日東妖怪博物館の解説文に用いられている主な語句を案内している。

【あ】

  • 赤忌(あかひ・あかいみ) 赤不浄。血の穢れ。
  • 垢の穢(あかのよごれ) 罪垢。肉体や魂が黒気の過多によって穢れること。
  • 凶事(あしこと) 国の天地に起こる悪の怪異。
  • 天宮(あまつみや) 高天原にあるとされる魂の御殿。
  • 天真名井(あまのまない) 高天原にある万物を養う真水。
  • 菖蒲蘰(あやめのかつら) 五月に用いられた邪気を祓うための装飾品。
  • 生日足日(いくひたるひ) 満ち足りた日。日照の行き届いた神通力の高い状態。
  • 勇厭(いさむ) 武威で相手を撃ち祓うこと。獅子坐
  • 五鎮(いしづまり) 神・心・理・気・境。宗源に含まれる。
  • 艮(うしとら) 丑寅。東北の方角。鬼門(きもん)と呼ばれる方角で端境にあたる。
  • 丑満時・漆密時(うしみつどき) 闇が世を蔽う事で端境が無効化される時帯。
  • うぶすな 無生(天地)の働きかけ。有生(含生)たちはこれによって明界に生じる。
  • 裏鬼門(うらきもん) 未申。西南の方角。鬼門の逆方向であることから呼ばれる。人門。
  • 英霊(えいれい) 英魂毅魄。英主たる武将の霊がなった鬼神。
  • 疫神(えきじん) 疫病をひろめる存在。
  • 穢体(えたい) 含生のものたちの肉体。
  • 王莽時・王摩時(おうまがとき) 昼と夜に移り替わる事で変わる端境が曖昧化する時帯。
  • 太虚(おおみそら、たいきょ) 明界や幽界が形成される以前の原初の空間。むなしきうつ。
  • 淤加美(おかみ) 水に宿る妖怪・神々。「龗」とも書かれる。
  • 朧(おぼろ) 誕生から七歳までの、人間の身体・魂魄の結合が不完全な状態。
  • 袁呂智(おろち) 峰の霊。八岐袁呂智の「おろち」の原義。

【か】

  • 迦具土(かぐつち) 火の霊。
  • 隠れ里(かくれざと) 明界と地つづきな異世界、神仙境。
  • 神佐備(かむさび) 常磐堅磐な存在や神々。 
  • 草野姫(かやのひめ) 万の草の神。野槌。
  • 体躯(からたま) 魂魄(たま)に対しての肉体。
  • 含生(がんしょう) 生き物すべて。
  • 神奈備(かんなび) 神々が鎮座する山や森。祠の役割があり端境を護っている。
  • 神呪(かんほさき) かむほさき。まじない・祝詞のこと。 
  • 毅魄(きはく) 英魂毅魄。英主たる武将の霊がなった鬼神。
  • 鬼門(きもん) 丑寅。東北の方角。艮(うしとら)は端境にあたる。
  • 究竟不浄(きゅうきょうふじょう) 枯れ腐れて赤気を失った状態の貪庫や萬甡厨。
  • 句々廼馳(くくのち) 木の霊。
  • 茎幸(くくのち) 草木から得られる果実、種子、菌類などの幸。
  • 国の厄(くにのまが) 大きく災害をもたらす凶事(あしこと)な怪異。
  • 黒忌(くろひ・くろいみ) 黒不浄。死の穢れ。
  • 悔過(けか) 人間自身が自己の身体や精神に発してしまった悪心(黒気)を祓う行為。
  • 月霊十二支(げつれいじゅうにし) 十二支のこと、植物の生育に関わる。(十幹・十二支と植物
  • 黒気(こくき) 人間の魂の悪い部分。
  • 牛頭天王(ごずてんのう) 祇園精舎の守護仞。インドから伝来した神。河童たちと関連が深い。
  • 混沌社(こんとんしゃ) 八角形に木材を組んで作る。

【さ】

  • 罪垢(ざいく) 垢の穢。肉体や魂が黒気の過多によって穢れること。
  • 悟の者(さとりのもの) 供養された者。
  • 鐸(さなぎ) 鉄鐸の古称。銅鐸なども含まれてたようである。
  • 潮八百重(しおのやおえ) 大海原。竜宮城の世界のことも意味する。
  • 獅子坐(ししざ) 獅子狛犬を並べて結界を設けて貴人を守護する為の勇厭。
  • 四天(してん) 世界の生成と崩壊を示すもので、空天・開天・盛天・喪天がある。
  • 四魔甡(しましん) 四魔。蘊魔・煩悩魔・死魔・天魔。
  • 怪(しるまし) 凶兆とされる凶事。
  • 七里けっぱい(しちりけっぱい) 禍や妖怪を退ける結界。七里結界。
  • 受肉(じゅにく) 霊や妖怪が依代(人間、自然物、器物)に憑いて影響を与える事。
  • 人黄(じんおう) 人間が持つ最も最上の精血。
  • 精血(せいけつ) 人間の血や肉。ここに含まれる赤気を鬼・妖怪は求めている。
  • 赤気(せきき) 人間の魂の良い部分。
  • 宗源(そうげん) あまねく物の素となるもの。
  • 増上慢(ぞうじょうまん) 天狗たちを生む黒気。
  • 底津磐根(そこついわね) 地の底のこと。

