【天井女(てんじょうおんな)】

天井から若い女の顔だけが浮き出てきて、血を垂らして来たりするというもの。
江戸の牛込にあったある武家屋敷には、これが出るとされる部屋があり、腰元たちから恐れられていたという。いっぽうで武家屋敷に奉公に出て来る町人の娘たちを脅すための想像の産物であろうといったはなしも昭和初期に残された古老の談話などからみることが出来るともいう。(東京都)

【しばり】

蚊帳(かや)を吊りその中で眠っていると起こることがあったというもの。足が思うように動かせなくなったという。金縛りのようなものと考えられる。蚊帳の中にトカゲが入っているとそれが起こすとも言われる。(広島県)

【蛇蔵(へびぐら)】

蛇とともに土蔵に押し込められた御殿奉公に出た腰元のうらみつらみが残ったといわれるもので、壁をいくらきれいに塗り替えても、うろこ状のぼつぼつが浮いてきてしまうという。

【老馬(おいむま)】

馬の妖怪。少しでも開けてある窓から首を差し込んできては笑いかけてくる。凶兆とされる。

【鮫瓦(さめがわら)】

美しい屋根瓦のどこか一部分に突如、サメ肌のような凹凸が瓦の表面に現われるという怪奇現象。その家に水に関する害が起きるとも考えられてたが、水に関する点から火災防止となる瑞兆とも屋根職人や大工の間ではとらえられていた。

【吾吉柱(ごきちばしら)】

雪国から勤めに出ていた吾吉という武家屋敷の奉公人がいたが、あるとき体の太い怪蛇を道で見かけ鉄の棒でしたたかに叩き潰した。数年後、流行り風邪が起きた年に吾吉は柱に体を叩きつけて死んだ。その柱は屋敷が火事にあっても傷ひとつ無かったという。

【オカめ】

江戸時代初期、藤岡という土地の大工の棟梁(とうりょう)が武家屋敷を建築する時、壁に用いる貴重なマグラ杉の板の大きさを間違えて切り出してしまった。死罪の覚悟を決めていたが、棟梁の妻が腰板の装飾に工夫を加えて失敗がわからないようにした。しかし「この秘密を何かのはずみで語られては困る」と考えた棟梁は妻を殺して藤岡の谷に捨てた。その後、妻の霊が「オカめ、オカめ」と声を発したので「藤岡」という地名は、それ以後「藤」という地名に改まったという。(兵庫県)

最終更新:2021年04月08日 15:33