「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 夢幻泡影-72

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「何しに来たかって?……お前を殺しに来たんだ」

冷たく燃える紫炎に照らされ、裂邪は歩きながら静かに、ローゼにそう告げた
彼女は信じられないといった表情で目を見開いた
それでも彼を信じたいというローゼの気持ちは、言葉となって裂邪に投げかけられる

「っな、何かの間違いですわよね? 裂邪さんがそんなことする訳……
 やっぱり貴方はナユタに操られているんですわ!」
「くどいぞローゼ、俺は本気だ……お前も、俺を殺す気で戦え」
「………そんなこと、できる訳ありませんわ」
「そうか、なら遠慮なく」

裂邪は立ち止り、「ティルヴィング」を頭上高く持ち上げ、切っ先を天に向けると、
揺らめく紫炎を反射して邪悪に輝くその秀麗で仄かに紅く染まった剣の先で、ゆっくりと円を描いた
紫炎の軌跡で描かれた円は激しく燃え、天使の輪のように裂邪の真上に浮かび上がる

「…ナユタ、お前の力を借りるぞ」
『ギハハハハ…実に馬鹿げた話だ、殺人鬼に手助けを要求するなんてね』
「黙れ、それも今日限りだ!」

裂邪が剣を勢いよく振り下ろすと、「ティルヴィング」から紫の煙状のものが溢れ出し、
それを持っていた右手を伝って裂邪の身体全体を包み込む
と同時に、彼の上に浮いていた炎の輪が、ゆっくりと下降し始めた
裂邪の身体が、紫炎のリングをくぐってゆく
だが、リングをくぐって現れた者は、裂邪であり、裂邪で無い者
全体を覆っているのは「ヴァルプルギスの夜」の炎
めらめらと激しくも冷たく燃え滾る身体は、人間らしいというには程遠い
背に生えた翼や、目のような造形が施された頭部は、どちらかと言えば“昆虫”のようであり、
さらに、今まさに彼が金色のパスを取り出し、それを黄金色の剣に変えて構えれば―――その姿はまさに蟷螂

「……転生、天を廃して」
「ッ!? れ、裂邪さん……本気ですの!?」
「何度言わせれば分かるんだ? “僕”は君を殺しにわざわざここまで来たんだよ
 さあ……生きる為に抗って見せたまえよ!!」

翼を広げ、右手に「ティルヴィング」、左手に「レイヴァテイン」を携えて、裂邪はローゼに飛びかかった
蟷螂の両刃が、獲物を捕らえようとする

「っく…『フォトン・デュアルエッジ』!!」

咄嗟にローゼは両腕に赤い光の刃を作り出して、裂邪の剣を防いだ
バチッ、と激しい雷撃の音が洞窟内を木霊する
ローゼの瞳が、赤く燃え上がる

「ヒハハハハハ…やっと戦う気になったようだな」
「裂邪さん…ワタクシが必ず、貴方を正気に戻して差し上げますわ!」
「ほう、ならお手並み拝見と行こうか!」

互いに刃で押し合って距離を取る
足ではなく「ティルヴィング」を地面に突き立てて着地し、それを足場代わりに蹴って裂邪が先手を取った
迫りくる「レイヴァテイン」の刃をローゼはヒールの踵で弾いて、赤い刃を振り上げて反撃を狙う
しかし、裂邪が置いてきた「ティルヴィング」が飛来してそれを防ぎ、
彼はそれを手に取り地面を蹴って宙返りをしながら、「レイヴァテイン」で空を切って鎌鼬のような衝撃波を生み出す
対するローゼは指先から赤い光条を放って、裂邪が放った衝撃波と相殺させた
爆煙の中から、彼女は拳にフォトンを纏わせて振りかぶったが、
裂邪は紫の炎の壁を作ってその攻撃を止め、平然と後方へ退避した
ほんの僅かな時間の攻防
ローゼはその少しの間に、裂邪の動きを観察していた

(…これが都市伝説との“融合”……確かに“飲まれた”状態とは大きく違う…
 身体能力が大きく飛躍しているのは「憑依霊」であるナユタが融合した所為で…?
 いえ、あの「ティルヴィング」は独りでに浮遊した…まさか、魂を分割していると仰るの?)
「ウヒヒヒヒ、今まで戦ったどの都市伝説よりも、どの契約者よりも手応えがある
 流石はNo.0…いや、『赤い幼星』と評価しようかな?」

