喫茶ルーモア・隻腕のカシマ
夢の国編・秋祭り2日目(拳舞)
振り向くと男がいた
パーカーのフードを目深に被り顔は窺えない
だが、どこか見覚えのある……
パーカーのフードを目深に被り顔は窺えない
だが、どこか見覚えのある……
掴まれた腕を放され、手の中の石を奪い取られる
「よぅ、元気にしてたかぁ?」
男はのん気な口調で言う
「ぇ……ぁ……ボクサー……さん?!」
「おぅ、憶えてたかぁ……良かったぜぇ」
「おぅ、憶えてたかぁ……良かったぜぇ」
コーク・ロアに憑かれたボクサー
サチがカシマと契約して初めて戦った都市伝説とその契約者
サチがカシマと契約して初めて戦った都市伝説とその契約者
「なんかヤバそうだなぁ」
パレードを眺めながら、のんびりと呟く
「そう……ですね……少し、距離をとりましょう」
パレードを眺めながら、のんびりと呟く
「そう……ですね……少し、距離をとりましょう」
二人はパレードに背を向け走り出す
袋小路になっている──カシマ達のいる──方ではなく
角を曲がり、逃げ場を確保する
袋小路になっている──カシマ達のいる──方ではなく
角を曲がり、逃げ場を確保する
パレードが追いかけて来るのを確認しながら走る
ボクサーは走りながらも言葉を投げかける
「お前さぁ、いつもこんな事してんのかぁ?」
「いつもってワケじゃありませんけど……」
「でもよ、オレの時以外でもこんな事してるワケだろぉ?」
「……そうですけど」
「何でそんなに一生懸命なんだ?」
「……自分でも……わかりません」
「お前なぁ……」
「でも、放っておくワケにもいかないから……」
「ホント呆れるわ……」
「……ごめんなさい」
「オレに謝られてもなぁ……困るぜぇ?」
そういってボクサーは笑う
つられてサチも笑った
「いつもってワケじゃありませんけど……」
「でもよ、オレの時以外でもこんな事してるワケだろぉ?」
「……そうですけど」
「何でそんなに一生懸命なんだ?」
「……自分でも……わかりません」
「お前なぁ……」
「でも、放っておくワケにもいかないから……」
「ホント呆れるわ……」
「……ごめんなさい」
「オレに謝られてもなぁ……困るぜぇ?」
そういってボクサーは笑う
つられてサチも笑った
この少女はいつでも一生懸命なのだろう
そして、中々に……良い笑顔だと……男は思う
そして、中々に……良い笑顔だと……男は思う
「全く……こいつは……惚れてまうやろぉ~~~!!」
「ぇ? なんですか? 急に……」
「いやぁ……そのなぁ、お前……可愛いよなぁ」
「ぇえ?!」
直球である
いや、ストレートと言った方が男には相応しいだろうか
そして、少女にとって
こんな風に好意(と言って良いのだろうか)を
あからさまに表現されたのは初めてであった
「ぇ? なんですか? 急に……」
「いやぁ……そのなぁ、お前……可愛いよなぁ」
「ぇえ?!」
直球である
いや、ストレートと言った方が男には相応しいだろうか
そして、少女にとって
こんな風に好意(と言って良いのだろうか)を
あからさまに表現されたのは初めてであった
だが、今はそんな事をのん気に話している場合ではない
男は振り向き、パレードを視認する
「で……だ、あれを倒せばいいのか?」
「はい……ぇ?……そうじゃなくて、逃げないと」
「なに言ってんだよ……敵なんだろぉ?」
「そうですけど……」
「そういやぁ、あのヒトどうした? カシマさん」
「はい……ぇ?……そうじゃなくて、逃げないと」
「なに言ってんだよ……敵なんだろぉ?」
「そうですけど……」
「そういやぁ、あのヒトどうした? カシマさん」
男の口調には、何となくだが敬意を払っている様な雰囲気が感じられる
「カシマさんは他のマスコットの相手をしています」
「マスコットぉ?」
「はい、くまのプ○さんです」
「お前ら……大丈夫か? この世から消されたりしねぇの?」
眉をひそめて男は尋ねる
「今まさに、消されそうになっているところなんです!」
「じゃあ決まりだ……やるしかねぇよなぁ?サチさんよぉ?」
「……まぁ……そうですね」
諦めた様にサチ
「マスコットぉ?」
「はい、くまのプ○さんです」
