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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代編-06

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elfriede

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Next Generation 06


 未来の手に現れては消える、無数の小箱
 次へと鬼火を吸い込んでは消え、また現れる

「すぐ消してしまえば、鬼火による意識誘導は効きませんよ」

 片手で箱を操りながら、腰の後ろから抜いたナイフを逆手に構え、A-No.37564との間合いを一気に詰める
 無骨な刃の一閃をひょいと避けるA-No.18782だが、その身体が真兎から離れた瞬間

「人質にされて殺されても後味が悪い程度し、目を覚まして邪魔をされても困るしね」

 地面に横たわった真兎の腕を昭彦が引き、僅かに移動したその姿が穴にでも落ちたかのように掻き消える

「ふぇあ!? ま、真兎ちゃん!?」
「そっちのお嬢ちゃんも、まあ大人しくしていてもらおうかね」

 そう言って、一歩
 昭彦が百華に向けて足を踏み出したその瞬間、同時に飛来する鬼火とナイフ

「おおっと!?」
「それは、私のものです」
「俺んだよ。焼いて喰われてぇか」

 サングラス越しにも判るほどに、殺意をぎらつかせたA-No.37564と未来の視線

「やれやれ……しょうがない、二人ともまとめて相手するのは、おじさんにはちょっとしんどいよ」

 そう言って、懐から拳銃を抜き
 言葉とは裏腹に、二人の殺意を真っ向から押し返す程の圧力を込めた殺意を放つ昭彦

「ど、どどど、どうしよう……どうにかして、真兎ちゃんを助けないと」

 殺意の嵐が吹き荒れる中で、あたふたと周囲を見回す百華
 その足元にいくつも叩き込まれた鬼火が、アスファルトを焦がし嫌なにおいを立てる

「死なない程度に焼かれたくなかったら、一歩たりとも動くんじゃねぇぞ」

 焦げたスカートの裾に視線を落とし、ごくりと唾を呑む百華

「さぁてと。順繰りに片付けねぇとなぁ? たかだか鬼火の意識誘導を封じた程度で勝つ気でいやがるクソアマからだ」

 けらけらと笑いながら、A-No.37564は未来に向き直る

「そういやさお前ら。『リョウメンスクナ』の作り方、知ってる?」
「駄話に付き合うつもりはありません」
「あっそう」

 浮かび上がる鬼火を箱に封じ込めながら、A-No.37564の眼前にまで迫る未来
 いくつ隠し持っていたのか、昭彦に投げたものとは別のナイフを手に、首筋目掛けて鋭い突きを放つ
 だがその一撃は、金属がぶつかり合う音と共に止まる
 A-No.18782の背から伸びた腕が持つ、両刃の刀身で受け止められたナイフは、あっさりと弾き飛ばされ宙を舞う

「ネットで語られる『リョウメンスクナ』は、奇形の人間を使った『蟲毒』で作られたそうだぜ? 他の人間を殺し肉を喰らいあった最後の一人」

 小箱を持っていた未来の左手を、A-No.37564の両腕とは違う手が掴み
 ぎちり、ぎちりと力を込める

「いっ、ぎぅっ!?」

 骨が軋み、その手に持っていた小箱が地面に零れ落ちる

「じゃあさ、その最後の一人を食ったらどうなると思う?」
「あ、ぐぅ!?」

 ごきん、と
 嫌な音を立てて、未来の手首がおかしな方向に曲がる
 本来あるはずのない、アンバランスな二本の腕が生えたそれは

「俺は、お前ら『組織』の連中に半分に分けられてよぉ……大体『一人分』ぐらいの空きがあるんだよ」
「お前さん……『リョウメンスクナ』をどうした」

 昭彦の額に、じわりと汗が浮かぶ
 A-No.37564はべろりと舌を蠢かせ、言い放つ

「煮て、食った」

―――

 人通りの無い、静かな廊下の突き当たり
 封印倉庫の担当である『赤いクレヨン』の契約者である黒服の女、呉棉奈彩(くれわた・なあや)は、その能力で部屋を作り上げる
 それは、『能力者である彼女が外から扉を開けない限り、内側にあるものは絶対に外には出られない』という能力
 その扉もまるで塗り固めたかのように隠す事ができる上に、本人以外は絶対に開封できないというものであった

「出来ましたか」
「ええ……でも、仕様は前と同じですよ? 危険物が四つも立て続けに盗まれる程度の封印じゃ、他の担当を探した方が」

 がっくりと肩を落とし、しょんぼりとした様子の奈彩に、A-No.18782はふむと小さく唸る

「なるほど」
「愛木さんの『パンドラの箱』とかの方が、ずっと封印には向いてると思いますよ? 私達の感知すら遮断して邪気のあるものを封じ込めるじゃないですか」
「もしそうしてたら、今回の一件は更に大惨事だったでしょうね」
「へ?」

 A-No.18782は一枚の紙切れを取り出して、奈彩に見せる

「この書類に見覚えは?」
「え? えーと」

 それは、『リンフォン』を封印倉庫へ収める旨を記した申請書類

「書式は合ってますけど、この番号は『リンフォン』じゃなくて『不幸の手紙』ですよ? というか、私は『リンフォン』を収める現場には立ち会っていませんし」
「しかし、盗難品の目録には『リンフォン』の名が記されていました。つまり、『リンフォン』は……収めた書類を提出しただけで、封印倉庫には収納されていなかった」
「え……ええええええええええええ!?」
「極小サイズの地獄とまで呼ばれる『リンフォン』の気配が存在しない以上、封印されたと誰もが思うでしょう。しかしそれは、書類上の偽装だけで隠し持っている者がいた」

