「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 神力秘詞-12

最終更新:

Retsuya

- view
だれでも歓迎! 編集
「っはぁ、はぁ……はぁ………こ、ここ、かな………」

手を膝につけて息を切らす少女、のように見える少年――神崎 漢が辿りついたのは、とある病院だった
以前海水浴の時に知り合った「組織」のR-No.0―というのは彼も知らないのだが―であるローゼ・ラインハルトから、
『大事な話がある』と連絡を受け、大急ぎでここまで走ってきたのだ

「麻夜と、裂兄ぃのことで、って……2人に、何かあったって事………?」

頭の中で沸々と湧きあがる不安と恐怖
それらを何とか振り払おうと、ぶんぶんと頭を左右に振って、
「よし、」とだけ呟き、一歩前に踏み出した
その直後

「漢兄ちゃん!」
「え……せ、清太くん?」

肩まで伸びた髪を乱しながら漢の元に走ってきたのは、
この季節に半袖半パンという如何にも活発そうな格好の少年――水無月 清太だった

「す、すっごく嫌な予感がして、ここまで走ってきたんだけど……
 漢兄ちゃん、ここに何があるか知ってるのか?」
「え、いや、その……僕は、ローゼさんに呼ばれて、今来たところだから………」
「そうだったんだ――――あれ、麻夜姉ちゃんは?」
「うん、その麻夜についての話を」
「お前だな、神崎 漢は」

知らない少年の声
その声に反応して、2人は病院の方を見た
入口の自動ドアの前に立っていたのは、黒スーツを着た、清太と同い年くらいの、髪の短い少年だった

「え、えっと……君は……?」
「来い。中でローゼさんと……黄昏 裂邪が待っている」
「ッ!? れ、裂兄ぃが……あ、あの、麻夜は?」
「…自分で確かめろ」

くいっ、と指で誘うようなジェスチャーをし、少年は自動ドアをくぐって院内に戻った
しかめっ面を浮かべながら、清太は不機嫌そうに尋ねた

「何だよあいつ、感じ悪いな……漢兄ちゃん、どうすんの?」
「……確かめなきゃ。裂兄ぃと麻夜に、何があったのか………」
「…そうだよな。ねぇ、俺もついていって良いかな?
 俺も、この悪い感じの正体を知りたいから」

一瞬だけ笑みを見せて頷くと、すぐに真剣な表情に戻り、
漢は清太と共に、少年の後を追って自動ドアをくぐった









                【 神 力 秘 詞 】
              十二之巻 ~人 類 滅 亡~



かつん、かつん、と甲高い音が幾つも廊下に響き渡る
病院というものはどうも静かで、何処か殺伐とした雰囲気が漂っており、あまり好きに慣れない人間も多い事だろう
漢も清太もそういうタイプの人間であり、身体中の緊張を何とか解そうと考え、
黙々と先導している少年に、漢が代表して話しかけた

「あ、あの……その………えっと………」
「…栄 日天だ」
「ロン、リーティエンさん、ですか? か、変わったお名前、ですね」
「そうか?……まぁ、オレ達からすれば、日本人の名前も十分変だと思うが」
「え、兄ちゃん外国人なの? にしては日本語上手いね」
「……何年生きてると思ってるんだ」
「へ?」
「は?」

驚きとも、納得がいかないようにも思える声を出して、2人は首を傾げた
ちらと振り向いて、少年――日天は反応を伺って、口を開く

「……もしかしてお前等、ローゼさんから何も聞いてないのか?」
「ろ、ローゼさんと、何か関係があるんですか?」
「…分かった、今の事は忘れろ」

日天は前を向くと、また黙って歩き始める
小さな声で「しまった」と呟いた気がしたが、恐らく気のせいだろう

「……着いたぞ。この部屋だ」

ぴた、と歩を止める日天に習って、漢達も立ち止まった
番号札は、404号室
声に出して、漢は疑問の色を浮かべた

「? 漢兄ちゃん、どしたの?」
「…日本の病院って、『4』は殆ど使いません、よね?」
「鋭いな。この階は一般人は来られないようにしてある」

こんこん、と日天が扉を叩く

「R-No.3。神崎 漢、並びに………」
「あ、俺、水無月 清太」
「……水無月 清太というおまけを誘導しました」
「おまけ!?」

部屋の中から「どうぞ」とだけ聞こえ、日天はドアノブを捻って扉を開けた
息を飲み、部屋に踏み入ろうと一歩前に出ようとした漢
だが、その前に目だけが先走り、部屋の光景を見て驚いた

「―――――――――――裂兄ぃ!?」

ベッドに寝込み、点滴を受けている彼――裂邪の傍に駆け寄る漢
彼に続いて清太も、まだ信じられないといった表情で見ていた

「う、嘘だろ……師匠が、どうして………」
「こんなの…一体、誰がこんな事を…?」
「「マヤの予言」、ですわ」

声がした方を見ると、赤い長髪を揺らす黒服の少女――ローゼ・ラインハルトが立っていた
その背後には裂邪の弟の正義と、その契約都市伝説「恐怖の大王」
そして、酷く沈んだ表情をしている裂邪の契約都市伝説の面々がいた

「ローゼ、さん……?」
「「マヤの予言」って…あの人類滅亡説の!?」
「今日…10月28日は、その予言が成就される日だから、それが現れたみたいなんだ
 それと戦って、お兄ちゃんは……」
「そんな……じ、じゃあ、麻夜は!? 裂兄ぃと一緒にいた筈じゃ―――――」
「麻夜ちゃんは…「マヤの予言」、その本体である「太陽の暦石」の契約者にされてしまいました
 ……こんなことを言うのは嫌なのだけれど……裂邪さんを傷つけたのは……」
「そ…そんな……そんな…………」