「お前ら……大丈夫か? この世から消されたりしねぇの?」
眉をひそめて男は尋ねる
「今まさに、消されそうになっているところなんです!」
「じゃあ決まりだ……やるしかねぇよなぁ?サチさんよぉ?」
「……まぁ……そうですね」
諦めた様にサチ
*
二人は振り返り、パレードと対峙する
男はどこからか取り出したグローブをはめる
ボクシング用ではない
金属製のプレートと鋲の付いた、ロッカーが好んで使いそうなグローブだ
男はどこからか取り出したグローブをはめる
ボクシング用ではない
金属製のプレートと鋲の付いた、ロッカーが好んで使いそうなグローブだ
「さぁて……行くか!」
ジェスチャーで、サチにここで待つ様にと指示し
無言で走り出すボクサー
無言で走り出すボクサー
途中で振り向き
「やっぱ、なんか情報くれ……」
「……」
「なんか無いのか?……」
「ぇ~と……彼らは倒しても倒しても補充されます」
「は?」
「数を減らすには、補充される速度を上回る速度で倒さないと……」
「それ、無理じゃねぇ?」
「無理です」
「どうすんの?」
「……櫓を壊すと、彼らの足止めが出来るらしいです」
「櫓かぁ……分かった、やってみる」
「やっぱ、なんか情報くれ……」
「……」
「なんか無いのか?……」
「ぇ~と……彼らは倒しても倒しても補充されます」
「は?」
「数を減らすには、補充される速度を上回る速度で倒さないと……」
「それ、無理じゃねぇ?」
「無理です」
「どうすんの?」
「……櫓を壊すと、彼らの足止めが出来るらしいです」
「櫓かぁ……分かった、やってみる」
再びジェスチャーで、サチにここで待つ様にと指示し
無言で走り出すボクサー
無言で走り出すボクサー
住人たちはナイフや斧を構える
一体が前に出て迎え撃つ体勢
男はステップインで素早く懐にもぐり込む
強烈なボディブロー
相手の体が一瞬浮き上がる程の一撃
一体が前に出て迎え撃つ体勢
男はステップインで素早く懐にもぐり込む
強烈なボディブロー
相手の体が一瞬浮き上がる程の一撃
「?!」
だが……手応えが───無い
バックステップで距離をとる
そのまま、後退り……更に背を向け、サチのところへと戻る
幸い、パレードの進行は遅い様だった
そのまま、後退り……更に背を向け、サチのところへと戻る
幸い、パレードの進行は遅い様だった
「おい……アイツ、気持ち悪りぃ感触だったぞぉ……」
少し顔が青ざめている
ボクサーらしくない様にも見えた
「気持ち悪い……ですか?」
考え込む様に俯く
「なんかよぉ……肉を打つ感触が感じられない様な……空っぽの様な……」
「からっぽ……ですか……ぁ! 彼らは内臓がありません!」
「内臓が……無いぃ?」
げんなりとした表情になる
「彼ら夢の国の住人は、内臓を抜き取られているんです」
「気持ち悪りぃなぁ……どういう原理で動いてんだよぉ……」
疑問に思うのはもっともな事ではあるが、それが都市伝説というものである
少し顔が青ざめている
ボクサーらしくない様にも見えた
「気持ち悪い……ですか?」
考え込む様に俯く
「なんかよぉ……肉を打つ感触が感じられない様な……空っぽの様な……」
「からっぽ……ですか……ぁ! 彼らは内臓がありません!」
「内臓が……無いぃ?」
げんなりとした表情になる
「彼ら夢の国の住人は、内臓を抜き取られているんです」
「気持ち悪りぃなぁ……どういう原理で動いてんだよぉ……」
疑問に思うのはもっともな事ではあるが、それが都市伝説というものである
「まぁいいや……行って来る!」
ボディがダメなら頭部を狙えば良い
ボディがダメなら頭部を狙えば良い
再びステップイン
スピードは住人達を圧倒している
スピードは住人達を圧倒している
今度は右拳がほぼ垂直にアゴを打ち抜く
そのままの位置で左足を軸に反転
隣にいる住人の顔面に左ジャブを入れ、次いで渾身の右ストレートを叩き込む
背後に殺気
ナイフを突き出す住人、振り向くボクサー
そして、完璧なタイミングで放たれるクロスカウンター
3体が倒れ伏す
倒れた住人を踏みつけ、櫓に飛び乗る
そのままの位置で左足を軸に反転
