【太一】

天地と陰陽の中心にあたるもの。明界(この世)と幽界(あの世)は境目が曖昧になる時間帯・端境(はさか)を境界としているが、それぞれの陰陽の力の根源をつくりだしているのが太一である。太極(たいきょく)も同一のものをさしている。太一は至大であるが至微であり、無為の存在であるとされる。天之御中主(あめのみなかぬし)や国常立(くにのとこたち)が、この太一にあたる。

十二支のはじめにあたる「子」*1は陰陽の再生の象徴だとされている。「子」は十二ヶ月では「十一月」だと位置づけられており、陰(滅亡・破劫・濁)と陽(再生・輪廻・清)が起こる月を現わしている。その動きを統御しているのが太一である。陽は「子」に生じて「巳」で終わり、陰は「午」に生じて「亥」に終わる*2


太一の動きは元気(げんき)とも呼ばれる。この陰陽の動きは宗源(そうげん・たかつみなもと)とおなじものと見られる。この「元」とは万物のはじまりをあらわしているが、太一そのものは不変のもので、不生不滅の神気である。この動きは四天の生成と崩壊を常に繰り返しつづけ、はじめもおわりも存在しない。元気は元気尊神とも称される。

含生たち有生(うしょう)は、太一から生まれた無生(むしょう)である天地の働きかけによって明界に生じることが出来る。これを「むすび」や「うぶすな」と呼ぶ。

日与津(ひとつ)

太一のことを「ひとつ」と呼ぶ。これは太一の万物生成の力を太陽になぞらえたものでもある。仏法ではこれを「宝蓮華」と称する。

太清(たいせい)

最も清い、純粋なものであるということから太一は「太清」とも称される。その最も清いもの(清陽・清妙)から太陽は造られているとされる。
汚火に対して、太陽や太一に由来する火を清火と称する。妖怪や禍神たちはこれを非常に苦手とする。

【太虚】

万物すべてが太一から生み出されはじめる無為の世界となる以前の泰初の空間は、太虚(たいきょ、おおみそら)と呼ばれる。この状態は寂然不動であり「無」「むなしきうつ」である。

大道、大昭、虚霩*3不生*4、あるいは太虚霊明とも呼ばれる。春夏秋冬などや年月など「時」が生まれるのは「世界」の外に太虚があるためだとされる。

【太空】

世界を包んでいる、日月星が存在し、めぐり動いている空間のこと。地外。太空(みそら)*5と呼ばれ、太虚(おおみそら)とは異なる。「天」と称されるのは基本的には太空までの範囲であり、これは地上を包む球形の匣(はこ)のようなものだという。

太虚  おおみそら  無の空間 
太一  ひとつ  陰陽を生み出す存在 
太空  みそら  日月星のある空間 
大地  くにつち  地上 
大壑  うなばら  海洋 

天地は不化とも称される。

【北極星】

太一は北極星を象徴としている。位置の動かないことから、全てを統べるもの、永遠・不滅の存在であると考えられて来た。天の常磐堅磐にあたる存在が太一である。

【宗源(そうげん)】

太一から生じる、あらゆる物の素となるもの。「たかつみなもと」ともよばれる。「宗源」は「五鎮」から構成されているとされる*6




最終更新:2025年01月31日 16:11

*1 吉野裕子『十二支』人文書院、1994年では、「子」は「了」(おわり)と「一」(はじまり)を示していると解説される。

*2 『和漢三才図会』巻4

*3 『淮南子』天文訓

*4 『列子』天瑞篇

*5 小泉君英『神代日本天然規則』、1880年

*6 足立栗園『近世神仏習合弁』、警醒社、1901年