【陛下と僕と獣の数字 第14話】
並み居る獣の大群。
尽きることはない。
白い影がその中央を真っ直ぐに真っ直ぐに駆ける。
しかしあまりの物量にすぐに押し戻されてしまいいつの間にか距離を取られる。
尽きることはない。
白い影がその中央を真っ直ぐに真っ直ぐに駆ける。
しかしあまりの物量にすぐに押し戻されてしまいいつの間にか距離を取られる。
「話を聞いてくれ!」
「来るな……来るな……」
壁だった。
自らは積極的に攻撃らしい攻撃を加えない。
しかし近づけば近づくほどに只々純粋な拒絶が働く。
自らは積極的に攻撃らしい攻撃を加えない。
しかし近づけば近づくほどに只々純粋な拒絶が働く。
「来ないで!私の家族を奪うな!」
涙声だった。
「お願いだ!俺の話を聞いてくれ!君はもうこれ以上戦おうとしなくていいんだ!」
明日真は叫ぶ。
遠くで砲撃の音が響く。
遠くで砲撃の音が響く。
「野郎ども押し返せ!」
「あの魔法少女よりはマシな相手だぞ!」
ワイルドハントと夜刀神の戦い。
あちらは酷く単純な戦いになっている。
――――ああ、世界があんな単純だったら
明日は思う。
あちらは酷く単純な戦いになっている。
――――ああ、世界があんな単純だったら
明日は思う。
「あっちのあんちゃんが苦戦しているぞ!」
「よっしゃ援護射撃だ!」
砲撃が飛んでくる。
それは無駄なのだ。
無数の獣達によって砲撃は止められる。
それは無駄なのだ。
無数の獣達によって砲撃は止められる。
「……やれ」
少女のか細い声と共に無数の獣が疾走する。
ワイルドハントの圧倒的な数よりも尚多い獣達。
ワイルドハントの圧倒的な数よりも尚多い獣達。
「ぎゃあああああああああああああ!」
悲鳴が上がる。
「なにっ!?何故私にまで……やめろ、うわああああ!」
獣は夜刀神にまで襲いかかる。
次第に攻撃範囲が広がっているらしい。
次第に攻撃範囲が広がっているらしい。
「そうだ、誰も居なくなれば良い……私達以外誰も居なくなればもう何もなくさなくて済む……」
敵意を向けてきたもの。
戦っているもの。
次は?
明日真は思う。
最悪の可能性を。
もしこの少女が人類を呪い始めたのならば。
戦っているもの。
次は?
明日真は思う。
最悪の可能性を。
もしこの少女が人類を呪い始めたのならば。
「……俺が決着をつけろというのか」
できるか?
この哀れな子供に止めを刺すことが?
それは正義なのか?
聞いた話では、この少女は大切な人々を失ったショックで自らを見失ったらしい。
被害者じゃないか、彼女だって。
この哀れな子供に止めを刺すことが?
それは正義なのか?
聞いた話では、この少女は大切な人々を失ったショックで自らを見失ったらしい。
被害者じゃないか、彼女だって。
「さっきから煩いんだよ!話なんて要らない!お前も……居なくなれば良い!」
獣の群れが攻撃を目的として明日に殺到する。
「やめろクラウディア!」
その時、声が響く。
獣の群れが明日の目の前で停止する。
そして波が引くようにして消滅する。
獣の群れが明日の目の前で停止する。
そして波が引くようにして消滅する。
「なに?」
「…………セージ?」
「もうやめるんだクラウディア!」
肩で息をする少年、セージだ。
「セージ……なんでそこに?あれ、死んだ筈じゃ?死んだ?え、あ……」
夢が覚める。
「此処に居るセージはいなくて、……セージが二人?
