集合 > 写像? > 全射、単射、全単射

全射(surjection)

fAからBへの写像とするとき、始集合Aと定義域D(f)は写像の定義か
ら一致するが、値域V(f)=f(A)と終集合Bは一般に一致しない。しかしながら、
値域f(A)と終集合Bが一致する、すなわち

f(A) = B
が成り立つとき、fAからBへの 全射 である。
あるいは、fAからB 上への写像 であるという。
また、f:A \to Bが全射であることは、Bのどの元bに対しても、
f^{-1}(b)\neq \phi であること、すなわちf(a)=bとなるようなAの元aが少
なくとも1つ存在することである。

ただし、全射のではAの複数の要素がBの1つの要素に同一に対応することは
ありうる。

単射(injection)

始集合Aと終集合Bが一致せず(B \neq f(A))、
始集合Aの要素それぞれが終集合のBの要素に1対1で写像fにより写され
る場合を 単射 および 1対1写像 とよぶ。
単射はa, a' \in Aに対し、写像f:A \to Bにおいて

a \neq a' \Rightarrow f(a) \neq f(a')
であり、また、

f(a) = f(a') \Rightarrow a = a'
を満たす。終集合Bに着目した場合、その要素b \in Bに対し、単射は
f^{-1}(b)が始集合のただ1つの要素a \in Aに帰着されることを意味する。

全単射(bijection)

写像f:A \to Bが全射かつ単射であるとき、fAからBへの全単射である
という。また、 上への1対1写像 とも呼ぶ。

f_1, f_2, f_3, f_4を、それぞれ次の式で定義された\bm{R}から\bm{R}への写像と
する。
f_1(x) = x + 1, f_2(x) = x^3 - x
f_3(x) = a^x (a > 0, a \neq 1), f_4(x) = x^2

  • f_1
f^{-1}(x) \neq \phiであるため全射である。また、f^{-1}(x) \in Rがそれぞれた
だ1つの要素に対応するため単射でもある。

  • f_2
f^{-1}(x) \neq \phiであるため全射。
x = 0, 1, -1のときf(x) = 0となるため、f^{-1}(0)x = 0, 1, -1
複数の要素をもち、ただ1つの要素に定まらないことから、f_2は単射ではない。

  • f_3
R \to Rで単射になるが、f(x)は負の数を表さないため全射でない。

  • f_4
f(x) \ge 0となるため、f(x) \neq Rであることから全射でない。
また、a, -a \in Rに対し、f(a) = f(-a)であることから、f^{-1}(x)はた
だ1つの要素をもたない。例えばf^{-1}(4) = 2, -2と2つの要素となる。よっ
て単射でもない。


参考文献
  • 集合・位相入門(松坂 和夫, 岩波書店, 1968)
  • 道具としての線型代数(一石 賢, 日本実業出版社, 2004)
最終更新:2011年04月29日 14:20