…レティの死体は、消滅しなかった
飲まれていても、まだ、人間の部分が残っていたとでも言うのか
何かに助けを求めているような、しかし、その助けが間に合わない事を……「来ない事」を理解して絶望しているような、そんな死に顔
飲まれていても、まだ、人間の部分が残っていたとでも言うのか
何かに助けを求めているような、しかし、その助けが間に合わない事を……「来ない事」を理解して絶望しているような、そんな死に顔
「………」
見開かれたその瞼を、直希はそっと閉じてやった
せめてもの、慈悲のように
せめてもの、慈悲のように
「…やれやれ、約束を果たせなかったではないか」
そうして
天地に向かって振り返り、少し、困っているような表情を浮かべて見せた
天地に向かって振り返り、少し、困っているような表情を浮かべて見せた
直希が、レティの両親とかわしていたのだと言う約束
…それは、直希自身の手で、レティを殺すと言うものだ
レティを瀕死まで追い込んだのも、その命を奪ったのも…直希ではなく、天地
つまるところ、直希は約束を果たせなかった事になる
…それは、直希自身の手で、レティを殺すと言うものだ
レティを瀕死まで追い込んだのも、その命を奪ったのも…直希ではなく、天地
つまるところ、直希は約束を果たせなかった事になる
……果たさずとも、良いだろうに
影守はそんな感想を抱いた
…己が娘を、信頼しているのかもしれないが他人に殺すよう頼んでおくなど
その夫婦は、何を考えていたんだろうか
……レティが、危険な存在であることを、知っていて
それが、自分達の手に負えなくなった時の、保険
…それだけだと言えば、それだけなのだろう
だが
そうだと、しても
影守はそんな感想を抱いた
…己が娘を、信頼しているのかもしれないが他人に殺すよう頼んでおくなど
その夫婦は、何を考えていたんだろうか
……レティが、危険な存在であることを、知っていて
それが、自分達の手に負えなくなった時の、保険
…それだけだと言えば、それだけなのだろう
だが
そうだと、しても
(……それを背負わされた、こいつは)
この、甘いところが抜けない青年にとって
どれだけ重たくなるか、気づけなかったのだろうか
どれだけ重たくなるか、気づけなかったのだろうか
「お前にゃ向いてねぇだろ」
使い慣れない能力を発動した反動で、体力を消耗したせいか
ぐったりと塀にもたれかかりながら、天地は呟く
むぅ、と、直希は不満そうな声を出して……ぐら、と、その体がふらつく
中和剤を飲んでいたとはいえ、毒を飲んだダメージがやはり出ているのだろう
傍にいた友也が、その体を支えた
ぐったりと塀にもたれかかりながら、天地は呟く
むぅ、と、直希は不満そうな声を出して……ぐら、と、その体がふらつく
中和剤を飲んでいたとはいえ、毒を飲んだダメージがやはり出ているのだろう
傍にいた友也が、その体を支えた
「どこか、安全な所に…」
「あぁ、いや…僕は、天地と一緒にいるし、問題ないさ」
「あぁ、いや…僕は、天地と一緒にいるし、問題ないさ」
友也の言葉に、直希は小さく笑って答える
…血の気を失った顔
まるで、すぐにでも消え失せてしまいそうな錯覚を覚える
…血の気を失った顔
まるで、すぐにでも消え失せてしまいそうな錯覚を覚える
「それより、君は友美に、連絡を取った方が良いのではないかね?見ての通りレティは命を失い、「十三使徒」の一人が倒れた。戦況が動く、と言う事だ。できれば彼女には危険には首を突っ込まないでほしかったが、君達がここに来たのは彼女の指示と見た。彼女に、戦況を報告するのは重要だろう」
…影守達が、友美の指示でここに来たのだろう、という直希の推察
それを聞いて…天地の表情が、険しくなった
「余計な事をしやがって」と言う、そんな表情に近い
…影守達が来なければ、レティが能力を進化させる前に彼女を殺せたのだ、と、暗に訴えているようにも見える
それを聞いて…天地の表情が、険しくなった
「余計な事をしやがって」と言う、そんな表情に近い
…影守達が来なければ、レティが能力を進化させる前に彼女を殺せたのだ、と、暗に訴えているようにも見える
……実際、どうなったかは、わからない
影守達が、友美の指示でここに来なくとも、レティは能力を進化させたかもしれない
