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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 喫茶ルーモア・隻腕のカシマ-06

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喫茶ルーモア・隻腕のカシマ


日本兵の霊と夢


早朝
学校町と呼ばれている市の隣に位置する町
眼前には霧深い沼

わたしは家族を起こさない様、4時前にコッソリと起きだし
自転車で沼まで来ていた

噂──都市伝説──

わたしは以前、都市伝説がらみの事件に巻き込まれた事があった
だから、噂には敏感になっていたのかもしれない
危険なものから身を守る為、不用意に近寄らない為
そう思っていたはずなのに……
今、わたしはこうして
噂のモデルとなった沼に来ていた───来てしまっていた

どこか惹きつけられるものがあった
判らない
何に惹きつけられたのか
また、以前の様にこころの隙を突かれているのかもしれない

でも、わたしは来てしまった

*



沼は静寂に包まれている
辺りは桜の木に覆われ、大きな通りからは距離がある
何かが出そうだった……そう思わせるには十分な雰囲気

だが、何も起こらない
何も出はしない
沼の周りを一周してみるが、やはり何もなかった

そうか、ただの噂なのだ
ホッとしている
反面
どこかがっかりしてもいた

家に帰ろう
ただの噂と確認できただけでも収穫があったといえるのだから

帰宅する
時計を確認すると5時半だった
起きている者はいない

少し疲れている
もう夏休みだし、時間は十二分にある
また眠ろう
学校で聞いた噂を思い出しながら……
夢におちていく

*



学校で、ある都市伝説を聞いた

ある沼に行くと、若い日本兵の霊が現れる
「今、日本は平和かい?」
と尋ねられ
「はい」
と答えると
「……良かった、我々の死は無駄ではなかった」
そう笑顔で返した彼の後ろ、沼の上にたくさんの兵士の姿があったという

だが、回答者の態度や心に歪みがみられた場合には……

そういう話だ

最初は、今の日本人に対するメッセージ性を多分に含んだ
作り話だと思っていた

だが、気になってしまった
確認せずにはいられない
どこか他の噂話とは違う……そう感じたのだ

*



私は眠っている──これは夢だ──と自覚している

眼前には沼
───以前にも感じたことのある様な不思議な感覚
沼から何かが浮かび上がる気配
そこには、枯れ草色の軍服を着た若者が立っている
───20代後半だろうか、高校生の自分よりは年上だろう
腰には刀を佩(は)いている
───軍刀というものだろうか、サーベルにしては太さがある
鋭い眼光
───その瞳はどこか憂いを帯びている様にも見えた

一陣の風が水面を吹き抜け
桜の花びらが舞う───幻視
軍服の左袖が揺れ、はためく
左腕が───ない


「お嬢さん、ひとつ尋ねたい事があるのだが……よろしいだろうか?」

わたしは冷静だった───自分でも内心で驚くほどに
「はい、構いません」

「ありがとう……今の日本は平和だろうか?」

迷う、どう答えるべきなのか
「……世界的にみれば平和だと思います」
「そうか……平和……なのだな」
「ですが……きっと貴方が理想とした平和とは違うと思います」
「……ワタシの理想とは違う?」
「毎日の様に悲しい出来事が起きています」
「毎日……悲しい事が?」
「ええ」

わたしは、今の日本について出来る限り客観的に説明した
もちろん、上手く説明できたとはいえない
「我々は……我々の死は……」
「……豊かさが、人を変えてしまったのかもしれません」
「ワタシは無力だ……今のままでは誰一人救えない」
「それは……わたしも同じ気持ちです」

「……くッ!」
ガチャリと軍刀が音を立てる
彼はその場に崩れ落ちていた
無力感がそうさせたのか
単純に力が失われつつあるのか


「あ!あの……もし良かったら、わたしと契約してくれませんか?」

肩を貸し助け起こす
「契約……お嬢さん、貴女は何故それを?」
「以前に都市伝説と契約した事があります」
「そうか……だが……」
「わたしには守ってあげたい人たちがいるんです お願いします」

彼らのことを思う
恩人であり、敬愛する彼らのことを……

今までは大丈夫だった
けど、これからの保証があるワケでは無い
彼らの置かれた状況は、決して楽観視できるものではない
と、わたしはそう思う
いざという時の為に
守り抜ける力が欲しい!

「お嬢さん……キミはとても綺麗な目をしているな」

彼は片膝を立て
軍刀を右手にとり、わたしの前に突き出す

「貴女の護りとなる事を、この刀に誓おう」

彼の手をとる
「わたしも、貴方が失望しない様に生きる事を誓います」

*



「あの……それで、貴方のお名前は?」
彼は立ち上がり
「そうか、まだ名を名乗っていなかったな……失礼した」
そう云って頭を下げる

ザッ!! という音と共に両脚を揃え、敬礼する

「名はカシマ、同胞には隻腕のカシマと呼ばれている」

「?! カシマ……さん?」

まさか……再びこの名を聞く事になろうとは
あまつさえ、契約する事になろうとは思いもしなかった
そして
どうしてこの噂に惹かれたのか……
やっと判った気がする

「お嬢さんの名は何と?」
「サチです 碓氷(うすい) サチ」
「ふむ……中々に興味深い名だな」

そう云って、彼は楽しげに──同時に悲しそうに──笑った

*



今度は大丈夫

あの時のカシマさんが
わたしの"奪いたい"という気持ちに同調した様に
この隻腕のカシマさんは
わたしの"守りたい"という気持ちに同調してくれている

今のわたしの心には、守りたいものがある
これを失わない限り
わたしは大丈夫

再び、一陣の風が吹き抜ける
桜の花びらが舞う───幻視
美しい桜の吹雪が消えると
カシマさんの姿も、既に消えていた

安堵の中
わたしは再び深い眠りにおちていくのを感じた



*


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