「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - とある組織の構成員の憂鬱-35

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だれでも歓迎! 編集
 …不安がなかった訳ではない
 しかし、不思議と、何とかなるのではないか?…と言う、妙な安心感があったのも、事実で
 その黒服は、学校町の隣町にて、とある人物の下を訪れていた
 日本でも有数の財産家
 通常ならば、アポなしならば門前払いであろう

 …しかし
 人間であった頃の名前を名乗った所
 彼は、すんなりと屋敷の奥に通されていた
 屋敷の奥に居たのは、膝に不思議な生物を抱いた男性

「……お久しぶりです」
「久しぶり…あの頃と、顔立ち、あまり変わっていないね」

 男性に、そう声をかけられて、苦笑する
 男性のほうは…あの頃は少年だったから、随分と大人になった
 それでも、面影が残っているから、わかる

「僕は…老けたよね?」
「いえ、まだ、若々しいですよ」
「お世辞はいいよ」

 困ったように笑う男性
 撫でられた膝の上の生物が、くぅ、と小さな鳴き声をあげる
 その生き物の額には…キラリと光る、赤い宝石が輝いていた

「僕を訪ねてくれた、という事は…思い出したんだね?」
「………はい」

 人間の頃の記憶
 完全ではないものの、この黒服は思い出した

 だから、こそ
 「薔薇十字団」の日本支部の責任者の名前に、気づけたのだ

「ご立派になられましたね」
「僕の力というより…ほとんど、この子の力だよ」

 男性は、困ったように笑っている
 男性が膝に抱く生物は…都市伝説「カーバンクル」
 その額の宝石を手に入れた者は、富を手に入れ、幸福になると言われている
 しかし、その存在を求めた者は不幸な最期を遂げる…

 この男性は、自ら求めてカーバンクルを手に入れたのではない
 たまたま、カーバンクルと出合ったのだ
 そして…カーバンクルの額の宝石を、彼は求めなかった
 ただ、その可愛らしい姿に惚れ込み、懐いてもらえるようになるまで必死の努力を積み重ね…
 …とうとう、カーバンクルの方から、自分の元にくるように仕向けさせたのだ
 まぁ、これがカーバンクルである事には、後で気づいたようだが

 彼が今の財産を気づけたのは、彼自身の才能とカーバンクルの幸運
 その二つが合わさった結果だろう

「…他の方々は、やはり…」
「………うん」

 こちらの言葉に、男性は悲しそうに俯いた
 …やはり
 「赤いはんてん」の契約者も、「さっちゃんの歌の四番目」の契約者も…「全身を金粉で覆われたら死ぬ」の契約者も
 皆、死んでしまっていたか
 …考えたくは無かった
 しかし、彼らもまた、「夢の国」に敵対していた
 ……自分が死んだ後に、戦った可能性は極めて高かったのだ
 この男性が生き残ってくれていた
 それだけでも…かつての友人たち全員が、命を落としたわけではなかった
 悲しいが、その事実だけが、嬉しい

「…自分のせいに、しないようにね?」
「え…」
「あなたは、昔から何もかも、自分のせいにしてしまう。それは駄目だよ?……あの人達が、悲しむから」

 …小さく、頷く
 自分が、「夢の国」と戦わなければ…
 そう、考えなかったわけではない
 でも、きっと…遅かれ早かれ、自分たちは、「夢の国」と戦っただろう
 そして…どちらにせよ、命を落としてた事に、悲しいが変わりはないのだ

「「夢の国」は、正気に戻ったんだってね?」
「はい…もう、大丈夫です」

 もう、彼女は悪夢に飲み込まれたりしない
 新しい「夢の国」の王様は、もはや悪夢に侵されない
 …もう、大丈夫だ

「「薔薇十字団」としても、それは嬉しいよ。「夢の国」は日本以外でも、問題視されていたから」
「…隠さないのですね。「薔薇十字団」に所属している事を」
「うん。別に、いかがわしい団体でもないからね。僕は主に資金提供しかしていないし」

 くー
 カーバンクルも鳴き声をあげた
 ぱたぱたと、その長い大きな耳を機嫌良さそうに動かしている

「何せ「薔薇十字団」は、錬金術や魔法の研究に打ち込む、内側に篭るタイプが多いからね。でも、研究するんだから資金がいる訳で…僕みたいな存在が、必要なんだって。対価として、身辺警護はしてもらっているから…僕は戦えないから、助かってるよ」
「そうですか…」
「だから、ね」

 男性は、じっと、黒服を見つめた
 男性の精神がシンクロしているかのように、カーバンクルも愛らしい大きな瞳で、黒服を見つめる

「あなたは…バックアップがいるんだよね?「組織」からのそれは、もう期待できないから」
「……ご存知なのですね、もう」
「こちらには、こちらなりの情報網があるからね」

 …まったく、「組織」の情報が何処から漏れているのだろう?
 胃の痛い問題である
 まぁ、もれてしまった情報は仕方ない
 今後、そんな事がないよう、対策を考えなければ…

「……お願いいたします」

 静かに
 静かに…頭を、下げる

「お願いいたします…今後も、都市伝説との戦いで…今回の「夢の国」との戦いの準備のように、何らかのバックアップが必要となる機会は、あるでしょう…その時に…お力を、お貸しいただけないでしょうか?」
「いいよ。あなたは、僕の友達だから…唯一生き残ってくれている、あの頃の友達だから」

 だから、いいよ、と
 男性は、あっさりと、そう言い切った
 くぅくぅ、カーバンクルも声をあげる

「我々「薔薇十字団」は、あなたを支持する。こちらの力が必要になったら、すぐに連絡してね」
「……申し訳ありません」
「謝る必要なんてないよ」

 男性は、そう言って笑ってきた
 申し訳なさを抱えている黒服の、その後ろめたさを払拭するように
 ただただ、明るく笑ってくる

「僕ね、嬉しいんだよ?……僕は、皆に護られてばかりだった。その僕が、頼られている…それが嬉しいんだ」

 だから、と
 男性は、こう続けてきた

「遠慮なく「薔薇十字団」を頼って、さんざこき使ってよ?その気になれば色々とできるのに、なかなかやらない連中だから」
「……機会が、ありましたら」
「さて、仕事の話は、これくらいにしようよ」

 にこり、男性が笑う
 …この、笑い方は
 記憶が、若干の嫌な予感を伝えて…

「時間、あるよね?少しお茶していこうよ。何せ時間だけは余ってるからさ。お菓子作ったんだ」
「あ、いえ、その…」
「なのに、みんな食べてくれないしさ。カーバンクルも食べてくれないし………あ、カーバンクル、相変わらず可愛いでしょ?ブラッシングしてあげてる時なんてまた可愛くて…」

 ……あぁ
 嫌な予感、的中
 そうだ、この男性、菓子作りが趣味だった…
 ………が、確か、彼の作る菓子は…全て、生物兵器的に甘かったような
 そして、彼はカーバンクルを溺愛している
 俗に言うペットバカレベルなどとうに超えたレベルで溺愛している
 さて、カーバンクル自慢話は…かつて自分が経験したのは一時間程続いた記憶があるが
 今は、その記憶も塗り替えているのだろうか?

 そんな事を考えながらも、黒服は誘いを断る訳にはいかず

「メイドに、お茶とか淹れさせるから。少し待っててね」
「……それでは、お言葉に甘えて」

 と、その誘いに、応じるしかないのだった



 fin





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