パニック寸前の状態で、頭を抱え涙声になり震える漢
だが、彼よりも先に

「―――――――――――ごめん、なさい………」

どさり、とその場に崩れ落ちる者がいた
裂邪と共に「太陽の暦石」と戦った、ミナワだった
彼女はスカートの裾を強く握りしめ、ぽろぽろと涙を零し始める

「私が………私が、弱かったから………皆の足を引っ張って……それで、麻夜ちゃんが……
 あや、さん…………ごめんなさい……………」
「ミナワ、ちゃん……」
「ぐすっ……私…………皆を守るって、約束したのに………」
「…自分ヲ責メルナ。力不足ダッタノハ……私モ、同ジダ」
「くっそ、自分が情けねぇぜ…ぁんで生かしやがったんだ、あの馬鹿主が……!!」
「面目ねぇ…面目ねぇ、漢の旦那……」
「み、みんな……」

きゅっと唇を噛みしめ、小さく首を左右に振り、
彼は無理矢理に笑顔を作って応える

「僕は、大丈夫だから。皆は麻夜を助ける為に頑張ってくれたんだもの
 ……ありがとう。弱くなんかないよ、君達はそんなに―――――――」
「弱いのは…………この、俺だ」

全員の目がベッドに向かう
上半身を起こし、酷く咳き込んでいる裂邪の姿がそこにあった

「裂兄ぃ…!」「師匠!」「っご主人様!」

慌てて、正義とローゼが彼の身体を押さえようと、
両肩を抑えてベッドに寝かせようと誘導する

「お兄ちゃん!そんな身体で起きちゃダメだよ!」
「正義さんの言う通りですわ! 今はまだ、安静にしてらして下さい!」
「ふ、ざけんな……俺の所為で麻夜が利用されるってのに………何で寝てなきゃなんねぇんだよ!!
 約束、したんだよ………! あいつに、プレゼント買って、帰って……漢と、一緒に……誕生日を………う、うぐっ!?」

真っ白なベッドが、鮮やかな紅に染まる
いよいよ漢も見ていられず、彼を宥めようとした

「っもう、いいよ、裂兄ぃ! そこまでしなくても………今は、自分の身体を大事にして―――」
「あ、や……」
「…?」
「ご………めん………約、束………守、れ……………なかっ………………」

裂邪の力が抜け、頭と腕がだらりと垂れ下った

「ご主人様ぁ!!」
「っ日天さん!今すぐライサちゃんと救護班を!」
「今やるところだ!……ライサ! 至急404号室に来てくれ!!」
「…裂兄ぃ……ごめんね、辛い想いをさせて……」

目に涙を浮かべる漢
だが彼は拳を握りしめ、涙を拭って再び裂邪を見据えた
その目は、どこか男らしい、勇ましい目付きだった

「……裂兄ぃの気持ちは、ちゃんと受け取ったよ
 麻夜は、僕が……絶対に、助けてみせるから」

彼は、強く誓った

「………ダガ、ドウシヨウト言ウノダ?」

暫しの間をおいて、問題を提起したのはシェイドだった
そのまま、彼は話を続ける

「相手ハ世界破滅系………ソレモ“10月28日”トイウ事モ相マッテ、奴ノ力ハ最大限発揮サレル筈ダ
 実際ニ拳ヲ交エ敗レタ事ヲ理由ニスル訳デハ無イガ………アノ「マヤの予言」ニハ到底太刀打チデキルトハ思エン
 仮ニ、コチラニ「恐怖の大王」ヤ「フォトンベルト」等、同ジ世界破滅系ノ都市伝説ガ揃ッテイルトシテモ、ダ」
「ッ…し、シェイド、んな言い方はねぇだろ」
「ですが、正論ではありますわ。それに、裂邪さんとの戦闘では、本気を出していないとも考えられます」
「“出せなかった”…とも考えられるがな」

被さるように話を振ったのは、大王こと「恐怖の大王」
深刻な表情で、その意味を語り始めた

「確か「太陽の暦石」は『猶予をやる』と言ったのだろう?
 その言葉と、少年の兄と戦闘した事実がどうにも引っかかる
 「ククルカン」共が人類を滅ぼす為に「太陽の暦石」の契約者を探していたのなら、
 契約者を手に入れた今、すぐにでもそれを実行すれば良い筈……少なくとも、俺ならそうしている」
「ということは………エネルギーを溜めている、みたいな感じかな?」
「断言は出来ん。が、はっきり言えるのは、あいつは“遊んでいる”と見た」
「……それが本当、だったら………もし本気を出したら、いつでも僕達を……ううん、世界中の人々を………」
「人々を救う…つまり人類滅亡を防ぐ……そんな素敵な方法が、もしもあったら………

全員が押し黙る
頭の中で、様々な方法を編み出しては破棄して、を繰り返し
部屋は溜息と唸り声、心臓の鼓動と心電図モニターの電子音が混ざり合ったものが響く
そして、それを打ち破る声は、意外にも小さかった

「……俺、知ってる」

それは、恐らくこの部屋で最も若い存在
水無月 清太のものだった

「せ、清太くん、何を……」
「知ってるんだよ、俺…人類滅亡を止める方法を!」


   ...物語猶続

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー