……余計な手間を取らされた
メルセデスは小さく舌打ちし、再び携帯を弄りだす
メルセデスは小さく舌打ちし、再び携帯を弄りだす
「……探しモノは見つかった。次の段階に入る」
子飼いへの、連絡
だが、今までとは違う指示を出す
だが、今までとは違う指示を出す
「捜索や捕縛に加わる必要はない………「暴れろ」、できるだけ派手に、な」
この、学校町内で暴れまわれ
そう、指示を出す
そう、指示を出す
「好き勝手やればいい。傷つけるなり殺すなり奪うなり、好きにやれ…あぁ、お前のグループ連中にも伝えろ」
悪意のばらまき
憎悪のばらまき
暴力のばらまき
憎悪のばらまき
暴力のばらまき
好きにやれ
そう、指示を出す
エイブラハム・ヴィシャスの目的を達成するために必要な行動
そう、指示を出す
エイブラハム・ヴィシャスの目的を達成するために必要な行動
たとえ
それが、無駄な行為であるとわかっていても
今は、それに従うまでだ
この街がどうなろうが、自分はどうでもいい
それが、無駄な行為であるとわかっていても
今は、それに従うまでだ
この街がどうなろうが、自分はどうでもいい
「…うん?俺か?俺は………」
自分のやりたいようにやるだけ
まずは
まずは
「…火の粉を振り払ってから、本格的に動く」
攻撃を、背負っていた棺桶で受け止める
金属音が鳴り響き、襲撃者は距離を取ってきた
携帯の通話を切り、その小さな襲撃者を見下ろす
金属音が鳴り響き、襲撃者は距離を取ってきた
携帯の通話を切り、その小さな襲撃者を見下ろす
「三度目、か」
そう
それは、二度、自分を襲撃してきた相手
「組織」の上位ナンバーの一人、レクイエム
その特徴的な白髪と、外見年齢に見合わぬ胸元を間違えるはずもない
…こんな特徴的な外見の子供、そうそういないだろう
自分の知っている、あの金色の目の子供の他には
それは、二度、自分を襲撃してきた相手
「組織」の上位ナンバーの一人、レクイエム
その特徴的な白髪と、外見年齢に見合わぬ胸元を間違えるはずもない
…こんな特徴的な外見の子供、そうそういないだろう
自分の知っている、あの金色の目の子供の他には
「………っもっと早く、始末するべきだった」
「できなかっただけだろ?「組織」上位ナンバーさんよ」
「できなかっただけだろ?「組織」上位ナンバーさんよ」
くっく、と笑って見せる
今日もまた、雪が降っている
…メルセデスに、有利な状況
今日もまた、雪が降っている
…メルセデスに、有利な状況
「今日は、遊んでやっている暇はいないだが?」
「こちらとしては、お前を見逃す事などできん………ここで、始末する!」
「……ここで、ねぇ?」
「こちらとしては、お前を見逃す事などできん………ここで、始末する!」
「……ここで、ねぇ?」
辺りを見回す
…住宅街のど真ん中
別に、ここでなくともよいのだが…
…住宅街のど真ん中
別に、ここでなくともよいのだが…
(………まぁ、ここでも「面白くなる」かね?)
