……かたかたと、小さくジョルディは震えていた
見逃す、と
あの小さな少女はそう言った
………けれど
もし
もしも
他の監視者達に、見つかったら、自分は
いや
………イザーク、は
あの小さな少女はそう言った
………けれど
もし
もしも
他の監視者達に、見つかったら、自分は
いや
………イザーク、は
「……おい」
「っ!?」
「っ!?」
いつの間にか、傍に真が近づいていた事実に気付けなかったジョルディ
ぎゅう、と気絶しているイザークの体を抱きしめ、怯えたように真を見上げる
ぎゅう、と気絶しているイザークの体を抱きしめ、怯えたように真を見上げる
「ジョルディさん、大丈夫。俺達は、貴方達に戦う意思がないなら、これ以上戦いません」
「………」
「………」
………真の、その意思はうれしい
だが
このままでは、自分達は
だが
このままでは、自分達は
ジョルディの中に、一瞬、迷いが生じて
…しかし
それは、すぐに絶望へと変わっていく
…しかし
それは、すぐに絶望へと変わっていく
どちらにせよ、自分達に未来などないではないか
この状況で、真とエーテルを相手に勝てるはずもないのだ
どちらせよ
自分達には、死しか道は残されていない、と
思考は、ゆっくりと絶望に向かっていく
この状況で、真とエーテルを相手に勝てるはずもないのだ
どちらせよ
自分達には、死しか道は残されていない、と
思考は、ゆっくりと絶望に向かっていく
「……駄目、それじゃ、駄目なんだ…」
「ジョルディさん?」
「…戦わなきゃ……ボクが、戦わなきゃ……」
「ジョルディさん?」
「…戦わなきゃ……ボクが、戦わなきゃ……」
勝てないとわかっていても
戦わなければならない
自分が死ぬとしても
せめて、イザークだけでも…
戦わなければならない
自分が死ぬとしても
せめて、イザークだけでも…
「もう、戦わなくともいい。あのローズマリーとか言う奴は、お前達を見逃すと言っていただろう?…メルセデスの命令で、と言うのは気にかかるが…」
「----っでも!」
「----っでも!」
エーテルの言葉に、ジョルディは首を左右にふる
駄目なのだ
たとえ、自分達を監視していたローズマリーが、自分達の状況を報告しなかったとしても
もし、他の監視者にでも、見つかったら…
たとえ、自分達を監視していたローズマリーが、自分達の状況を報告しなかったとしても
もし、他の監視者にでも、見つかったら…
「……でも!ボクが戦わないと!!ボクが負けたり、エイブラハム様を裏切ったら…………っ」
そんな事を
して、しまったら
して、しまったら
「……っイザークが、また……………屍に、戻ってしまう………」
「-----!?」
「-----!?」
ジョルディが、絞り出すようにつぶやいたその言葉に
真は、驚いたようにイザークに視線を向けた
気絶しているイザーク……息は、している
どう見ても、死者ではない
真は、驚いたようにイザークに視線を向けた
気絶しているイザーク……息は、している
どう見ても、死者ではない
「…どういう事だ?」
エーテルは、真とは少し違う反応を返す
彼が思いだしたのは、イクトミが呟いていた事
…それは、これを指していたとでも言うのだろうか
彼が思いだしたのは、イクトミが呟いていた事
…それは、これを指していたとでも言うのだろうか
イザークの体をきつくきつく抱きしめたまま
ジョルディは、ぼそぼそとエーテルの問いに答える
ジョルディは、ぼそぼそとエーテルの問いに答える
「…イザークは、一度、死んでいるんです……ボクのせいで。ボクが、イザークに助けを求めたから……」
あの日、タチの悪い大人達に囲まれて、殺されそうになっていた自分
そこに、食料を調達しに行っていたジョルディが、帰ってきて
助けを求めていた自分を、助けようとしてくれて……
