「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 僕は小説が書けない-07

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匿名ユーザー

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「なんだよ、なんなんだよあれ!」

 僕は見てしまった。
 遠くから近づいてくる赤ん坊のような姿。
 肌が粟立つような悍ましさ、あれが、あんなものがこの世には有るのか。
 近づくに連れて姿がはっきりしてくる。
 両手両足をまっすぐに突っ張ったままゆったりと迫ってくる灰色のミイラ。
 赤ん坊のミイラ。
 落ち窪んだ瞳は何も移さず、乾ききった筈の喉から漏れてくるのは先程から続く不気味な音色。

「―――――まあ切れば一緒だ」

 ジルりんは顔色一つ変えずに数本のナイフを投げつける。
 柄頭から伸びる青白い光線で彼女の指とつながったナイフはまるでスズメバチのような奇怪な音を立てながらミイラへと殺到する。
 右から、左から、逃げ道を奪うように。
 ナイフが突き刺さり、光線がミイラの腕を焼ききる。
 彼女とナイフをつなぐ幾つもの光線にすら殺傷能力はあるらしい。
 一際高い悲鳴を上げてミイラは灰へと変わってしまった。

「……すげえ」

「言ったろ?」

「でも一体何だったんだあれ?」

「わかんない!」

「都市伝説だろ?」

「なんかちょっとそういうのとは違う気もしたぞ」

「気味悪いな……よし、さっさとこっから出よう」

 僕は窓に手をかける。
 当然開かない。
 ジュラルミンケースの中からハンマー取り出して窓を殴りつける。
 開かない。
 ジャックちゃんにナイフで窓を切らせてみる。
 弾かれた。

「悲喜! こいつ固いぞ!」

「なんで嬉しそうなんだよ!」

 状況は依然として変わらない。
 むしろ悪くなったとさえ言っていい。
 開かない扉、開かない窓、纏わりついてくるような気持ち悪い空気。
 ここに入ってきた時には気づかなかった屋敷全体に満ちる悪意のようなものが僕達を確かに追い詰めていた。

「やっぱり探索しようぜ、悲喜」

 ……とおもったが追い詰められてるのは僕だけらしい。
 ジルりんはあくまで呑気である。

「分かった。それじゃあキッチンの奥に行こう」

 どの道進むしか無いらしい。
 まあ僕がよくやるコールオブクトゥルフでも探索しなければ死ぬだけだし、進むしか無いのは現実も同じってことなのだろう。
 帰ったら少し良い物食おうと思いながら僕は進むことを決めたのである。


    ※    ※    ※    


「ここはリビング、惨殺死体があったのはここだと言われているな
 何かのオブジェみたいに死体が飾られていたとかいないとか」

「うへえ悪趣味だな
 私は殺人鬼キャラで売ってるけど殺して解体して並べて揃えて晒すだけだぞ
 必要以上に死体を辱めるのってなんていうかこう……もにょる」

「もにょるってなんだよもにょるって」

「もにょもにょするの! なんかこう……申し訳ないじゃん!」

 人を殺しておいて申し訳ないも何も無いだろうと思うのだがまあ言わないでおこう。
 それよりも『もにょもにょするの!』は良いなあ、可愛い。

「良いから何か無いか探すぞ。ここが何故またゴーストハウスになってるのかはっきりさせないと」

「分かってるよ」

 そして僕達はまた棚を開けたり座布団をひっくり返したりそこら辺を捜索し始める。
 都市伝説についてはジルりんにお願いして排除するしか無いが只の幽霊ならば僕が追っ払えば良い。
 幽霊の場合は溜まる法則も有るし楽なものだ。

「ッキャアアアアアアアアアアアアアア!」

 突如背後から悲鳴が響く。

「どうした!?」

 そういって振り返る僕の目の前に漆黒の物体が飛来する。

「う゛っ!?」

 全身が粟立つ。
 視界がやけにスローモーションで動いている。
 その飛翔体は必死で首をひねる僕の横をすり抜けて壁にペトと張り付いた。

「あ、う……」

 ジルりんが涙を流しながら首を横に振っている。
 なんだあれは。
 あんなものが居ていい物か。
 何故あんなにも醜く不快で脳髄を締め上げるような異様な黒色をしているんだ。
 そうだ、間違いない。
 あれは……あれは……

「「ゴキブリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」」

 僕達の悲鳴が家中に響いた。
 それと同時に椅子の下、棚の中、それらから一斉に羽音のような何かが聞こえる。
 どうやらまだまだ居るらしい。

「逃げよう! やっぱ逃げよう!」

「でもどうやって逃げるんだ悲喜!」

「窓! 窓を使う!」

 そう言って僕はすかさず窓をジュラルミンケースで破壊しようとする。

「ああ窓に! 窓に!」

 だが駄目だ。
 窓にまでなんかはいよってやがる。
 部屋中を飛び回らんと動き出す蟲達。
 絶体絶命、こうなったらこいつと契約をして事態を打開するしか無い。
 そうおもった時だった。
 ゆっくりと部屋の奥のドアが開く。
 そこに立っていたのは黒いローブを身に纏った長身の女性だった。

