ある晴れた昼下がり、散歩をしていた俺たちの目の前に、小学校1,2年生くらいの女の子が立ちはだかった。
「あなた契約者ね?」
「いやいやとんでもないなにそれ?」
一応言ってみると女の子は若干ムキになって叫んできた。
「そんなことないわよ! ほら! そこ! あなたの鞄の中の!」
どうもばれてるようだ。いつ逃げようか様子を窺いつつ、嫌々ながら最近俺の鞄の中がお気に入りのリカちゃんを呼んだ。
カバンから出て俺の肩に座った小さな人形を見て女の子は意地悪そうに嗤う。
「あらぁ、かわいいわね」
「ほめられたの」
「よしよし、よかったな。……じゃっ!」
馬鹿にされているんだが言葉の意味を純粋に受け取って喜んでいるリカちゃんを撫でつつ手をピッ、と挙げると俺は女の子から逃げるべく回れ右をしようとした。
「待ちなさいよ!」
女の子は声をそんなこちらの機先を制すように言うと懐かしい童謡を歌い始めた。
「赤い靴履いてた女の子 異人さんに、連れられて行っちゃった」
くそ、逃げ損ねた!
目の前にはいつの間にか日本人離れした、異人さんとしか言いようのない男性が立っていた。
「赤い靴! その子やっちゃいなさい!」
「失礼、お譲さん、御年令はおいくつですか?」
「は?」
契約者の言葉を無視してまず訊くようなことか?それ、
しかもなんだ? 俺の年齢?
「ああ、ババアの年齢とかどうでもいいんで」
ば、俺十代だぞおい!
そう思いつつ俺はじゃあこっちの年齢なのかな? と肩の上のリカちゃんに目を向ける。リカちゃんも悟ったようで、
「わたし?」
誰にともなく訊くと、
「イエス!」
目の前の異人風の男が答えた。
「えっと、さんしゅうかんくらい」
「きったああああああああYHAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaAAA!! ロリ!!幼女!!ひゃっほおおおおおおおおおおおおおおううううううううう!!」
な、なんだ!? テンションいきなり上げやがったぞ!?
謎の踊りまで踊ってやがる異人風の男にとりあえず声をかけてみる。
「お、おいおいおい、変態か!? いや、そもそもリカちゃんは人形だぞ?」
そう、しかもビスクドールとかマネキンとかそんなものではなくただの綿が中に詰まった布製の人形だ。
「AHAHAHAHAHAHAHA! そのロリボイスに十歳以下という年齢! なんら問題はなぁい!」
やばい、こいつ早く何とかしないと。
「あなた契約者ね?」
「いやいやとんでもないなにそれ?」
一応言ってみると女の子は若干ムキになって叫んできた。
「そんなことないわよ! ほら! そこ! あなたの鞄の中の!」
どうもばれてるようだ。いつ逃げようか様子を窺いつつ、嫌々ながら最近俺の鞄の中がお気に入りのリカちゃんを呼んだ。
カバンから出て俺の肩に座った小さな人形を見て女の子は意地悪そうに嗤う。
「あらぁ、かわいいわね」
「ほめられたの」
「よしよし、よかったな。……じゃっ!」
馬鹿にされているんだが言葉の意味を純粋に受け取って喜んでいるリカちゃんを撫でつつ手をピッ、と挙げると俺は女の子から逃げるべく回れ右をしようとした。
「待ちなさいよ!」
女の子は声をそんなこちらの機先を制すように言うと懐かしい童謡を歌い始めた。
「赤い靴履いてた女の子 異人さんに、連れられて行っちゃった」
くそ、逃げ損ねた!
目の前にはいつの間にか日本人離れした、異人さんとしか言いようのない男性が立っていた。
「赤い靴! その子やっちゃいなさい!」
「失礼、お譲さん、御年令はおいくつですか?」
「は?」
契約者の言葉を無視してまず訊くようなことか?それ、
しかもなんだ? 俺の年齢?
「ああ、ババアの年齢とかどうでもいいんで」
ば、俺十代だぞおい!
