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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代編-09

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elfriede

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Next Generation 09


 真兎を抱え、『アザトース』へ向かってまっすぐ飛ぶ菊花
 砕け散った空から溢れ出す形容し難い異形は、迫ってくる矮小な存在に気がつく気配すら無い

「真兎さん、ガスの射程は」
「遠くて10メートル。ぶちまける全部を有効にするなら、5メートルってとこやな」

 近付けば近付くほど、その大きさには呆れ果てるばかり
 遥かに見下ろす地上は、既に道路どころか建物の形も判別が難しいほどに遠く
 遥かに見上げる『アザトース』の姿は、既に空そのものという程に広い
 近付けば近付くほど、その姿をはっきりと捉えるほどに、その狂気が視神経と脳髄を蝕んでいく

「勝負は一瞬、いくで!」
「おっけい!」

 ぐんと勢いをつけて、真兎の身体が『アザトース』に向けて放り投げられる
 表皮なのか空間の境目なのか、そもそも知覚できる何かであるのか、知覚していいものなのかすら理解できないものに肉薄し、真兎はガスマスクをぐいと下ろす

「ありったけや! ほんの一瞬でええから、なんもかんも忘れたってや!」

 背中に現れた巨大なガスボンベに繋がったホースから、真っ白いガスが爆発でもしたかのように噴出する
 巨大な『アザトース』の姿を覆い隠すほどに溢れたガス突き抜けて、真兎と同じガスマスクを被った菊花が『アザトース』に触れる

「どうかあなたに、安らかな眠りを」

 菊花はそう呟き、『アザトース』の見る夢に触れる

「……え?」

 そこは、何も変わらない
 世界があり、宇宙があり、学校町があり
 何も変わらず町を歩く人々がいて
 そこには

「わ、たし?」

 菊花と、菊花の目が合う
 同じように驚きの表情を浮かべ、お互いがそれぞれの状況を確認するように周囲を見回す
 そして視線を移した先にも菊花がいて
 どこを見ても世界があり
 どこを見ても町があり
 どこを見ても菊花がいた
 無限に存在する世界が一所に全て重なり合ったかのように
 無限に重なり合う世界の無限の菊花は無限に重なり合い

「あ、ああああああああああ、ああ、あああああ」

 無限に圧縮されてぎちぎちと押し潰され、骨も皮も血肉も臓腑も全てが無限に混ざり合う

「おか、あ、さん」

 夢の世界で、蜘蛛の糸よりも細く押し潰された菊花は、元の世界でもまた同じように変質を遂げ
 水風船を握り潰したかのようにぱんと爆ぜた

「菊花っ!?」

 その有様を目の当たりにした真兎が、悲鳴じみた絶叫を上げる
 親友の惨劇に目を奪われたその背後で、空間が揺らぐ
 それはただの寝返りのようなもの
 だが、それが起こす有様は既に目の当たりにしており

「――――――」

 空気が一瞬で白熱し
 その熱を感じる暇もなく
 真兎という存在は微粒子の一粒も残す事なく、魂という概念すら残さずに焼き尽くされた

―――

「……確率論でゼロとみなす程度の成功率ね。ほぼ確実に、こうなるわ」

 腕を押さえ、脂汗を拭いながら未来は『パンドラの箱』で視た未来を語る

「あの子達では、ただの無駄死に。私達が甘んじる、必要な犠牲ですらない」
「ならば、どうする?」

 彼らの手元に残っているのは、『コトリバコ』と『リンフォン』のみ
『コトリバコ』の呪詛で『リンフォン』の門を開いたとしても、『リョウメンスクナ』を依代としていない以上、空に広がる『アザトース』そのものにその門をくぐらせなければいけない

「『アザトース』という無限の世界に対抗できるのは……いえ、対面できるのは、同じ無限を持つ者」

 未来の視線の先には、呆けた顔で空を、『アザトース』を見上げている百華の姿
 そしてその傍らに立つ十也、その向こうで九衛と八澄を庇うように支えている『ともだち』

「……けど、対面させてしまえば最悪……『アザトース』の覚醒すら起こりえる」
「君の『パンドラの箱』とて、この世の全ての災厄を封じてきた代物だ。『アザトース』でもどうにかできないかね」
「あれは、この世の全ての外にあるものだから無理です。たとえ出来たとしても、私が死んだり箱が開いたり壊れたりしただけで大惨事になるわ。そういうあなたの、この世界は?」
「世界という理の外にある以上は、私も無理だね。実際に世界の狭間すら壊されてこの様なわけだ」

 砕け散り大穴の開いた空を、昭彦は忌々しげに睨みつける

「それならば、最悪の事態を打ち払うための、必要な犠牲を払うべき、でしょう?」

―――

「やはり人間は理解し難い」

 浅黒い肌の痩身の少女はそう呟き、砕けた空から覗く世界を見下ろしている

「我が主を求めながらも、恐れ、怖れ、畏れ、懼れ、目の当たりにすれば狂い果てる。実に滑稽極まりない」

 二人の黒服の画策を全て知りながら、それを許容して
 その背を押した亡き男の遊戯を知りながら、それを許容して

「人間はいつも求める。だから与える。なのに狂い果て破滅する」

 下劣な太鼓とか細いフルートの音をBGMに
 呆けた踊りに興じる異形の神々をバックダンサーに

「求めたものを目の当たりにして、何故狂うのだろう。ああ興味深い、興味深い。どうすれば人間は、求めるものを理解し向き合えるようになるのだろう」

 冷笑を浮かべながらも、楽しそうに、愉しそうに

「さあ愛しき人間よ。愛しき我が主と相対する事ができぬなら。理解できず畏怖し狂い果てる『新しい価値を見出す未来』に耐えられぬなら」

 都市伝説が、神話伝承が存在するこの世界で
 無数の貌を持ち、無数の名を持つ、無数に存在する神が一柱
『ナイアーラトテップ』は、主である『アザトース』をあやし寝かしつける楽団と神々を指揮しながら

「さあ、どのように。どのように、事を先送りにする?」

―――

 空に在りながら空よりも巨大な『アザトース』からすれば、ほんの塵一つ程度のものが、その体躯を離れ地上へと落下する
 緑色をしたそれは空気の中を転げ落ちるように、地上へと堕ちていく
 それはやがて二つに分かれ、二人の少女の頭上へと迫る
『アザトース』から目を背けた、広瀬九衛の背へと
『アザトース』を見詰める、逢瀬百華の瞳へと
 真っ直ぐに
 真っ直ぐに


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