「――――焼き――――払え」

 女がそう呟くとあっという間に蟲達“だけ”に火がついて灰すら残らずに消失してしまう。
 彼女は僕たちを一瞥してから、重々しく口を開いた。

「先程からやかましいと思っていたが……」

 ゴホン、と女が咳払いをする。

「私の家に一体何の用だ?」

 その前に貴女は誰だ?
 僕がそう尋ねようとおもった時だった。

「―――――――――死ねぇ!」

 ジルりんが女に向けて飛びかかる。
 振り下ろされたナイフは脳天を裂き、四肢を喰らい、眼球を刳り、女の全身を瞬時に十六に分割する。
 女は悲鳴を上げる暇も疑問を持つ暇もなく、一瞬でモノ言わぬ死体になった。

「……えー」

 なってしまった。

「ジルりん……何やってるのかな?」

 もしかしたらこの館の異変の真相を知っているかもしれない人間だった訳だが。

「あいつ都市伝説の気配がしたぞ! きっと契約者だ! 見ていろすぐに死体がなくなる筈だから!」

 ああ、この感覚には覚えがある。
 クトゥルフTRPGやってたら中盤でボスキャラを当てずっぽうで殺された時の感覚だ。
 腹がたったので邪神を呼び出してデモンベインよろしくロボットバトル物に変えてやったよ。

「…………えーっと、さ」

「どうした悲喜、これで私の力がすごいのは解っただろう?
 ほら契約しようぜ契約! 待ってたんだからな!」

 ここまでデレられるのは嬉しいのだが……とか考えながら僕は死体の方を見る。
 うん、消えてない。
 この前の黒服みたいに消失する気配は一切ない。
 バラバラになって血や体液などをまき散らしているだけだ。
 僕の疑惑の目がジルりんに突き刺さる。

「……なあ、ジル。本当にこいつ都市伝説関係なの?」

「な、何言ってるんだよ。こいつ間違いなく敵だぞ悲喜!」

 僕の表情を見て動揺し始めるジル。

「本当か?」

「ほほほほほほ、本当だって!」

 嘘をついている様子は無い。

「ふむ……」

「本当……だもん」

 それでも疑念は晴れないなあと思っていると急に彼女が少し泣きだした。

「うっ…………ぐすっ……」

 かわいい。
 これ少し離れたところから放置してそっと見守りたいわあ。

「なんでにやにやしてるんだよぅ……。疑ってるんだろ?
 どうせ私が人間じゃないからってさ……」

「いや、信じよう」

「ほんと!?」

 何故顔をパッと輝かせるし。

「ああ、本当に―――――――」

 その時だった。
 バラバラになっていた女のカラダが突然空中で浮かび上がり、僕とジルりんに向けて飛びかかってくる。
 彼女はまだ気づいていない。
 気づいているのは僕だけ。
 声をだす暇は無い。
 彼女をすかさず押しのけて、僕は彼女の壁になる。

「悲喜ッ!?」

 突き刺さる牙、骨、牙?
 突き刺さった牙から感じる大量に血の抜けていくひんやりとした感触。
 これはまさか……。

「うっ……グスッ……!」

「なんだこいつ再生するのか! 待ってろ悲喜、今すぐこいつを!」

 空中で再生する目玉から溢れる涙。
 ジルりんが飛びかかるがそれもあっさりと空中に浮かぶ黒い翼で受け止められる。

「ひぃっ……ク」

 目玉を中心にゆっくりと顔が再生し始める。
 作り物みたいに生気を感じ無い青ざめた顔がくしゃくしゃになっている。
 美人も台無しというものだ。
 そして今度は顔から胴体が生えてくる。
 あと服まで一緒に再生されているのもすごく残念。

「あんまりだわ……」

 冷静に考えるとあの再生ってどこからエネルギー使ってるんだろう。

「あんまり、あんまりすぎる……」

 視界の中でジルりんが慌ててあの女に向けて攻撃している。
 だが間に合わない。
 僕は気づいてしまった。

「あんまりだわああああああああああああああああああああああうひいいいいいいいいいいいいいいいやああああああああああああああん!
 うひゅうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!
 ひゃああああああああああああああああああああああああああああああうええええええええええええええええええええええええええええええええええん!」

 あの女、今僕の身体に刺さってる牙から血を抜いて再生してやがる。


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