そう思いつつ俺はじゃあこっちの年齢なのかな? と肩の上のリカちゃんに目を向ける。リカちゃんも悟ったようで、
「わたし?」
誰にともなく訊くと、
「イエス!」
目の前の異人風の男が答えた。
「えっと、さんしゅうかんくらい」
「きったああああああああYHAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaAAA!! ロリ!!幼女!!ひゃっほおおおおおおおおおおおおおおううううううううう!!」
な、なんだ!? テンションいきなり上げやがったぞ!?
謎の踊りまで踊ってやがる異人風の男にとりあえず声をかけてみる。
「お、おいおいおい、変態か!? いや、そもそもリカちゃんは人形だぞ?」
そう、しかもビスクドールとかマネキンとかそんなものではなくただの綿が中に詰まった布製の人形だ。
「AHAHAHAHAHAHAHA! そのロリボイスに十歳以下という年齢! なんら問題はなぁい!」
やばい、こいつ早く何とかしないと。
あまりのことに呆然としているとすぐそこまで変態が近付いてきていた。
「もういいから早くやちゃってよ」
変態を呼び出した女の子もこめかみを押さえながらそう指示を出している。そう言えば変態の言によればこの女の子はあの変態のストライクゾーンではないのだろうか。
大丈夫なのか? いろいろと。
「お嬢さん、私と一夏のアバンチュールを楽しみませんか?」
そうしている間にも変態の魔の手が迫る。
くそ、リカちゃん相手に何言ってるんだこいつ、ねっとりとした笑顔向けながら手を伸ばすな。
「えと、こわいの」
案の定リカちゃんが言った言葉に、だがしかし空気が凍った。変態の周りだけだが。
「う、うう、うううううう」
変態は何かうつむいて声を震わせている。
「君をおおおおおおおおおおおさらってやるうううううううううううううっ!」
何故か血涙流しながら変態は腕を伸ばしてきた。
なんというか、迫力がやばい。
「あ~、そこまでだ」
こちらに迫っていた変態の背後から男の声が聞こえ、変態の腕を別の腕がつかんで止めた。
「お兄ちゃん!」
「お兄ちゃんんn?」
振り向く赤い靴、その視線の先には二十代前半くらいの青年が立っていた。
「Tさん、この変態ヤバい」
俺の言葉に青年――Tさんはうなずき、
「破ぁ!!」
気合いの声と共に放たれた白光で変態を吹き飛ばした。
「うおおおおおおおおおおおおっ!?」
「なに? 多重契約者!?」
ことの成行きを見ていた女の子もTさんの登場には驚いたようだった。
まあただ後ろから歩いてきただけなんだが、
「そうなるかな」
俺が答えると、
「卑怯よ!」
と、とても簡潔な一言が返ってきた。
いやー不意打ちしてきた人の言うことじゃないと思うんだ。
「で、どうするんだ?」
Tさんが若干低めの声で女の子に問いかける。
「て、撤退よ!」
「了解! 逃げるぞ!」
「戦略的撤退よ馬鹿! 役立たず! 変態! 不能!」
罵倒を浴びせながら逃げていく女の子とふらふらしつつもそれについて行く変態を見送っていると、
「どうする?」
Tさんから追撃するかどうかの選択がまわって来た。
「あんな変態出されたまま往来歩きまわられると困るからとりあえずあの変態だけしまってもらおう」
まあ、つまりやっつけないけど話合いはしてみようぜっていうことでひとつ。
「おにごっこ?」
「ああ、鬼ごっこだ」
リカちゃんにそう答えて俺はTさんと共に変態と女の子を追った。
「もういいから早くやちゃってよ」
変態を呼び出した女の子もこめかみを押さえながらそう指示を出している。そう言えば変態の言によればこの女の子はあの変態のストライクゾーンではないのだろうか。
大丈夫なのか? いろいろと。
「お嬢さん、私と一夏のアバンチュールを楽しみませんか?」
そうしている間にも変態の魔の手が迫る。
くそ、リカちゃん相手に何言ってるんだこいつ、ねっとりとした笑顔向けながら手を伸ばすな。
「えと、こわいの」
案の定リカちゃんが言った言葉に、だがしかし空気が凍った。変態の周りだけだが。
「う、うう、うううううう」
変態は何かうつむいて声を震わせている。
「君をおおおおおおおおおおおさらってやるうううううううううううううっ!」
何故か血涙流しながら変態は腕を伸ばしてきた。
なんというか、迫力がやばい。
「あ~、そこまでだ」
