バールの少女 07
テントの中には、一人の女性が座っている。
小塚とライダーが来る以前はテントを黒服達が包囲していた。
それでも、この女性は取り乱す事無く此処に座していたというのか。
「占い師さん」
首なしライダーが声を掛ける。
「一緒に逃げましょう」
占い師は微かな笑みを見せたまま、わずかにかぶりを振った。
「私は動きません。此処の結界を保つのが、役目ですから」
占い師の答えに、ライダーは止まってしまった。暫しの沈黙がテントの中を包み込む。
「しかし……、結界を守ったとしても、壊れるのは時間の問題ですよ? 此処は《夢の国》の黒服に囲まれていたじゃないですか。
俺とコヅカちゃんがさっきまで包囲していた黒服は薙ぎ払いましたが、時間が経てば、また包囲されてしまいます」
だから一緒に逃げましょう、ライダーは女性に促した。
やや間を置いて、それでも、と占い師は囁くように答える。
「出来ません。私は《夢の国》に囚われ、死ぬ筈の人間でした。今度こそ、その死を受け入れる――」
それが私の運命です、と女性はライダーへ告げた。
「どうか、あなた達は。『夢の国の地下カジノ』へ逃げて下さい」
その言葉に、ライダーが完全に言葉を失った時。
小塚とライダーが来る以前はテントを黒服達が包囲していた。
それでも、この女性は取り乱す事無く此処に座していたというのか。
「占い師さん」
首なしライダーが声を掛ける。
「一緒に逃げましょう」
占い師は微かな笑みを見せたまま、わずかにかぶりを振った。
「私は動きません。此処の結界を保つのが、役目ですから」
占い師の答えに、ライダーは止まってしまった。暫しの沈黙がテントの中を包み込む。
「しかし……、結界を守ったとしても、壊れるのは時間の問題ですよ? 此処は《夢の国》の黒服に囲まれていたじゃないですか。
俺とコヅカちゃんがさっきまで包囲していた黒服は薙ぎ払いましたが、時間が経てば、また包囲されてしまいます」
だから一緒に逃げましょう、ライダーは女性に促した。
やや間を置いて、それでも、と占い師は囁くように答える。
「出来ません。私は《夢の国》に囚われ、死ぬ筈の人間でした。今度こそ、その死を受け入れる――」
それが私の運命です、と女性はライダーへ告げた。
「どうか、あなた達は。『夢の国の地下カジノ』へ逃げて下さい」
その言葉に、ライダーが完全に言葉を失った時。
「運命、だからですか?」
ポツリと、バールのようなものを握りしめた少女が呟く様に問うた。
「あなたが、ここで死ぬのが、それが、あなたの運命だからですか?」
テントの中の六つの眼が、彼女の方へ集まる。その小さな女子高生は俯いており、表情を見てとる事は出来ない。
「占い師さん――」
僅かな静寂の後、俯いていた少女は顔をあげて口を開いた。私の話を聞いてもらえませんか、と。
「あなたが、ここで死ぬのが、それが、あなたの運命だからですか?」
テントの中の六つの眼が、彼女の方へ集まる。その小さな女子高生は俯いており、表情を見てとる事は出来ない。
「占い師さん――」
僅かな静寂の後、俯いていた少女は顔をあげて口を開いた。私の話を聞いてもらえませんか、と。
*
「夏休みに入る前、私の友達が、死んじゃったんです」
小塚は話し始めた。
友達がビルの屋上から転落して死んだ事、
そのビルが『幽霊ビル』と呼ばれている事を。
友達がビルの屋上から転落して死んだ事、
そのビルが『幽霊ビル』と呼ばれている事を。
「でも、その後死んだはずの友達が幽霊ビルの屋上から手を振って来て、
私、ビルに入ろうとしたんです。だけど、二回も弾き飛ばされちゃいました」
私、ビルに入ろうとしたんです。だけど、二回も弾き飛ばされちゃいました」
その友達、小学校からの友達で、めーちゃんって呼んでたんですけど。そう付け足す。
微かに口元に笑みを浮かべた小塚。その眼は今にも泣きだしそうだった。
微かに口元に笑みを浮かべた小塚。その眼は今にも泣きだしそうだった。
「私、めーちゃんに一度でもいいから会いたくて、同じクラスの友達、カエちゃんに無理矢理頼みこんで、キューピッドさんを呼んでもらったんです。
