夜刀浦奇譚
第伍話 -朧月夜-
第伍話 -朧月夜-
「どうしておれの下へ爺さんを寄越した」
「無論、あなたを殺すためです」
「どうしておれの命が欲しい」
「無論、あなたが見るに耐えないからです」
「おれは知りたかっただけだ、人というものを」
「あなたは知らなすぎる、神というものを」
「だが、おれはお前を良く知っている」
「勿論、私はあなたを良く知っている」
「おれはお前だ、無貌の神」
「私はあなたです、這い寄る混沌」
「……もう問答は終わりだ。決着をつけよう」
「……では始めましょうか。同族の決着を」
「終わると思うか、おれ達の戦いが」
「いつもどこかで終わっています、私達の戦いは」
「おれ達はどこに行こうとしているんだ?」
「私達はすでに行き着いたのかもしれません」
「終末に、か」
「果てに、です」
「おれは知りたかった、人のこころを。それを知れば、おれ達は先へ行ける」
「神には必要ありません、人のこころは。知ってしまうと行けなくなってしまう」
「おれは人に生まれるべきだった」
「あなたは神に生まれるべきではなかった」
「だから殺してくれ、人として」
「だから殺しましょう、神として」
「そして、人として生まれ変わりたい」
「そして、神として再び生まれなさい」
「これで終わりか?」
「これで終わりです」
「さらばだ、Nyarlathotep」
「さようなら、Nyarlathotep」
了