こちらに迫っていた変態の背後から男の声が聞こえ、変態の腕を別の腕がつかんで止めた。
「お兄ちゃん!」
「お兄ちゃんんn?」
振り向く赤い靴、その視線の先には二十代前半くらいの青年が立っていた。
「Tさん、この変態ヤバい」
俺の言葉に青年――Tさんはうなずき、
「破ぁ!!」
気合いの声と共に放たれた白光で変態を吹き飛ばした。
「うおおおおおおおおおおおおっ!?」
「なに? 多重契約者!?」
ことの成行きを見ていた女の子もTさんの登場には驚いたようだった。
まあただ後ろから歩いてきただけなんだが、
「そうなるかな」
俺が答えると、
「卑怯よ!」
と、とても簡潔な一言が返ってきた。
いやー不意打ちしてきた人の言うことじゃないと思うんだ。
「で、どうするんだ?」
Tさんが若干低めの声で女の子に問いかける。
「て、撤退よ!」
「了解! 逃げるぞ!」
「戦略的撤退よ馬鹿! 役立たず! 変態! 不能!」
罵倒を浴びせながら逃げていく女の子とふらふらしつつもそれについて行く変態を見送っていると、
「どうする?」
Tさんから追撃するかどうかの選択がまわって来た。
「あんな変態出されたまま往来歩きまわられると困るからとりあえずあの変態だけしまってもらおう」
まあ、つまりやっつけないけど話合いはしてみようぜっていうことでひとつ。
「おにごっこ?」
「ああ、鬼ごっこだ」
リカちゃんにそう答えて俺はTさんと共に変態と女の子を追った。
で、変態と女の子を追っていると公園に行きついた。
「ああーっ!」
「うわ」
大声に何事かと思って見てみると、女の子と変態は女の子より少し年上くらいの少女を指差して驚いていた。指さされている少女の方はとても嫌そうだ。
少女の周りには全身黒づくめの男と日本刀を持った若い兄ちゃんがいた。女の子は変態ともども少女にケンカを売っている。近づいていって声を聞いてみると、
「ここで会ったが百年目えええええええ」
「ババアじゃねえか! くそ、俺の純情を弄びやがった恨み忘れちゃ―いねえ、紳士的に粛清してやる!」
うん、どうも知り合いらしい。じゃあ邪魔者はとっとと帰ってしまおう。うん。正直あまりかかわり合いになりたくない感じのオーラが彼等から出てるし。
「チッ、この馬鹿ほっといてさっさと逃げるわよ!」
逃げる?
そう少女が周りの二人になにやら不穏当なことを言ったとき、黒服が、
「手遅れですね」
と彼等がやって来た方角を見据えながら答えた。
なんとなく確実に嫌な予感がして視線の先を追ってみると、彼らが走ってきた方角から幌付きの軍用トラックのようなものがゴトゴト音を鳴らしてやってきて、止まった。
「ああーっ!」
「うわ」
大声に何事かと思って見てみると、女の子と変態は女の子より少し年上くらいの少女を指差して驚いていた。指さされている少女の方はとても嫌そうだ。
少女の周りには全身黒づくめの男と日本刀を持った若い兄ちゃんがいた。女の子は変態ともども少女にケンカを売っている。近づいていって声を聞いてみると、
「ここで会ったが百年目えええええええ」
「ババアじゃねえか! くそ、俺の純情を弄びやがった恨み忘れちゃ―いねえ、紳士的に粛清してやる!」
うん、どうも知り合いらしい。じゃあ邪魔者はとっとと帰ってしまおう。うん。正直あまりかかわり合いになりたくない感じのオーラが彼等から出てるし。
「チッ、この馬鹿ほっといてさっさと逃げるわよ!」
逃げる?
そう少女が周りの二人になにやら不穏当なことを言ったとき、黒服が、
「手遅れですね」
と彼等がやって来た方角を見据えながら答えた。
なんとなく確実に嫌な予感がして視線の先を追ってみると、彼らが走ってきた方角から幌付きの軍用トラックのようなものがゴトゴト音を鳴らしてやってきて、止まった。
「追いつかれちゃいましたか」
「一応車ですからね」
日本刀の兄ちゃんと黒服が言ってる間にトラックの幌や窓が開き、中からは、
「小人?」
「へいたいさん?」
「なんなのよあれ!」
その言葉の通り、トラックの中からはカーキ色だか枯れ草色だかの軍服を着たのこぎりやハサミで武装した小人たちが出てきて瞬く間に俺たちに対して半円形に布陣した。見た目は確かにミニマム軍隊だが、銃火器がないのが不思議っちゃあ不思議だな。と陣形に押されるようにその場の皆で固まりつつ思う。
「―――――――」
うを、何か喋ってるが日本語じゃねえ、くそっ、ここは日本なんだから日本語しゃべれよ謎の都市伝説め!
