「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん-04

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「何もないようだな」
 学校町東区、住宅街付近にある東区最大の中学校の敷地内に青年の姿があった。
 周囲に人の影はなく、虫の声と、学校の昇降口付近の風鈴の音、
そして北の山の神社で行われている夏祭りの太鼓や笛の音がかすかに聞こえる。
「んん、やっぱり気にし過ぎか」
 青年は苦笑して頬を掻く。
 このゴーストタウン状態は単に祭りに皆が行っているから起こっているだけだろう。
あの時の明らかな不自然を感じない。
 この町の祭りは盛大だしな。
 夏祭りか。
「俺が≪夢の国≫にやられて一周年ということになるな」
 当然思うことはある。アレ以来自分は人間をやめてしまっているわけだし、それに、
「あの子はどこに行ってしまったんだか」
 ≪夢の国≫の契約者を思い出す。
 あれは、おそらくは≪夢の国≫関連の都市伝説と手当たり次第契約したものだろう。複数のアトラクションの都市伝説が機能し、お互いを補強しあっていたように思う。
 そもそも規模からして一人では太刀打ちできない代物だったのだろう。

 過去の自分の不甲斐なさに溜め息を吐く。と、電話がかかってきた。
契約者に無理やり持たされた携帯電話を開く。
「はい」
 応答すると、電話の向こうからはかわいらしい女の子の声が聞こえた。
『もしもし、わたしリカちゃん。今きっさてんルーモアにいるの』
「そうか」
 電話の声にそう答えると、携帯をどこかに置く音がした。
数秒待つと、スピーカーモードにでもなったのか雑音が多く聞こえるようになる。と、
『反応がつまらんな、Tさん! もっとこう戦々恐々として欲しいわけだよ。俺は!』
 少女の声――自分の契約者のハイテンションな声が聞こえた。
 声はまあそれはそれとして、と言った後、
『Tさーん、とっとと祭り行こ~。 聞いて驚け! 
なんとリカちゃん用の浴衣をマスターにもらったんだぜ!』

 心底うれしそうな声に、落ち着いたマスターの声が答える。
『いやぁ、輪の浴衣を通販で頼んだつもりがどうやら間違えていたみたいでね。
ウチにあっても仕方ないし、よかったら使ってくれ』
『マスター、人形サイズの浴衣を注文してしまったのはまあ、
写真の写し方が悪かったからいいにしてもなんで女の子用の浴衣なの?』
『最初は男の子用だと思ったんだけどね~』
『でも輪くんにも似合うと思う』
『あ、俺もそう思う』
『……勘弁してよ』

 輪少年の溜め息が聞こえた。憂鬱な溜め息とは違う、呆れたような、しかしどこか安堵したような声だ。声も新しく女性のものが増えている。
 人形が喋っている現場に普通にいるってことは、都市伝説の関係者だろうか?
「ルーモアからなら、そうだな。山の入口にある鳥居の前で待ち合わせるか?」
 向こうの会話が切れたタイミングで言葉を送る。
『よしきた! Tさん、俺とリカちゃんの晴れ姿見てびっくりするなよ!?』
 契約者は喜々としている。祭り好きなんだろう。テンションが異常に高い。
「期待してるよ」
 そう言って電話を切る。そして校舎に背を向けて歩き出す。
 以前は契約した都市伝説がケサランパサランだということもあり、
正体が看破されケサランパサランの力が行使できなくならないように組織内においても黒服とすら顔を合わせないような、例外として人面犬など、数人とたまに顔を合わせるくらいの生活をしていた。
 独りで都市伝説を狩り続けて、負けて、
何の因果か、人をやめた今になって人であった頃より人間らしい生活を送り、知り合いが増えてゆく。
 人ではなくなってしまったが、それでも今のこの環境は、
「幸せだよなぁ」
 男の呟きは夏の風にさらわれていく。
 もしかしたら俺たち以外の都市伝説も祭りに参加しているのかもしれないな。
 そう思いつつ男は神社へと向かっていった。



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