斬り落とされた片腕と、
中空を舞う、白や赤に染まった包帯の断片
まるでこちらに見せないかのように身を捩り、後退り出した
彼女の肌や顔を覆っていた包帯は所々血で赤く染まり、
顔の緩んだ隙間からは恐れに歪んだ表情が垣間見えた
広がり始める血溜まりの中でビクビク蠢いている斬り落とされた片腕と、
中空を舞う、白や赤に染まった包帯の断片
全てが、遅くなる
時の流れが、滞り始める
時の流れが、滞り始める
なんで、レンコちゃんがこんな目に合わなあかんねん
……分かっとるわ、そんなん。せやけど、「そんなん当たり前」って
ふざけたハリボテの括りの中にぶち込まれたら、流石に、ウチは、ウチだってなあ――
……分かっとるわ、そんなん。せやけど、「そんなん当たり前」って
ふざけたハリボテの括りの中にぶち込まれたら、流石に、ウチは、ウチだってなあ――
滞った時が、爆発する
「ふ――ッ!」
一気に呼気を吐き出し、地を蹴って狂女へと突進する
相も変わらず笑い続ける少女の懐へ、潜り込む
相も変わらず笑い続ける少女の懐へ、潜り込む
「あ゛はwwwwwww凛rたンwwwwいツ来たのwwwwww」
瞳孔が開きっ放しになっているのが嫌でも分かる
獰猛に尖った歯が上下に唾液の糸を引いているのが見えた
乱堂はぁーみるを睨み上げながら両の手で彼女の脇腹を内側へと捩じるように叩き込んだ
一瞬、笑いが止まって微かな呻き声が聞こえる
獰猛に尖った歯が上下に唾液の糸を引いているのが見えた
乱堂はぁーみるを睨み上げながら両の手で彼女の脇腹を内側へと捩じるように叩き込んだ
一瞬、笑いが止まって微かな呻き声が聞こえる
「ヒーローが疲労、失踪しそう
アンタの内蔵はないぞう、心臓の音もしんぞう
でも肋骨六個潰すつもりで、爪が冷たい、ダジャレも冷たい」
アンタの内蔵はないぞう、心臓の音もしんぞう
でも肋骨六個潰すつもりで、爪が冷たい、ダジャレも冷たい」
効いていない
笑いは止まっている。だが、効いてはいない
乱堂は直感していた
普通の相手なら、冷気によって身体能力が低下し
身動きが取れなくなる。だが、コイツは違う
掴み込んだ脇腹からパリパリと手応えが返ってくる
間違いない。コイツは抵抗する事ができる
能力の効果に対して、抵抗する事ができるのだ
笑いは止まっている。だが、効いてはいない
乱堂は直感していた
普通の相手なら、冷気によって身体能力が低下し
身動きが取れなくなる。だが、コイツは違う
掴み込んだ脇腹からパリパリと手応えが返ってくる
間違いない。コイツは抵抗する事ができる
能力の効果に対して、抵抗する事ができるのだ
不意に、乱堂の周囲を黒い気配がかすめた
ぁーみるが能力を発動したのか
切り刻まれる、乱堂は身を硬くした。が、
切り刻まれる、乱堂は身を硬くした。が、
「姉御ォッ! ソイツの手足は封じ込めましたぜっヤるなら早くゥッ!」
後方からNo.875の声が響いた
その時初めて、ぁーみるの手足に細い体毛が何本も絡まり
彼女の動きを拘束しているのに気がついた
No.875が鼻毛の能力を発動させたのだろう
その時初めて、ぁーみるの手足に細い体毛が何本も絡まり
彼女の動きを拘束しているのに気がついた
No.875が鼻毛の能力を発動させたのだろう
「ハナゲェッ! レンコちゃんとそっちの姉ちゃん連れて早よ逃げェッ!」
「姉御はッ!?」
「後から行くゥッ!!」
振り返りもせず絶叫し、乱堂は両の手に更に力を込めた
「驚異の胸囲、奇怪な機会
校長は絶好調、ウチは絶不調
でも、名誉挽回で姪、呼ばんかい」
校長は絶好調、ウチは絶不調
でも、名誉挽回で姪、呼ばんかい」
己の幼気を、薄く、何処までも、長く、長く、長く
「血行が良くて結構、頭を温めたら、あったまった