「『連れていく連れていく』言ってるね」
「分かるのか?」
変態の言葉にTさんが問うた。変態はやや自慢げに、
「世界中の言語を話せるし当然意味も分かる。これはドイツ語だな」
「……今はじめてあんたを使える奴と思ったわ」
万能翻訳を宣言する変態に女の子が言う。自分の契約者にもあまりよく思われてないんだな、あいつ。
「それで、どこに連れていくって?」
少女が問う。
「連れてく連れてくしか言ってないんでわからね」
両の手を広げて肩をすくめながら言う変態に、
「前言撤回ね」
女の子が冷たく言うと変態は「イヤン!」とか言って体をくねらせる。相当キてるな~。
「それでしたらおそらく、」
アホなことを思っているとこちらを品定めするように見ていた黒服が話しかけてきた。そこへ、
「来ました!」
何かを説明しようとしていた黒服を遮るように日本刀の兄ちゃんが注意を促す。言葉の通り、展開していた小人の兵士たちがこちらに攻め寄せて来ていた。
「この、」
少女がいきなり手に持っていたお金を兵士の群れに放り投げた。
小人の身には多少かさばる硬貨を受け止めた一人の兵士に向かって彼女は、
「買って嬉しい はないちもんめ♪」
歌いあげた。
まったく、今日は童謡に縁でもあるのかね?
少女が歌いあげた途端にその兵士の動きがおかしくなる。
「やっちゃえ」
少女の命令に答えるように兵士の持っているナイフが仲間を刺した。
「やった!」
嬉しそうにいう少女。っつーことはなにか? この子も契約者? しかもなんか操作とかしちゃう感じの?
「でも」
「あ、やられちゃったの」
見てみると少女が操る兵士は大量の仲間に解体されていた。地味にグロい。かと思ったら解体された残骸はすぐに消えてしまった。
「はないちもんめじゃあ効率が悪いですよね、やっぱり」
「かといって僕の能力も、仮に使えたとしてもこうも多勢に無勢じゃ役に立たなさそうですしね。仮に生身で挑んでいっても進軍を止めることは不可能でしょう」
黒服と日本刀の兄ちゃんは自然に少女を自分たちの背後になるように構えながら言う。
「ならここは俺が」
Tさんが更に一歩前に出る。そして掌を兵士たちへ向け、
「破ぁ!!」
間髪いれずに光が溢れ、兵士たちを消滅させた。
『っ!?』
少女と日本刀の兄ちゃん、黒服も女の子も驚愕している。まあ無理もないだろう。あんな無駄にすごいモノをいきなり見せつけられたら誰だって驚く。
「……おかしい」
だがしかし驚愕の場面を作り上げている張本人がそう呟く。
「なにがですか?」
「手ごたえがなさすぎる」
訊ねた日本刀の兄ちゃんにそう返すTさん。そこにリカちゃんと女の子の叫びが同時に飛ぶ。
「「トラックがないの(わよ)!」」
「!」
確かにそうだ、あの幌付きの軍用トラックがいつの間にかどこかに行っている。
まだアレに何か乗ってたのか!くそっ!
突っ込んでこられたらたまらない、先程の軍用トラックを探してみんなは視線を巡らせる。そこへ――
「一応車ですからね」
日本刀の兄ちゃんと黒服が言ってる間にトラックの幌や窓が開き、中からは、
「小人?」
「へいたいさん?」
「なんなのよあれ!」
その言葉の通り、トラックの中からはカーキ色だか枯れ草色だかの軍服を着たのこぎりやハサミで武装した小人たちが出てきて瞬く間に俺たちに対して半円形に布陣した。見た目は確かにミニマム軍隊だが、銃火器がないのが不思議っちゃあ不思議だな。と陣形に押されるようにその場の皆で固まりつつ思う。
「―――――――」
うを、何か喋ってるが日本語じゃねえ、くそっ、ここは日本なんだから日本語しゃべれよ謎の都市伝説め!
