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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代ーズ-23

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匿名ユーザー

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23 不通、不審、不在




「普通だな……」


 夜の学校町、東区、もう22時前
 中学の校庭に立ち、校舎の方を眺める

 「組織」所属の野郎に追い回された一夜から
 俺は夜中の徘徊を控えていたのだが、今回は特別だ

 此処へ来た理由は一つ、東ちゃんに会うためだ
 さっきまで中学の敷地内を色々見て回って東ちゃんを捜していた
 ひょっとして屋上に居るんじゃないかとも考えたが、その気配も無さそうだ

 あの日、初めて花房君(と「組織」のワイルド野郎)と出会い
 成り行きで三年前の事件について知ることになったあの日、俺は東ちゃんと出会った
 あの事件の犠牲者で、今は都市伝説「繰り返す飛び降り」になった子だ

 結局俺は色々気になって、もう一度東ちゃんに会いに行くことにした
 どうにもあの日の東ちゃんの様子が気に掛かって仕方なかった

 初めて彼女を見たときは虚ろな笑顔、その後に話し掛けられたときの様子は普通だった
 それが事件の再現を見ている途中で東ちゃんの顔は虚ろに戻り
 最後に見たときは泣きそうな顔をしていた
 そして、彼女は唐突に姿を消した

 東ちゃんのあの様子も気になったし
 ついでにあの事件の話を聞きたくて、彼女に会えないかと夜の中学をお邪魔したんだ

 正直、怖くないわけじゃない。いや違う、今は来たことを若干後悔している
 何故って、此処は俺が「組織」所属の刀使い&武者亡霊に襲われた因縁の場所だからだ!
 来る前は東ちゃんの方が心配だし、もう関係ないね! とか考えていたが、甘かった
 思いつきで行動するんじゃなかった、また「組織」の奴とかち合う危険性は大アリなんだから

 仕方ない、もう帰ろう

 結構あちこち捜したが東ちゃんの姿は見えない
 もしかしたら彼女は校舎から抜け出して外出中なのかもしれない
 でもそれも妙だな、自分の“領域”から自由に移動なんて可能だろうか
 東ちゃんがコードから逸脱してるんなら、そういうことも出来るかもしれないけどな

 念のため電話してみるか
 携帯を引っ張り出して、何度も電話した東ちゃんの番号にもう一度掛けてみた

 あの日、彼女から貰った電話番号のメモはそのまま花房君にあげた
 しかーし俺は彼女の電話番号を一切記憶しなかったわけではない
 というわけで俺も東ちゃんの電話番号はバッチリ控えている

 控えているんだが、結果は見えていた
 俺は何度か東ちゃんに電話してみたが彼女に繋がることは無かった


 お掛けになった電話番号は、現在使われておりません


 そう、これだ
 電話しても決まってこのアナウンスが流れる
 俺が番号を記憶し間違えた可能性? 東ちゃんのメモは携帯で撮影しといたのでそれは無い
 というわけで考えられるのは東ちゃんが自分の番号を書き間違えたか
 それとも、この番号は本当に不通か

 花房君も彼女に電話したんじゃないだろうか
 彼に確認した方がいいかもしれない、そっちも繋がらなかったのかどうかを
 今度聞いてみるか、いや今聞こう。電話したいところだが時間も遅いのでメールでいいだろう
 ところで俺はメールを書くのが凄い苦手だ。具体的に言うと携帯で文字をちまちま入力するのが苦手

 とりあえず中学を出てからメールを書いた方がいいかもしれない
 さっきから複数の都市伝説っぽいニオイも感じる、距離はまだ近くないのが幸いだ
 今日はもう立ち去った方がいい、東ちゃん捜しはまた今度にしよう










          ●



「アイツ、怪しくない?」
「そんなに怪しくないと思うのー」


 東区の中学から出てきた奴は商業高校の制服を着ている
 その怪しい奴の後ろ姿を電柱の陰から監視している連中がいた

 電柱に体を隠すようにして商業生の背中を睨みつけるのは
 闇夜にあっても人の目を引くであろう、鮮やかな赤い髪をした少女だった
 腰までの丈の羽織り物の下からスクール水着のような衣装を着用している怪しい女だ
 おまけに彼女の肩辺りに乗っている羊のぬいぐるみに小声で話し掛けており、輪を掛けて怪しい

 彼女の名はマジカル☆ソレイユ
 露出魔でも自称魔法少女でも無く、れっきとした都市伝説契約者だ
 彼女が何をしているのかというと、先日襲い掛かってきた変態クマの捜索である


「大体、夜の中学で何してるのよアイツ、絶対怪しいわ」
「そこは、うーん……、怪しいなのー、でもぉ……」
「アイツ契約者だと思う? メリー、どう? わかる?」
「もっと近づかないとわかんないなのー」


 何やら羊のぬいぐるみと怪しげな会話を交わしている


「アイツ、絶対クマの本体よ」
「ソレイユちゃん、メリーの勘だけどあの人は犯人じゃないと思うのー」
「そう? 私はアイツが怪しい。うん、絶対」
「なんで怪しいと思うのー?」
「……直観よ」
「あ、今間があったなの! 今絶対ちょっと考えてから言ったなの!」


 ソレイユはあの商業生こそ変態クマの本体では無いかと考えているようだ
 仮に商業生が契約者であったとすれば、疑惑はより深まるというものである
 操作系統の能力でぬいぐるみを操り変態行為に及んでいても不思議ではない


「必ず尻尾を掴んでボコボコにしてやるわ……!」


 ソレイユの言葉に恨みが籠る
 卑猥な触手で狼藉に及ぶ不埒な契約者を野放しにしてはならない
 このとき、彼女のなかにある妙な正義感は既に燃えに燃え上がっていた

 ソレイユと羊のぬいぐるみは引き続き怪しい商業生を監視すべく
 電柱の陰から陰へと音もなく移動し始めた

 果たして、かの変態テディベアの本体は
 前方を行くあの商業生こと早渡脩寿であるのか
 それはまだ、不明である










          ●



「なんでサクリじゃないんだろ」


 早渡脩寿が中学から去った後
 東一葉は独り、校舎の屋上に居た

 返しの付いたフェンスの外側に立ち
 屋上の縁から夜の闇に塗りつぶされた下方を覗き見ている

 靴を脱いで
 しかし、後ろ手にフェンスをしっかり掴みながら


「なんでわたしなんだろ」


 その自問は既に彼女が幾度となく繰り返してきたものだ


「戻ってきたのがサクリだったら、みんな喜んだのに」


 最早自分が何を呟いているのか、自覚しているのかすら覚束ない


「これが全部悪い夢で、わたしが死んだのも全部夢でさ」


 最早自分が誰に呟いているのか、それすら分からずに


「ここから飛び降りたら、目が覚めるかな」




 なんてね
 フェンスを掴む手が震える
 本当は飛び降りてみる勇気なんか無い癖に
 そう、心の中で、誰かが嘲るような口調で、馬鹿にしてくる
 それが他ならぬ自分の声であることに気付いたのは、もう少し経ってからだ



「何やってんだろ、わたし」


 東は漸く
 自分が以前と同じようにして、屋上の縁に立っているのだということを理解した

 怖い
 嫌だ、死にたくない
 戻ろう

 もう既に自分が死んでいることを、半ば忘れたままで
 彼女は震える手でフェンスを強く握りしめながら、フェンスの内側へと戻ろうとして


「――ふぇ?」


 どういうわけか、足を滑らせて


「   ぅ、あ」


 校舎の下に広がる闇の中へ、堕ちていった










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