新オバケのQ太郎の第1話

Qちゃん、またきたの


正太のもとを離れて旅に出ていたQ太郎が、弟のO次郎を連れ、5年ぶりに正太の町へ戻って来た。


Q太郎「みえた! ほら O次郎、あれが正ちゃんの家だよ。なつかしいなあ。五年ぶりだよ。とつぜんかえったら どんな顔するかな。正ちゃんたち 元気でいるかな」

O次郎が早速、正太の家へ入ろうとする。

Q太郎「あっ、Oちゃん、まてよ。ドキドキしてきた。しんこきゅうをして……。こんにちはあ」

玄関のドアを開けるが、人の気配がない。

Q太郎「あいかわらずだな。あけっぱなしで るすにするなんて。もっとも、この家には とられるものなんてないけどね。Oちゃん、えんりょえずにあがれ」

2人が家の中へ上がる。

Q太郎「なつかしいなあ…… なにもかも、もとのままだ」

Q太郎が部屋を見回し、昔を懐かしんでいる。

Q太郎「正ちゃんにあうとき、どんな顔すればいいだろう。オー正ちゃんよ! と、感動的にやるか。きみにわかれをつれて……、いや、別れをつげてから、月日はめぐり はや五年、きょうふたたびめぐりあえましたることは、ふかく喜びとするところであります。えんぜつみたいだ。もすこしあっさりいこう。いまかえったよ。ごはんはまだかい といくか。それとも だまって、ただなみだ といくか。Oちゃんはどう思う?」

いつのまにか、O次郎がいない。

Q太郎「O次郎。かってにどこへいった」

激しい音がする。O次郎がおもちゃを勝手にいたずらし、障子を破ってしまっていた。

Q太郎「あああっ やったな。正ちゃんのままのヒステリーは、も~のすごいんだから」「おや……、ここにもおれたあとがあるぞ。おもいだした!」

Q太郎が、正太と相撲を取って障子を破ってしまったことを思い出す。

Q太郎「あっ、そうそう この はしらのきず……」

5月5日の端午の節句に、正太と背比べをしてつけた柱の傷。

Q太郎「ハハハ ちっちゃかったんだ。あのとき かしわもちを三十こ たべたっけ」

また、O次郎がいない。

Q太郎「また きえた。O次郎!」

O次郎は台所で、菓子を勝手に食べようとしている。

Q太郎「だめえっ。これからふたりして いそうろうするのに、きらわれたらどうする。それにしてもおそいね」

Q太郎がO次郎を連れ、外へ出かける。

Q太郎「ポカンとまってても しょうがない。友だちをしょうかいしよう。ぼくの顔みたら、みんな ひっくりかえっておどろくぞ」

木佐に出逢う。

Q太郎「や~あ 木佐くん!」
木佐「ああ」

木佐はQ太郎を一瞥しただけで、通り過ぎようとする。

Q太郎「あれ?…… ぼくのことわすれたの? ほら、オバケのQ太郎だよ」
木佐「わかってるよ」
Q太郎「こんど五年ぶりに かえることになってね」
木佐「だから どうだってんだ」

木佐はQ太郎を無視して、去って行く。

Q太郎「あいつはもともと つめたいとこがあったよ。そうなんだ。うん」


空き地で、ゴジラやハカセや友達みんなが野球をしている。

Q太郎「あっ、みんなそろってる。おうい おうい」
ゴジラ「メンバーはあまってんだ。いまごろきたって いれてやらねえぞ」


Q太郎は続いて、よし子の家を訪ねる。

Q太郎「よっちゃんの家だ。ぼくのガールフレンドのU子もいるよ。ふたりともやさしい女の子だから あたたかあくむかえてくれるよ」

よし子が玄関に出るが、特に喜びもしない。

よし子「またきたの」
U子「まあっ、いいところへ」
Q太郎「U子さん。きみだけは かんげいしてくれると思った」
U子「柔道のあたらしいワザを考えたの」
Q太郎「ぼくは、いつもきみのことを……」
U子「ちょっとためさせて」

