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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 喫茶ルーモア・隻腕のカシマ-11d

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rumor

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喫茶ルーモア・隻腕のカシマ


マスター(後編)


*


♪RequieM (試験運用中)

*



─ 17:42 ─


男は"背"に突き立った掌を素早く引き抜く
「クソッ!! 何なんだッ!! クソッ!!」

少年の顔が苦しみで歪む
「な……なんで……ダメだよ……そんなの……」

サチが目を開くと、輪に覆い被さるマスターの姿
「マスタぁ……? いやァぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「お、俺は悪くない……悪くないだろ? コイツが……勝手に間に入っただけで……」

これはゲームだ
男が狩るのは、あくまでも敵───都市伝説
これまで、ニンゲンを殺したことはなかった
ゲームで敵を倒すのは当たり前で、疑問の余地は無い
だが、ニンゲンを殺せば、それはただの犯罪だ

「じ、事故だッ! そ、そうだッ……これは、自殺だろッ?! 俺は悪くないッ!」
少年と眼が合う
「そうだよ……コイツが悪いんだよ……都市伝説なんかがいるからいけないんだ」
少年を睨み付ける
憎しみの篭った眼で……
「お前のせいだよ……全部、お前のせいなんだッ!!」

「凍てつく風よ……北より来りて……眼前の敵の命を……」

─ 17:46 ─


「奪……ぇ?」

純白の鳩が舞う

右腕が、どさりと重い音を立てて斬り落とされる

「……ハ……ト?」

振り返ると、軍装の男
隻腕で抜き身の軍刀を構えている
「出て行け」
静かな声に威圧される
腕を斬り落とされた痛みすらも忘れる程の恐怖

楕円を描く様にして、お互いの位置を入れ替える

「クソッ! 俺のせいじゃないッ! お前ら都市伝説のせいだッ!!」

カラン・コロン……カラン・コロン……
吐き捨てる様に言い、男は店を出て行った

カシマはサチに向かい頭を下げる
「遅れて済まない……」

遅すぎた
もう少し、あと数分だけでも早ければ……
だが、時は戻らない
決して

─ 17:52 ─


「マスター……どうして……」
少年は、契約者をヒザに抱えあげて声を絞り出す
「どうしてもこうしても……ないさ」
背中から徐々に凍結していくのが分る
あの男が言っていた様に、確実に死へと向かっていた
もう、助かりは……しない

「まだ、少しだけ時間がある様だ……輪、よく聞いてくれ……」
「……うん」
「契約を解除する」
「ぇ?」
ふっ……と、何かが薄れて消えるのをお互いに感じる
「どうやら……上手くできた様だな……」
「なん……で?」
「こんな事もあるだろうと思って……黒服さんに聞いておいたんだ……解除法をね」

記憶が脳裏をよぎる
プールから帰ったあの日の事が……
『良い契約者と出逢いましたね……』
黒服がすれ違い様に掛けたあの言葉が……

「これで……輪は消えなくて済む……一緒に消える必要はないだろう?」
「なに言ってるんだよッ! いやだッ! そんなこと認めないッ!!」
「……輪」
「勝手に決めるなよッ!! こんなこと、ボクは望んでいないッ!!」
「私が……心から望んだ結果だ……済まないな……」
「謝るなよッ!」

─ 17:56 ─


「もう私たちは……契約関係に無い……た……他人だ」
「!……なに言ってるんだよ……そんな言葉でだまされると思うなよッ!!」
「……忘れるんだ」
「忘れるかよッ! 契約が無いからなんだって言うんだッ! だってボクら……」
「……」
「ボクらは家族だろッ?!」
「……か……ぞく」
「マスターはボクの……ボクの父さんだろッ!!」
「!……」
「……いやだよ……こんな形で言うのなんて……父さん……もっと呼ばせてくれよッ!」
「……………………ありがとう……輪……ありがとう……済まない」
涙が流れる
ニンゲンの流す熱い涙
「いやだよ……謝るなよ……」
涙が流れる
都市伝説の流す熱い涙

この熱い涙が、魔法で凍りついた体を溶かしてくれたのなら
どんなに良かっただろうか

─ 17:59 ─


「そうだ! 約束しただろ?! 泳ぎを教えてくれるって!!」
「後の事は、黒服さんに任せてある……」
「そんな事は聞いてないッ! 今は約束の話をしてるんだッ!」
少年は現実を受け入れられない
あまりにも残酷な物語に耐える事が出来ないでいる
「少年!」
カシマが一喝する
凍りついていないのは、すでに首から上と四肢だけになっていた
「最後の言葉だ……聞いてやれ」
カシマを見上げ……サチを見る……力なく頷くサチ
「サッちゃん……」
「は、ハイッ!」
「これからも……輪と仲良くして下さい」
「もちろんですッ……独りになんかさせませんッ」
「ありがとう……サッちゃん」
「軍人さんも、ありがとう……お礼を出来ませんが許して下さい」
「ワタシはカシマ……礼など無用……それよりも、続きを」
「……ありがとう、カシマさん」

─ 18:03 ─


マスターは少年に視線を戻す
「……生きるんだ、輪」
頷く
「生きるよ……」
「……優しい心を、忘れるな」
頷く
「忘れない……」
「……孤独なヒトがいたら、手を繋いで……輪(わ)の中に入れてやれ」
頷く
「判ってる……」
「……愛しているよ、輪」
何度も頷く
「ボクもだよ……愛してる、父さん」

─ 18:08 ─


全てが凍りついていた
もう、何も動かない
優しく微笑む姿のまま

そして
砕け散る
氷の結晶がキラキラと輝き舞う
舞い落ちて
溶け
消える
最初から何も無かったかの様に

逢魔ヶ刻に夜の闇が忍び寄る時刻

セミの声に混じり
嗚咽が、いつまでも響き続けていた



*


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