嘲笑うかのように、または挑発するかのように裂邪が言うと、
ローゼの表情に微かな憤りの色が見えた
彼女の眼も、赤みに深さが増す

「…いくら裂邪さんでも、その名で呼ぶ事は頂けませんわ!」

感情は彼女の身体を動かした
刃を光の弾に変え、裂邪目掛けて彼女はそれを掌から撃ち出した
彼は、炎の中で邪悪に笑った

「その攻撃、頂くよ」

右手の「ティルヴィング」の刀身を光弾に向けると、白銀の刃は光弾を纏って赤い光を放った
驚くローゼに追い打ちをかけるように、裂邪は「ティルヴィング」をぐるりと振り回して光弾を撃ち返した
裂邪の放つオーラの所為か、光弾の色は赤ではなく、炎と同じ禍々しい紫に変わっている

「ッ、『フォトン・ヴェール』!!」

赤いオーロラのような壁を作って、彼女は自らが放った攻撃から身を守る
2つの刃を持つ手をくるくると回して遊びながら、裂邪は笑っていた
まだまだ余裕だという事を強調したいのか
ただ単純に、戦闘を愉しんでいるのだろうか

「忘れていたようだね…僕は「エルクレスの塔」の能力も使えるんだ
 君の光子を使った遠距離攻撃は、僕の前では無力…ウヒヒヒ、残念」
「…なるほど、それでワタクシが不利だと仰りたいの?
 なら、近づけば良いだけですわ!!」

ローゼは再び両腕に刃を生成し、「フォトンベルト」の能力で遺伝子をいじって脚力を向上させ、
足場を砕く程に地面を蹴って裂邪との間合いを詰め、刃を構える
しかし彼女の前に、金銀2つの剣が迫った
反射的に防御の姿勢を取り、刃がぶつかり合う
そこで彼女は、余りにも奇妙な光景に声を漏らした

「………え!?」
「悪いけど、君は僕には近づけない」

そう、彼女は裂邪に接近していなかった
「ティルヴィング」と「レイヴァテイン」は彼の手を離れ、宙に浮いていたのだ
まるで、「透明人間」とでも拳を交えているかの如く不気味な感覚
流石のローゼも、驚きを隠せない

「そ、そんな……!?」
「「ティルヴィング」にはナユタの「憑依霊」が僅かに残っていてね
 そして「レイヴァテイン」は『独りでに浮遊する』という伝承がある
 別に僕が近づかなくても、君を斬り刻む事くらい簡単なんだよ」

ローゼは背に赤い翼を生やして飛翔し、2本の剣から離れた
が、剣は執拗に彼女を追い、刃と刃がぶつかり合う
それは寂しい鬼ごっこか、はたまた執念深い幽霊か
珍妙で奇天烈なその光景を、裂邪は愉しげに地上で傍観していた

「僕はあらゆるものを拒絶する……攻撃、言葉、友情、そして光さえも
 …あぁそうだ、まだ名前を考えていなかったが、今思いついたよ」

裂邪は闇を仰ぐように両腕を広げ、
嬉々とした、しかし狂気に満ちた調子で取り憑かれたように語り出す

「光を嫌った堕天使、傲慢の化身、宵の明星……
 そう、僕は地上に降りた悪魔の王……『リュツィフェール』」

大きく両手を動かす裂邪
彼の手の動きに合わせて、「ティルヴィング」と「レイヴァテイン」がローゼを襲う
戦闘という曲を奏でている指揮者のように
剣という糸でマリオネットを踊らせる操り人のように
時にしなやかに、時に激しく、時に慎重に、時に荒々しく
ただ、ローゼの隙を窺いつつ攻撃を咥えてゆく
彼女とてそれを易々と許す筈もない
2つの赤い刃を使い、赤い光の壁を作り、裂邪の猛攻を凌いでいる
現状から判断して、明らかに優勢なのは裂邪だった

「くぅっ、これじゃ2対1と大差がないじゃありませんの……!」
「ヒハハハハハ! そもそもタイマン自体僕の趣味じゃないのでね
 戦いは数が多ければ多い程、こちらが勝利を掴む確率があがる」

剣を撥ね退け、その隙に赤い翼を畳んで地上に降り、
裂邪に接近戦を挑もうとするが、黄金の刃がそれを阻んだ

「…質より量だと、そう仰るの?」
「そうじゃない。質の良い物を手に入れたとしても一つだけでは物足りないからね
 どうせなら、良質の物をより多く持っていれば……効率が良いだろう?」
「一体どうしてしまったの!? 今までの貴方は、そんな言い方はしなかった…
 シェイドさんやミナワちゃん達を、“物”扱いするような方じゃ無かった!!」
「どうしてだろうね、「ティルヴィング」を持つと身体の芯から湧き上がってくるようだ
 傲慢、嫉妬、殺意…邪心と呼ばれ、人に忌み嫌われる存在が沸々とねぇ!!」

