彼の、その姿を見て
「…見立ては完璧だったわ…!」
「ブラボー…おぉ、ブラボー…!!」
「ブラボー…おぉ、ブラボー…!!」
女子たちは、きゃいきゃいと騒ぎ出し
「これは…すげぇ…!」
「…男の子もいいよね!!」
「…男の子もいいよね!!」
新世界の扉を開けそうな男子、数名
「----てめぇら、そんなにジロジロ見るんじゃねぇ!!」
様々な意味の好奇の視線に晒されて
彼、日景 翼は、盛大に叫んだのだった
彼、日景 翼は、盛大に叫んだのだった
「よく似合っているではないか。何が不満なんだ?」
「直希、お前は抵抗もなく着てんじゃねぇよ…」
「直希、お前は抵抗もなく着てんじゃねぇよ…」
セーラー服を身に纏った友人の姿に、翼はがっくりと脱力する
…翼も、同じようにセーラー服を着ていた、否、着せられていた
本日は学園祭
翼達のクラスの出し物は「女装喫茶」である
翼も直希も、店員として女装するハメになったのだ
ほぼ、強制である
…翼も、同じようにセーラー服を着ていた、否、着せられていた
本日は学園祭
翼達のクラスの出し物は「女装喫茶」である
翼も直希も、店員として女装するハメになったのだ
ほぼ、強制である
「いやいや、二人ともよく似合ってるぜ?」
「誠っ!てめぇ一人だけ女装逃れてんじゃねぇぞ!?」
「誠っ!てめぇ一人だけ女装逃れてんじゃねぇぞ!?」
女装などせず、エプロン姿の幼馴染相手に翼は盛大に突っ込んだ
が、誠はくっく、と楽しげに笑ってくる
が、誠はくっく、と楽しげに笑ってくる
「俺、厨房の係だし」
「畜生……!」
「畜生……!」
俺もそっちが良かった
項垂れる翼だが、時既に遅し
クラス会議の時に、あれよあれよと言う間に、厨房ではなくウェイトレス係を押し付けられてしまったのだ
きゃいきゃいきゃい、女子たちは楽しげに騒いでいる
項垂れる翼だが、時既に遅し
クラス会議の時に、あれよあれよと言う間に、厨房ではなくウェイトレス係を押し付けられてしまったのだ
きゃいきゃいきゃい、女子たちは楽しげに騒いでいる
「さっすが清川君!日景君に女装が似合うなんて素敵な情報をありがとう!」
「これは永久保存ものだわ……あ、撮った写真、焼き増ししてあげるから」
「あぁ、ありがとうな」
「これは永久保存ものだわ……あ、撮った写真、焼き増ししてあげるから」
「あぁ、ありがとうな」
…この野郎、やけに女子たちが張り切って厨房係に立候補していっていたのはこれが原因か
幼馴染に、怒気交じりの視線を送るのだが、誠は全く意に介した様子はない
ぽん、とそんな翼の肩を、直希は慰めるように叩いてきた
幼馴染に、怒気交じりの視線を送るのだが、誠は全く意に介した様子はない
ぽん、とそんな翼の肩を、直希は慰めるように叩いてきた
「まぁ、いいじゃないか。どうせ僕たちは午前だけの係なのだから」
「……そうだけどよ」
「……そうだけどよ」
…黒服が、来てくれると言っていた。何時になるかはわからない、とも言っていたが
できれば、午後からきて欲しい
翼は、そう願わずにはいられなかった
できれば、午後からきて欲しい
翼は、そう願わずにはいられなかった
(…何、これ)
その様子を……望は、半ば呆れた表情で見つめていた
この一連の流れを、望はなぜか見せられていたのだ
この一連の流れを、望はなぜか見せられていたのだ
(…夢、かしらね?)