ヤケドしたいんやけど低温やけど
言い訳してもいいわけ、理想に走ろう、夢の話はもう言ーめー
コントはまた今度に、でもギャグは逆効果
――そんなダジャレを言うのはだじゃれ?」
ヤケドしたいんやけど低温やけど
言い訳してもいいわけ、理想に走ろう、夢の話はもう言ーめー
コントはまた今度に、でもギャグは逆効果
――そんなダジャレを言うのはだじゃれ?」
駄洒落、というより、低く、静かな調子で、呪詛の様に唱えられたそれは
能力を発動させており、既に通路は冷えに冷え切っている
――ぁーみるが笑い出しているにも関わらず
能力を発動させており、既に通路は冷えに冷え切っている
――ぁーみるが笑い出しているにも関わらず
「効かないwwwwwww効かないよwwwww凛々tんwww」
「それでええ――計算通りや」
それだけ告げると、乱堂は、ぁーみるを両の手で突き飛ばした
呆気ないほどに、ぁーみるの身体は通路の彼方へと猛スピードで滑って行った
呆気ないほどに、ぁーみるの身体は通路の彼方へと猛スピードで滑って行った
「あ゛はwwwwwあはははwwwwww凛々t――mしrwww――」
どっと疲れが押し寄せる。肉体的なものだけではないだろう
思わず口から息が漏れた。息は白い煙となって乱堂の口から吹き出された
思わず口から息が漏れた。息は白い煙となって乱堂の口から吹き出された
特別な事はしていない
ぁーみるそのものに効かないのだから、通路を冷却したのだ
幼気によってその速度と効果を倍加させて
しかし、幼気をそれだけに使ったわけでも無かった
乱堂は、通路地面へと可能な限り引き延ばし、氷の表面を再現しようとした
摩擦係数をゼロへと近づけるために
それによって、突き飛ばし、ぁーみるを滑走させ、距離を取って逃げの時間を稼ぐという算段だ
そうでもしてあれを退けない限り、いずれは鎌鼬の能力で部下諸共消されていた筈だ
ぁーみるそのものに効かないのだから、通路を冷却したのだ
幼気によってその速度と効果を倍加させて
しかし、幼気をそれだけに使ったわけでも無かった
乱堂は、通路地面へと可能な限り引き延ばし、氷の表面を再現しようとした
摩擦係数をゼロへと近づけるために
それによって、突き飛ばし、ぁーみるを滑走させ、距離を取って逃げの時間を稼ぐという算段だ
そうでもしてあれを退けない限り、いずれは鎌鼬の能力で部下諸共消されていた筈だ
今、あれは手足を拘束されて、滑るだけ滑っているだろう
止まる事を知らないスケートのようにずっと
逃げるのならば、今だ
止まる事を知らないスケートのようにずっと
逃げるのならば、今だ
乱堂は、踵を返す
一人の女性を抱え、一人の女子を引いて走るNo.875の姿を見止めた
彼女は自分の足元に幼気を広げた――一瞬、眩む
何度も幼気を使っている所為だ、これ以上の濫用は危ない
スケートの要領で地面を蹴る。No.875を追う為に
一人の女性を抱え、一人の女子を引いて走るNo.875の姿を見止めた
彼女は自分の足元に幼気を広げた――一瞬、眩む
何度も幼気を使っている所為だ、これ以上の濫用は危ない
スケートの要領で地面を蹴る。No.875を追う為に
「ハナゲェェッ!! ロビィに連絡入れぇぇぇぇッ!!」
声を張り上げ、先行する部下に指示を出す
No.875が走るのを止めた。端末を弄っているらしい
No.875が走るのを止めた。端末を弄っているらしい
「姉御ッ!プロテクトが掛かってます!音声入力でどうぞッ!」
もうNo.875の所へ近づいて来ていた
彼はこちらへと端末を突き出している
彼はこちらへと端末を突き出している
「音声入力ゥ? ああ、あれかァッ!!
こちらR-No.8、乱堂凛々ィッ! 上位回線への接続を要請ィッ!
