「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - とある組織の構成員の憂鬱-34

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 ………かしゃり

 聞こえてきた、甲冑の音
 それを耳にした瞬間…黒服は、全身の体温がすぅ…と、下がっていくのを感じた

 思い出す
 籠釣瓶を取り押さえる任務で、「首塚」の敷地内に入ってしまった、あの時の事を



「くくくくくくくっ、顔を合わせるのは久しぶりだなぁ?」
「…お久しぶりです」
「あ、将門様」

 自分と契約してくれた青年と少女と、祭会場を歩いていて
 その人物と、遭遇してしまった
 通常ならば、このような時刻に、彼が出歩いているはずがない
 ……だが、今回の祭は、彼が出歩く事ができる「理由」を作ってしまっている
 「夢の国」や「鮫島事件」との戦いが終わった今でも、この祟り神は平気な顔をして、祭会場を歩いていた

「どうしたんすか?将門様?…今日は、あいつと一緒じゃないなんて」

 青年は、将門を恐れる様子もなく、平気でそう口にする
 …慣れ、と言うものなのだろう、この青年は将門と何度も接触している
 ……恐れる理由を、もっていないだけなのかもしれない
 この青年は、将門を敬っている
 将門に祟られる理由を、この青年は持っていないから

「あぁ、あれか?あれは、少し目を話した隙に見失ってしまった。探しているのだが、見付からんなぁ」
「将門様が見失ったんすか?それとも、向こうが将門様を見失ったか、どっちなんすか」
「………」

 将門と青年の会話を前に、少女は、やや警戒したような表情を浮かべている
 確か、この少女は将門と接触した事がないはずだ
 未知の相手を前に、警戒しているのだろう

「…大丈夫ですよ、こちらから害を与えなければ、敵対する相手ではありませんから」
「……そう」

 それでも、少女は完全には警戒を解かない
 …それは、そうだろう
 将門本人はさほど意識していないだろうが、この霊気
 怨霊でも背負っているかのような、迫力

 …そもそも、周囲の学校町の住人たちが、それに「気づかない」のがある意味で異常なのだ
 いや、その異常がまかり通るからこそ、この街は世界的に見ても異常な数の都市伝説を抱えながらも、何ら問題なく存在し続けているのかもしれないが…

「くくくっ、なるほど、そこの童か、こやつと共に、お前と契約したのは」

 将門が、口元に笑みを浮かべて少女を見た
 少女は、ますます警戒する

「……お願いですから、少しはその霊気を弱めてください」
「くくくくくっ、無理だなぁ?何せ、我は祟り神であるからなぁ?」

 …言うだけ無駄だと思ったが、やはりそうか
 黒服は、小さくため息をつく

「…それで、何か、御用でしょうか」
「あ、そうだ。将門様、こいつに何か用ですか?

 ……用がなければ、声などかけてこないだろう
 こちらに声をかけてきた、という事は、何らかの用件があるという事だ
 それがどんな用件なのかは、あまり想像はしたくないのだが

「なぁに、少々、尋ねる事があるまでよ…………貴様、「夢の国」を討ち取ったそうだなぁ?」
「…私、など。ただ、他の方の手助けを、少ししたまでです」

 自分の力で「夢の国」を……否、「夢の国の創始者」を討ち取った訳ではない
 ただ、ほんの少し
 ほんの少し、手助けしただけ
 少なくとも、この黒服はそう考えていた
 あれは、Tさんがやり遂げたことである
 支配から解き放たれた「夢の国」が、新たに支配される事なく、自分の意思を守り抜いた結果だ

