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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 喫茶ルーモア・隻腕のカシマ-05

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喫茶ルーモア・隻腕のカシマ


赤い靴とその契約者


昼過ぎ
今日は珍しくサンドウィッチがたくさん出た
念の為、いつものパン屋さんに食パンを買いに行く

「こんんちは」
「あら輪ちゃん、こんにちは、今日は一人でおつかい?」
既に顔なじみのおばちゃんだ
「はい、食パンが無くなりそうなんです 2斤ください」
「は~い、8枚切りよね、ちょっと待ってて……
 あら? 6枚切りにしたものしかもう残ってないわ
 あ、でも10分待っててくれれば焼きあがるのがあるわ!時間いい?」
「はい、待ってます」
そういうことなら仕方ない
それに、焼きたての方がこちらとしても嬉しい
おばちゃんが椅子を持って来て勧めてくれる
二人で、じっと待つ

「今日も可愛いわね、輪ちゃん」
ニコニコとおばちゃん
おばちゃんからすると
ボクくらいの歳の子供はみんな可愛いということらしいのだけれど

「いつも思うけど、女の子みたいに可愛いわねぇ……そのお洋服もとても似合っているわぁ」
「……ありがとうございます」
正直、この服に突っ込まれたくはない
今日、通販で買った物が届いて着せられたのだ
確かに可愛いし、子供服としても人気がありそうだった
「マリンルックっていうのかしら、夏っぽくて爽やかだし、いいわぁ」
白の上下
半そでのセーラーに、ヒザ丈のパンツ
それぞれに紺のラインが3本入っている
おまけに紺のリボンの付いた白いベレー帽の様なものまで被っている
店を空けられないマスターが、通販の売れ筋順に何着か買ったのである
「マスターが選んでくれました……一応ですが」
マスターは年中同じ格好だし、ボクも服を選んだ事は無い
ボクら二人は、どうやら服を選ぶのが苦手の様だった

そうこうしている内に食パンが焼き上がり
雑談から開放される
おばちゃんが嫌いなわけではない……が
褒められた時の対応の仕方が良く分らなくて困ってしまうのだ

*



パン屋を出て、真っ直ぐに来た道を戻る

少女がいた
恐らく、小学生
少し、頬がこけている様にも見える
視線が交わる
ニヤリと笑う少女

「あなた、ちょっと私のおもちゃになりなさいよ」

不意に声を掛けられたが、ボクは冷静に対応する
すなわち、無視して通り過ぎる
「……なっ?!……ちょっと!待ちなさいよ!!」
振り向かず、歩き続ける
「なんで皆こんなのばっかりなのよ!! あぁ~もういいわ!」
皆? そんなこと言われてもボクは知らないし関係ない
苛立ちを隠さず、歌いだす少女
赤い靴履いてた女の子 異人さんに、連れられて行っちゃった」

赤い靴──都市伝説──か?!
気付いた時には既に遅かった

がしり
男の手が、ボクの首を掴んだ
異国人風の男はニヤリと笑い…ふっと軽々と掴み上げた
くすくすくすくすくすくすくすくすくす
ボクら以外には誰もいない道に、少女の笑い声が静かに響く

「さらさらのショートヘアもたまにはイイヨネ」
「ボク、早く帰りたいんだけど……離してくれないかな?」

ボクの言葉に、まるで電撃でも浴びたかの様にビクりと反応する異国人風の男
急に手を離されるが
帽子を押さえながらスッとアスファルトの路面に着地し、振り向く

「いやっほぉおおおおおおおお!!!
 ボクっ子さいこぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
 都市伝説的存在、ボクっ子! イエェェェェェェェェェェェェス!!!!!」

何に反応したかと思えば……
「はぁ……変態か」
思わず、ため息をついてしまう

「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!変態で構わんさぁ!!!
 さぁさぁさぁ!!カモンカモーン!!!」

ばっちこーい!の体勢をとる赤い靴

「盛り上がっているところ悪いんだけど、ボク男だから」

ピシリと空気が凍り付いたかの様に、動きが止まる赤い靴
その後ろで青筋を立てている少女が見えた

「……そんな、……なか……い…が……この…の…け」

ばっちこーい!の体勢のまま
言葉にならないうめきの様なものと共に白っぽい何かが口から漏れている
これがエクトプラズマというヤツだろうか……

「この……」
少女が後ろから
「……役立たずがッ!!」
赤い靴の股間を蹴り上げた

「おうふッ!!?!!!」

悶絶

惚れ惚れする様な、実に見事な蹴り
けれど、女の子はもっとおしとやかな方が好きだ

「じゃあ、もう良いよね」

くるりと踵を返し、後ろに向かって投げやりに手を振る
そのまま何も見なかったかの様に帰ろう

*



カラン・コロン……カラン・コロン……

「輪、随分遅かったね……何かあったのかい?」
帰り道の事を思い出すが、首を振る
「……うん、食パンが6枚切りのモノしか残っていなくて
 新しいのが焼けるのを待っていたんだよ」
うん、他には何も無かった

カラン・コロン……カラン・コロン……

その後、すぐにサチがやってきた
働き始めてだいぶ経つ、仕事振りも落ち着いてきた
しかし、様子が少しおかしい
何度も外を見てこっちを見ての繰り返し
一体、何度見すれば気が済むのだろう

「どうしたの?サチ」
問いかける
「えぇと……何か来る道で変なヒトがいて……」
「変なヒト?」
先ほど遭遇した二人組みが脳裏をよぎる

「外国のヒトだと思うんだけど……その……股の間を押さえながら
 転げまわっていたの……わたし、凄く怖くて……」
「最近は物騒だからねえ」
心配そうにマスター

「それで、ピタッと止まったと思ったら……今度はぶつぶつ呟き始めて……」
「…………」
「『あんな可愛い子が、男の子のワケ……いや、もうこの際
 可愛ければ問題ないのでは?……そうか、これが真理というものか』とかなんとか……」
「…………」
げんなりした
大体、サチもしっかり聞き過ぎだろう……完璧じゃないか……
嗚呼……頭痛がする

「サッちゃん、そういう時は関わらずに逃げるんだよ」
「はい、マスター……わたしもそう思って、走って逃げてきました
 あ、そういえば……その前に小学生の女の子ともすれ違ったんですけど
 あの子は大丈夫だったのでしょうか?……凄く機嫌が悪く見えたけど……」

そこで、何かに思い至った様な大きな声でサチ
「ッ?!輪くん!……その服!……か、かわいい……です」
「……はぁ」
何かと思えば、今日はこんなのばっかりだ
ため息ばかりがついて出る
けれど、そんなに嫌なワケじゃない

それにしても、サチは不思議なヒトだ
ボクの事を子供扱いせず、個を尊重してくれる
でなければ、あんな風に謝りには来なかっただろう

単純に命の恩人とでも思っているのか
ボクの問いかけた言葉が、彼女の心に響いたのか
本当のところは判らない

それでも、このヒトはボクを裏切らない
直感───ただそういう風に感じている
でも、これはボクの願望から産み出された直感

それはつまり
信じたいと思えるヒトがまた一人増えたということ
今はそれが何よりも嬉しい

そんなボクの思いをよそに、二人は盛り上がっている
「今度、サッちゃんも輪の服を選んでくれないかな?」
「えッ?!いいんですか?……是非!!」
「本当かい?いやぁ、助かるなぁ」
「楽しみですねぇ」
「……はぁ」

ため息をすると幸せが逃げていくらしいけれど……
そんな事、ボクは信じる事が出来そうにない
何故なら……
いや、これは言うまでも無いことだよね



*


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