【鬼(おに)】
古くは「おそろしく、人間に災禍を与える者」が、一般に「鬼」と称されていた。
鬼は米を好むとするものと、肉(獣や鳥)を好むとするものが伝承により分かれている。
「鬼」という漢字の頭の部分は、ぼんやりとした丸いかたまり・
魂をかたどっているとされる。
古くは「もの」と呼ばれており、『万葉集』などでは「鬼」の字を「もの」と読ませている。
鬼の善悪
勿怪の幸にも現われているが、妖怪全体と同様に鬼には善と悪とがいる。しかし悪の者が相対的に多いため「よからざるもの」と見做されている。
地上の鬼たち
地獄や幽界にいる鬼たち(妖魔・邪鬼)と、地上にいる鬼たちは所有している財産による大きな違いが見られる。「鬼が島」など昔話に登場する鬼たちが財宝を持っているのはその代表例である。幽界の鬼たちは明界との行き来もあまり自由ではない。
魄と鬼
古代中国では人間が死後に残すタマシイには魂と魄とがあり、そのうちの魄(はく)が鬼になるとされ「鬼気」とも称される。
魄は単独では地上で三年間しか活動出来ないが、鬼と変じると四代間(約八十年間)にわたり存在することが出来るともいう。
人天之果(にんでんのか)
天などへの転生を願うことで、地上に住んでいるが財産をほとんど所持していない鬼、あるいは荒野や地獄の餓鬼たちはこれを願っているとされる。
【桃(もも)】
桃は鬼や妖怪たちの力を封じる植物として知られる。桃の実が神話では鬼除けに用いられているほか、呪術師たちは長らく桃の板を用いて符を製作している。
鬼の嫌う花
花には鬼や禍を祓う力を持つとされるものもいくつか言い伝えられている。藤(フジ)や卯木(ウツギ)、紫陽花(アジサイ)は鬼を寄せつけないとされる。4月や5月にこれらの花を山から採って来て束ね、家の門口や軒下に吊り下げて鬼を祓う風習は古くは各地に見られた。猪牙(カタクリ)の花を身に着けていると、鬼にひと飲みに食べられる(
鬼一口)事は無いとも言い伝えられている。
鬼の嫌う草
蓬(ヨモギ)や菖蒲(ショウブ)、茅(チ)も鬼や禍を祓う力を持つとされる。これらは、その草の芳香が効果があるとされる。
【阿用の鬼(あよのおに)】
『出雲国風土記』に記載されている現存最古の文献上の人間を具体的に襲った鬼。単眼の鬼で、人間を食べていた。この鬼に襲われた若者の発した「あよ、あよ」という叫び声から「阿用」という土地の名前が出来た。(島根県)
「目一つの鬼」(単眼の鬼たち)は山の神・歳神を示していると考えられている。
【天鬼屋(あまきや)】
古代に封じられた獰猛な鬼たち。
【酒顛童子(しゅてんどうじ)】
大江山に巨大な鉄の楼閣を築き、平安京を襲っていたとされる。
三大妖怪の一つとして知られる。
酒顛童子の出生地は現在の新潟県である。子供の頃は美しい人間で、比叡山で修行をする童子であったと言う。穀物を食べて育っていなかったことから鳥の血を隠れて啜るようになった。終には人間の生血を吸うようになり、鬼稚児として恐れられ、それを察知した伝教大師によって山を追われた。数年間を兵庫県の書写山で過ごし、そこで人々を喰らい完全に鬼の姿と変貌した。その後は三つの山を襲ったがいずれも失敗し、大江山に籠もったと伝えられる。
【大ばが(たいばが)】
女の姿をしてる鬼。するどい薙刀を持っているという。
【十鬼】
仏教における境(
端境)を作るとされている鬼たち。『釈摩訶衍論』に見ることが出来る。
- 遮毘多提(しゃびたたい) 昼夜や季節の端境を作る
- 伊伽羅尸(いきゃらし) 草木の境を作る
- 伊提伽帝(いたいきゃてい) 地水火風の境を作る
- 婆那鍵夛(ばなけんた) 飛騰の境を作る
- 尓羅尓黎提(じらじらたい) 根識の境を作る
- 班尼陀(はんにだ) 六親眷属の境を作る
- 阿阿彌(ああや) 老若の境を作る
- 闍佉婆尼(じゃきゃばに) 智慧の境を作る
- 多阿多伊多(たあたいた) 有無の境を作る
- 槌愓(ついちょう) 音声や生物の境を作る
【馬鬼(うまおに)】
川に住んでいるという大きな鬼。とてつもない腕力を持ち、どんな岩でも動かすことが出来るといい、川の流れを激流に変えたりしてしまう。
最終更新:2024年04月11日 23:01