(冴木エレアが語る前回のハイライト)
アクア・プロジェクトの当初の目的は、 新たなエネルギー資源の確保だった。
でも実験の最中、波動を吸収した湖に、 異世界へのゲートが出現したの。 そして私たちの住む世界の隣りに並行する もう一つの世界が存在することがわかった。
だけど偶発的にその存在が確認されたとき、 アクア・プロジェクトに関する情報は 政府によって隠蔽され、完全極秘時効になった。
でも、何者かがプロジェクトに目をつけた。 奴らはこの世界に巧妙に忍び込み、 情報を操ることで世界を支配している。
叩くべき奴らの拠点は二つある。 一つは能須湖の湖畔にある アクア・プロジェクトの施設。 もう一つは、世界中の情報を モニターによって制御する管理施設。 この2箇所を同時に爆破することができれば、 奴らを殲滅できるかもしれない。
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エレア「行きましょう」
ジン、エレア、ケイ、エスが行動を開始するが、エージェントたちが行く手を阻む。
ジン「そこをどけ」
ジンたちは、襲いかかって来るエージェントたちを叩きのめし、どうにかその場を脱出する。
エレア「2人とも気をつけて」
ジン「いざってときは、必ず助けに行く」
ケイ「頼もしいな。まるで救世主みたいだ」
エス「ジンも無茶しないでよね」
ジン「あぁ。必ずまた逢おう」
息を吹き返したエージェントたちが追いかけて来て、銃撃を放つ。
ジン「行け!」
追っ手を銃撃で牽制しつつ、ジンとエレア、ケイとエスの2組に分かれ、車で走り去る。
夜の市街。
空に浮かぶ巨大モニターが、報道を伝える。
『冴木エレアに擬態したエイリアンは、政府によって無事に捕獲されました』
『市民のみなさん、安心して平和な夜をお過ごしください』
ジンとエレアは能朱湖に到着する。
アクア・プロジェクト管理施設がそびえ立ち、湖面が淡く光っている。
ジン「見ろ。湖が……」
エレア「ゲートが開こうとしている。時間がないわ」
ケイとエスは、情報管理施設のあるはずの場所に到着する。
エス「この辺りに違いないんだけど……」
ケイ「何もないぞ?」
警報が鳴り響き、空中に監視モニターが出現する。
ケイたち目がけて、ビームが降り注ぐ。
ケイたちが銃で反撃する。
モニターが火を吹き、爆発する。
同時に、空中に火花が飛び散る。
エス「何なの!?」
光学迷彩で姿を消していたビルが、その姿を現す。
ケイ「あそこだ。突入するぞ!」
ジン「エレア。まだ肝心なことを聞いてない。俺が手にした力のことだ」
エレア「……それを思い出したら、あなたがあなたでなくなってしまう」
ジン「俺が俺でなくなる?」
エレア「記憶が覚醒したら、あなたの意思は消滅してしまう。そうなったらあなたは……」
周辺の草むらが、異様にざわめく。
ジン「……何だ?」
エレア「何かが近づいて来る」
突如、虚空から放たれた火の玉が地上に炸裂する。
炎があがる。
爆煙がやむと、エレアが地面に倒れている。
ジン「エレア!?」
ケイたちはビルに突入し、廊下を突き進む。
防衛システムにより、レーザーが降り注ぐ。
エス「これ以上進めない!」
倒れたエレアを、ジンが助け起こす。
ジン「大丈夫か!?」
敵の姿は見えないが、ジンが四方八方に銃撃すると、かすかに何者かの姿が浮かび上がる。
ジンがウルトラアイを構える。
瞬間、彼の脳裏に浮かぶイメージ。
湖の波打ち際で、白い服の女性のが、何かを待つように波間をじっと見つめている。
ジン「……何だ? 今のイメージは?」
再び火炎弾が迫る。
ジンがウルトラアイを顔にかざす。
火炎弾が大地に炸裂する。