隣にいる住人の顔面に左ジャブを入れ、次いで渾身の右ストレートを叩き込む
背後に殺気
ナイフを突き出す住人、振り向くボクサー
そして、完璧なタイミングで放たれるクロスカウンター
3体が倒れ伏す
倒れた住人を踏みつけ、櫓に飛び乗る
拳を突きたて、イルミネーションのケーブルを引き抜く
バチバチッと電気が疾り
「イ゙デデデデ?!」
感電する
バチバチッと電気が疾り
「イ゙デデデデ?!」
感電する
細い支柱を2本ほど蹴り倒し
「ンガッ?!」
天蓋が頭に落ちる
「ンガッ?!」
天蓋が頭に落ちる
更に上へと登ると、外装を踏み抜き
「エ゙ッ?!」
そのまま体ごと落ちる
「エ゙ッ?!」
そのまま体ごと落ちる
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
これで櫓は十分に破壊したはずだ
これで、パレードはしばらく止まる
ちょっと格好悪かった様に思うが、目的は果たされた
惚れた女の前でくらいは、カシマさんの様にスマートに決めたかったが……仕方ない
これが自分の在り方なのだろう
飾らない自分を……サチに見せるのも悪くないのかもしれない
そう、ボクサーは思う
これで櫓は十分に破壊したはずだ
これで、パレードはしばらく止まる
ちょっと格好悪かった様に思うが、目的は果たされた
惚れた女の前でくらいは、カシマさんの様にスマートに決めたかったが……仕方ない
これが自分の在り方なのだろう
飾らない自分を……サチに見せるのも悪くないのかもしれない
そう、ボクサーは思う
*
櫓を修復する住人を背に、サチの元へと走る
不安そうな顔の少女
「怪我は?!」
「ちょっと……感電して、たんこぶが出来て、擦りむいただけだ」
「ごめんなさい……巻き込んでしまって……わたし、自分では何も出来なくて……」
「ん~……そんなことはねぇ……オレは好きでやってる」
「……ボクサーさんも……人助けですか?」
似合わないとでも思っているのだろう
「オレは、他人を助けようとは思ってねぇ」
「?」
「オレはお前だから助けた」
「?」
「お前は何も出来ないワケじゃねぇ……もしもだ……」
「……なんでしょう?」
「もし、お前がパレードに石を投げようとしていなけりゃ……オレはお前を連れて逃げてた」
「……ごめんなさい」
「謝るとこじゃねぇんだよ」
「ぇ?……」
「お前さぁ……自分のことには鈍感なんだな……」
「すいません……」
「だからだなぁ……まぁいい、兎に角だ……お前がオレにパレードを止めさせたんだ」
「そう……ですね」
「つまり、お前はそれだけの力を持っていた……違うか?」
「……なんか……納得いきませんけど……そう……ですね、ありがとうございました」
「おぅ!そうだよ!それだ!謝罪じゃなくて感謝だ!」
「感謝……ですか……そう……ですね」
サチの顔に明るさが戻る
「おぅ、良い笑顔だ! 好きだぞ、そういうの」
不安そうな顔の少女
「怪我は?!」
「ちょっと……感電して、たんこぶが出来て、擦りむいただけだ」
「ごめんなさい……巻き込んでしまって……わたし、自分では何も出来なくて……」
「ん~……そんなことはねぇ……オレは好きでやってる」
「……ボクサーさんも……人助けですか?」
似合わないとでも思っているのだろう
「オレは、他人を助けようとは思ってねぇ」
「?」
「オレはお前だから助けた」
「?」
「お前は何も出来ないワケじゃねぇ……もしもだ……」
「……なんでしょう?」
「もし、お前がパレードに石を投げようとしていなけりゃ……オレはお前を連れて逃げてた」
「……ごめんなさい」
「謝るとこじゃねぇんだよ」
「ぇ?……」
「お前さぁ……自分のことには鈍感なんだな……」
「すいません……」
「だからだなぁ……まぁいい、兎に角だ……お前がオレにパレードを止めさせたんだ」
「そう……ですね」
「つまり、お前はそれだけの力を持っていた……違うか?」
「……なんか……納得いきませんけど……そう……ですね、ありがとうございました」
「おぅ!そうだよ!それだ!謝罪じゃなくて感謝だ!」
「感謝……ですか……そう……ですね」
サチの顔に明るさが戻る