コードは*****-*****-*****-*****-*****!! とっととロビィに繋げェェェェッッ!!」
こちらR-No.8、乱堂凛々ィッ! 上位回線への接続を要請ィッ!
コードは*****-*****-*****-*****-*****!! とっととロビィに繋げェェェェッッ!!」
疾走の速度を緩めることなく端末の向こう側へと絶叫する
『どうしたの凛々ちゃん!? 何かあったの?』
スピーカーモードになっているらしい端末からは、直後、よく知った声が響いてきた
同僚の、ロビィことロベルタ・リベラだ
同僚の、ロビィことロベルタ・リベラだ
「ロビィッ! ウチらを迎えに来たってッ! 座標情報は送信した通りやッ早よォッ!!」
『どうしたの凛々ちゃん? アタシ今ライサちゃんと一緒に医務局に遊びに来てるん――』
「ライサちゃんも一緒ォッ!? なら好都合やッ! 重傷者が居るから早よォォッ!!!!」
ブレーキを掛けるように片足を突き出し、No.875の前で乱堂は急停止する
「ハナゲッレンコちゃんの腕はッ!?」
「此処にッ!」
ずいと突き出されたのは、レンコの斬り落とされた片腕だ
「とりあえずやっつけやけど、――歯科医師の仕返し」
切断面に幼気を纏わせ、効果をかなり弱めにかける
「レンコちゃん、怪我を見せて――レンコちゃん?」
乱堂はレンコを見上げる。彼女は黙って乱堂へと身体を向けていた
包帯の隙間、顔のある場所からはぽたぽたの雫が落ちている
ようやく、レンコが泣いている事が分かった
包帯の隙間、顔のある場所からはぽたぽたの雫が落ちている
ようやく、レンコが泣いている事が分かった
「凛々さん、あの、私、私やっぱり駄目で」
「レンコちゃん、あのな、あの」
「ごめんなさい、私……私、その、やっぱり役立たずで」
「レンコちゃん」
自分より背の高い部下を、抱きしめてやる
「ウチな、レンコちゃんの事、役立たずなんて思った事ない
レンコちゃんだけやない、ハナゲの事も、みんなの事も」
レンコちゃんだけやない、ハナゲの事も、みんなの事も」
「でも、私」
「レンコちゃん、謝るのはウチや。ウチがもう少ししっかり頭回してれば」
「ああ、ああもうストップ! ストップですぜ姉御もレンコも! 早く運び出しましょう! さあ!」
「な、何がどうなってるの?」
No.875の方を見ると、何もない空間からロベルタの上半身が飛び出ていた
表情からして軽く困惑しているらしい
表情からして軽く困惑しているらしい
「凛々ちゃんが怒鳴ってるもんだから、何事かと思って来たんだけど何がどうなって……
あ、レンコちゃん、久しぶりー。え、レンコちゃん、そ、その腕……何があったの!?」
あ、レンコちゃん、久しぶりー。え、レンコちゃん、そ、その腕……何があったの!?」
「あー、リベラさん急いでレンコとこっちのPナンバーの子を運び出してくれないすかね
俺、こんなおっかない場所に居たくないんで! 割と本気でッ!!」
俺、こんなおっかない場所に居たくないんで! 割と本気でッ!!」
「そ、そうや! 急がな!」
No.875が女性を抱え直し、ロベルタの居る空間へと運び入れようとした、その時だった。
「――あはwwwwwあ゛はははwwwwwww――あははあはあwww」
通路の闇の向こう側から、何かが急速に接近してきている
「だあああッ! マズいッ! アイツが来てやがる!!」
「あああ、あの、あの声は、何なの? ねえ何なの凛々ちゃんッ!?」
あれがこちらへと来ている
乱堂は、眼を闇の奥へと向けた
あれがまた、こちらへと近づいている
乱堂は、眼を闇の奥へと向けた
あれがまた、こちらへと近づいている
不意に、意識が身体の奥へと引き込まれるのを感じた
眼の前が、暗くなる。足元の感覚も、無くなっていった
16:58
「組織」本部
中立派 中央医務局
中立派 中央医務局
不意に乱堂は、自分が長椅子に座っている事に気付いた
身体中が重い。ぼんやりした感じで、何も考えたくない
彼女はおもむろに首を動かそうと
身体中が重い。ぼんやりした感じで、何も考えたくない