嘘だ、死んでない。今日は楽しく皆でピクニックをしていて……何も起きてない
楽しい日、楽しい日、楽しい日、楽しい日」
嘘だ、死んでない。今日は楽しく皆でピクニックをしていて……何も起きてない
楽しい日、楽しい日、楽しい日、楽しい日」
「クラウディア!」
その声が、彼女から狂気を脱落させる。
ブツブツと呟くのをやめ、彼女は顔をあげる。
ブツブツと呟くのをやめ、彼女は顔をあげる。
「…………セージ、さようならだ
私は一時の気の迷いで許されないことをしてしまった
悪党として、怪物として素直に裁かれることにするよ」
私は一時の気の迷いで許されないことをしてしまった
悪党として、怪物として素直に裁かれることにするよ」
泣いていた。
「クラウディア!」
666の獣が彼女を囲むようにして再び現れる。
「帰ってくれ、セージ。何時また私は自分を失うか分からない」
「いやだ!今のお前を一人にしてなんておけないだろ!」
「相変わらず聞き分けの悪い奴だ……」
獣がセージに襲いかかる。
明日は素早くセージをバイクに乗せる。
そして彼は自らの纏う装甲を全てバイクに回す。
それは勿論危険な行為だ。
明日は素早くセージをバイクに乗せる。
そして彼は自らの纏う装甲を全てバイクに回す。
それは勿論危険な行為だ。
「行くぞ少年」
「どうやって!?」
「こうやってだ、リミッターオフ!」
しかしリミッター解除の反動に耐えるためにはこれしか手は無いのだ。
迷いはない。
波のように迫る獣の一群。
バイクは加速を続け正面から獣達を突破する。
弾け飛ぶ獣達の肉片すら当たれば致命傷になる速度。
しかし明日はそれをバイクの風防を装甲でコーティングすることで絶妙に逸らしずらし、それでもどうにもならないものは自ら受けて群れを突破する。
声にならぬ叫びと共に地面から漆黒の塔が現れてクラウディアを遥か上空に連れ去る。
よくよく見ればそれは全て獣で出来た塔。
バイクは僅かな突起にタイヤをひっかけてそのまま登っていく。
今度は塔そのものが敵。
伸びてくる牙や角を紙一重で明日は躱し、上へ上へと進み続ける。
塔の頂が見える。
獣の咆哮、塔の内側からセージに象の鼻が伸びる。
迷いはない。
波のように迫る獣の一群。
バイクは加速を続け正面から獣達を突破する。
弾け飛ぶ獣達の肉片すら当たれば致命傷になる速度。
しかし明日はそれをバイクの風防を装甲でコーティングすることで絶妙に逸らしずらし、それでもどうにもならないものは自ら受けて群れを突破する。
声にならぬ叫びと共に地面から漆黒の塔が現れてクラウディアを遥か上空に連れ去る。
よくよく見ればそれは全て獣で出来た塔。
バイクは僅かな突起にタイヤをひっかけてそのまま登っていく。
今度は塔そのものが敵。
伸びてくる牙や角を紙一重で明日は躱し、上へ上へと進み続ける。
塔の頂が見える。
獣の咆哮、塔の内側からセージに象の鼻が伸びる。
「やらせねえぞ!」
それに気を取られて明日がハンドリングを誤る。
弾き飛ばされるバイク。
弾き飛ばされるバイク。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!」
明日は都市伝説の力を腕力の強化に集中させて思い切りセージを塔の頂上まで投げつける。
投げ飛ばされるセージと目が合う。
投げ飛ばされるセージと目が合う。
「ま、か、せ、た」
仮面をとった明日の口がそう動く。
しかしそんなことにセージは気づかない。
投げ飛ばされたその先に、彼女は居た。
クラウディアは驚いたような目でセージを見る。
このまま行けば正面衝突、だがお互いに動けなかった。
大きな音を立ててお互いぶつかる。
しかしそんなことにセージは気づかない。
投げ飛ばされたその先に、彼女は居た。
クラウディアは驚いたような目でセージを見る。
このまま行けば正面衝突、だがお互いに動けなかった。
大きな音を立ててお互いぶつかる。
「……うぅ」
柔らかな感触。
「――――!」
怯えきった瞳。
「陛下、僕を置いて行かないでくれ」
そこにいるのは酷く寂しがりの少女。
「陛下などと呼ぶでない、クラウディアと呼べと……」
「クラウディア」
「なんだ」
「クラウディアがなんであろうと、僕は君のそばに居る
それだけしかできないから、それだけは絶対にやめない」
それだけしかできないから、それだけは絶対にやめない」
「私は……バケモノだ」
「君は人間だ」
「人を殺してしまった、覚えているんだ
平凡な親子、そしてペットの黒い犬」
平凡な親子、そしてペットの黒い犬」
「…………これから罪は償えば良いさ、君一人だけに辛い思いはさせない」
「私は、私はあの時、人の命を奪うことに抵抗を持ってなかった
あれだって、あんな気持ちだって私の気持ちだ
私は人と生きていけるような存在ではない……」
あれだって、あんな気持ちだって私の気持ちだ
私は人と生きていけるような存在ではない……」
「じゃあ僕と君の半年はなんだったんだ?」
「……それは」
「それにほら」
セージはクラウディアの頬に触れる。
濡れていた。
濡れていた。
「涙することが出来るのも君だ」
「……セージ」
「二人で謝ろうぜ、いろんな人に
なんか全部壊れちゃったけど……まだ君が居て、僕が居る
この際だから言っちゃうけどさ、僕は君のことが……」
なんか全部壊れちゃったけど……まだ君が居て、僕が居る
この際だから言っちゃうけどさ、僕は君のことが……」
クラウディアはセージの口を人差し指で閉じる。
「……私も、お前が特別だって気づいたんだ
普通で、特別な人だって」
普通で、特別な人だって」
その時、爆音が響く。
炎が彼らを包み込んだ。
後には何も残らない。
心も、身体も、何もかもが爆炎の中に消滅する。
でも消え行く最後の一瞬、初めてクラウディアは無償の愛を知った。
手向けの花のように、それは彼女の最期を飾った。
後には何も残らない。
心も、身体も、何もかもが爆炎の中に消滅する。
でも消え行く最後の一瞬、初めてクラウディアは無償の愛を知った。
手向けの花のように、それは彼女の最期を飾った。
【陛下と僕と獣の数字 第14話 続】