「おぅ、良い笑顔だ! 好きだぞ、そういうの」
*
ボクサーがしゃがみ込む
「ん~~……にしても……」
何か真剣に考えている様だった
「どうしたんですか?」
「う~ん……お前さぁ、脚ほっそいよなぁ~~」
「ぇ?!」
黒いストッキングに包まれた足は、より細く見える
「ちゃんとメシ食ってるかぁ?ダイエットとか必要ないだろぉ?」
「いや……その……ですね」
ジィーっと脚を見つめ続けるボクサー
「……」
「……」
無言の二人
沈黙を破る様に、ボクサーの手が伸び……無造作にスカートをヒラリとめくる
「な゙?!!」
「やっぱさぁ……細過ぎだよなぁ……」
残念そうに呟くボクサー
「きゃあぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
こだまする悲鳴
「ん~?」
危険が近づく気配、風斬り音
後転し、平手打ちを避ける
そのまま、両腕で丸めた体躯を跳ね上げる様にして
トンと立ち上がる
「ハァ……ハァ……ハァ……」
息を荒げているサチ
「おぅ、悪かったな……細いのが綺麗とかいう風潮を馬鹿にしたとかじゃなくてだなぁ
オレはあれだ、貧乳とかは気にしないが……尻はデカくてだなぁ、太腿はムチプリな方が好きだからよぉ」
全く謝罪になっていないボクサー
「ん~~……にしても……」
何か真剣に考えている様だった
「どうしたんですか?」
「う~ん……お前さぁ、脚ほっそいよなぁ~~」
「ぇ?!」
黒いストッキングに包まれた足は、より細く見える
「ちゃんとメシ食ってるかぁ?ダイエットとか必要ないだろぉ?」
「いや……その……ですね」
ジィーっと脚を見つめ続けるボクサー
「……」
「……」
無言の二人
沈黙を破る様に、ボクサーの手が伸び……無造作にスカートをヒラリとめくる
「な゙?!!」
「やっぱさぁ……細過ぎだよなぁ……」
残念そうに呟くボクサー
「きゃあぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
こだまする悲鳴
「ん~?」
危険が近づく気配、風斬り音
後転し、平手打ちを避ける
そのまま、両腕で丸めた体躯を跳ね上げる様にして
トンと立ち上がる
「ハァ……ハァ……ハァ……」
息を荒げているサチ
「おぅ、悪かったな……細いのが綺麗とかいう風潮を馬鹿にしたとかじゃなくてだなぁ
オレはあれだ、貧乳とかは気にしないが……尻はデカくてだなぁ、太腿はムチプリな方が好きだからよぉ」
全く謝罪になっていないボクサー
「そういう事に怒っているワケじゃないですッ!」
「ん?……そうか?……なら、いいか」
「良くないですッ! ぱ……パ……パン……」
あぅあぅと口を動かすサチ
「ん~?」
考え込むボクサー
「……そうか!」
ポンと手の平に拳を打つ
「……何ですか?」
怪訝な表情で訊く
「オレが好きなのは脚じゃなくて、お前自身だから問題ない?」
「わたしに訊かないで下さいッ!!」
「ん?……そうか?……なら、いいか」
「良くないですッ! ぱ……パ……パン……」
あぅあぅと口を動かすサチ
「ん~?」
考え込むボクサー
「……そうか!」
ポンと手の平に拳を打つ
「……何ですか?」
怪訝な表情で訊く
「オレが好きなのは脚じゃなくて、お前自身だから問題ない?」
「わたしに訊かないで下さいッ!!」
「はぁ……」
息を吐き、へたり込む
紅潮した顔から、ほてりが消える頃には緊張の糸は完全に切れ
不意に笑みがこぼれていた……殆どが呆れから出来た笑顔だったが……
それを見て、ボクサーからも笑みがこぼれる
息を吐き、へたり込む
紅潮した顔から、ほてりが消える頃には緊張の糸は完全に切れ
不意に笑みがこぼれていた……殆どが呆れから出来た笑顔だったが……
それを見て、ボクサーからも笑みがこぼれる
「ボクサーさん……」
「ん~?」
「……助けてくれて、ありがと」
「おぅ!」
「ん~?」
「……助けてくれて、ありがと」
「おぅ!」
立ち上がろうとするサチに
手を差し伸べるボクサー
グィっと引き起こし、もう一度
二人は笑った
手を差し伸べるボクサー
グィっと引き起こし、もう一度
二人は笑った