人外と人間

悪魔×少女 オカンな悪魔 1 和姦

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オカンな悪魔 1 0-14様

ネットオタク界では召喚された悪魔というモノは大概「契約」と称して召喚主の女の子を犯すものだと相場が決まっている。
たまによれた安スーツと黒縁眼鏡で「どーもどーも、このたびはお呼び頂きありがとうございました。」と出てくる中年サラリーマン風の悪魔もいるようだが、好色、不真面目、高慢が一般的な悪魔のイメージだ。
だから、友人とノリで呼び出した悪魔が学校から帰ってきた彼女を白い割烹着姿で出迎え、玄関で正座して「お帰りなさいませ、お譲様。」と言ったのを見たとき、優香が思わずマンションの作り付けの下駄箱に頭を打ちつけたのは致し方のないことだった。


「今日の学校はどうだった?」

今日も玄関で彼女を出迎えた、白い割烹着を着た身長二メートルはある男の身体に黒い牛の頭が乗った悪魔モウンが彼女の学生カバンとサブバックを持って部屋に入ってくる。
彼の論理からすると「お嬢様」は箸より重い物を持ってはいけないらしい。

「うん、まあまあだね。」
「いつも、まあまあなのだな。」

サブバックから汚れた体操服とタオル、水筒を取り出し、中に消臭剤を吹き付けると、今度は学生カバンから教科書とノートを机の上に出し、クロスでカバンを磨き始める。

「だって、いつものように授業とお昼ご飯と部活の三連続だよ。別に変わったこともないし。」
「そこに「友人との会話」ではなく、「お昼ご飯」が入るのが優香らしい。」

モウンはボソリと呟くと磨き上げてピカピカにしたカバンを勉強机に掛ける。
部活動帰り、初夏の陽気に汗で黒いショートヘアが優香のこめかみに貼り付いている。
それを一瞥すると大きな黒い鼻を鳴らした。

「シャワーで汗を落として来い。着替えは脱衣所に既に用意してある。」
「いつも、ありがと。」
「汗臭いのは「お嬢様」では無いからな。」
「悪かったわね。」

むっと睨みつける優香をモウンはどこ吹く風と流し、眉一つ動かず告げる。

「着替えが終わったら、リビングに来い。紅茶とマドレーヌを用意しておく。」

言い方は高圧的だが内容はメイドの台詞以外何物でもない。

「夕食は七時からだ。今夜の献立は鰤の照り焼きと味噌汁、かぼちゃの煮転がしに青菜の胡麻和え、ぎせい豆腐。時間厳守。八時以降の飲食は太る素。太った「お嬢様」は美しくない。」
「はいはい。」
「「はい」は一つだ。正しい日本語の使い方もきちんと学べ。」
「はい。」

口うるさいが料理の腕は天下逸品。夕食はカロリー控え目が一番と和食しか作らないのが、育ち盛りの女子中学生には今一つ物足りないが、文句を言うつもりは無い。
大人しく返事を返す優香に頷き返すとモウンは部屋を出ていった。

シャワーの音が風呂場に満ちる。モウンがここに来た次の日、近所のドラックストアで買ってきた無香料、保湿成分入り、アレルギー肌にも優しいボディソープを泡立て、全身を擦りながら優香は小さく笑みを漏らした。
悪魔を呼び出したのは友人との悪ふざけの延長だった。マンションで一人暮らしの優香のところへ泊り掛けで遊びに来たオカルト好きの友人が愛読書のオカルト本を試したのがきっかけである。自宅では家族に見つかるからと友人に頼み込まれ、悪魔召喚の魔方陣をキッチンの床に描いたのだ。
召喚の呪文を二人で読み上げ、床から魔方陣の縁に沿って白い煙が立ち上がったときには、さすがにヤバイと思ったが、結局その夜はそのまま何も起こらなかった。
しかし、泊まった友人と翌日学校の放課後別れてから帰宅すると、割烹着姿の悪魔が玄関で正座して待っていたのである。
モウンが言うには、今時契約主を犯し、堕落した魂を連れて魔界に戻るのは時代遅れなのだという。
魔界では今や絶滅危惧種とまで呼ばれる「お嬢様」の魂にこそ高いプレミアが付いているのだ。
品行方正、見目麗しく、おしとやかで何よりも穢れが無い。そんな魂がコレクションアイテムとして持て囃されているのだという。

「…しかし、だからってあたしを「お嬢様」に仕立て上げなくてもいいのに…。」

脱衣所に用意されていたワンピースを着て、全身を鏡に映しながら優香はぼやいた。
モウンが「お嬢様」御用達のブティックで買ってきたというワンピースは、今流行りの肌を露骨に見せるものではなく、清楚な、いかにも高原の別荘で夏のバカンスを楽しむ女性が着ているような上品な仕立てのものである。
だが、目鼻立ちははっきりしていて可愛いが、サッカー部の連日の練習で小麦色に日焼けし、髪も焼けてパサついている優香にはどうにも似合わない。

『そんなに「お嬢様」が良いなら他のもっと良い家の綺麗な女の子を契約主にすればいいじゃない。』

そう言ってモウンに都心でも有名なお嬢様学校の名前をいくつも教えてあげたのだが、彼の話では呼び出した契約主を変えるのは魔界において最も恥ずべき行為であるらしい。

まあ…あたしも生まれは「お嬢様」なんだけどね…。

小さく肩を竦めて脱衣所を出て、リビングに入るとテーブルにマドレーヌが可愛い花模様の皿に乗せて置いてある。
ソファーに座るとモウンがポットを傾けて、紅茶をカップに注いだ。