宙に待機させていた「ティルヴィング」を手にし、
その切っ先を、「レイヴァテイン」を抑えているローゼに向けた
ぎらり、と剣が光を放ったのを、ローゼは見逃さなかった

「ッ!! 『フォトン・ヴェール』!」
「『トータラージーク』!!」

咄嗟に展開した光のカーテンが、「エルクレスの塔」の能力による紫の光条を遮った
ふぅ、と彼女は尚も「レイヴァテイン」と刃を交えながら、間一髪の出来事に溜息をついた

(これはフォトンを反射したものじゃない…
 きっと、「ヴァルプルギスの夜」で出現させた周りの炎が発するもの……
 この暗闇の中で、いつでも「エルクレスの塔」が発動できるようにする為、といったところかしら)

不意に、彼女は小さく笑った
今は敵として自分の前に立ちはだかっている裂邪を、一人の戦士として評価したのだ

「…流石ですわね、裂邪さん!」
「だが君はどうだね?」

え、と声を漏らす前に、彼女の腹部に激痛が走った
背中から貫通した白銀の剣が、ローゼの血に濡れて真っ紅になった刃を腹から露出させている
いつの間にか背後に回っていた裂邪は、「ティルヴィング」を容赦なく彼女の身体から引き抜き、
浮遊する「レイヴァテイン」を片手で受け取りつつ、剣を染めた鮮血を舌で舐めとった
そして、腹部と口から赤黒い血を吐きながら、ローゼは力無く膝から崩れ落ちた

「かはっ………!?」
「君は…本気で戦っていないだろう?」

地に倒れ伏したローゼの背を、裂邪は躊躇いなく蹂躙した
わざと傷口を踏み躙って、彼女の苦痛に満ちた叫びを聞きながら不気味に笑う

「っぁあああっ!? あ゙がぅっ!?」
「ヒハハハハハ……どうしたローゼ君、この程度でダウンかね?
 それでも“赤い幼星”と謳われた英雄か? まさかそんな力であの「太陽の暦石」に挑もうとしてたのか?
 早く見せたまえよ、君の真の力を……ナユタとの戦いで見せた、あの力を
 「フォトンベルト」に秘められた、世界破滅の力を!!」

その直後、ローゼは両腕で上体を軽く持ち上げ、下半身を捻る事で裂邪のバランスを崩し、
不意打ちのような形で彼の横っ腹に力強い蹴りを入れた
「フォトンベルト」によって筋力が上がった一撃は見事にクリーンヒットし、裂邪の身体は宙を舞って吹き飛ばされたが、
彼は空中で態勢を整え、砂埃を散らしつつ、地の上を数メートル滑って着地した
そのまま裂邪はローゼを睨むと、ある事に気がつく
腹部から流れていた血が、もう止まっていた

「…成程、「フォトンベルト」で遺伝子情報を組み替え、細胞分裂を促進したのか」
「っはぁ、はぁ……これで、まともに戦えますわ! 『フォトン・エッジ』!!」

右腕に赤い刃を生成し、振りかぶって裂邪との距離を詰める
裂邪はその手から「ティルヴィング」と「レイヴァテイン」を離し、浮遊させる

「ヒハハハ、何をするのかと思えば……無駄だと言うのがまだ分からんか!?」

2本の刃が、またもローゼを襲う
だが彼女はその刃をどちらも受け止めた
「レイヴァテイン」は赤い刃で
「ティルヴィング」はハイヒールで
空いている左掌に、赤い光が集中する

「なっ………!?」
「『フォトン・バレット』!!」

赤い弾丸が放たれ、紫の悪魔に命中した
「ティルヴィング」を持っていなかったが故にそれを反射できなかったが、
彼は“防ぐ事”も、“回避する事”もせず、彼女の攻撃を受けて仰向けに倒れた
否、しなかったのではなく、それらも“できなかった”のだ
力が弱まった剣を退け、ふぅ、とローゼは一息吐いた

「やっぱり…ただのトリックでしたのね
 「神出鬼没」や「ヴァルプルギスの夜」の能力の使用、そして身体能力の向上は、
 全て「ティルヴィング」を持っている時になさっていた事
 逆に言えば、「ティルヴィング」が貴方の手から離れた瞬間に、貴方は殆ど無防備になっていた
 それは「憑依霊」としてのナユタの魂が、普段は裂邪さんの身体に、
 そして「ティルヴィング」を操作する寸前に、「ティルヴィング」の中へ移動しているから
 融合しているとは言え、その5つの都市伝説を扱える魂はただ一つ…“2人”じゃ扱えませんものね」

