「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 我が願いに踊れ贄共・万能の魔法使い・過去-04

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
 すぅすぅと、小さな子供の寝息が聞こえる
 その音を頼りに、アモンはそこに近づいて行った

 ………あぁ、いたいた
 木陰に腰を下ろしているクローセルの膝の上に頭を置いて眠っている、自分の弟子
 近づいていくと、こちらの気配に気づいたのか、クローセルが顔を上げた
 ……おぉ、不機嫌そうな表情だ

「クローセル卿、すまんな。その子の面倒を見てくれていたようで」
「…面倒見ていた訳じゃねぇ。勝手にこっちの周りをうろちょろしてきていただけだ。鬱陶しい……さっさと、この餓鬼連れて行け」

 冷たさを纏った猫のような瞳が、アモンを睨みあげてくる
 改めて、アモンは眠っている自分の弟子に視線を落とした
 …ぎゅう、と、しっかりとクローセルの服の裾を握りしめている
 連れて行くには、この手をどうにかしなければならないが……眠っている子供の握力は、異常に強いものだ
 傷つけずに無理矢理引きはがすのは、困難だろう

「ふぅむ。その子はお前に懐いているようだし。もう少しこのままでも良いのではないかね」
「ざけんな。こんな餓鬼に好かれて何の得になるんだ。俺はあんた達の甘ったれた考えに付き合う気なんざねぇぞ」

 元々不機嫌そうだった顔を、さらに不機嫌に歪ませるクローセル
 この悪魔が笑っている顔など、もう何百年も見ていない気がする……もっとも、元々よく笑う性格でもなかったと思うが
 それでも……

「そう言うな。この子は随分とお前を好いている。お前の事を話しているこの子は、とても楽しそうだよ…「姉さん」の事を話している時と同じか、それ以上に、な」
「知るかよ。こいつが楽しいから、なんだって言うんだ。俺には関係ない」

 心底嫌そうに言いながら、クローセルはアモンから視線を逸らした
 …その拍子に、小さく子供が動いた
 こちらの会話が、煩かったのだろうか、起こしてしまったか…

 一瞬、言葉をとめたアモン
 だが、子供はむにむにと、体勢を入れ替えて再び寝息を立て始めた
 安心しきった、穏やかな寝顔を浮かべている

「見るといい、クローセル。この穏やかな寝顔を。信頼されている証拠だ」
「…だったら、何だ。悪魔を信頼するなんて、馬鹿のする事だろう」

 馬鹿で愚かだ、と
 吐き捨てるように、クローセルは言う

「流石、元人間だよ。悪魔なんか信頼しても、破滅の道しかないんだ。自ら破滅を選ぶなんて、愚か以外の何物でもない」
「…破滅させんよ。我らがな。お前も、この子を護る事を手伝ってくれるとありがたいのだがな」
「っは!こんな餓鬼、さっさとくたばればいい。護るって言うんなら、あんた達で勝手にやれ。俺は知らねぇからな」

 冷たく、言い切ったクローセル
 …この場にデモゴルゴーンがいたら、烈火のごとく怒りそうな事を
 まぁ、クローセルの性格を考えれば、デモゴルゴーンが怒ったとしても意にも解さないのだろうが


 だが
 お前は、気づいているだろうか?
 穏やかな表情で眠るこの子を見る、お前の眼差しが
 ほんのわずか、柔らかみを帯びている事実に

 暖かな感情を捨てきったつもりのお前の、冷え切ったお前の感情が
 死んでいない証拠を、この子供が見せてくれている事実に、気づいているか?

 それに
 本当に、この子が死ねばいいと感じているのならば
 -----何故
 殺されそうになったこの子を助けた?
 何故
 この子を殺そうとした彼女に、容赦ない殺気を浴びせた?

 お前は
 お前のした行動の意味に、気づいているのか?


「……うー……………クロ兄ぃ……」

 ぎゅう、と
 カラミティは、クローセルの服を掴み続けている
 まるで、自分の親か、兄にでもすがりついているかのように

 実の家族と触れ合う機会を失ってしまったこの子供は
 何故か、クローセルを「兄」として認識した
 「家族」だと、そう認識したのだ

(……デモゴルゴーンではないが、羨ましいな)

 悪魔の中で、このクローセルだけが
 この幼い魔法使いに「家族」だと認識された
 その事実を、アモンは羨ましく思い、そして


 できる事ならば
 この幼い魔法使いが、再び、「家族」を失うことがないように、と
 そう、願うのだった




to be … ?








タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー