喫茶ルーモア・隻腕のカシマ
カシマさん(前編)
ゆったりとした曲が流れる店内
いつもの気だるい午後
いつもの気だるい午後
カウンター席の1番(最奥)に座って店内を見回す
店内全体が見渡せるので、最近はここがボクの定位置だ
店内全体が見渡せるので、最近はここがボクの定位置だ
客は3人、女子高生だ
ボクから見て左手後ろの1番テーブルで、先ほどから
都市伝説まがいの話で盛り上がっている様だった
話の中心にいるのは、肩までの黒髪で
華奢なフレームのメガネをかけた、おとなしそうな娘
ボクから見て左手後ろの1番テーブルで、先ほどから
都市伝説まがいの話で盛り上がっている様だった
話の中心にいるのは、肩までの黒髪で
華奢なフレームのメガネをかけた、おとなしそうな娘
カラン・コロン……カラン・コロン……来客を告げるベル
「いらっしゃいませ」
女子高生が一人で入ってくる
「こんにちは、マスター」
彼女は、ボクの2つ隣の席──カウンター席3番──にサッと座る
「こんにちは、輪くん……今日はそこの席なのね」
無言でコクリと頷く
「最近はそこが輪の指定席なんだよ」
「ここは全体が見渡せるからね」
「いらっしゃいませ」
女子高生が一人で入ってくる
「こんにちは、マスター」
彼女は、ボクの2つ隣の席──カウンター席3番──にサッと座る
「こんにちは、輪くん……今日はそこの席なのね」
無言でコクリと頷く
「最近はそこが輪の指定席なんだよ」
「ここは全体が見渡せるからね」
それを聞くと満足そうに "姫さん" は頷いた
最初の頃は、相手にするのが面倒で無視していたが
来る度に声をかけてくるので、仕方なく相手をしてあげている
ボクらのことは何も話してはいない
ただの知り合いだ
「いつものヤツでいいのかな?」
「そうね、アイスでお願い」
程なくして、ロイヤルミルクティーが出てくる
ボクは、からかうつもりで話しかける
「最近見なかったから、彼氏でも出来たのかと思っていたけど」
「ブッ?!」
飲みかけた紅茶を噴出しそうになって堪える
マスターとボクは顔を見合わせてから姫さんをもう一度見て、何度も頷きあう
「そ、そんな、彼氏とかそういうんじゃないのよ……恩人というかその」
随分と動揺している……正直、相手をするのが面倒くさいや
「……ボクはややこしい話を聞くつもりは無いからね」
「ところで、今日は何か聞きたいことでもあったのかい?」
ボクが突き放し、マスターが助け舟を出してようやく姫さんは平常心を取り戻す
「今日は……何となく顔を出しただけ、かな」
来る度に声をかけてくるので、仕方なく相手をしてあげている
ボクらのことは何も話してはいない
ただの知り合いだ
「いつものヤツでいいのかな?」
「そうね、アイスでお願い」
程なくして、ロイヤルミルクティーが出てくる
ボクは、からかうつもりで話しかける
「最近見なかったから、彼氏でも出来たのかと思っていたけど」
「ブッ?!」
飲みかけた紅茶を噴出しそうになって堪える
マスターとボクは顔を見合わせてから姫さんをもう一度見て、何度も頷きあう
「そ、そんな、彼氏とかそういうんじゃないのよ……恩人というかその」
随分と動揺している……正直、相手をするのが面倒くさいや
「……ボクはややこしい話を聞くつもりは無いからね」
「ところで、今日は何か聞きたいことでもあったのかい?」
ボクが突き放し、マスターが助け舟を出してようやく姫さんは平常心を取り戻す
「今日は……何となく顔を出しただけ、かな」
そんな会話をしていると
「あら?姫さまじゃないかしら?」
後ろから声がかけられた───先ほどのメガネをかけた娘だ
「……あら、××さん?」
「ここに来ているということは、姫さまも都市伝説に興味があるのかしら?」
「そうね、少し調べてはいるわ」
「そう……それじゃあ "カシマさん" の話は聞いたことがあるかしら?」
「"カシマさん"?聞いたことはあるけど、いくつかパターンがあるのよね?」
「そうよ、無数にパターンが存在するわ……興味があれば聞いていかない?」
ややあって、答える
「ええ、聞きましょう」
「あら?姫さまじゃないかしら?」
後ろから声がかけられた───先ほどのメガネをかけた娘だ
「……あら、××さん?」
「ここに来ているということは、姫さまも都市伝説に興味があるのかしら?」
「そうね、少し調べてはいるわ」
「そう……それじゃあ "カシマさん" の話は聞いたことがあるかしら?」
「"カシマさん"?聞いたことはあるけど、いくつかパターンがあるのよね?」
「そうよ、無数にパターンが存在するわ……興味があれば聞いていかない?」
ややあって、答える
「ええ、聞きましょう」
*
カシマさんについての話をまとめるとこうだ
①カシマさんという方が不幸に遭い亡くなってしまう話を聞く
②この話を聞いた人は、しばらくするとカシマさんが夢の中に出てくる
③その時にカシマさんは、質問をする
④質問に答えられない場合、その人間の大切なモノを奪ってしまう
②この話を聞いた人は、しばらくするとカシマさんが夢の中に出てくる
