病葉の繭/AP

『アドベンチャーパート』

導入

アドベンチャーパートを開始してください。以下の描写と共にドールたちが目を覚まします。
「キミ達の目に映ったのは、煤けた白い天井だった。ぼんやりとした頭で周囲を見渡すと、病的な清潔感が覆う部屋に、いくつかのベッドが置かれ、キミ達はその上に寝かされている。ここがどうやら病室であることを理解するのに、それほど時間はかからなかった。」
「同じように目覚めた少女たちの存在に気付く。生気のない肌に、歪な身体。生ける屍として、キミ達は目覚めた。」
「キミ達は、自分たちが“死んでいる”という事実にも、不思議と違和感はあまりなかった。」
NCは適宜ドールに対話判定を促してください。少なくともこの描写までには、ドール同士の自己紹介をしてしまうのがよいでしょう。

カルマの設定

アドベンチャーパート開始時に公開されるカルマは以下の1つ。

『病院内を探索する』

このカルマはドール共通のものです。アドベンチャーパートで病室を出て、院内の探索を行えば自動的に達成となります。

イベント:暗い病室

ドールたちが部屋の探索を行う場合、以下のことが分かります。部屋の探索に、特に判定は必要ありません。
  • 部屋の窓には頑丈な鉄格子が掛かっており、ドール達の力や装備をもってしても突破できない。
  • 病室の扉は外の廊下へ続く1つのみ。病室の扉の横には、煤けたホワイトボードが立てかけられており、『病棟回診 8時』と書かれている。
扉の横のホワイトボードに気付いたドール(扉に近づけば必ず目に入る)に、「記憶のカケラ」として「白い部屋」の記憶を渡しましょう。この「記憶のカケラ」を得たドールの脳裏に以下の光景がフラッシュバックします。

「一人の女性医師が、ベッドに寝ているキミ達の身体にメスを入れ始めた。筋弛緩剤で全身の自由を奪われたキミ達は、麻酔で緩慢となった思考の中、その残虐な行為を受け入れるしかない。その医師の妄執に満ちた瞳がキミ達の全身を嘗め回すように見つめながら、次々とおぞましい改造をキミ達の死した肉体に施していく。『生き返れ。蘇えれ。』と譫言のように医師は呟き、終わりのない“治療行為”が行われた。そう、この部屋で・・・」

NCはこの「記憶のカケラ」を得たドールたちに狂気判定を行わせてください。
ドールの得た記憶の中の残虐行為は、この部屋で行われていたものです。この病室に留まることは、ドールの精神衛生上非常によろしくありません。もし、ドールが病室に留まることを考えたなら、NCは「この部屋に留まることで狂気点が徐々に増加していく」と警告し、ドール達に病室からの脱出を促すとよいでしょう。それでもドールが留まるというのであれば、実際に狂気点をドールが精神崩壊するか泣いて謝るまで与え続けるとよいでしょう。
ドールたちが病室を出たら、次のイベント「死者の回廊」へ移ってください。

イベント:死者の回廊

「キミ達が病室を出ると、薄暗い廊下が続いていた。廊下には錆びた点滴スタンドや朽ちた車椅子が転がっており、ずいぶん長い間荒れたままになっていたことがわかる。ドール達がいた病室の他にもいくつか部屋はあるようだが、どこも鍵がかかっているようだ。」

廊下に並ぶ部屋の中は静まり返っていて、動くものの気配は中からはしません。もしも、ドール達が鍵を壊していずれかの部屋へ入ろうとするなら、特に判定することなく可能とします。部屋の中には患者服を着た大量の死体が無造作に転がっています。部屋に入ってその光景を見たドールに狂気判定を行わせてください。
もしそれらの死体を警戒し、解体する、燃やすなどの行動を取る積極的(かつ妥当)なドールがいた場合、狂気点を1点追加することで可能としてください。その場合、バトルパートで登場するゾンビ×20を削除してください。ただし、この場合の悪意点は削られたゾンビの分も寵愛点の分に計算してよいものとします。
廊下の明かりは絶えていますが、奥のほうに薄暗い照明が灯っているのが見えます。廊下は一方通行であり、部屋に留まらない限りは先に進むしかないことをドールたちに告げましょう。
ドールたちが廊下の先に進んだら、次のイベント「ナースステーション」へ移ってください。