だが、彼らがここに来て、そして、直希と天地の意識がそちらに気を取られた隙にレティが能力を進化させてきたのも
…いや、彼らがやってきて、そのままでは能力が効かない相手が来たからこそ、レティが能力を進化させた
そうとも、とれる
天地は、そうとったのだろう
突き刺さる視線に、殺意すら混じっている錯覚を覚える
影守達が、友美の指示でここに来なくとも、レティは能力を進化させたかもしれない
だが、彼らがここに来て、そして、直希と天地の意識がそちらに気を取られた隙にレティが能力を進化させてきたのも
…いや、彼らがやってきて、そのままでは能力が効かない相手が来たからこそ、レティが能力を進化させた
そうとも、とれる
天地は、そうとったのだろう
突き刺さる視線に、殺意すら混じっている錯覚を覚える
「直希さんが、友美さんに連絡すればいいのでは?」
懐から携帯電話を取り出している直希に、在処がそう尋ねた
すると、直希はいや、と小さく首を左右に振った
すると、直希はいや、と小さく首を左右に振った
「いや、僕は、姉さん達に連絡を取る必要もあるのでね」
「そういえばエリカさん、だっけ?彼女は今回の件、動いてないの?」
「そういえばエリカさん、だっけ?彼女は今回の件、動いてないの?」
腕だけの姿で、希が直希に尋ねる
携帯を操作しながら、直希はそれにて身近に答えた
携帯を操作しながら、直希はそれにて身近に答えた
「姉さんには、マステマと一緒にヨーロッパに行ってもらっている」
「ヨーロッパに?」
「向こうでの、「教会」の動向を調べてもらうために、ね」
「ヨーロッパに?」
「向こうでの、「教会」の動向を調べてもらうために、ね」
それに、と
直希はやや、自虐的に笑う
直希はやや、自虐的に笑う
「…僕なんぞの連絡よりも、友也が連絡した方が、彼女を安心させられるだろうしね」
「………」
「………」
…相変わらず、直希は愛美の死は自分の責任であると考え、背負い込んだまま
母親を死なせた相手が連絡するよりは、身内が…血を分け合った双子の弟が連絡した方がいいだろうと、そういうように告げる
……直希自身の言葉が、そのまま、直希自身の心をえぐっている
その事実に、果たして直希は気づいているのだろうか
母親を死なせた相手が連絡するよりは、身内が…血を分け合った双子の弟が連絡した方がいいだろうと、そういうように告げる
……直希自身の言葉が、そのまま、直希自身の心をえぐっている
その事実に、果たして直希は気づいているのだろうか
「影守さん、貴方は、広瀬警部補に連絡を取らなくてもいいのかね?」
「え?」
「…こんな事態だ彼女も巻き込まれているだろう。彼女の部下には、ずいぶんと過激と言うか都市伝説相手でも対抗できる武器を所有している者がいるそうだから。そちらが動いたならば、彼女も動くだろう?」
「え?」
「…こんな事態だ彼女も巻き込まれているだろう。彼女の部下には、ずいぶんと過激と言うか都市伝説相手でも対抗できる武器を所有している者がいるそうだから。そちらが動いたならば、彼女も動くだろう?」
主に、その部下を止める意味で
…言われてみると、確かにそうである
美緒には、カラミティと言う友人の加護がある為、そうそう危険な目に合わないとは思うが…
……確認を、とるべきか
…言われてみると、確かにそうである
美緒には、カラミティと言う友人の加護がある為、そうそう危険な目に合わないとは思うが…
……確認を、とるべきか
「あの、私、ここでの用件が済んだならば、先輩のところに行きたいんですけど」
「居場所わかるの?」
「愛の力があれば何とかなると信じて疑いません」
「居場所わかるの?」
「愛の力があれば何とかなると信じて疑いません」
在処が空気を読んでいるような読んでいないような発言をする最中も、雪は降り続ける
日は既に沈み、月明かりが反射して雪が輝く
日は既に沈み、月明かりが反射して雪が輝く
一同が、次の行動へと移ろうとした、その時
…あの方向は、北区の方だろうか
そちらが、一瞬、光って
…あの方向は、北区の方だろうか
そちらが、一瞬、光って
漆黒の、巨大なドームのようなものが出現したのが、はっきりと、見えた
to be … ?