【た】

  • 太一(たいいつ) 天地と陰陽の中央に位置するもの。
  • 大蛇・悪狐・邪鬼 三大妖怪(八岐袁呂智・九尾の狐・酒顛童子)をさす。
  • たかつみなもと 宗源。あまねく物の素となるもの。
  • 魂魄(たま) たましい、霊のこと。
  • 地支(ちし) 十二支のこと、植物の生育に関わる。(十幹・十二支と植物
  • 魑魅魍魎(ちみもうりょう) 様々な土地に存在する悪しきものたち。
  • 地門(ちもん) 辰巳。東南の方角。
  • 付喪神(つくもがみ) 器物が百年の時代を経過して受肉をした状態。
  • 天幹(てんかん) 十干のこと、植物の生育に関わる。(十幹・十二支と植物
  • 天数(てんすう) 結界を張ることの出来る霊山や霊地も、天数の動きによる災禍には勝てない。
  • 天門(てんもん) 戌亥。西北の方角。
  • 桃都山(とうとざん) 海の果てにある山、太陽はここから夜明けを告げる。(七里けっぱい
  • 常磐堅磐(ときわ・かきわ) 山、川、岩、木など、数千万年以上不変である存在。
  • 常夜(とこよ) 常夜の国。
  • 鞆(ともえ) 鞆は大きなナマズ(地)と太一のまわりの渦まき(天)をし示す。(燕と鯰
  • 貪庫(とんこ) 新鮮な死者の精血の塊。禍や妖怪たちにとってのごちそう。萬甡厨。

【な】

  • 内外八重の結界(ないがいやえのけっかい) 聖なる神奈備に設けられている。
  • 和西(なごし) 邪なるものをなごす(和す)事。西解。
  • 西解(にしのなごし) 鬼・妖怪をはじめとした目に見えぬ禍たちを国土(明界)から排する行為。
  • 日神十幹(にっしんじゅかん) 十干のこと、植物の生育に関わる。(十幹・十二支と植物
  • 日徳(にっとく) 太陽の赤気の力。その大きな力は、妖怪たちにとっては脅威でもある。
  • 人門(にんもん) 未申。西南の方角。裏鬼門にあたる。
  • 根の国(ねのくに) 幽界と地つづきな異世界。
  • 野槌(のづち) 野の霊。

【は】

  • 端境(はさか) 禍や妖怪たちが発生する、この世とあの世の間に当たる場所、空間、時空。
  • 祓除(ばつじょ) 悪しきもの、よろしからぬものを祓う行為。
  • 萬甡厨(ばんしんちゅう) 新鮮な死者の精血の塊。禍や妖怪たちにとってのごちそう。貪庫。
  • 不受肉身(ふじゅにくしん) 受肉せず些細ないたずらのみをするような微々たる魑魅魍魎。精霊。
  • 扶桑神国(ふそうしんこく) 日東の異称。扶桑は扶桑樹あるいは富士山の美称。
  • 芳体(ほうたい) 赤気に満ちた健全な身体。
  • 祠(ほこら) 端境の結界として設けられており、人間を護っている。
  • 盆血(ぼんけつ) 赤気を帯びた精血(血や肉)を摂り込む事。

【ま】

  • 厄(まが) 禍事。
  • 悪事(まがごと) 禍事。人間にもたらされる災禍。「まがごとなす」などと使われていた。
  • 麻賀礼(まがれ) 摩賀とも。邪悪なる力が抑え込まれて破られることも示す。
  • 迷の者(まよいのもの) 迷魂。さまよいつづけている霊。
  • 蛟(みずち) 水の霊。
  • みたまふゆ 産霊・伊勢の力によって生命力がこの世に出現われることを示す。恩頼・全能。
  • むすび 無生(天地)の働きかけ。有生(含生)たちはこれによって明界に生じる。
  • 六根(むつのね・ろっこん) 魂心にあるとされる。
  • むなしきうつ 太虚・不生のこと。何もない原初の状態。 
  • 明界(めいかい) この世。
  • 鬼境(ものさか) 幽界のなかにある端境。

【や】

  • 八十梟心(やたけごころ)
  • 八開手(やひらで) 柏手を八回うつこと。これを一段としている。
  • 幽界(ゆうかい) あの世。
  • 横禍(よこし) 邪なる者、邪悪なる物。横曲とも書かれる。
  • 夜見(よみ) 夜見の国。黄泉。
  • 憑託(よりつき) 妖怪などが人間に取り憑くこと。
  • 夜の食国(よるのおすくに) 夜見の国。

【ら】

  • 龍宮(りゅうぐう) 明界と地つづきな異世界。かなり端境にもあたる。

【わ】

  • 禍・妖気(わざわい) 人間に災厄をもたらす気や霊、あるいは鬼神たち。

最終更新:2024年05月01日 19:57