③その時にカシマさんは、質問をする
④質問に答えられない場合、その人間の大切なモノを奪ってしまう
「大切なモノを奪う……初めて聞くパターンね」
「そうね、普通は体の一部を奪うと言われているものね」
「マスターはこの話、どう思う?」
「私も初めて聞くパターンだね……興味深い」
「そうね、普通は体の一部を奪うと言われているものね」
「マスターはこの話、どう思う?」
「私も初めて聞くパターンだね……興味深い」
マスターの話によると
①女性が多いが、カシマさんの人物像はいくつものパターンが存在する
②家に訪ねてくるパターンがあるが、家族が常に一緒にいる場合襲えなくなり
夢に出てくるパターンも存在する
③質問のパターンがいくつもあるのは、簡単に答えられない様にする為の対策
④下半身、腕のみ、脚のみといった複数のパターンが存在するが
体の一部を奪うという部分は共通している
②家に訪ねてくるパターンがあるが、家族が常に一緒にいる場合襲えなくなり
夢に出てくるパターンも存在する
③質問のパターンがいくつもあるのは、簡単に答えられない様にする為の対策
④下半身、腕のみ、脚のみといった複数のパターンが存在するが
体の一部を奪うという部分は共通している
「やはり、体の一部を奪うという部分は共通しているし……」
「大事なモノを奪うというのはどこか不自然な気がするかしら?」
「そうだね……何かこう、故意に話を変えている様にも感じるね」
「大事なモノを奪うというのはどこか不自然な気がするかしら?」
「そうだね……何かこう、故意に話を変えている様にも感じるね」
誰かが新たなカシマさんを生み出そうとしている……
そういうことなのだろうか
そういうことなのだろうか
そんな会話をした日から3日程経った頃だろうか
予期しない事態が発生したのは……
予期しない事態が発生したのは……
*
ボクは眠っている──これは夢だ──と自覚している
どろりとした液体が腰辺りまで侵食し足元がおぼつかない
……底なし沼にはまる様な感覚
背後から何かが浮かび上がる気配
振り向くとそこには……女性が立っている
ニヤリと嗤っていた
じっとりと生暖かく不快な汗が体表を覆う
……底なし沼にはまる様な感覚
背後から何かが浮かび上がる気配
振り向くとそこには……女性が立っている
ニヤリと嗤っていた
じっとりと生暖かく不快な汗が体表を覆う
「坊や……あなた、良いモノを持っているわね」
「……」
「私、嫌いなの……満たされて、足りている人たちが……」
「……」
喉が張り付く───声がうまく出ない
「坊や……私の名前はなあに?」
「……カ、カシマさん」
「正解……でも残念、少し足りないわ」
ボクは緊張している───この先に訪れる恐怖に震える
「……」
「時間切れ」
「くっ」
「……あなたの大事なモノを頂くわ」
「……」
「私、嫌いなの……満たされて、足りている人たちが……」
「……」
喉が張り付く───声がうまく出ない
「坊や……私の名前はなあに?」
「……カ、カシマさん」
「正解……でも残念、少し足りないわ」
ボクは緊張している───この先に訪れる恐怖に震える
「……」
「時間切れ」
「くっ」
「……あなたの大事なモノを頂くわ」
体がずぶりと埋まり、もがく……が引きずり込まれていく
ボクの意識は何かに飲み込まれていった
ボクの意識は何かに飲み込まれていった
*
『おい!輪!……しかりしろ!輪!!』
「……マスター」
マスターの心配そうな顔がすぐそこにある
『ひどい汗だな……うなされていたから起こしたんだが大丈夫か?』
「カシマさん……カシマさんの夢を見た」
『カシマさん?!……体は……良かったどこも無くしてはいない』
「本当だ……何も変わっていない」
良かった……
『じゃあ、ただの悪夢だったんだな……』
本当に?アレが……ただの悪夢?
「……マスター」
マスターの心配そうな顔がすぐそこにある
『ひどい汗だな……うなされていたから起こしたんだが大丈夫か?』
「カシマさん……カシマさんの夢を見た」
『カシマさん?!……体は……良かったどこも無くしてはいない』
「本当だ……何も変わっていない」
良かった……
『じゃあ、ただの悪夢だったんだな……』
本当に?アレが……ただの悪夢?
『本当に良かった……
折角手に入れた都市伝説を傷物にされたくはないからね』
折角手に入れた都市伝説を傷物にされたくはないからね』
「え?!!」
『どうしたんだい?輪……顔色が悪いな』
「……嘘だよね」
『何がだい?』
「ボクは……都市伝説だから、大事にされているの?」
『ああ、そうだよ……輪はとても大切な存在だよ……私だけの都市伝説だ』
マスターの声は優しい、恐ろしいほどに優しい
『どうしたんだい?輪……顔色が悪いな』
「……嘘だよね」
『何がだい?』
「ボクは……都市伝説だから、大事にされているの?」
『ああ、そうだよ……輪はとても大切な存在だよ……私だけの都市伝説だ』
マスターの声は優しい、恐ろしいほどに優しい
ボクの意識は飲み込まれる
底深く……奈落へと落ちていくかの様に
底深く……奈落へと落ちていくかの様に