やっぱり友達は、幽霊ビルに捕まっていて、そこで永遠に苦しみ続けるって、そう教えてもらって……。
どうやったらビルに入れるのか教えて欲しいって頼んだんです。
そしたら、普通のお守りじゃ駄目だって言われて、幽霊、あの幽霊ビルの霊は女の子の子宮に入り込むから、
赤ちゃんが宿ってないと命が危ないって、それでもお前も赤ちゃんも、危険なのには変わらないって、そう言われて」
やっぱり友達は、幽霊ビルに捕まっていて、そこで永遠に苦しみ続けるって、そう教えてもらって……。
どうやったらビルに入れるのか教えて欲しいって頼んだんです。
そしたら、普通のお守りじゃ駄目だって言われて、幽霊、あの幽霊ビルの霊は女の子の子宮に入り込むから、
赤ちゃんが宿ってないと命が危ないって、それでもお前も赤ちゃんも、危険なのには変わらないって、そう言われて」
キューピッドさん、学校町に行ったら何かヒントがあるかもしれないって教えてくれたんです。
カエちゃん、私の為に必死で止めてくれました。学校町に行っちゃダメだって、妊娠しちゃダメって。
でも、私、カエちゃんに行かないよって嘘ついて、
休みの間に旅行行くって言ってたお母さんとお父さんにも、やらなきゃいけない事あるからって説得して、
学校町に来たんです。
カエちゃん、私の為に必死で止めてくれました。学校町に行っちゃダメだって、妊娠しちゃダメって。
でも、私、カエちゃんに行かないよって嘘ついて、
休みの間に旅行行くって言ってたお母さんとお父さんにも、やらなきゃいけない事あるからって説得して、
学校町に来たんです。
「学校町に着いた時、何がどうなるのか分からなかったし、とても怖かった。
町に入ると、良く分からない黒い人達にいきなり追いかけられたり。
それでも、バール拾ったり、首なしライダーさんに出会ったりして助かったんです。
もう駄目かもしれないって事も何度もありました。それでも、やっぱり何とかなりました。
最初は、幸運が続いてるんだって思ってた。全部、成り行きで上手くいってるって。
でも、違ってた。そうじゃ無かった」
町に入ると、良く分からない黒い人達にいきなり追いかけられたり。
それでも、バール拾ったり、首なしライダーさんに出会ったりして助かったんです。
もう駄目かもしれないって事も何度もありました。それでも、やっぱり何とかなりました。
最初は、幸運が続いてるんだって思ってた。全部、成り行きで上手くいってるって。
でも、違ってた。そうじゃ無かった」
小塚は少しだけ詰まった。占い師を見つめる眼からは、涙が零れ出す。
「ライダーさんが一緒に闘おうって言ってくれたり、声を掛けてくれたお姉さんがいたり、
ピンチだった私とライダーさんを、剣持った人とお侍さんが助けてくれたり、
ロボットに乗ってた店長さんとかお爺ちゃんが励ましてくれたり。アニキさんもそうです。手伝うって言ってくれて。
大変な事になってるけど、皆、色んな所で頑張ってる。そんな人達に助けてもらって。
その時思ったんです。私が今、ここに、ここまで、やって来る事が出来たのは、運命なんかじゃ無いんだって。
あちこちで、一生懸命頑張ってる人達が居たから、助けてもらえたんだなって。
そういう事を、運命って言葉で全部ひっくるめて片付けちゃ、駄目なんだって」
ピンチだった私とライダーさんを、剣持った人とお侍さんが助けてくれたり、
ロボットに乗ってた店長さんとかお爺ちゃんが励ましてくれたり。アニキさんもそうです。手伝うって言ってくれて。
大変な事になってるけど、皆、色んな所で頑張ってる。そんな人達に助けてもらって。
その時思ったんです。私が今、ここに、ここまで、やって来る事が出来たのは、運命なんかじゃ無いんだって。
あちこちで、一生懸命頑張ってる人達が居たから、助けてもらえたんだなって。
そういう事を、運命って言葉で全部ひっくるめて片付けちゃ、駄目なんだって」
大きく息を吸い込んだ。しゃくり上げそうになる喉を懸命に抑え込んで。
