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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代編-07

最終更新:

elfriede

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Next Generation 07


「……まさか、能力を分割して同じ姿をした黒服が生み出せるなんて、思わないじゃないですか」

『赤いクレヨン』の契約者である奈彩は、へたり込み俯いたままぼそぼそと語り出す

「ずっと封印されていれば、いつかは忘れてしまえたかもしれないのに」

 ぽたり、と
 無機質なタイルの上に落ちるひとしずく

「あの人と同じ顔が、あの人と同じ声が、ずっと近くにあったら。忘れられるわけないじゃないですか」

 ぽた、ぽたと
 止め処もなく

「そりゃあろくでもない人でしたけど……どうしようもない危険人物でしたけど……」

 か細く震える声が

「愛した人と世界を天秤にかけるなら……どっちを取るかなんて、決まってるでしょう!」

 愛という狂気で染め上げられる
 すぐ眼前に立つA-No.18782は、手勢を率いてはこなかった
 非戦闘員である自分は、問い詰められれば観念するとでも思っていたのだろうと、奈彩は考えた
 A-No.18782のすぐ後ろには、奈彩が作り出した『赤いクレヨン』の部屋が、中を確認するために扉を開け放ったままで存在している
 非力な奈彩だが、A-No.18782とて戦闘系の能力ではないし、基礎訓練で身についている程度の白兵戦能力しか無いのは、長らく部下を務めていて知っている
 ここで立ち上がる勢いのままに、彼に体当たりでもして『赤いクレヨン』の部屋に封印してしまえば
『組織』は、A-No.18782殺害というA-No.37564への緊急対処手段を失うのだ
 奈彩は声を張り上げた勢いのまま、足に力を入れてA-No.18782に飛び掛った

「え?」

 はずだった
 床を踏みしめたはずの足に、その感触は無く

「あ、え」
「残念です、A-No.904……呉綿奈彩さん。ただ間違いを認めて、逃がしたA-No.37564の再封印に協力してくれていたのなら。何もかもとはいきませんが、元通りにはなったのですが」

 本当に、心から残念そうな声で語るA-No.18782の、その背後に浮かぶいくつもの鬼火
 その能力は、向かってくる者の足元を底なしの沼に沈めてしまう
 見た目はただのタイルのまま、奈彩が触れた部分だけが沼地の泥のようにその身体を呑み込んでいく

「がっ……ぁ…………、………………」

 ごぽりと音を立てて沈んだ奈彩の目は、最期まで敵意に満ちたままで
 泡となって消えた最期の言葉は

「『こんな世界、滅んでしまえ』……ときましたか」

 それは愛した人と共に過ごす事のできない世界を無価値と断じたのか
 それとも、愛した人が望むのが世界の滅びだからなのか

「他人の真意なんて解りはしませんよ、まったく」

―――

 おかしな方向に曲がった未来の手首を掴んだまま、A-No.37564はその身体を乱暴に引き寄せる

「『パンドラの箱』の封印能力自体は強力だが……その能力に使う箱自体は、別に能力とか使って出し入れしてるわけじゃないんだろ? 手の動き見てりゃわかるぜ」

『リョウメンスクナ』の腕が未来の服の襟元に掴みかかり、ボタンを引きちぎりスーツの上着をシャツごと引き裂いた
 あちこちのポケットに仕込まれていた小さな箱が、乾いた音を立ててアスファルトの上に散らばった

「蓋を開閉する箱状のものを持たせなきゃ、お前はもう役には立たないってこった」

 地面に転がる箱の一つ一つを、丁寧に踏み潰していくA-No.37564
 一つ壊れる度に、その中に封印していたものが開放されていく
 そのほとんどは、ついさっき封印されたばかりの鬼火ばかりだったのだが
 そのうちの一つから、ごろりと寄木細工のようなものが転がり出す

「お、『リンフォン』もこの中に隠してたのかよ」

 未来の折れた手首を殊更に捻りながら、その身体を投げ飛ばし
 転がり出た『リンフォン』に、文字通りの意味で『リョウメンスクナ』の手を伸ばす
 だがそれは、異形の手が掴む前に銃声と共に弾き飛ばされる

「すいませんがね、それも私が狙ってまして」
「そういやあんたもいたな、オッサン。さっきから良いタイミングで邪魔ばっかしてくれやがるが、そんな拳銃一丁で『リョウメンスクナ』を喰った俺を制圧できるとでも思ってんのか?」
「そうかねえ……じゃあ、制圧できる能力を見せなきゃいかんかな?」
「さっきのガキを消したみたいに、触れた相手を異空間にでも引きずり込む能力か?」
「ま、半分当たりってとこだよ」

 そこで、A-No.37564は違和感に気がつく
 先程、銃弾に弾かれて転がった『リンフォン』が、何処にも無い
 そして放り投げたはずの未来の姿も
 騒がしかった百華の姿も

「それじゃあ、あんたも……来てもらおうか」

 すい、と
 A-No.37564から間合いを取るように、数歩後ろに退く昭彦
 その動作で、自分の立つ場所に範囲で作用する能力を使用するのだと判断し、間合いを詰めるべく飛び掛るA-No.37564

「はは、戦闘経験が随分と豊富なようだ」

 そう呟いて、昭彦は薄ら笑う
 彼が自分以外の者を異世界に引き込む場合は、仕掛けた座標に対象が進入してくる必要がある
 移動していない相手を直接転送するのは、異世界から元の世界へと排出する時だけなのだ

「たったあれだけの動作で引っ掛かってくれるんだからね」

 気がつけば、そこには
 腕を押さえて座り込んだ未来がいた
 ぐったりと倒れこんだ真兎と、それを抱き起こす百華がいた
 転げ落ちた箱から転げ出て、目を回した菊花がいた
 銃弾の衝撃でやや形の変わった『リンフォン』があった

「ようこそ、私が管理する世界へ」

 そして
 空が
 紅かった


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