口元に、小さく笑みを浮かべる
…レクイエムが、剣を生成して切りかかってきた
その攻撃を、今まで通り、棺桶で受け止める
…レクイエムが、剣を生成して切りかかってきた
その攻撃を、今まで通り、棺桶で受け止める
今まで通り
いや、違う
いや、違う
「む……!?」
ガキィン、と
響いた、鈍い金属音
響いた、鈍い金属音
確かに、メルセデスは、レクイエムの攻撃を棺桶を盾にして受け止めた
レイクイエムの必殺の一撃は………その棺桶についていた、丈夫な南京錠を、一撃で破壊する
レイクイエムの必殺の一撃は………その棺桶についていた、丈夫な南京錠を、一撃で破壊する
「っち」
わざと舌打ちして、棺桶から手を放して距離を取った
メルセデスのその反応に、危険を感じたのだろう
レクイエムもまた、棺桶から距離を取った
メルセデスのその反応に、危険を感じたのだろう
レクイエムもまた、棺桶から距離を取った
「あーぁ……鍵を壊しちまって。知らねぇぞ?」
わざと、そうなるように仕向けたのだが
それが偶然であったかのように、装ってやる
その方が面白い
それが偶然であったかのように、装ってやる
その方が面白い
「…その、棺桶の中身……「13使徒」の一人、「ジャバヴォッグ」 サミュエル、だな?」
「あぁ、なるほど。その程度のは推察できたか……ご名答」
「あぁ、なるほど。その程度のは推察できたか……ご名答」
二人の言葉の合間に
---っばくん!!と
鍵が破壊された棺桶のふたが、内側から吹き飛ばされた
初めてあらわになったその中身に………レクイエムが息をのんだのが、わかる
---っばくん!!と
鍵が破壊された棺桶のふたが、内側から吹き飛ばされた
初めてあらわになったその中身に………レクイエムが息をのんだのが、わかる
棺桶の中に収められていたのは、一人の男
細いその体は、何重にも縄と鎖で縛られていて、目元には札が張られている
生気の薄い顔、まるで、人形のようにも見えるだろう
細いその体は、何重にも縄と鎖で縛られていて、目元には札が張られている
生気の薄い顔、まるで、人形のようにも見えるだろう
「そいつが、「ジャバヴォッグ」 サミュエル。俺達の隠し玉の一つだよ」
「……っ貴様、自分達の仲間を、このような扱い……」
「………仲間?」
「……っ貴様、自分達の仲間を、このような扱い……」
「………仲間?」
レクイエムの言葉を、メルセデスは嘲笑う
……仲間?
こんな存在が、自分の仲間のはずがない
……仲間?
こんな存在が、自分の仲間のはずがない
「こいつは仲間じゃない。「駒」だ」
飲まれ、自らの狂信に飲まれた愚か者
こんな者が、自分の仲間であるはずがない
こんな者が、自分の仲間であるはずがない
「--------ぁ」
ひゅう、と
サミュエルの、唯一自由になっている喉が、鳴った
口元から、声が、漏れ出す
サミュエルの、唯一自由になっている喉が、鳴った
口元から、声が、漏れ出す
「ぁ、ぁ、あ、ぁ、あ、あ、あ、ぁ、ァ、あ、ア、ぁ、あ、あ、あ、ぁ、あ、…………」
カタカタと、サミュエルを束縛する鎖が、震えだした
ぶち、ぶちっ、と
鎖の下の縄が……切れ始めていた
ぶち、ぶちっ、と
鎖の下の縄が……切れ始めていた
「…《トゥーバ・ミールム》!!」
レクイエムの攻撃が、サミュエルに向かう
だが、もう、遅い
だが、もう、遅い
ぶちぶちと、縄が、鎖が、まるで紙屑のように引きちぎられていく
ぼこんっ、と不気味な音が響く
……サミュエルの肉体が、肥大化し始めた
その衝撃で、レクイエムが飛ばした刃物がはじかれる
ぼこんっ、と不気味な音が響く
……サミュエルの肉体が、肥大化し始めた
その衝撃で、レクイエムが飛ばした刃物がはじかれる
「あ、ぁ、あ、あ、あ、ぁ、ぁ、ア、ぁ、あ、ァ、あ……っ!!」
ぼこぼこと、不気味に肥大化し続ける筋肉
肉体が変化するたび、サミュエルが苦悶の声を上げる
肉体が変化するたび、サミュエルが苦悶の声を上げる
ただ筋肉が肥大化しているだけではない
元からある人間の頭の左右と後ろに、ライオン、ウシ、ワシの頭が出現した
背中から四枚の翼が生え、足が子牛の足のように変形する
そして、その体は、まるで炭のように燃え始めた
ふわりと、宙に浮かぶ体
その全長は……三メートルはあるだろうか
元からある人間の頭の左右と後ろに、ライオン、ウシ、ワシの頭が出現した
背中から四枚の翼が生え、足が子牛の足のように変形する
そして、その体は、まるで炭のように燃え始めた
ふわりと、宙に浮かぶ体
その全長は……三メートルはあるだろうか
「この、姿………智天使(ケルブ)かっ!?」
「ご名答」
「ご名答」
智天使(ケルプ)
偽ディオニュシオスの提唱した天使の九階級における、序列2位
その名は「祈るもの」、もしくは「知識」と解釈される
………もっとも、このサミュエルに、その名前はふさわしくないだろう
飲まれた際に自我を失い、もはや獣のような存在に成り果てたのだから
偽ディオニュシオスの提唱した天使の九階級における、序列2位
その名は「祈るもの」、もしくは「知識」と解釈される
………もっとも、このサミュエルに、その名前はふさわしくないだろう
飲まれた際に自我を失い、もはや獣のような存在に成り果てたのだから
「あぁ、ただ、こいつが契約して飲まれたそれが、ケルブだと思うなよ?」
「…何」
「こいつを飲んだのは」
「…何」
「こいつを飲んだのは」
--------ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!