裂邪はぴくりとも動かない
悲しげな表情を浮かべ、ローゼはかつ、かつ、と彼の元に近づいた

「…申し訳ございません裂邪さん
 でも、今はワタクシ達が戦っている場合じゃありませんわ
 ワタクシ達は、共に力を合わせて――――――」
「黄昏裂邪が命じる……“動くな”」

ピタッ、とローゼの動きが止まった
それはまるで時が停止したかのようだが、止まったのは彼女の身体だけ
驚愕するローゼの前で、裂邪はゆっくりと起き上がり、飛来する剣を手に取った

「…温いよローゼ君、あの程度で僕を仕留めたつもりだったのかね?」
「こ……これ、は…………裂邪、さん…何故………」
「「ティルヴィング」は主人の願いを3つだけ叶え、全てが叶うと滅びを迎える…最初の願いは君に捧げよう
 それと、もう一つプレゼントだ……細胞を焼いてしまえば、再生はできない」

「ティルヴィング」の切っ先を動けぬローゼの胸部に向け、紫の光条を解き放った
胸を貫かれた彼女は苦悶の表情を浮かべ、血を吐きながら赤い髪を乱して再び倒れた
僅かに呼吸する声だけが聞こえ、ぴくん、ぴくんと小さく痙攣している

「無様だ…君の驕りが君自身の破滅を生んだんだよ
 あの時、僕を生かすつもりで技を放った結果がこれさ
 その甘さが、戦場で命取りになる……言っただろう? 殺すつもりで来い、と」

ばきっ、と嫌な音を響かせ、倒れた彼女の胸を踏む裂邪
悲痛な叫びと共に、赤黒い血が飛び散る

「……カハッ………ぁ、ぁぁ…………」
「…ちっ、茶番にすらならなかったな……まだ満たされないよ、こんなものじゃ」

そう呟くと、裂邪は「ティルヴィング」の切っ先をローゼの喉元に向けた
輝く刃は、一歩間違えれば喉を切り裂いてしまうだろうという距離

「チャンスをあげよう…さあ、僕を殺すつもりで来たまえ
 この間のように、放射線を使えば僕程度の人間は殺せるだろう?
 …それくらいの覚悟はしている筈だろう!?」
「…………け、ない………」

咳き込みながら、震える手で刃を退け、弱々しい声を振り絞る
首を傾げる裂邪に構わず、彼女は続ける

「殺、せる………わけ、が……ない………」
「まだ言うか…! 君はそれでも「組織」のNo.0か!?
 人間の一人や二人、殺せる覚悟もなく君は―――――」
「あな、た、は………ミナワちゃん、が…………殺せる、と…仰るの?」
「………は?」
「貴方は…………自分が、愛している人を…………殺すことができるとおっしゃるの………?」

つぅ、と一筋の涙が流れた瞬間
一瞬にして洞窟内から紫の炎が消え、裂邪が元の姿に戻った
と同時に、ローゼを蹂躙していた脚を退け、一歩、また一歩と後退した
からん、からん、と金属音が2つ…得物を落としたようだ

「………嘘だ………嘘だ………」

ここは光が一切差し込まない洞窟
相手の表情すら分からないこの常闇の空間でも、ローゼは理解していた
裂邪が今、泣いている事に

「お…俺は……俺はぁ…………!!」
「れ、つや、さん……あなた、もしかして――――――」
「ローゼちゃん!!」

突如差し込んだ光に、裂邪は思わず目を押さえた
光の向こうに見えたのは、6つの影
その内の二つ、先頭に立っているのは

「……正義………来やがったか」

彼の弟である黄昏正義と、その契約都市伝説「恐怖の大王」
正義は裂邪を強く睨み、黙ってそこに立っていた
その姿は、これ以上ローゼに手を出させまいと、守っているようにも見えた
ぐったりとしたローゼの元に、勇弥、奈海、楓、コインが駆け寄る

「ローゼさん!」
「くっ、酷い怪我だ……放っておくとまずいぞ」
「…勇弥くん、能力で外まで脱出できる?」
「え?……あぁ、外へならいつでも行けるぜ」
「ローゼちゃんを連れて先に戻ってて。僕も後で行くから」

何かを決意したような、真っ直ぐな言葉
納得がいかないのか、抗議しようとした奈海を勇弥が宥め、
彼等は暗闇の中から忽然と消え、再び洞窟に闇が戻る

「……お兄ちゃん」
「やっとこの時が来たな、正義」

裂邪は足元に落とした2つの剣を拾って、
とても嬉しそうに、笑いながらそう言った


   ...To be Continued

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