誰も、ここにいる望を気にしている様子はない
まるで、この場にいないかのように
きっと、これは夢なのだろう
彼女はそう理解する
まるで、この場にいないかのように
きっと、これは夢なのだろう
彼女はそう理解する
(翼が…高校生、だった頃?ヤケにリアルな夢ね…)
夢だと、なぜかわかる
しかし、酷く現実感のある夢だ
まるで、本当に起こった出来事を、見せ付けられているかのように
しかし、酷く現実感のある夢だ
まるで、本当に起こった出来事を、見せ付けられているかのように
色々と抗議しながらも、翼はきちんとウェイトレスとしての仕事をやっていた
途中、クラスメイトの男子にスカート捲りされそうになって鉄拳が飛んだりもしていたが
なんとも、穏かな光景だ
賑やかな学園祭の様子が伝わってくる
途中、クラスメイトの男子にスカート捲りされそうになって鉄拳が飛んだりもしていたが
なんとも、穏かな光景だ
賑やかな学園祭の様子が伝わってくる
「…よし、そろそろ終わりだな」
「あぁ、そうだな」
「あぁ、そうだな」
ふぅ、と一息つこうとしている翼
黒服の姿はまだ、ない
黒服にこの姿を見られずにすみそうな事を、翼は喜んでいるようだった
黒服の姿はまだ、ない
黒服にこの姿を見られずにすみそうな事を、翼は喜んでいるようだった
……が
世の中、そんなに甘くない
世の中、そんなに甘くない
「ナオ君ー、ごめーん!お姉ちゃん遅れちゃっ……った……」
「!!エ、エリカさん!?」
「!!エ、エリカさん!?」
--ぴくり
翼の口から出たその名前に、望は思わず、翼の視線の先を見つめる
そこにいたのは…あの、写真に写っていた、女性だ
教室の入り口に立ち、呆然と翼を見つめている
翼に視線を戻せば、羞恥のせいか、翼は真っ赤になっていて
翼の口から出たその名前に、望は思わず、翼の視線の先を見つめる
そこにいたのは…あの、写真に写っていた、女性だ
教室の入り口に立ち、呆然と翼を見つめている
翼に視線を戻せば、羞恥のせいか、翼は真っ赤になっていて
「おや、姉さん…そう言えば、来ると言っていたな」
「っちょ、おま、そう言う事は早く……」
「っちょ、おま、そう言う事は早く……」
直希の、淡々としたその言葉に、翼は突っ込んだが
直後
翼の姿が、消えた
翼の姿が、消えた
(え?)
慌てて視線を彷徨わせ…すぐに、その姿は見付かった
「っつ、翼君、かかかかかかか、かぁいい~~~~~!!お持ち帰りぃいいい!!!!」
「~~~っちょ、エ、エリカさん!?お、落ち着いて……!」
「~~~っちょ、エ、エリカさん!?お、落ち着いて……!」
自分よりも背丈のある翼の体を軽々担ぎ、爆走している女性…エリカ
その表情は、至福そのもの
その表情は、至福そのもの
何、この変態
望はそんな真っ当かつ正直な感想を抱く
望はそんな真っ当かつ正直な感想を抱く
と、そうしていると
「翼さん、すみません、遅れてしまい……………」
「っぎゃーーーーー!?」
「っぎゃーーーーー!?」
あ、黒服も来た
何というか、色々と大変な現場を見られて、硬直している翼
誰にも姿を認識されていないのをいい事に、望はばしばし床をたたきながら笑ってしまう
何というか、色々と大変な現場を見られて、硬直している翼
誰にも姿を認識されていないのをいい事に、望はばしばし床をたたきながら笑ってしまう
…この後も、穏かな光景が続いた
エリカの暴走を黒服が何とか収め、エリカが翼に謝りたおし
その間…翼は、どこか照れたように、ほんのりと頬を赤らめていて
あぁ、本当に、好きだったのだな、とそれが伝わってくる
周囲も、それがわかっていて
翼の恋を、応援してやろうとしているような
そんな、雰囲気が伝わって……
エリカの暴走を黒服が何とか収め、エリカが翼に謝りたおし
その間…翼は、どこか照れたように、ほんのりと頬を赤らめていて
あぁ、本当に、好きだったのだな、とそれが伝わってくる
周囲も、それがわかっていて
翼の恋を、応援してやろうとしているような
そんな、雰囲気が伝わって……
(--------っ!?)
…が
その、穏かな光景が…突然、一変した
周囲の風景が、ガラリと変わる
多分、夜の廃工場か、どこか
暗くて、赤い光景
赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い
その、風景の、真ん中に
胸元を真っ赤に染め上げたエリカが、倒れていた
ごほごほと血を吐き、口元も赤く染まっている
胸元を、何かで深く抉られたらしい傷
どう見ても…助かりそうに、ない
その、穏かな光景が…突然、一変した
周囲の風景が、ガラリと変わる
多分、夜の廃工場か、どこか
暗くて、赤い光景
赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い
その、風景の、真ん中に
胸元を真っ赤に染め上げたエリカが、倒れていた
ごほごほと血を吐き、口元も赤く染まっている
胸元を、何かで深く抉られたらしい傷
どう見ても…助かりそうに、ない
「---ッエリカさん!」
(翼……!)
