「Tさん」
「なんだ? フィラちゃん」
長い黒髪の女性、≪フィラデルフィア計画≫の契約者の女は一瞬動きを止め、しかしまた動き出した。
「会場の飾り付けに少し手を借りたいのだけど」
「ん、ああ」
Tさんと呼ばれた青年は対面で問題集を枕に居眠りしている己の契約者の頭にハリセンを叩き落としつつ返事をする。
「意外だな、将門公がそんなことにも気を使うとは」
濡れタオルを起き上がった契約者の顔に放り投げて青年が言う。
「気を使わなかったからこのタイミングでこうして頼みに来てるのよ」
フィラちゃんは疲れた顔で言う。
「あ~、なるほど」
青年が苦笑する。宴は明日だ。
「っし、じゃあ俺に任せて――」
「契約者はその問題集終わるまで宴には参加禁止」
「んな殺生な!」
契約者のたわごとを無視して青年は立ち上がり、別の問題集を解いていた二人に声をかける。
「リカちゃん、契約者をしっかり見はっておいてくれ」
「わかったの」
「夢子ちゃん」
「はい?」
「新生≪夢の国≫の初仕事だ」
そう言って青年は夢子を伴ってフィラちゃんについていった。
後ろから裏切り者ーと叫ぶ声がこだましてきた。
「なんだ? フィラちゃん」
長い黒髪の女性、≪フィラデルフィア計画≫の契約者の女は一瞬動きを止め、しかしまた動き出した。
「会場の飾り付けに少し手を借りたいのだけど」
「ん、ああ」
Tさんと呼ばれた青年は対面で問題集を枕に居眠りしている己の契約者の頭にハリセンを叩き落としつつ返事をする。
「意外だな、将門公がそんなことにも気を使うとは」
濡れタオルを起き上がった契約者の顔に放り投げて青年が言う。
「気を使わなかったからこのタイミングでこうして頼みに来てるのよ」
フィラちゃんは疲れた顔で言う。
「あ~、なるほど」
青年が苦笑する。宴は明日だ。
「っし、じゃあ俺に任せて――」
「契約者はその問題集終わるまで宴には参加禁止」
「んな殺生な!」
契約者のたわごとを無視して青年は立ち上がり、別の問題集を解いていた二人に声をかける。
「リカちゃん、契約者をしっかり見はっておいてくれ」
「わかったの」
「夢子ちゃん」
「はい?」
「新生≪夢の国≫の初仕事だ」
そう言って青年は夢子を伴ってフィラちゃんについていった。
後ろから裏切り者ーと叫ぶ声がこだましてきた。
●
とある廃ビルの中、虚空に発光体が現れ、中から鉄の箱が現れる。そしてその中から――
「ここか」
「たしかにこのままではお祝いでは使えませんね」
「まあ、そんなわけなのよ」
青年と夢子、フィラちゃんが出てきた。
お願いできるかしら? とフィラちゃんが言うと、夢子は「はい」と即答する。
「いい返事で助かるわ」
「さて、では俺たちは何を手伝えば――」
青年が言いきる前に、彼らの周囲に莫大な気配が唐突に出現した。
「っ!」
廃ビルには似つかわしくない楽しそうな、愉快な、華やかな気配。
そして誰もいないはずのビルのあちこちから感じられる何かの視線、息遣い。
一人、また一人と現れる住人とマスコット。
いつの間にか周りにはパレードが現れていた。
そしてそのパレードの主は張りきった声で告げる。
「みんなっ! 綺麗に飾ろう! 皆をもてなす飾りをつけよう! これが私たちが生まれ変わってから初めての、≪夢の国≫のお仕事だよ!」
「これは」
「手伝いなどいらんな」
緊張したようなフィラちゃんの声と呆れたような青年の声。
彼等の目の前では≪夢の国≫が高速で会場の飾り付けをしていっている。その飾り付けは上品に整えられており、
もっとファンシーな飾り付けをしてくると思ったが、
青年が予想と違った趣向の飾り付けをこなす≪夢の国≫に多少驚いていると、
「あの子、変わったわね」
緊張を緩やかに解いたフィラちゃんが話しかけてきた。
「それはそうだ。あの御老体さえいなければ彼女らはずっとこの調子で生きていたはずなんだ」
「……」
青年の言葉にフィラちゃんは無言だ。
確か、夢子ちゃんとフィラちゃんはまだ≪夢の国≫が歪んでいた時にあったことがあるんだったか。
青年は考え、話しかける。
「夢子ちゃんへの恐怖は消えたか?」
「どうでしょうね」
彼女は肩をすくめる、
「でも」
と言って息を長く吐き、
私はあの子たち、好きになれそうだわ。
そう言って、料理の手伝いに行くからと告げ、ビルの奥に消えていった。
「ここか」
「たしかにこのままではお祝いでは使えませんね」
「まあ、そんなわけなのよ」
青年と夢子、フィラちゃんが出てきた。
お願いできるかしら? とフィラちゃんが言うと、夢子は「はい」と即答する。
「いい返事で助かるわ」
「さて、では俺たちは何を手伝えば――」
青年が言いきる前に、彼らの周囲に莫大な気配が唐突に出現した。
「っ!」
廃ビルには似つかわしくない楽しそうな、愉快な、華やかな気配。
そして誰もいないはずのビルのあちこちから感じられる何かの視線、息遣い。
一人、また一人と現れる住人とマスコット。
いつの間にか周りにはパレードが現れていた。
そしてそのパレードの主は張りきった声で告げる。
「みんなっ! 綺麗に飾ろう! 皆をもてなす飾りをつけよう! これが私たちが生まれ変わってから初めての、≪夢の国≫のお仕事だよ!」
「これは」
「手伝いなどいらんな」
緊張したようなフィラちゃんの声と呆れたような青年の声。
彼等の目の前では≪夢の国≫が高速で会場の飾り付けをしていっている。その飾り付けは上品に整えられており、
もっとファンシーな飾り付けをしてくると思ったが、
青年が予想と違った趣向の飾り付けをこなす≪夢の国≫に多少驚いていると、
「あの子、変わったわね」
緊張を緩やかに解いたフィラちゃんが話しかけてきた。
「それはそうだ。あの御老体さえいなければ彼女らはずっとこの調子で生きていたはずなんだ」
「……」
青年の言葉にフィラちゃんは無言だ。
確か、夢子ちゃんとフィラちゃんはまだ≪夢の国≫が歪んでいた時にあったことがあるんだったか。
青年は考え、話しかける。
「夢子ちゃんへの恐怖は消えたか?」
「どうでしょうね」
彼女は肩をすくめる、
「でも」
と言って息を長く吐き、
私はあの子たち、好きになれそうだわ。
そう言って、料理の手伝いに行くからと告げ、ビルの奥に消えていった。
「ふむ」
青年は思う。
≪夢の国≫は皆にまたきっと受け入れてもらえるだろう。と、
「あの子が王である限り」
そのまま≪夢の国≫の仕事ぶりを眺めていた彼だが、
「あ、料理係がビルの中にいたのか……」
いきなりパレードが料理係の所に現れて大丈夫なのだろうか?
思った。
「フィラちゃんが言うか。たぶん」
楽観的に考えることにした。
青年は思う。
≪夢の国≫は皆にまたきっと受け入れてもらえるだろう。と、
「あの子が王である限り」
そのまま≪夢の国≫の仕事ぶりを眺めていた彼だが、
「あ、料理係がビルの中にいたのか……」
いきなりパレードが料理係の所に現れて大丈夫なのだろうか?
思った。
「フィラちゃんが言うか。たぶん」
楽観的に考えることにした。