「めーちゃんが死んじゃったのは運命かもしれません。幽霊ビルでずっと苦しみ続けるのも、運命かもです。
でも、それが運命だって、認めたくないんです。
運命って言葉で、本当は出来たかもしれない事、やれたかもしれない事、投げ出したくないから。
もしかしたら変えられるかもしれない未来を、捨てたくないから」
でも、それが運命だって、認めたくないんです。
運命って言葉で、本当は出来たかもしれない事、やれたかもしれない事、投げ出したくないから。
もしかしたら変えられるかもしれない未来を、捨てたくないから」
だから、だから私は――。小塚は黙した。
いや、黙しているのではなく、あふれ出しそうになる気持ちを、言葉を選びながら、話にしている。
ライダーは、そっと、小塚の背へ手を当てた。
ありがとう、と、小さいが確かに彼女の声が聞こえた。
いや、黙しているのではなく、あふれ出しそうになる気持ちを、言葉を選びながら、話にしている。
ライダーは、そっと、小塚の背へ手を当てた。
ありがとう、と、小さいが確かに彼女の声が聞こえた。
「私は、あなたが嫌だって言っても、梃子でも動かして、一緒に逃げます」
小塚は震動を続けるバールを強く握りしめる。
「私の自分勝手かもしれません。自己満足かも。
でも、誰にも死んでなんか欲しくないから。
私が出来たかもしれない事を投げ出して、それが原因で人が死んでしまうの、嫌だから」
小塚は震動を続けるバールを強く握りしめる。
「私の自分勝手かもしれません。自己満足かも。
でも、誰にも死んでなんか欲しくないから。
私が出来たかもしれない事を投げ出して、それが原因で人が死んでしまうの、嫌だから」
パタパタと、地面に涙が落ちる。顔をクシャクシャにしながらも、嗚咽を抑え、言を紡ぐ。
難しい事は私には、全然分かりません、でも……、でも、これだけは言えます――
「私達は、今、ここで、あなたと一緒に逃げます……!」
顔をクシャクシャにしながらも、小塚は声を絞り出す。
「運命って言葉を、自分を縛り付ける事に、使わないで下さい」
難しい事は私には、全然分かりません、でも……、でも、これだけは言えます――
「私達は、今、ここで、あなたと一緒に逃げます……!」
顔をクシャクシャにしながらも、小塚は声を絞り出す。
「運命って言葉を、自分を縛り付ける事に、使わないで下さい」
信じて下さい、あなたにしか出来ない事が、あるってコト
小塚は涙を零しながらも、占い師を見つめ続ける。
占い師は、じっと小塚を眼差していたが、――おもむろに椅子から立ち上がった。
彼女の眼には光の粒が浮かび、そしてそれは、女性の頬に銀色の筋をひいた。
占い師は、じっと小塚を眼差していたが、――おもむろに椅子から立ち上がった。
彼女の眼には光の粒が浮かび、そしてそれは、女性の頬に銀色の筋をひいた。
私は、また、助けられたんですね
静かにそう告げた後、占い師は膝から崩れ落ちるように倒れ込んだ。――すんでの所で、朝野さんが抱き抱える。
「ちょ、ちょっと先輩、手伝って下さい」
「 、 。 !」
何やら意味不明な声を上げ、慌てた様にライダーが手を貸した。
「あれだ、気を失ってるだけだ、きっと。うん」
「ちょ、ちょっと先輩、手伝って下さい」
「 、 。 !」
何やら意味不明な声を上げ、慌てた様にライダーが手を貸した。
「あれだ、気を失ってるだけだ、きっと。うん」
「アニキさん」
小塚は、外で待機するアニキに声を掛けた。それに応じてアニキは中へ入って来た。びりびりと、テントの入り口ごと引き裂きながら。
小塚だけでなく、占い師を抱えた朝野さんとライダーもぎょっとした様に彼の方を見た。
テントの外界は日没前の赤い陽光で満たされており、逆光の為に偉丈夫の表情を細やかに窺い知る事はかなわない。
漢は引き裂いたテントの布を掴んだまま、空いた方の拳を持ち上げ、親指で目尻を払った。
陽光によって輝いた光の粒は、決して、汗のみでは無かった筈だ。
「アニキさん、私達を、安全な場所へ連れて行って下さい」
ごしごしと目元を擦りながら、小塚はかすれた声で、お願いします、と言った。