彼女はおもむろに首を動かそうと
「痛っ」
痛みが走った。恐る恐る、身体を動かして周囲を見回す
白い部屋だった。病院を思い起こさせるような
薬棚が据え付けられた壁面と、部屋の四隅に置かれたベッドがあった
どうやら自分は部屋の中心に居るらしい
眼の前のテーブルには開かれた救急箱と、薬瓶が二つ三つ、
そして、血の付いたガーゼやテープ類のセロハンが散乱している
白い部屋だった。病院を思い起こさせるような
薬棚が据え付けられた壁面と、部屋の四隅に置かれたベッドがあった
どうやら自分は部屋の中心に居るらしい
眼の前のテーブルには開かれた救急箱と、薬瓶が二つ三つ、
そして、血の付いたガーゼやテープ類のセロハンが散乱している
「お、気付いたか凛々ちゃん」
部屋のドアがスライドし、二人の女の子が揃って入ってきた
「凛々お姉様、大丈夫?」
一人が早足で近づいてくる。深みのある青の髪、大きな花飾りを付けた少女だ
少女は乱堂の眼を覗きこんだ
乱堂は何か話そうと口を動かそうとした。息だけが漏れる。声は出ない
少女は乱堂の眼を覗きこんだ
乱堂は何か話そうと口を動かそうとした。息だけが漏れる。声は出ない
「ライサちゃん、今は凛々ちゃんすっごく疲れてるから喋れないかもだよ」
「本当? 凛々お姉様?」
ライサと呼ばれた少女が、乱堂の同僚である事は勿論知っている
その横に、もう一人の少女が寄ってきた
赤みがかったショートヘアに、リンゴのように染まった頬が妙に印象的だ
ライサと並ぶと、身長が低いためか、姉妹か何かのようにも見える
二人とも手術着のような青い服を着ているが、どこか不釣り合いにも思えた
その横に、もう一人の少女が寄ってきた
赤みがかったショートヘアに、リンゴのように染まった頬が妙に印象的だ
ライサと並ぶと、身長が低いためか、姉妹か何かのようにも見える
二人とも手術着のような青い服を着ているが、どこか不釣り合いにも思えた
「しっかし凛々ちゃん、あんな危ないの相手によく逃げきったね、正直に言わせてもらうゾ」
ふんす、と赤髪のチビは鼻息を吐き、腕を組んで話し始める
「あのぁーみるって子ね、10年くらい前かな、派閥関係なしで黒服狩りをしてた一人なの
ぁーみるって子にかかった黒服は、まず生きて帰れないよ。防御性能を高く調整してある黒服だって
あの子の鎌鼬で胴から両断寸前まで持っていかれてたからね。一昔前はすっごく恐がられてた存在だよ。聞いた事ない?
でもまあ、暗黒面で動いてた事もあってか表沙汰になる事なく、事態を重く見た当時の上層部が処分を下して、
確か、封印されたんじゃなかったっけな。そんなのが何で今頃、ってのはあるけど、今回はあんな黒服相手によくぞ、って感じだね」
ぁーみるって子にかかった黒服は、まず生きて帰れないよ。防御性能を高く調整してある黒服だって
あの子の鎌鼬で胴から両断寸前まで持っていかれてたからね。一昔前はすっごく恐がられてた存在だよ。聞いた事ない?
でもまあ、暗黒面で動いてた事もあってか表沙汰になる事なく、事態を重く見た当時の上層部が処分を下して、
確か、封印されたんじゃなかったっけな。そんなのが何で今頃、ってのはあるけど、今回はあんな黒服相手によくぞ、って感じだね」
「凛々お姉様、本当に大丈夫?」
泣きそうな顔でライサが尋ねてくる
乱堂は、大丈夫や、と口を動かして笑いかけようとした。上手く行ったかは分からない
乱堂は、大丈夫や、と口を動かして笑いかけようとした。上手く行ったかは分からない
「とにかく今夜は上層部が揉めに揉めそうだゾ。あ、それから、ローゼさんと蓮華ちゃんがてんやわんやしてたけど
あたしが言いくるめておいたから、凛々ちゃんが直接行って報告した方がいいかも
すっごく煩くなりそうだから、此処に居るって事は伏せておいたゾ」
あたしが言いくるめておいたから、凛々ちゃんが直接行って報告した方がいいかも
すっごく煩くなりそうだから、此処に居るって事は伏せておいたゾ」
後はえっとねー、と思案する赤髪の黒服に対し、乱堂は一番聞きたい事を尋ねようとした
口だけ動かす。レンコちゃんとPナンバーの子はどうなった?