U子が柔道技で、Q太郎を投げ飛ばす。

U子「かかった!」
Q太郎「こんな……、はずは……」


最後にQ太郎は、正太の家の隣の神成家を訪れようとする。

Q太郎「のこりは おとなりの神成さんだけか。ここは苦手なんだ。ドロンパはなまいきだし おやじはおこりんぼだし」
神成「だれがおこりんぼじゃと」

悪口に怒った神成が現れるが、Q太郎の顔を見るなり大喜び。

神成「Qちゃん! いつかえったの! ちっともしらなかった。さ! あがんなさい。さあさあさあ」

無関心だった友達みんなとは打って変わって、神成はQ太郎を大歓迎。

神成「あいにくドロンパは外出中でな。あいつめ けんか友だちがかえったとしったら、さぞ喜ぶじゃろ。ワハハハ

Q太郎が顔を伏せる。

神成「どうしたね」
Q太郎「ウッ、ウ…… ウッウッ ワア~

大歓迎の神成に感激し、Q太郎が大泣きする。

神成「?」


神成「長島新監督」「バクダン事件」「物価問題」「石油ショック」「田中総理から三木総理へ」「なぞなぞ流行」「自然食品」「ベトナム戦争おわる」「山口百恵 映画出演」「北の海 横綱」「エリザベス女王訪日」
Q太郎「人間の世界にはいろいろあったんだねえ」
神成「あ、大原さん かえったらしいよ」

Q太郎は大喜びで、正太の家へ駆けこむ。

Q太郎「正ちゃあん!

外出から帰って来た様子の、正太たち一家。

正太「やあ」
ママ「あら」
伸一「またきたの」
パパ「ふむ」

Q太郎「……それだけ? 五年ぶりにあったってのに……」

正太たちはQ太郎を一瞥しただけで、特に気にもかけない。

Q太郎「Oちゃん ごあいさつしなさい」
O次郎「バケラッタ」
パパ「ウム」

Q太郎「おとうとと ふたりになったから、ごはんは十五はいでがまんするね」
ママ「たすかるわ」

パパもママも、Q太郎に目もくれない。

Q太郎「伸ちゃん 大きくなったね」
伸一「小さくなるわけないだろ」

正太は机に向かっている。

Q太郎「ね、正ちゃん あれから五年のあいだに……」
正太「うるさいな」
Q太郎「うるさ……、い、今……、なんていった?」
正太「宿題やってんだ。あっちへいってくれよ!」

正太の様子に、Q太郎は愕然とする。

Q太郎「こんな……、こんなはずないんだ。きっと わるいゆめをみてるんだ」


屋根の上で月の光に照らされながら、Q太郎はO次郎を抱きしめて泣いている。

O次郎「カエラッタ」
Q太郎「そうするか……」


やがて正太の家へ、ドロンパが大喜びの様子で駆け込んで来る。

ドロンパ「バカQがかえったって? どこにどこに」
正太「おまえ しつこいぞ。もうだまされないからな」
ドロンパ「だます?」
正太「いつもじゃないか。Qちゃんに化けて『いまかえったよ』って。なんど がっかりさせられたことか」
ドロンパ「ちがうちがう。きょうはぼくは ずうっと るすにしてたんだ」

ママ「ええっ ほんもののQちゃん!
パパ「えらいことしちゃった」
伸一「気をわるくしてるよ きっと」
正太「どこへいっちゃったんだろ」

一同「Qちゃあん」「おおい Qちゃん」「まってぇ」」


町を去ろうとしていたQ太郎を、正太たちが呼び止める。

パパ「ほんものなら ほんものといえばいいのに」
ママ「よくかえったわね」

事情を知った友達みんなも駆けつける。

一同「Qちゃん」「Qちゃん」

Q太郎「すると……、ぼく いてもいいんだね」
正太「あったりまえじゃんか!」
Q太郎「……いうことなし……」

Q太郎が感激して、大泣きする。

正太「ドロンパ、もとはといえば おまえのせいだぞ。あやまれ!」
ドロンパ「いやだ! あやまると けんかのタネがなくなる」
Q太郎「ひさしぶりに やるか!」
ドロンパ「やるとも!」

Q太郎とドロンパが、5年ぶりに取っ組み合いのけんかを始める。
2人の様子を見て、今度は正太が大泣きする。

正太「むかしのままだ。なつかしいなあ」


(続く)

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最終更新:2017年05月31日 06:41