「オゥケェイ、ガール。だが、その前にひとつ頼みがあります。ユーのバールを少し貸してもらえないか?」
どうぞ、と彼女の差し出したバールを、片膝をついて丁重な物腰で掌に取った――と言うより、三指で摘む。
バールの震動は明らかに激しさを増している。アニキはそれを暫く見つめた後、口へと持っていき、白い光を放つ歯を剥き出しながらも、噛み挟んだ。
「どうするんですか?」
小塚の問いに答える代わりに、アニキは前方で両腕をクロスする。
「少し離れていて下さい、ユーと、後ろのガール――朝野さんが「自分?」と聞く――そうですユーでぇす。後ろを向いてくれませんか?」
そう小塚と朝野さんに促すと、漢はいきなり立ち上がった。テントの上部に頭が埋まる。テント全体がギシギシと音を立て始めた。
「ふんッッ、くぅおおぉああああああああああああッッ!!」
気合いの入った雄叫びが上がる。瞬間、先程からアニキの身体を包んでいたピンク色のオーラが一気にテント内を飲み込んだ。
びりびりと空気が揺れる。それと共に、アニキの股間に収まりしモノリスも天へと突き上がり始めた。バールと共鳴するかの如く、大きく脈動している。
《少女の意志の宿りしバールよ、我が兄気と共鳴せよッッ》
バールが唸りを上げている。それはまるで、声にならぬ叫びであるかのようだ。
漢から迸る力の奔流に圧倒され、遂にテントが弾け飛んだ。
《我が内に精製されし兄気よ! 己が闘いに身を投じた、我が盟友の元へ、届き給えッッ》
全てのモノよ、我が前にひれ伏せ、と言わんばかりに、小塚に、朝野さんに、首なしライダーに、占い師に、強大な衝撃が伝わった。
《 ア (ピーッ) ル ッ ・ エ ク ッ ス テ ン シ ョ ン ッ ・ バ イ ッ ・ マ ッ シ ヴ ッ ッ ! ! 》
漢は天へと吼えた。起ち上がりし怒号は大地を叩きつけ、そのピンク色の光を放つ兄気は昇龍の如く暴れ狂う。
そして――、アニキの背中からは、兄気と同じ輝きを持つ一対の翼が姿を顕現した。
《さあ皆さん、ワタシと共に行きましょう!》
「あ、あ、アニキさん……、これは一体?」
《おお、ガール。ユーの意志がワタシに力を与えたのでぇす。ワタシは一時的にですが、トワイライト・ウイング・アニキ(第一形態)となりました。どうかアニキと呼んで下さい》
彼をそう声を発すると、朝野さんとライダーを取り上げ、右の小脇に挟んだ。――「ぐおっ、折れた腕にかかって、い、痛みが…ッ」「先輩、大丈夫ですか!?」
次に、占い師を慎重に腕に抱え、小塚を抱き寄せた。
「行きましょう、アニキさん!」
《オゥケェイ! アッテンション・プリーヅッッ!!》
微かに泣いた後の声ながらも、元気に叫ぶ小塚。それに応ずる様にアニキは顔面スマイルをキめて、翼を拡げ、轟、と大地を蹴った。
小塚は、外で待機するアニキに声を掛けた。それに応じてアニキは中へ入って来た。びりびりと、テントの入り口ごと引き裂きながら。
小塚だけでなく、占い師を抱えた朝野さんとライダーもぎょっとした様に彼の方を見た。
テントの外界は日没前の赤い陽光で満たされており、逆光の為に偉丈夫の表情を細やかに窺い知る事はかなわない。
漢は引き裂いたテントの布を掴んだまま、空いた方の拳を持ち上げ、親指で目尻を払った。
陽光によって輝いた光の粒は、決して、汗のみでは無かった筈だ。
「アニキさん、私達を、安全な場所へ連れて行って下さい」
ごしごしと目元を擦りながら、小塚はかすれた声で、お願いします、と言った。
「オゥケェイ、ガール。だが、その前にひとつ頼みがあります。ユーのバールを少し貸してもらえないか?」
どうぞ、と彼女の差し出したバールを、片膝をついて丁重な物腰で掌に取った――と言うより、三指で摘む。
バールの震動は明らかに激しさを増している。アニキはそれを暫く見つめた後、口へと持っていき、白い光を放つ歯を剥き出しながらも、噛み挟んだ。
「どうするんですか?」
小塚の問いに答える代わりに、アニキは前方で両腕をクロスする。