(翼……!)
翼が、そのエリカに駆け寄っている
翼も、体中所々、裂傷ができていた
何かの都市伝説と戦ったらしい事が、推察できる
翼も、体中所々、裂傷ができていた
何かの都市伝説と戦ったらしい事が、推察できる
「エリカさん……ッエリカさん!」
「……さ、くん」
「……さ、くん」
…エリカが
その血塗れの姿で、今にも、命の灯火を消してしまいそうな、その状態で
だが、それでも、自分よりも翼を気遣うかのように…申し訳なさそうに、笑いかけている
その血塗れの姿で、今にも、命の灯火を消してしまいそうな、その状態で
だが、それでも、自分よりも翼を気遣うかのように…申し訳なさそうに、笑いかけている
「ごめん、ね……おねーさん…ちょっと、ドジ、踏んじゃったみたい……」
「…ッ黒服が!黒服が来たら、「蝦蟇の油」でその怪我、治せますから……だから、しっかり……!」
「…ッ黒服が!黒服が来たら、「蝦蟇の油」でその怪我、治せますから……だから、しっかり……!」
…泣いている
ぼろぼろ、ぼろぼろと
大粒の涙をこぼして、翼は泣いていた
ぼろぼろ、ぼろぼろと
大粒の涙をこぼして、翼は泣いていた
翼も、きっと理解しているのだ
これだけの傷、最早手遅れだ、と
それでも、その現実を信じたくないかのように
彼は、必死に彼女を助けようとしていた
これだけの傷、最早手遅れだ、と
それでも、その現実を信じたくないかのように
彼は、必死に彼女を助けようとしていた
「…だ、め…翼君、逃げて……あいつら、が……来る……」
「…………!」
「…………!」
何時の間にか、翼は包囲されていた
取り囲むのは、真っ赤な帽子を被った小人達
取り囲むのは、真っ赤な帽子を被った小人達
「…赤帽子(レッドキャップ)……!」
翼が、涙を乱暴にぬぐい、立ち上がる
…能力が発動され、斧を手に飛び掛ろうとしていた小人が、体を焼かれ始めた
たった一人で、死に行こうとしているエリカを庇いながら、翼が戦い始めた
体に、決して浅くない傷が増えていく
それでも、翼は退こうとしない
エリカの命を諦めきれず、まだ護ろうと、必死にもがいて……
…能力が発動され、斧を手に飛び掛ろうとしていた小人が、体を焼かれ始めた
たった一人で、死に行こうとしているエリカを庇いながら、翼が戦い始めた
体に、決して浅くない傷が増えていく
それでも、翼は退こうとしない
エリカの命を諦めきれず、まだ護ろうと、必死にもがいて……
「…………っ!?」
…そこで
目が、覚めてしまった
全身、ぐっしょりと汗をかいていて、酷く気持ち悪い
夢の内容は、目覚めても消えることなく…ただ、重苦しい現実感と共に、望の記憶に残される
目が、覚めてしまった
全身、ぐっしょりと汗をかいていて、酷く気持ち悪い
夢の内容は、目覚めても消えることなく…ただ、重苦しい現実感と共に、望の記憶に残される
「何よ…あの、夢…」
汗をぬぐいつつ、呟く望
まるで、翼の記憶を見せ付けられたような、そんな錯覚
…いや
錯覚では、ない?
まるで、翼の記憶を見せ付けられたような、そんな錯覚
…いや
錯覚では、ない?
望と翼は、黒服と契約している
二人で、一つの都市伝説と契約しているのだ
都市伝説と契約者は、多かれ少なかれ、精神的なつながりが出来る
間接的に、翼ともつながりができて…記憶を、垣間見てしまったのか?
二人で、一つの都市伝説と契約しているのだ
都市伝説と契約者は、多かれ少なかれ、精神的なつながりが出来る
間接的に、翼ともつながりができて…記憶を、垣間見てしまったのか?
「…………」
血で染まり上がった光景
あの後、一体どうなったのか
少なくとも、翼は助かったのだろう
今、生きているのだから
だが、あのエリカという女性は…
あの後、一体どうなったのか
少なくとも、翼は助かったのだろう
今、生きているのだから
だが、あのエリカという女性は…
自分以外の人間のトラウマを覗いてしまった気まずさ
それを感じながら、望はふと気づく
それを感じながら、望はふと気づく
「…まさか、私の記憶を、翼が夢で見ていたりしないでしょうね…」
…そんな事、なければいい
そう、願わずに入られなかった
そう、願わずに入られなかった
fin