喫茶ルーモア・隻腕のカシマ
夢の国編・秋祭り2日目(援護)
夕暮れに町が染まり始める中
暗色の外套を翻し走るひとつの影
暗色の外套を翻し走るひとつの影
「まったく……カシマときたら……」
口をついて出るのは愚痴ばかり
例の廃ビル──今はジャックの住処となっている──へと
あの男、カシマが訪ねて来た
私に頼みがあるらしい……
あの男、カシマが訪ねて来た
私に頼みがあるらしい……
「かッ、借りがありますからッ……しッ、仕方ありませんねッ!」
借りなどどうでも良かった
私を頼ってくれるのは内心、嬉しくもあった
しかし、あの言い方は無いだろう
私を頼ってくれるのは内心、嬉しくもあった
しかし、あの言い方は無いだろう
何が『パレードへ行かないか?』だ
そんなことを考えながらも、町中を周り
北区の祭り会場へと着く
北区の祭り会場へと着く
テントが見える
タロット占いをしている店の様だった
また、占いか
先程助けた面妖な三人組みも占いをやっていたが……
……時間があれば……こ、恋占いなどを……
いや、そんな場合ではない
タロット占いをしている店の様だった
また、占いか
先程助けた面妖な三人組みも占いをやっていたが……
……時間があれば……こ、恋占いなどを……
いや、そんな場合ではない
夢の国の黒服たちがワラワラと詰め寄るが、テントへは入れずにいる
「少し……苛立っているのでね……」
外套を翻しながら、黒服たちの中へと疾駆する
切り刻まれ、肉塊へと変わり、消滅する
容赦など無い
切り刻まれ、肉塊へと変わり、消滅する
容赦など無い
「生きているか?」
「はい、助けて下さってありがとうございました」
「はい、助けて下さってありがとうございました」
テントへと入り声を掛けると、落ち着きある返答があった
その落ち着きは相応の年齢を要するはずだが、予想に反して若く美しい女性がいた
その落ち着きは相応の年齢を要するはずだが、予想に反して若く美しい女性がいた
「逃げるならば、付き合うが?」
「……いえ、私はここを動くつもりはありません」
「……いえ、私はここを動くつもりはありません」
全てを受け入れようとでも言うのか
それとも、占い師らしく運命を試そうとでも言うのか
それとも、占い師らしく運命を試そうとでも言うのか
「分かった……好きにするがいい」
こういう人間には、私などが何を言っても無駄だ
そして、説得している時間はない
そして、説得している時間はない
さっさと町を周り、早く彼の元へと行きたい
テント出て、カシマがいるであろう西区と北区の境辺りへ視線をやる
そこから程近い方角
西区では、自然現象とは思えぬ雷光が昼から走っていた
無事であって欲しい
いや、そう易々と倒れたりはしないだろう
だが、傷など負わせた者がいようものなら……簡単には始末しない
この世に生を受けたことを後悔させてやる
テント出て、カシマがいるであろう西区と北区の境辺りへ視線をやる
そこから程近い方角
西区では、自然現象とは思えぬ雷光が昼から走っていた
無事であって欲しい
いや、そう易々と倒れたりはしないだろう
だが、傷など負わせた者がいようものなら……簡単には始末しない
この世に生を受けたことを後悔させてやる
*
西区へと思いを馳せながらも移動する
「……?!」
バサりと外套を翻し、身を包み込む
そのまま後方へと飛び退く
ジュゥッと溶ける布地
そのまま後方へと飛び退く
ジュゥッと溶ける布地
「あなた、誰?」
美しい容貌の青年が誰何する
手には、暗色の液体で満たされたボトル
手には、暗色の液体で満たされたボトル
「ジャック・ザ・リッパー」
「ふぅん、そう……悪いけどそれ以上近寄らないでね」
「ふぅん、そう……悪いけどそれ以上近寄らないでね」
青年は背後の小屋を護る様に位置を変える
狂気にも似た気配
そして、その気配はどこか……自分と同じ様なものにも感じる
狂気にも似た気配
そして、その気配はどこか……自分と同じ様なものにも感じる
「こちらは急ぎの身……その小屋に興味は無い」
「そう……なら行けば?」
「そう……なら行けば?」
ここは問題ない
味方ならば、青年は護られる様な性質の者ではない
敵ならば、排除に時間が掛かる
或いは……やられる……か……
だが、こんな所で倒れるわけにはいかない
味方ならば、青年は護られる様な性質の者ではない
敵ならば、排除に時間が掛かる
或いは……やられる……か……
だが、こんな所で倒れるわけにはいかない
「ならば、去らせて頂く」
無言で見送る青年
次は南へ向かうか……
*
立ち並ぶ住宅の屋根を疾駆しながら、全体を見渡す
視界に北へと向かう一台のバイクを捕らえる
視界に北へと向かう一台のバイクを捕らえる
「そこのライダー!」
「?!」
「?!」
「どこへ行く!北は危険だ!」
バイクを停め
ふたりは顔を見合わせて、頷き合う
もちろん、ライダーに首があればの話だが……
ふたりは顔を見合わせて、頷き合う
もちろん、ライダーに首があればの話だが……
「危険だから行くんだよ!」
「……」
「助けを待っている人がいるからなッ!」
「……祭りの会場にあるタロット占いのテントに女性がいる」
「?」
「そこから動くつもりは無い様だった」
「……」
「もし、出逢ったなら……助けてやれ」
「そうか……分かった!ありがとう!」
「……」
「助けを待っている人がいるからなッ!」
「……祭りの会場にあるタロット占いのテントに女性がいる」
「?」
「そこから動くつもりは無い様だった」
「……」
「もし、出逢ったなら……助けてやれ」
「そうか……分かった!ありがとう!」
少女へ「コヅカちゃん、飛ばすよッ!」と声を掛けるライダー
自分も霧を展開し、次の区域へと向かおうとする
が……気配を断とうとするも完全ではない
結界が侵食されているのか……
が……気配を断とうとするも完全ではない
結界が侵食されているのか……
「急げ!……彼女の結界もそう長くは持たない!」
「分かってるさ!」
それぞれ別の方角へと疾走っていく
*
早く、速く、はやく、ハヤク
カシマの元へと行きたい
『自分のところは最後で良い』などと彼は云う
彼らしいとは思う
だが、私はこんなにも胸が苦しい思いをさせられているのだ
不公平というものではないか
だが、私はこんなにも胸が苦しい思いをさせられているのだ
不公平というものではないか
逢えば、この苦しさから開放されるのは分かっている
助けを求める者を見捨てて行けば、早く逢える
助けを求める者を見捨てて行けば、早く逢える
しかし、それをすれば……カシマに落胆をもって迎えられる事となるだろう
それでは意味が無いのだ
それでは意味が無いのだ
これだけ苦しい思いをしているのだ
笑顔で迎え入れてもらわねば割りに合わない
笑顔で迎え入れてもらわねば割りに合わない
今、この瞬間も
誰かが何かを護ろうと奔走している
誰かが何かを護ろうと奔走している
彼らには何が待ち受けているのだろうか……