「ありがとう。」

礼を言って紅茶を一口すする優香を見て、モウンが割烹着のポケットからメモ帳を取り出すと鉛筆を走らせる。

「日焼け止めにトリートメント…と。日焼けケア用のローションも居るな。」

自分を眺めながら買い物のメモを取る悪魔の姿に思わず頭痛を覚えて、優香は頭を抱え込んだ。

就寝は十時、それ以降は肌に悪いと追いやられたベッドで布団にくるまりながら、優香は天井を見上げた。
部屋の隅ではカーテンの隙間から差し込む月明かりの中で、モウンが腕組みをして壁にもたれて座っている。
いくら防犯設備完備のマンションとはいえ、少女の一人暮らし。もしものことがあって優香が純潔を散らしては、折角手を掛けた労力が水の泡と、モウンは夜は彼女の部屋で見張りをしている。
優香は布団に顔を埋めると小さな溜息をついた。
彼女がこのマンションに一人で住んでいるのは理由がある。本当は父方の祖母と二人で住む予定だったのだ。
その祖母は、初めてのセーラー服姿の優香といっしょに中学校の入学式に出席した晩、突然倒れあっさりと帰らぬ人となった。
優香は見た目は普通のどこにでもいる元気そうな女の子だが、生まれは「お嬢様」だ。
父はいくつものグループ企業を持つ大企業の社長、母は政財界に大きな影響力を持つ有力議員の一族の娘、その間に生まれた一人娘である。
最も、父も母も周りの思惑と自分達の利益の為に結婚しただけで、彼女を生んだのも二人が社会人としての体面を整える為だったが。
仕事に遊びに忙しく、帰ってきたと思えばそれそれの愛人を家に引き込む父母に代わって、彼女を育ててくれたのは優しい祖母だった。
祖母は、このまま父母の元に居たら孫がダメになると感じ、家を出てこのマンションを買い、彼女を普通の中学校に入学させた。
だが…二人っきりの楽しい生活が始まると思った矢先に、祖母はいなくなった。
残された優香は父が二日に一度寄越す家政婦に家事をして貰いながらずっと一人で暮らしていたのだ。「お嬢様」を欲しがる奇妙な悪魔を呼び出すまでは。

モウンは優香が「お嬢様」になったら、コレクションとして魔界に連れて帰ると言っている。

コレクションになったら、あたしはどうなるのだろう…。

父の薄暗いコレクションルームが脳裏を過ぎり、優香は身震いをすると部屋の隅のモウンに目を向ける。
モウンは項垂れて動かない。眠っているようにも見える。そっとベッドから降りて、部屋の隅に近づくと、彼は顔を上げた。

「なんだ、睡眠不足はお肌の大敵だといつも言っているだろう。」

眠れないというのなら子守唄でも歌ってやろうか?至極真面目な顔で言う悪魔の前に優香は座った。

「コレクションになったら、あたしをどうするの?」

モウンが訝しげな目で彼女を見下ろす。

「魔界の俺の城に来て貰う。」

彼はあっさりとそう答えた。

「お城!?」

優香が目を丸くする。

「お城持ってるの!?」
「小さいがな、一応俺は爵位を持っている。」
「ええっ、じゃあ公爵様なの!?」

貴族、爵位というとそれしか浮かばない優香が大声を上げる。

「いや、男爵だ…。」

モウンがボソリときまり悪そうに下位の爵位を呟いた。

「でも貴族なんでしょ、なのに、どうしてこんなに家のことがいろいろ出来るの!?」
「規則正しい生活と食事での肉体管理が俺の趣味だ。」

モウンが大きな鼻を鳴らし、ぐっと太い腕を曲げて力瘤を作る。

「そうなんだ…。」

優香が戸惑いつつも納得する。道理でやたら健康管理にうるさいわけだ。

「でも、そうなるとあたし、魔界のお城に行ったら変な液体に沈められて陳列されたり、モウンにアレやコレやされた後、飽きたら魔物にアンナコトされたりするの?」

恐々と上目使いに訊ねる優香にモウンが呆れた溜息をつく。

「…お前、最近ネットで妙なサイトばかり覗いてないか?」

健全な「お嬢様」の精神の為にもフィルタリングを導入しなければならんな。妙に人間界馴れした悪魔が優香の机の上のパソコンをちらりと見る。

「お前は俺の格を上げる為の大事なコレクションだ。そんなことをするか。」

モウンが首を振って、嘆きの息をつく。

「そうなんだ…大事にしてくれるんだ…。」

優香は膝立ちになると彼に詰め寄った。

「じゃあ、ずっと側にいてくれる?」

優香の瞳に揺らめく強い光に戸惑いつつモウンが頷く。

「まあ、俺の城に共に住むのだからな。」
「そっかぁ!!」

優香は思わずモウンの太い黒い首に細い腕を回して抱き付いた。モウンが目を丸くして自分を凝視している。
その顔が何故か可愛くて、思わず笑い出すとそのまま彼の顔に自分の顔を近づける。
ピンクの柔らかな唇が悪魔の大きないかつい唇に重なった。

「お休み!夜更かしはお肌の大敵だもんね!」

優香がモウンから離れるとベッドに飛び跳ねるように戻る。
布団に潜り込む彼女を見つつ硬直している彼に

「頑張って早くモウン好みの「お嬢様」になるね。」

と微笑みかけると目を閉じた。
しばらくして少女の小さな寝息がベッドの中から部屋に流れ出す。

「参ったな…。」

唇を指で撫でボソリと呟く悪魔の声が少女の寝息に混じり、消えていった。


(了)






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