口だけ動かす。レンコちゃんとPナンバーの子はどうなった?
「うん? ――あああの二人? 大丈夫大丈夫! 二人ともズタズタにされてたけど
外傷はライサちゃんがしっかり治したし、あたしも二人の腕をしっかりくっつけといたから
レンコちゃんの腕、冷やしてくれといてありがとね。まあ、二人とも綺麗にすっぱり斬られてたから
作業はやりやすかったけどねー。今は大事を取って治療室にブチ込んでるけど、レンコちゃんの方は明日の朝には復帰できそだよ」
外傷はライサちゃんがしっかり治したし、あたしも二人の腕をしっかりくっつけといたから
レンコちゃんの腕、冷やしてくれといてありがとね。まあ、二人とも綺麗にすっぱり斬られてたから
作業はやりやすかったけどねー。今は大事を取って治療室にブチ込んでるけど、レンコちゃんの方は明日の朝には復帰できそだよ」
それを聞いて力が抜けてしまった
どうにか一段落着いた、といったところか
どうにか一段落着いた、といったところか
「お姉様?」
「ああ……あー、ライサちゃーん。悪いんだけど
あたしと一緒に手術室のお片づけ、頼めるかな? 人手足んなくて困ってるんだゾー」
あたしと一緒に手術室のお片づけ、頼めるかな? 人手足んなくて困ってるんだゾー」
ライサの両肩に手を掛けて、赤髪の黒服はグイグイ外へと押して行った
「落ち着いたら行っていいからね」
赤髪はそれだけ言い残して、出て行った
二人は、大丈夫らしい
そう言えば、ロビィとハナゲはどうしたのだろう
乱堂は、ぼんやりした頭で、考えを巡らせようとした
二人は、大丈夫らしい
そう言えば、ロビィとハナゲはどうしたのだろう
乱堂は、ぼんやりした頭で、考えを巡らせようとした
まだ、終わっていないのだ
過去に聞いた事があるような事件、でも記憶にはない
また様々な記録をひっくり返す事になりそうだ
そして、ぁーみるの行方を追う必要も出てくるだろう
まだ終わりではない。これからが何かの始まりだ
過去に聞いた事があるような事件、でも記憶にはない
また様々な記録をひっくり返す事になりそうだ
そして、ぁーみるの行方を追う必要も出てくるだろう
まだ終わりではない。これからが何かの始まりだ
それでも。乱堂は、安堵していた
部下が死ななかった。助けようとした黒服も死ななかった
現時点では、それだけの話だ
部下が死ななかった。助けようとした黒服も死ななかった
現時点では、それだけの話だ
不安はある
今回と似た事は、これまでもあったし、これからも起こり得る
乱堂は、少し、頭を垂れた
今回と似た事は、これまでもあったし、これからも起こり得る
乱堂は、少し、頭を垂れた
「ウチは泣かない」
普段より低く、唸るような、かすれた声が喉の奥から出てきた
同時に、咳きそうな感覚を催す
同時に、咳きそうな感覚を催す
「ウチは、泣かないと、決めた」
この感情が何処から湧いてくるものか、乱堂自身、分からずにいた
「せやけど、心の中に振る雨は、止められへん」
しかし、彼女は――
「なら、ウチは」
頭を上げた乱堂の瞳には、これまでに彼女が見せた事のない、硬く、鋭い光が宿っていた
17:12
「組織」外部
No.875は二個目のチュッパチャプスを噛み砕いた
彼と、R-No.6、ロベルタ・リベラは「組織」本部の外に出ていた
傾いた西日が眩しいぜ、畜生。No.875は口内に広がるライチ味を噛み締めながら空を仰いだ
あの後、No.875は硬直したままだった乱堂を担ぐ様にしてリベラの形成した空間へと押し入り、
すんでの所で空間の接続を解除したのだった。あの狂った魔法少女はすぐ近くまで迫ってきていた
もう2、3秒遅ければどうなっていたのかは分からない
傾いた西日が眩しいぜ、畜生。No.875は口内に広がるライチ味を噛み締めながら空を仰いだ
