すぅすぅと、小さな子供の寝息が聞こえる
その音を頼りに、アモンはそこに近づいて行った
その音を頼りに、アモンはそこに近づいて行った
………あぁ、いたいた
木陰に腰を下ろしているクローセルの膝の上に頭を置いて眠っている、自分の弟子
近づいていくと、こちらの気配に気づいたのか、クローセルが顔を上げた
……おぉ、不機嫌そうな表情だ
木陰に腰を下ろしているクローセルの膝の上に頭を置いて眠っている、自分の弟子
近づいていくと、こちらの気配に気づいたのか、クローセルが顔を上げた
……おぉ、不機嫌そうな表情だ
「クローセル卿、すまんな。その子の面倒を見てくれていたようで」
「…面倒見ていた訳じゃねぇ。勝手にこっちの周りをうろちょろしてきていただけだ。鬱陶しい……さっさと、この餓鬼連れて行け」
「…面倒見ていた訳じゃねぇ。勝手にこっちの周りをうろちょろしてきていただけだ。鬱陶しい……さっさと、この餓鬼連れて行け」
冷たさを纏った猫のような瞳が、アモンを睨みあげてくる
改めて、アモンは眠っている自分の弟子に視線を落とした
…ぎゅう、と、しっかりとクローセルの服の裾を握りしめている
連れて行くには、この手をどうにかしなければならないが……眠っている子供の握力は、異常に強いものだ
傷つけずに無理矢理引きはがすのは、困難だろう
改めて、アモンは眠っている自分の弟子に視線を落とした
…ぎゅう、と、しっかりとクローセルの服の裾を握りしめている
連れて行くには、この手をどうにかしなければならないが……眠っている子供の握力は、異常に強いものだ
傷つけずに無理矢理引きはがすのは、困難だろう
「ふぅむ。その子はお前に懐いているようだし。もう少しこのままでも良いのではないかね」
「ざけんな。こんな餓鬼に好かれて何の得になるんだ。俺はあんた達の甘ったれた考えに付き合う気なんざねぇぞ」
「ざけんな。こんな餓鬼に好かれて何の得になるんだ。俺はあんた達の甘ったれた考えに付き合う気なんざねぇぞ」
元々不機嫌そうだった顔を、さらに不機嫌に歪ませるクローセル
この悪魔が笑っている顔など、もう何百年も見ていない気がする……もっとも、元々よく笑う性格でもなかったと思うが
それでも……
この悪魔が笑っている顔など、もう何百年も見ていない気がする……もっとも、元々よく笑う性格でもなかったと思うが
それでも……
「そう言うな。この子は随分とお前を好いている。お前の事を話しているこの子は、とても楽しそうだよ…「姉さん」の事を話している時と同じか、それ以上に、な」
「知るかよ。こいつが楽しいから、なんだって言うんだ。俺には関係ない」
「知るかよ。こいつが楽しいから、なんだって言うんだ。俺には関係ない」
心底嫌そうに言いながら、クローセルはアモンから視線を逸らした
…その拍子に、小さく子供が動いた
こちらの会話が、煩かったのだろうか、起こしてしまったか…
…その拍子に、小さく子供が動いた
こちらの会話が、煩かったのだろうか、起こしてしまったか…
一瞬、言葉をとめたアモン
だが、子供はむにむにと、体勢を入れ替えて再び寝息を立て始めた
安心しきった、穏やかな寝顔を浮かべている
だが、子供はむにむにと、体勢を入れ替えて再び寝息を立て始めた
安心しきった、穏やかな寝顔を浮かべている
「見るといい、クローセル。この穏やかな寝顔を。信頼されている証拠だ」
「…だったら、何だ。悪魔を信頼するなんて、馬鹿のする事だろう」
「…だったら、何だ。悪魔を信頼するなんて、馬鹿のする事だろう」
馬鹿で愚かだ、と
吐き捨てるように、クローセルは言う
吐き捨てるように、クローセルは言う
「流石、元人間だよ。悪魔なんか信頼しても、破滅の道しかないんだ。自ら破滅を選ぶなんて、愚か以外の何物でもない」
「…破滅させんよ。我らがな。お前も、この子を護る事を手伝ってくれるとありがたいのだがな」
「っは!こんな餓鬼、さっさとくたばればいい。護るって言うんなら、あんた達で勝手にやれ。俺は知らねぇからな」
「…破滅させんよ。我らがな。お前も、この子を護る事を手伝ってくれるとありがたいのだがな」
「っは!こんな餓鬼、さっさとくたばればいい。護るって言うんなら、あんた達で勝手にやれ。俺は知らねぇからな」
冷たく、言い切ったクローセル
…この場にデモゴルゴーンがいたら、烈火のごとく怒りそうな事を
まぁ、クローセルの性格を考えれば、デモゴルゴーンが怒ったとしても意にも解さないのだろうが
…この場にデモゴルゴーンがいたら、烈火のごとく怒りそうな事を
まぁ、クローセルの性格を考えれば、デモゴルゴーンが怒ったとしても意にも解さないのだろうが
だが
お前は、気づいているだろうか?
穏やかな表情で眠るこの子を見る、お前の眼差しが
ほんのわずか、柔らかみを帯びている事実に
お前は、気づいているだろうか?
穏やかな表情で眠るこの子を見る、お前の眼差しが
ほんのわずか、柔らかみを帯びている事実に
暖かな感情を捨てきったつもりのお前の、冷え切ったお前の感情が
死んでいない証拠を、この子供が見せてくれている事実に、気づいているか?
死んでいない証拠を、この子供が見せてくれている事実に、気づいているか?
それに
本当に、この子が死ねばいいと感じているのならば
-----何故
殺されそうになったこの子を助けた?
何故
この子を殺そうとした彼女に、容赦ない殺気を浴びせた?
本当に、この子が死ねばいいと感じているのならば
-----何故
殺されそうになったこの子を助けた?
何故
この子を殺そうとした彼女に、容赦ない殺気を浴びせた?
お前は
お前のした行動の意味に、気づいているのか?
お前のした行動の意味に、気づいているのか?
「……うー……………クロ兄ぃ……」
ぎゅう、と
カラミティは、クローセルの服を掴み続けている
まるで、自分の親か、兄にでもすがりついているかのように
カラミティは、クローセルの服を掴み続けている
まるで、自分の親か、兄にでもすがりついているかのように
実の家族と触れ合う機会を失ってしまったこの子供は
何故か、クローセルを「兄」として認識した
「家族」だと、そう認識したのだ
何故か、クローセルを「兄」として認識した
「家族」だと、そう認識したのだ
(……デモゴルゴーンではないが、羨ましいな)
悪魔の中で、このクローセルだけが
この幼い魔法使いに「家族」だと認識された
その事実を、アモンは羨ましく思い、そして
この幼い魔法使いに「家族」だと認識された
その事実を、アモンは羨ましく思い、そして
できる事ならば
この幼い魔法使いが、再び、「家族」を失うことがないように、と
そう、願うのだった
この幼い魔法使いが、再び、「家族」を失うことがないように、と
そう、願うのだった
to be … ?