 …この黒服は、そう考えていた
 己に自信と言う物を全く持っていない、この黒服らしい返答ではあった

 ………しかし、この日
 彼はこの自分の言動を、後悔する事になる

「…あぁ、そうだ。お前と共に、「夢の国」相手に戦った者がいたらしいなぁ?」
「………そう、ですが」

 …じわり
 背中を、嫌な汗が伝う

「それは、どんな奴なのだろうなぁ?」
「…興味がおありなのですか?」
「当然だ。そいつが「組織」と敵対していれば、なお、問題はないな」

 くっくっくっくっく、と
 将門は、楽しげに楽しげに笑っている

 …まったく、この祟り神は
 黒服は、小さくため息をついた
 ……そして、考える
 Tさんが、将門と接触を取る、可能性を
 Tさんたちは、「夢の国」が最早悪夢に侵されていない事を、「組織」等に伝えて回っているようだ
 それは、街のあちらこちらに張られたポスターを見ても、わかる

 …だからこそ、不安である
 Tさんと対面して、この祟り神がどんな行動をとるか?
 「夢の国」を討ち取った者がどれほどの実力か、試して見るくらいはしかねない
 そんな祟り神の気まぐれの戯れで、Tさんの命が危険に晒される可能性がないと言い切れないのが恐ろしい

「お前も、「組織」に捨てられたならば、こちらに来るが良い。歓迎するぞぉ?」
「……お気持ちだけ、受け取っておきます」

 「組織」と「首塚」
 今の自分は、どちらにも傾くつもりはない
 バックアップについては、一つ、「アテ」がある
 そちらを頼らせてもらうつもりだ
 その状態で、「組織」と「首塚」、双方に対し中立の立場でいられたらいい、と思う
 …この二つに、戦って欲しくはないのだ

「くっかかかかかかかかかかか!!まぁ、良かろう」

 黒服の答えに、将門は楽しげに笑って
 かしゃり
 甲冑を鳴らし、この場を立ち去ろうとしたが…
 おぉ、となにやら思い出したように立ち止まり、振り返ってくる

「あぁ、そうだ。青年よ、次の休日、暇は在るか?」
「へ?はい、ありますけど」

 将門相手に警戒を続けていた少女の様子に、首をかしげていた青年だったが、将門の言葉にすぐに反応し、返事を返す
 その答えに、将門は満足したように笑った

「では、その日、「夢の国」と「鮫島事件」相手の勝ち戦の宴を開く。宴の食事の支度は任せたぞ?」
「!はいっ!」

 将門にそう言われて、青年は嬉しそうに返事した
 …何故だろう
 一瞬、青年が飼い主に褒められた大型犬に見えたような見えなかったような
 ちぎれんばかりに振られる尻尾が見えた気がするのは、完全に幻想だろう
 やはり、自分は疲れているようだ

「…宴、ですか」
「あぁ、そうだ。お前も、そこな童も来るが良い。貴様等も、宴に来る資格はあるからなぁ?」

 楽しげに、楽しげに笑って
 将門は、甲冑を鳴らしながら立ち去っていく


 …体中の力が、抜けていくのを自覚した
 一瞬、体がよろける

「っとと、大丈夫か?」
「はい…」

 …全く
 あの祟り神と話していると、寿命が縮みかねない

「…少し、休みましょう?しっかり休みましょうと言っても、あなた、聞かないでしょう?」

 少女がそう言って、黒服の手を引き始めた
 腰掛けて休める場所を探してくれているようだ
 黒服は、少女にそのまま手を引かれて行く
 青年が、そんな二人の後を慌てて追いかけてきた

「……宴、だったかしら?行くの?」
「はい、まぁ、誘われましたから……付き合い、と言うものがありますので」

 …最も、その前に
 将門とは、もう一度会って話さなければならないのだが
 ……「籠釣瓶」の件に関して、問いたださなければならない事がある
 それを考えると、今から胃が痛い

「あなたは、どうなさいますか?」
「え?……さぁ、どうしようかしら?」

 黒服の言葉に、曖昧に答えてきた少女
 …少女も行くと言うのなら、自分も同行した方がいいだろう
 将門の言い方から考えるに、「組織」の関係者すらも、招かれる可能性があるのだ
 少女は、ある意味で「組織」と敵対している状態にも近いのだ
 トラブルが起きないとも言い切れない

 …都市伝説として、契約者を護らなければ

 そんな使命感よりも、何も
 この少女を危険な目にあわせたくない、という思いが、この黒服は強いのだった





 fin




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