そこに、食料を調達しに行っていたジョルディが、帰ってきて
助けを求めていた自分を、助けようとしてくれて……
大人に、力任せに壁に叩きつけられて
後頭部を、強かに打って
……その、当たり所が悪かったのか
後頭部を、強かに打って
……その、当たり所が悪かったのか
あの瞬間に
イザークは、一度、命を落としていたのだ
イザークは、一度、命を落としていたのだ
イザークの、その死にざまを、見て
自分の赤かった髪は、今の真っ白な髪へと変貌した
自分の赤かった髪は、今の真っ白な髪へと変貌した
「でも……そのイザークを、エイブラハム様は、蘇らせてくれて………ボク達が、エイブラハム様の言うことを聞いていれば………イザークを、このまま生かしてくれる、って…」
だから
だから
だから
「……っだから。ボク達が、負けたら…戦うのを、諦めたら、裏切ったら。イザークは、屍に戻されてしまう。ボクは………そんなの、嫌だ。絶対に!」
「そんな……」
「そんな……」
真の顔に、怒りの色が浮かぶ
それは、エイブラハムへの怒り
イザークの命を盾に、ジョルディを望まぬ戦いの場に置かせているその元凶への、怒りだ
それは、エイブラハムへの怒り
イザークの命を盾に、ジョルディを望まぬ戦いの場に置かせているその元凶への、怒りだ
「……イザークは、その事実を知っているのか?」
エーテルは……その、真が抱いたのと同じ怒りを、抱えながらも
それを表に出す事を抑え込みながら、続けてジョルディに問う
すると、ジョルディは少し悲しそうな顔をして、首を左右に振った
それを表に出す事を抑え込みながら、続けてジョルディに問う
すると、ジョルディは少し悲しそうな顔をして、首を左右に振った
「…イザークは、知りません……逆に、勘違いさせられています」
「勘違い?」
「……あの時死んだのは、ボクの方だ、って思ってる。自分が戦い続けないとボクが屍に戻されると、そう勘違いしてる…」
「勘違い?」
「……あの時死んだのは、ボクの方だ、って思ってる。自分が戦い続けないとボクが屍に戻されると、そう勘違いしてる…」
それは、蘇ったときの記憶の混乱のせいか
それとも、蘇らせる時に、エイブラハムが記憶に手を加えたのか
イザークは、そう記憶のとり違いをしているのだ
ジョルディは、そのイザークの勘違いを指摘できぬまま、今日まで来ていた
もし、真実を告げたら
真実を、イザークが知ったら
その瞬間に、イザークが屍に戻ってしまうのではないか?
そんな事を考えると、恐ろしくて仕方がなかったから
それとも、蘇らせる時に、エイブラハムが記憶に手を加えたのか
イザークは、そう記憶のとり違いをしているのだ
ジョルディは、そのイザークの勘違いを指摘できぬまま、今日まで来ていた
もし、真実を告げたら
真実を、イザークが知ったら
その瞬間に、イザークが屍に戻ってしまうのではないか?
そんな事を考えると、恐ろしくて仕方がなかったから
「………ねぇ」
救いを求めるように
ジョルディは、真とエーテルを見つめた
ジョルディは、真とエーテルを見つめた
今は、監視者がいない
自分達は解放されている
自分達は解放されている
「ボク達は、どうすればいいの?」
そのせいか
今まで、押し込めていた弱さが
今まで、押し込めていた弱さが
「……どうすれば。イザークは、屍に戻らずにすむの?」
表に、露出して
「………お願い、です」
-----止まらない
「………ッボク達を……………助けて…………!!」
イザークを、大切な親友の体を抱きしめて
真とエーテルを見上げ、ジョルディは訴えた
真とエーテルを見上げ、ジョルディは訴えた
誰にも告げられずにいた恐怖
それすらも、隠せぬままに
それすらも、隠せぬままに
ただ、ただ
救いを、求めて
救いを、求めて
to be … ?