「『連れていく連れていく』言ってるね」
「分かるのか?」
変態の言葉にTさんが問うた。変態はやや自慢げに、
「世界中の言語を話せるし当然意味も分かる。これはドイツ語だな」
「……今はじめてあんたを使える奴と思ったわ」
万能翻訳を宣言する変態に女の子が言う。自分の契約者にもあまりよく思われてないんだな、あいつ。
「それで、どこに連れていくって?」
少女が問う。
「連れてく連れてくしか言ってないんでわからね」
両の手を広げて肩をすくめながら言う変態に、
「前言撤回ね」
女の子が冷たく言うと変態は「イヤン!」とか言って体をくねらせる。相当キてるな~。
「それでしたらおそらく、」
アホなことを思っているとこちらを品定めするように見ていた黒服が話しかけてきた。そこへ、
「来ました!」
何かを説明しようとしていた黒服を遮るように日本刀の兄ちゃんが注意を促す。言葉の通り、展開していた小人の兵士たちがこちらに攻め寄せて来ていた。
「この、」
少女がいきなり手に持っていたお金を兵士の群れに放り投げた。
小人の身には多少かさばる硬貨を受け止めた一人の兵士に向かって彼女は、
「買って嬉しい はないちもんめ♪」
歌いあげた。
まったく、今日は童謡に縁でもあるのかね?
少女が歌いあげた途端にその兵士の動きがおかしくなる。
「やっちゃえ」
少女の命令に答えるように兵士の持っているナイフが仲間を刺した。
「やった!」
嬉しそうにいう少女。っつーことはなにか? この子も契約者? しかもなんか操作とかしちゃう感じの?
「でも」
「あ、やられちゃったの」
見てみると少女が操る兵士は大量の仲間に解体されていた。地味にグロい。かと思ったら解体された残骸はすぐに消えてしまった。
「はないちもんめじゃあ効率が悪いですよね、やっぱり」
「かといって僕の能力も、仮に使えたとしてもこうも多勢に無勢じゃ役に立たなさそうですしね。仮に生身で挑んでいっても進軍を止めることは不可能でしょう」
黒服と日本刀の兄ちゃんは自然に少女を自分たちの背後になるように構えながら言う。
「ならここは俺が」
Tさんが更に一歩前に出る。そして掌を兵士たちへ向け、
「破ぁ!!」
間髪いれずに光が溢れ、兵士たちを消滅させた。
『っ!?』
少女と日本刀の兄ちゃん、黒服も女の子も驚愕している。まあ無理もないだろう。あんな無駄にすごいモノをいきなり見せつけられたら誰だって驚く。
「……おかしい」
だがしかし驚愕の場面を作り上げている張本人がそう呟く。
「なにがですか?」
「手ごたえがなさすぎる」
訊ねた日本刀の兄ちゃんにそう返すTさん。そこにリカちゃんと女の子の叫びが同時に飛ぶ。
「「トラックがないの(わよ)!」」
「!」
確かにそうだ、あの幌付きの軍用トラックがいつの間にかどこかに行っている。
まだアレに何か乗ってたのか!くそっ!