「少し離れていて下さい、ユーと、後ろのガール――朝野さんが「自分?」と聞く――そうですユーでぇす。後ろを向いてくれませんか?」
そう小塚と朝野さんに促すと、漢はいきなり立ち上がった。テントの上部に頭が埋まる。テント全体がギシギシと音を立て始めた。
「ふんッッ、くぅおおぉああああああああああああッッ!!」
気合いの入った雄叫びが上がる。瞬間、先程からアニキの身体を包んでいたピンク色のオーラが一気にテント内を飲み込んだ。
びりびりと空気が揺れる。それと共に、アニキの股間に収まりしモノリスも天へと突き上がり始めた。バールと共鳴するかの如く、大きく脈動している。
《少女の意志の宿りしバールよ、我が兄気と共鳴せよッッ》
バールが唸りを上げている。それはまるで、声にならぬ叫びであるかのようだ。
漢から迸る力の奔流に圧倒され、遂にテントが弾け飛んだ。
《我が内に精製されし兄気よ! 己が闘いに身を投じた、我が盟友の元へ、届き給えッッ》
全てのモノよ、我が前にひれ伏せ、と言わんばかりに、小塚に、朝野さんに、首なしライダーに、占い師に、強大な衝撃が伝わった。
《 ア (ピーッ) ル ッ ・ エ ク ッ ス テ ン シ ョ ン ッ ・ バ イ ッ ・ マ ッ シ ヴ ッ ッ ! ! 》
漢は天へと吼えた。起ち上がりし怒号は大地を叩きつけ、そのピンク色の光を放つ兄気は昇龍の如く暴れ狂う。
そして――、アニキの背中からは、兄気と同じ輝きを持つ一対の翼が姿を顕現した。
《さあ皆さん、ワタシと共に行きましょう!》
「あ、あ、アニキさん……、これは一体?」
《おお、ガール。ユーの意志がワタシに力を与えたのでぇす。ワタシは一時的にですが、トワイライト・ウイング・アニキ(第一形態)となりました。どうかアニキと呼んで下さい》
彼をそう声を発すると、朝野さんとライダーを取り上げ、右の小脇に挟んだ。――「ぐおっ、折れた腕にかかって、い、痛みが…ッ」「先輩、大丈夫ですか!?」
次に、占い師を慎重に腕に抱え、小塚を抱き寄せた。
「行きましょう、アニキさん!」
《オゥケェイ! アッテンション・プリーヅッッ!!》
微かに泣いた後の声ながらも、元気に叫ぶ小塚。それに応ずる様にアニキは顔面スマイルをキめて、翼を拡げ、轟、と大地を蹴った。
*
彼らが去った後、テントがあった場所は何もかもが吹き飛んでいた。
丁度、占い師が座していた場に、澄んだ青のパワーストーンが落ちていた事に誰が気付いただろう?
そのパワーストーンは光を放っている。そして、突如として青の閃光を放ち、砕け散る。
丁度、占い師が座していた場に、澄んだ青のパワーストーンが落ちていた事に誰が気付いただろう?
そのパワーストーンは光を放っている。そして、突如として青の閃光を放ち、砕け散る。
刹那、轟、と一陣の風が大地を薙ぐ。吹き飛んだ筈のテントや何もかもを引き寄せて。
あたかも、時が逆巻くかの如く、テントは元あった場へと繋ぎ止めらた。
数拍後、其処には占い師のテントが、まるで最初から在ったかの如く、空間の中に納まっていた。
あたかも、時が逆巻くかの如く、テントは元あった場へと繋ぎ止めらた。
数拍後、其処には占い師のテントが、まるで最初から在ったかの如く、空間の中に納まっていた。
その光景を見た者があったのならば、「まるで時間を逆戻ししたかの様だった」と答えるやもしれぬ。
しかし、この一部始終を知る者は、居ないのである。
しかし、この一部始終を知る者は、居ないのである。
秋祭り二日目。落陽が地平線の彼方へと沈みかけた時分。
占い師のテントより学校町全体へ、ピンク色の――、否、それ以上の何かを内包せし衝撃波が走った。
時同じくして同地点より、バールに噛みつき、小脇に四人を抱えた大裸漢が飛翔した。
今、この意味する所を知る者は、恐らく無いであろう。
時同じくして同地点より、バールに噛みつき、小脇に四人を抱えた大裸漢が飛翔した。
今、この意味する所を知る者は、恐らく無いであろう。
そして、嗚呼、闘う者達よ。そろそろだ。
学校町に、夜が訪れようとしているのは――。
学校町に、夜が訪れようとしているのは――。