イベント:ナースステーション

「キミ達が廊下を進んでいくと、ナースステーションに照明が灯っているのが確認できる。暗い病棟内にぼんやりと浮かぶナースステーションの明かりは、まるで地獄の鬼火のように不気味に曇白の病棟を照らしている。」

ナースステーションの様子を窺う場合は、適宜ドールに行動判定をさせてください。成功すればナースステーションに(アンデッドも含め)何もいないことが分かります。
ナースステーションは様々な薬品や物品が朽ちたまま放置されていますが、誰かがここを使用している痕跡があるようです。特にナースステーションの一角に置かれている棚にカルテが陳列されており、ここ最近までの真新しい記載が確認できます。
ドール達がカルテ棚を調査する場合、特に判定なく調べることができます。カルテからは以下の情報が得られます。
  • カルテはドールの人数分存在し、ドール達それぞれに対する“治療記録”が百冊以上にもわたって記載されている。
  • ドールたちに行われている“治療”とは、最終戦争時に不幸にも命を落とした小児患者を“蘇生”させるというもの。
  • 患者(=ドールたち)は主治医を名乗るネクロマンサーの手によりアンデッドとされ、おぞましいネクロマンシーによる“治療行為”という名の狂気的な改造が何十年にも渡り患者の遺体に施され続けている。
生前のドールたちは、核戦争による環境汚染や物資不足などの災禍による病を受けた少女たちであり、この病院はかつて彼女たちが治療を受け、そして甲斐なく命を落とした場所である事実を、PLに告げましょう。
ドールたちがカルテ棚の調査を終えたら、次のイベント「白い悪夢」へ移ってください。

イベント:白い悪夢

「不意に、キミ達の脳裏にある光景が浮かんだ。それは辛く苦しい闘病生活の中で得た、ひと時の安らぎの記憶だ。キミ達がこの小児病棟に入院している間、キミ達の主治医や担当看護師との穏やかな記憶・・・。」
「主治医のシラセ先生は、厳しい女の先生でリハビリをさぼるとすぐに怒られた。しかし、キミ達の身体を案じ、自分の労苦も厭わずに真摯にキミ達の治療につとめていた。」
「担当看護師のミズハラさんは、優しい穏やかな人で、いつもニコニコ笑顔でキミ達に接してくれた。食べるものも少ない戦争中に、こっそりとお菓子を用意してはキミ達に分けてくれた。」
「ひどい戦争が世界に起こっていて、それのせいでキミ達は身悶えするような痛みを受けていたが、この病院でシラセ先生やミズハラ看護師と過ごした闘病の日々は、臨終の際まで、キミ達の心に温もりと勇気を与えてくれていた。だから、死の直前の意識が薄れていくその時まで、キミ達は決して不幸ではなかった・・・そう、思って、キミ達は天国へと旅立った、はずだ。」

カルテを読み終わったドールたちに「記憶のカケラ」として「笑顔」を渡してください。これは命を奪う病を受けつつも、彼女たちがこの小児病棟で臨終の際まで穏やかな主治医や看護師と仲良く過ごしていた「記憶のカケラ」です。

NCは続けて以下の描写を行ってください。

「・・・あの優しかったシラセ先生とミズハラさんは、どうなってしまったのだろうか?」
「不意に病室で見たおぞましい“治療”の記憶が、キミ達の脳裏にフラッシュバックする。それは徐々に鮮明な像を結び、狂気的な光景を呼び起こす。キミ達を穏やかな笑みで、『生き返れ、蘇えれ』と切り刻んでいた女医は、紛れもないシラセ先生の顔をしていた。」

上記の描写の後に、ドールたちに狂気判定をさせてください。
この描写の後に、バトルパートへ移行します。ドールたちが対話判定を満足に行っていない場合、この時点でさせておいてください。(「笑顔」のカケラの分、減少させられる狂気点が1点分増えているはずです。)
対話判定を行ったら、バトルパートへ移ってください。


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最終更新:2016年02月12日 03:07