突っ込んでこられたらたまらない、先程の軍用トラックを探してみんなは視線を巡らせる。そこへ――
『ドナ・ドナ・ドナ・ドーナ 子牛を載せて――』
唄が聞こえてきた。ほんとに今日はよく童謡を耳にする日だ。そしてこんな場面で聴く童謡は、
「不味い!」
黒服が焦った声を上げる。やっぱり凶兆かよ。と、思うと同時に。
「不味い!」
黒服が焦った声を上げる。やっぱり凶兆かよ。と、思うと同時に。
『ドナ・ドナ・ドナ・ドーナ 荷馬車が揺れる――』
童謡の最後のフレーズが聞こえて、
俺の意識は断絶した。
俺の意識は断絶した。
●
トラックはいつの間にかこちらを周り込むように背後に移動していた。
『ドナ・ドナ・ドナ・ドーナ 子牛を載せて――』
トラックのスピーカーからは童謡、ドナドナが垂れ流され、トラックは背後にかばっていた少女たちに突っ込んでくる。
日本刀の青年がかばうように前に回ろうとするが数歩足りない。
日本刀の青年がかばうように前に回ろうとするが数歩足りない。
『ドナ・ドナ・ドナ・ドーナ 荷馬車が揺れる――』
歌が終わるのとほぼ同時に男はトラックに向けて気合の声を放つ、トラックはその前半分を男によって消滅させられながらも、空中をトンネルのように穴が空いた荷台のみで突き進んだ。
「逃げ――」
ろ、と言葉が出る前にトラックはその穴に男の契約者と赤い靴の契約者の女の子、それに黒服と日本刀の青年と共にいた少女をその穴に呑みこみ、未だ残っていた兵隊ごと空中に溶けるように消えた。
「しまった、やられた」
落胆に似た嫌な脱力感に襲われ膝をつく。男の脳裏に最悪の光景が浮かぶ。
「いえ、まだ、おそらく大丈夫なはずです」
黒服の声が聞こえる。
「? どういうことですか」
青年と同じように半ば呆然としていた日本刀の青年が黒服に視線を向ける。
そういえば、
「お前たちは誰だ? なんでアレに追われていた?」
先程の少女と黒服の口ぶりからすると彼等はアレに追われていたのだろう。だがアレと組んでいる可能性も否定できない。なんといっても、
「お前は組織の人間だな」
男は以前自分が所属していたその≪組織≫を信用していなかった。彼等なら自分たちの目的のために何でもやってのけるだろう。
こちらの疑惑の視線に黒服の男は、
「ええ、しかし身構えないでくださいよ。少なくとも今この状況では私たちの目的は同じはずです」
と諭すように言う。
「目的?」
「ええ」
「連れ去られた子たちの救出ですか」
いぶかしげに言う男に日本刀の青年が解答を出す。
「ええ。そこのあなたもそうでしょう」
そう言って赤い靴に目を向ける黒服。赤い靴は、
「ああ、助けられるならそうしたいもんだ」
若干力なく言う赤い靴。先程の戦闘ではあまり感じられなかった契約者に対する情はしっかりあるようだ。
ん、落ち着いてきた。
「そうだな。現状目的は一致してそうだ」
沈んでいた思考を引っ張り上げる。そして黒服を見上げ、
「アレについて何か知っているような口ぶりだったな。話してくれるか」
「ええ、喜んで」
黒服は多少ほっとしたような口調で言った。
「逃げ――」
ろ、と言葉が出る前にトラックはその穴に男の契約者と赤い靴の契約者の女の子、それに黒服と日本刀の青年と共にいた少女をその穴に呑みこみ、未だ残っていた兵隊ごと空中に溶けるように消えた。
「しまった、やられた」
落胆に似た嫌な脱力感に襲われ膝をつく。男の脳裏に最悪の光景が浮かぶ。
「いえ、まだ、おそらく大丈夫なはずです」
黒服の声が聞こえる。
「? どういうことですか」
青年と同じように半ば呆然としていた日本刀の青年が黒服に視線を向ける。
そういえば、
「お前たちは誰だ? なんでアレに追われていた?」
先程の少女と黒服の口ぶりからすると彼等はアレに追われていたのだろう。だがアレと組んでいる可能性も否定できない。なんといっても、
「お前は組織の人間だな」
男は以前自分が所属していたその≪組織≫を信用していなかった。彼等なら自分たちの目的のために何でもやってのけるだろう。
こちらの疑惑の視線に黒服の男は、
「ええ、しかし身構えないでくださいよ。少なくとも今この状況では私たちの目的は同じはずです」
と諭すように言う。
「目的?」
「ええ」
「連れ去られた子たちの救出ですか」