サミュエルが、天に向かって叫ぶ
それに呼応するように…サミュエルの周囲の空間が、歪む
それに呼応するように…サミュエルの周囲の空間が、歪む
「こいつを飲んだのは、「ケルビム」………後は、わかるな?」
「-------っ!!」
「-------っ!!」
サミュエルの周囲に、無数に出現したもの
それは……サミュエルと全く同じ姿をした、ケルブの群れ
全長は、サミュエルよりもやや小さく、2メートル程度か
それは……サミュエルと全く同じ姿をした、ケルブの群れ
全長は、サミュエルよりもやや小さく、2メートル程度か
「き、貴様!?こんな存在、町中で解放しては……!?」
「ま、この辺りの住宅街、ヘタをしたら全滅だろうな?」
「ま、この辺りの住宅街、ヘタをしたら全滅だろうな?」
くくくっ、と
メルセデスは、レクイエムを見下ろして笑う
メルセデスは、レクイエムを見下ろして笑う
そうだ
こんな住宅街のど真ん中でサミュエルのような存在を解放したら、どうなるか
メルセデスはわかっていた
そのうえで、そうなるように仕向けたのだ
こんな住宅街のど真ん中でサミュエルのような存在を解放したら、どうなるか
メルセデスはわかっていた
そのうえで、そうなるように仕向けたのだ
「本当なら、繁華街のど真ん中ででも解放させてやろうかと思っていたが、まぁ、ここでも面白そうだな」
「…っふざけた事を!!」
「ま、今は自分の身を心配した方が、いいんじゃないのか?」
「…っふざけた事を!!」
「ま、今は自分の身を心配した方が、いいんじゃないのか?」
サミュエルは、エイブラハムの目的に、都合がいいように調整されている
ぎょろり
サミュエルと、ケルビムの、目は
ぎょろり
サミュエルと、ケルビムの、目は
都市伝説であるレクイエムを……天使ではなく、悪魔でもない彼女を、外敵として、捕えていた
「悪ぃが、そいつは一度目覚めたら、俺でも押さえつけるのに三日はかかる化け物でなぁ?………せいぜい、生き延びるんだなぁ!!
てめぇを殺したら、その後にこいつらは、この辺りを焼き尽くすだろうよ!!最も、お前が大したことなかったら、お前を仕留める前に何体かは、周囲を破壊し始めるかもなぁ!?」
「……貴様ぁあああああっ!!??」
てめぇを殺したら、その後にこいつらは、この辺りを焼き尽くすだろうよ!!最も、お前が大したことなかったら、お前を仕留める前に何体かは、周囲を破壊し始めるかもなぁ!?」
「……貴様ぁあああああっ!!??」
レクイエムの憎悪の叫びを、メルセデスはけらけらと笑いながら受け止めて
その背中に氷の翼を生成して、その場から飛び去った
その背中に氷の翼を生成して、その場から飛び去った
「「「「「「「ぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁあああああああああああああっ!!!!!」」」」」」」
サミュエル達の雄たけびが、響き渡る
………今、まさに
死闘の火ぶたは、切って落とされた
死闘の火ぶたは、切って落とされた