 その書類の署名は

「愛木さん、が?」
「あなたが言ったでしょう? 愛木さんの『パンドラの箱』は、封印倉庫に収めるようなものでも、私達の感知すら遮断して封じ込める事ができると」
「はぁ……」
「そして次に『ハッカイ』です」
「『コトリバコ』の一番危ないやつですよね? これはちゃんと私も立ち会いましたよ、扉だけ開けて離れて見てただけですけど」
「その当時に『組織』から除名された急進派の一人が、これに随分とご執心だったようで。運用のために専用の封印呪符を作っていたようです」
「そんな便利なものがあるなら、別に私の部屋に収めなくても……」
「呪詛が薄れるまで保管する事に意義があるんですよ、あれは。ともかくその呪符がしばらく前に盗難に遭ったようで」
「呪符が、ですか?」
「そして元・急進派の手勢から追っ手が派遣されています。多分、呪符が盗まれた事で『ハッカイ』が運用されるか、開放されると睨んだのでしょう。あわよくば横取りでもと企んで」
「では、その人達が『ハッカイ』を盗んだ犯人なのですか?」
「しかし、追っ手は全滅。元・急進派の一派も手勢を失い意気消沈、と」
「じゃ、じゃあ『ハッカイ』を盗んだのは?」
「芦屋昭彦」
「芦屋さんって……異世界や異次元から人をサルベージする時だけ出てくる、『時空のおっさん』の人ですよね?」
「ええ、その人です」
「『ハッカイ』を盗んだって事は、封印倉庫に入ったって事ですよね?」
「そうなりますね」
「異世界から人をサルベージするだけの能力で、どうやって? そもそも私の『赤いクレヨン』の部屋は、異世界でも異次元でもないですよ」
「彼は、異世界からのサルベージ作業の際に、姿を消します。これは一度異世界に入り、そちらから対象を弾き出すという作業を行っていると想定されます。つまり……彼は『異世界から人を元の世界に戻す』という能力に加え、『異世界に移動する』能力もある事になります」
「は、はあ……」
「また、彼がサルベージ対象と共にこちらの世界に戻ってきた際に、元居た場所から大きく離れた場所に現れる事が多々ありました。つまり……こちらの世界と異世界の座標は固定されている」

 A-No.18782は、こんこんと靴の踵で床を蹴る

「この場所から異世界に入り、異世界でこの扉の向こうまで移動して、こちらの世界に戻るとどうなります?」
「……あ!」
「異世界側には、当然あなたの能力は関与していません。異世界でも異次元でもない部屋なら座標がずれる事も無いでしょう。目的のものを手に入れたら、『組織』の施設の外まで異世界側で移動して、戻ってくればいいだけです」
「そんな単純な手で、私の能力がスルーされてたなんて」

 壁に手をついてうなだれる奈彩
 その肩にぽんと手を置いて、A-No.18782は静かに語る

「そして、最後の『リョウメンスクナ』と……私の半身であるらしい『A-No.37564』です」

 その言葉に、奈彩の肩がぴくりと震える

「この二つに関しては、一切の犯人が想定できませんでした」
「え? 入り込んだ芦屋さんが全部盗んでいったんじゃ」
「『ハッカイ』と、『リョウメンスクナ』までならまだ納得できたんですがね。『A-No.37564』が加わった時点でそうもいかなくなりました」

 ぽかんとした奈彩の顔を、A-No.18782は真剣な目で見詰める

「専用の封印呪符を盗み出してから『ハッカイ』に手を出すような慎重な芦屋さんが、『リョウメンスクナ』を何の対策も無しに持ち出すのはおかしいです。そして無関係であろう『A-No.37564』を連れ出す動機に至っては、ゼロに等しい」
「じゃあ、『リョウメンスクナ』と『A-No.37564』は誰が」
「封印倉庫の開閉が自由なあなたが『A-No.37564』を開放し、彼が『リョウメンスクナ』を持ち出した」
「……へ、え!?」
「封印倉庫の管理をしていたあなたは、『ハッカイ』が盗まれた事に気付いていたのでしょう? それを好機として『A-No.37564』を開放した。『ハッカイ』を盗んだ誰かに罪を着せるために」
「え……えええええええええええ!?」

 悲鳴じみた奈彩の声が、静かな廊下に響き渡った

「な、ななな、何で私がそんな事をしなきゃいけないんですか!」
「『A-No.37564』については、彼を解放する動機がある者なんて、誰も居ないんですよ。記録によれば、急進派や過激派の方々ですら封印の決議に満場一致で賛成していた程ですが」
「そんな危険人物を、私が開放して何の得が!?」
「わかりませんよ。穏健派には改心の余地があるはずだと、過激派には上手く利用できるはずだと説いて回り、殺処分を回避し結果として半身となる私を生み出した、あなたの真意なんて」

 圧力も、懐柔も、何も感じさせない淡々とした問いに
 奈彩は壁に身体を預け、ずるずるとその場にへたり込んだ


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