いぶかしげに言う男に日本刀の青年が解答を出す。
「ええ。そこのあなたもそうでしょう」
そう言って赤い靴に目を向ける黒服。赤い靴は、
「ああ、助けられるならそうしたいもんだ」
若干力なく言う赤い靴。先程の戦闘ではあまり感じられなかった契約者に対する情はしっかりあるようだ。
ん、落ち着いてきた。
「そうだな。現状目的は一致してそうだ」
沈んでいた思考を引っ張り上げる。そして黒服を見上げ、
「アレについて何か知っているような口ぶりだったな。話してくれるか」
「ええ、喜んで」
黒服は多少ほっとしたような口調で言った。
≪ドナドナ≫
有名な童謡だがこの歌の詩はひどく暗い。仔牛が屠殺場に連れて行かれる歌だ。
そしてこの童謡には都市伝説がある。
曰く、この歌はナチスに子と妻を連れていかれた男の悲嘆の歌である。
有名な童謡だがこの歌の詩はひどく暗い。仔牛が屠殺場に連れて行かれる歌だ。
そしてこの童謡には都市伝説がある。
曰く、この歌はナチスに子と妻を連れていかれた男の悲嘆の歌である。
「なるほど、つまりあの軍隊はナチスの真似ごとというわけか」
「そうなりますかね。そこの彼が彼等の話している言語がドイツ語であると言ってましたし」
「おう、間違いないぜ」
うなずく赤い靴。
「私たち≪組織≫はここ最近暴れているアレとの契約者についての情報を得ていました。そして同系統の童謡系都市伝説≪はないちもんめ≫と契約しているあの少女に注意するように伝えようとしていたんです」
「僕も≪かごめかごめ≫と契約してまして、そこの黒服さんに注意をいただいたばかりなんですよ」
そして以前から知り合いだった二人がなんとなく連れだって少女のもとに行ったときにアレに遭遇してしまったらしい。
「都市伝説は都市伝説を呼ぶというやつか」
しかも契約者付き。人間が相手と来たものだ。都市伝説は契約によってその力を上げるモノが多い、やっかいだ。
ともあれ、こちらも身の上を説明する。手短に説明し終えると彼等は少し驚いた顔になり、
「おまえ、元人間か?」
「あなたは……そうですか。あなたが」
「≪寺生まれで霊感の強いTさん≫ですか、話に聞くだけだと全能っぽく聞こえますね」
三者三様に答えた。どうも黒服は人間の時の男を知っているようだ。まあ、
今はどうでもいいか。と思う。
そして日本刀の青年の言う通り、確かに話だけ聞くとこの能力は全能そうだが、
「実際はそうじゃない。俺の都市伝説としての力は俺がまだ人間だった頃に契約していた≪ケサラン・パサラン≫の能力そのままだからな。格が違う存在相手には気合いもただの打撃程度のダメージしか与えないし無茶な幸せは運んで来れない」
そもそも本当に全能なら今こうしてアレ相手に手をこまねいてはいない。
「それにしても」
あらためて男は黒服を見上げる。
「あんたはずいぶんと≪黒服≫らしくないな」
妙に柔らかい雰囲気がある黒服に感想を言う。
「みんなに言われますよ」
黒服は苦笑。こちらも苦笑で返し、
「さて、アレをどうしたものか」
そして逸れていた話題を復帰させる。
「そう言えばまだ大丈夫だと言ってましたね。何か根拠でも?」
日本刀の青年の言葉に黒服は、
「いえ、消えた瞬間に殺されたということはないというだけで、まあすぐには殺されはしないでしょうけどそんなに時間があるわけではないのも事実です。出来るだけ急ぐべきでしょう」
と答える。消えた瞬間に殺されてないということは――
「ドナドナの歌が持つ空間に連れていかれたということか?」
だとしたら結界の類だろうか、と思考を巡らせていると、
「ええ、ドナドナの歌には屠殺場に連れていかれる仔牛が描かれていますから」
「あの子たちはその屠殺場に連れていかれた。と?」
「つまり急がないと屠殺場で惨劇が起こるんですね。わかります」
悲観的なことを言う赤い靴を皆で一睨みし、会話は続く。
「確かに、彼女等は屠殺場に連れていかれたのでしょう」
黒服の肯定意見。
「ならばもしかしてあの子たちはそこら辺の屠殺場に移動したってことですか?」
日本刀の青年の疑問。確かに屠殺場に連れていくというだけなら結界までわざわざ用意することはない。
あの子らの居場所が分かると幸せだな。
と思うがしかし、居場所は判明しない。ならやはりあの子らの居場所はケサラン・パサランの感知できない結界内か?
