体心立法構造(bcc)における延性-脆性遷移
古来より材料としてきた金属として、Cu,Al,Feがあるが、低温下での変形強度ではFeのみが際立って高く、脆性破壊を起こす。液体窒素を用いた低温下において塑性変形が行われず、脆性破壊を起こす現象は延性-脆性遷移と呼ばれている。この延性-脆性遷移はFeが体心立法格子(bcc)であり、Cu,Alが面心立法格子(fcc)であることから、fccのみで起こると考えられる。
bcc金属の降伏応力が強い温度依存性を示す現象については、長い間2つの対立した解釈が行われていた。それらは外在説、内在説と呼ばれる。
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外在説
bcc金属中に固溶するC,Nなどの侵入型固溶原子による固溶体効果作用が低温下で顕著に現れた。
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内在説
bcc金属中の転位のパイエルス・ポテンシャルが本来大きいため。
内在説の正当性
延性-脆性遷移の要因は後者が妥当であることが指示されており、以下がその理由である。
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bcc金属の純度を上げた実験で、不純物濃度を0に外挿しても変形応力の強い温度依存性は変わらない。
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透過電子顕微鏡によるbcc金属中の転位の運動の直接観察においては、直線的ならせん転位の一様運動が観察される。これは低温下においてのパイエルス機構から期待される現象である。
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bcc金属中の転位に関するパイエルス応力についての計算結果によると、実験事実と同じく、らせん転位に対する値が支配的である。
参考文献
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物性科学選書 転位のダイナミックスと塑性(鈴木 平 編, 吉永 日出男, 竹内 伸 著, 1985, 裳華房)
最終更新:2011年03月04日 14:14