あの後、No.875は硬直したままだった乱堂を担ぐ様にしてリベラの形成した空間へと押し入り、
すんでの所で空間の接続を解除したのだった。あの狂った魔法少女はすぐ近くまで迫ってきていた
もう2、3秒遅ければどうなっていたのかは分からない
「でも――まさか、ぁーみるちゃんだったなんて」
「知ってるんすか」
「有名と言えば有名だよ。ローゼさんも抑え込むのに動いた事あったんじゃなかったかな
なんで今頃……。最近になって、て事は、やっぱりx-No.の件と関係あるのかな」
なんで今頃……。最近になって、て事は、やっぱりx-No.の件と関係あるのかな」
「分かんねーすね」
鼻に貼りつけられた大きなガーゼが邪魔で仕方ない
が、外す訳にもいかなかった。医務局のM-No.225と我らがプリンセスであるR-No.10に
二人がかりで消毒された挙句、No.10から外しちゃ駄目ですなんて上目遣いで言われた日にはもう――
が、外す訳にもいかなかった。医務局のM-No.225と我らがプリンセスであるR-No.10に
二人がかりで消毒された挙句、No.10から外しちゃ駄目ですなんて上目遣いで言われた日にはもう――
「×××クン、ローゼさんの所に報告に行かなくていいの? なんなら送るよ?」
「やー、今はいいす。もう少し外の空気吹いたいですし」
そっか、とだけ言ってリベラは沈黙した。途端に静かになる
ちらりと横目で覗うと、普段の彼女とは違い、少し落ち込んでいるようにも見えた
ややあって、No.875は尋ねた
ちらりと横目で覗うと、普段の彼女とは違い、少し落ち込んでいるようにも見えた
ややあって、No.875は尋ねた
「心配っすか、姉御の事」
「一応、ね。長い付き合いだけどさ」
息を吸い、少しだけ止めて、吐き出す。ライチの味が肺にまで及んだ気がする
「向日葵は綺麗ですよ。夏の匂いがする」
「どしたの突然」
「何と言えばいんすかね、向日葵は綺麗で頑丈なんすけど、ボッキリ折れたら二度とは元に戻らない
それでも、そう簡単には折れない事も、まあ分かっちゃいるちゃあ、分かってはいるんすけどね
向日葵を守るための雑草でありたい、てのは、我儘かも知れないかもしれませんがね」
それでも、そう簡単には折れない事も、まあ分かっちゃいるちゃあ、分かってはいるんすけどね
向日葵を守るための雑草でありたい、てのは、我儘かも知れないかもしれませんがね」
「言ってる意味が分かんないかも。どういう事それ?」
そういう事っす、と返すと、リベラは困ったような笑みを見せた
後方支援班――。「組織」を形成するユニットの一つに過ぎないかもしれない
その中にあって、酔狂で馬鹿をやってきた訳ではない。班長の飛ばす寒いダジャレだってそうだろう
その意味で、俺は、俺達は、単なるシステムの歯車というだけでは、無かった筈なのだ
班長の背を見て、追い従うのではなく、班長と歩みを共にしようと、これまでに何度誓ってきたのか
これからどうなる事やら、という不安は勿論ある。それでも、これから先もそうでありたいと、本当にそう思う
その中にあって、酔狂で馬鹿をやってきた訳ではない。班長の飛ばす寒いダジャレだってそうだろう
その意味で、俺は、俺達は、単なるシステムの歯車というだけでは、無かった筈なのだ
班長の背を見て、追い従うのではなく、班長と歩みを共にしようと、これまでに何度誓ってきたのか
これからどうなる事やら、という不安は勿論ある。それでも、これから先もそうでありたいと、本当にそう思う
No.875は再び空を見上げた
朱に染まった空は、何処までも澄んでいて、何処までも遠かった
朱に染まった空は、何処までも澄んでいて、何処までも遠かった