甘い香りが、まき散らされる
誘惑の芳香
ゲルトラウデが放っていたそれを塗り消すように、それは放たれていく
誘惑の芳香
ゲルトラウデが放っていたそれを塗り消すように、それは放たれていく
ゲルトラウデの、どこかくどく甘ったるい香りとは、どこか違う
甘いけれど、しつこくないその甘い香りは、どこまでも広がっていって
甘いけれど、しつこくないその甘い香りは、どこまでも広がっていって
----びくんっ!と
ゲルトラウデに操られていた男達の体が、小さく痙攣した
ゲルトラウデに操られていた男達の体が、小さく痙攣した
二人分の魅了の力が、男達の中で拮抗する
どちらの魅了の力が、より強いか
その結論は、さほど時間がかかる事なく、表に出た
どちらの魅了の力が、より強いか
その結論は、さほど時間がかかる事なく、表に出た
ぴたり、と
男達の動きが、止まった
硬直したように、動かない
男達の動きが、止まった
硬直したように、動かない
「-----っ」
ゲルトラウデが、表情を歪めた
己の敗北を、自覚したように
己の敗北を、自覚したように
「バカ、な………妾の力が…あんな、落ちこぼれに劣っているとでも、言うのかっ!?」
「この結果を見れば、答えはわかるだろ」
「この結果を見れば、答えはわかるだろ」
ユニコーンに乗ったヘンリーが、ゲルトラウデを軽く睨みながら告げてきた
ディランが能力をコントロールできている証なのか、それとも、ディランの魅了すら効果がないと言うのだろうか、ヘンリーはディランの魅了にも耐えきっているようだ
ディランが能力をコントロールできている証なのか、それとも、ディランの魅了すら効果がないと言うのだろうか、ヘンリーはディランの魅了にも耐えきっているようだ
「お前の負けだ。降参したらどうだ?」
「……っ認めぬ!妾が、あんな落ちこぼれに、劣るなど……!」
「……っ認めぬ!妾が、あんな落ちこぼれに、劣るなど……!」
認める事など、できるものか
自分は、夜の女王、夢魔の女王
女王、リリス
自分は、夜の女王、夢魔の女王
女王、リリス
それが、敗北を認めるなど
一介の淫魔に、劣っている事を認めるなどと
できるはずが、ない
一介の淫魔に、劣っている事を認めるなどと
できるはずが、ない
それに
(……あの落ちこぼれに劣るのならば、妾は……エイブラハム様に、捨てられる……!)
それは、嫌だ
女王たる自分が、唯一、ついていこうと決めた相手
この世界の新たな神となるべき男
女王たる自分が、唯一、ついていこうと決めた相手
この世界の新たな神となるべき男
それに、捨てられる訳にはいかない
世界を新たに作り替えた後、男共の支配権を自分のものとさせてもらう約束なのだ
………自分の力が、エイブラハムの役に立ち続ける限り
世界を新たに作り替えた後、男共の支配権を自分のものとさせてもらう約束なのだ
………自分の力が、エイブラハムの役に立ち続ける限り
だが
それは、あの淫魔が、エイブラハムの傍を離れたから
逃げ出したから
だから、その身代わりとして、求められただけの事
それは、あの淫魔が、エイブラハムの傍を離れたから
逃げ出したから
だから、その身代わりとして、求められただけの事
………あの淫魔に劣っている
それを、知られたら
エイブラハムは、あの淫魔を無理矢理にでも、己の配下に置こうとするだろう
自分は、捨てられる!
それを、知られたら
エイブラハムは、あの淫魔を無理矢理にでも、己の配下に置こうとするだろう
自分は、捨てられる!
どうするか?
ゲルトラウデは……否、リリスは考える
ディランを鋭く、醜く睨み付けながら、思考をフルスピードでめぐらせる
ゲルトラウデは……否、リリスは考える
ディランを鋭く、醜く睨み付けながら、思考をフルスピードでめぐらせる
……リリスの憎悪のこもった視線からディランは逃げない
視線を逸らさない、震えてすら、こない
視線を逸らさない、震えてすら、こない
その、ディランに……しっかりとしがみついている、繰
先ほどの仮契約の行いの衝撃か、頬を赤くして固まっている、その少女を見て
先ほどの仮契約の行いの衝撃か、頬を赤くして固まっている、その少女を見て
ゲルトラウデは
小さく、笑った
小さく、笑った
「……く、くく……愚かな、落ちこぼれ。お前のその契約者………妾が、いただくぞ」
「………っ」
「………っ」
ディランが、警戒するように繰を抱きしめた
ゲルトラウデが行おうとする何かの行為から、彼女を護ろうとしての行為だろう
だが、無意味だ
ゲルトラウデが行おうとする何かの行為から、彼女を護ろうとしての行為だろう
だが、無意味だ
「この体はもういらぬ。もっと若いその体……………妾が使ってやろう!」
ゲルトラウデ、否、リリスはけらけらと笑いながら、そう叫んで
ゲルトラウデの体を飛び出して、繰の中へと、入り込んだ
to be … ?