黒服はこちらの内心を肯定するかのように、
「いえ、残念ながらどこかの異空間に連れていかれたと見るのが正解でしょう」
と苦い顔をして言う。屠殺場だけならいくらでもあるはずなのにわざわざ異空間にまで連れて行く意図が分からない。人目につかせないためか、それとも――
「まさか、」
なんとなく思い至った予測。そのこちらの気付きを察知して黒服はうなずき、日本刀の青年にも視線を向け、
「ええ、あなたにも言いそびれていましたね、そういえば。実は≪ドナドナ≫だけではないんですよ。アレが契約しているのは」
「そうなりますかね。そこの彼が彼等の話している言語がドイツ語であると言ってましたし」
「おう、間違いないぜ」
うなずく赤い靴。
「私たち≪組織≫はここ最近暴れているアレとの契約者についての情報を得ていました。そして同系統の童謡系都市伝説≪はないちもんめ≫と契約しているあの少女に注意するように伝えようとしていたんです」
「僕も≪かごめかごめ≫と契約してまして、そこの黒服さんに注意をいただいたばかりなんですよ」
そして以前から知り合いだった二人がなんとなく連れだって少女のもとに行ったときにアレに遭遇してしまったらしい。
「都市伝説は都市伝説を呼ぶというやつか」
しかも契約者付き。人間が相手と来たものだ。都市伝説は契約によってその力を上げるモノが多い、やっかいだ。
ともあれ、こちらも身の上を説明する。手短に説明し終えると彼等は少し驚いた顔になり、
「おまえ、元人間か?」
「あなたは……そうですか。あなたが」
「≪寺生まれで霊感の強いTさん≫ですか、話に聞くだけだと全能っぽく聞こえますね」
三者三様に答えた。どうも黒服は人間の時の男を知っているようだ。まあ、
今はどうでもいいか。と思う。
そして日本刀の青年の言う通り、確かに話だけ聞くとこの能力は全能そうだが、
「実際はそうじゃない。俺の都市伝説としての力は俺がまだ人間だった頃に契約していた≪ケサラン・パサラン≫の能力そのままだからな。格が違う存在相手には気合いもただの打撃程度のダメージしか与えないし無茶な幸せは運んで来れない」
そもそも本当に全能なら今こうしてアレ相手に手をこまねいてはいない。
「それにしても」
あらためて男は黒服を見上げる。
「あんたはずいぶんと≪黒服≫らしくないな」
妙に柔らかい雰囲気がある黒服に感想を言う。
「みんなに言われますよ」
黒服は苦笑。こちらも苦笑で返し、
「さて、アレをどうしたものか」
そして逸れていた話題を復帰させる。
「そう言えばまだ大丈夫だと言ってましたね。何か根拠でも?」
日本刀の青年の言葉に黒服は、
「いえ、消えた瞬間に殺されたということはないというだけで、まあすぐには殺されはしないでしょうけどそんなに時間があるわけではないのも事実です。出来るだけ急ぐべきでしょう」
と答える。消えた瞬間に殺されてないということは――
「ドナドナの歌が持つ空間に連れていかれたということか?」
だとしたら結界の類だろうか、と思考を巡らせていると、
「ええ、ドナドナの歌には屠殺場に連れていかれる仔牛が描かれていますから」
「あの子たちはその屠殺場に連れていかれた。と?」
「つまり急がないと屠殺場で惨劇が起こるんですね。わかります」
悲観的なことを言う赤い靴を皆で一睨みし、会話は続く。
「確かに、彼女等は屠殺場に連れていかれたのでしょう」
黒服の肯定意見。
「ならばもしかしてあの子たちはそこら辺の屠殺場に移動したってことですか?」
日本刀の青年の疑問。確かに屠殺場に連れていくというだけなら結界までわざわざ用意することはない。
あの子らの居場所が分かると幸せだな。
と思うがしかし、居場所は判明しない。ならやはりあの子らの居場所はケサラン・パサランの感知できない結界内か?
黒服はこちらの内心を肯定するかのように、
「いえ、残念ながらどこかの異空間に連れていかれたと見るのが正解でしょう」
と苦い顔をして言う。屠殺場だけならいくらでもあるはずなのにわざわざ異空間にまで連れて行く意図が分からない。人目につかせないためか、それとも――
「まさか、」
なんとなく思い至った予測。そのこちらの気付きを察知して黒服はうなずき、日本刀の青年にも視線を向け、
「ええ、あなたにも言いそびれていましたね、そういえば。実は≪ドナドナ≫だけではないんですよ。アレが契約しているのは」