燃え上がる炎の中から、ジンの変身した赤い巨人・ウルトラセブンが飛び出し、大地に降り立つ。
そして優しく、その手の中に守っていたエレアを地上に降ろす。
一向に敵の姿は見えない。
次の瞬間、目にも留まらぬ速さで三方向から糸が放たれ、たちまちセブンの体を縛り上げる。
虚空から実体化した巨大怪獣・メカグラキエスが、身動きのできないセブン目がけ、次々に火炎弾を連射する。
ケイとエスは防衛システムを破壊し、通路の先を目指す。
ウルトラセブン目がけ、メカグラキエスの攻撃が続く。
絶え間ない猛攻に、セブンが苦悶の声を張り上げる。
いつしか、ジンの周囲の光景が変わる。
そこは、緑にあふれる美しい庭園。
ジン「ここは……?」
3人の中年男女がに佇んでいる。
男A「ようやく会えたね。待っていたよ」
男B「君の活躍は、ここからずっと拝見していた」
女「疲れたでしょう?」
3人は微動だにせず、表情すら変えず、ジンと視線も合わせないまま、淡々と話し続ける。
ジン「誰だ、お前たち!?」
男A「君たちは食事をするだろう? 食物は、生物が生きるのに必要不可欠なものだ」
男B「同様に、人類は情報がなければ生きていけない。彼らは自ら、そんな世界を創り上げてしまった」
女「そこで我々は、情報を提供する側に回ることにした。需要と供給、人類と我々はその信頼の上に成り立っているのだ」
ジン「どこから現れた? なぜこの地球を侵略する!?」
男A「侵略? そんな低俗な意志は我々にはないよ」
男B「地球を覆う大気のように、我々はただここに存在する」
女「故に、もうひとつの世界にも存在するのは必然だ」
男A「この世界と並行して存在する、もう一つの世界に」
男B「そう、君が生きる世界のことだ」
ジン「俺が生きる世界?」
女「さぁ、そろそろ終わりにしましょう」
男A「君はすでに役目を終えたんだよ」
3人「ウルトラセブン──」
メカグラキエスたちが、ウルトラセブンを縛り上げたまま、空高く飛び上がる。
姿が見えないほどの高空から、一気にセブンが突き落とされ、轟音とともに大地に叩きつけられる。
エレア「ジン!?」
ケイとエスが通路を突き進む。
背後から防衛システムのレーザーが、エスの脚を狙撃する。
ケイ「エス!?」
ケイが防衛システムを破壊し、エスに肩を貸しつつ、先を目指す。
やがて通路の最奥に、扉が現れる。その扉の向こう。
真っ暗な部屋に、数え切れないモニター画面。
世界中の監視モニターの捉える映像が映し出されている。
あらゆる情報を統制する、世界の中枢である。
エス「うぅっ……」
ケイ「大丈夫か?」
ケイが爆弾のケースを用意する。
ケイ「ボヤボヤしてる暇はねぇ」
モニターの一つに「DEUS」の文字が浮かび、DEUS司令の声が響く。
司令「エージェント・ケイ、エージェント・エス。よくぞここまで辿り着いた。君たちに最後の指令を下す。『ここで死にたまえ』 ──それが最後のミッションだ。この聖域に踏み込んでしまった以上、君たちは、生きて帰れない」
ケイ「ふざけやがって……!」
エス「あなたが、すべてを操っていたの!?」
司令「いいや、意思は別の場所にある」「私はその意思の思うままに動かされているだけだ」
途端、嵐のようなレーザーが降り注ぎ、ケイたちはとっさに、柱の陰に身を隠す。
エレア「ジン、ジン!?」
変身が解けて倒れているジンにエレアが駆け寄り、助け起こす。
その手の中にあるウルトラアイが、虚空に溶け込むように消え去る。
ジン「すまない、エレア…… 俺は…… 救世主になれなかった」
うっすらと開いていたジンの目も、今にも閉じようとしている。
エレア「ダメ! ジン、逝かないで! あの日、あなたは約束してくれた…… 『この世界を救ってみせる』って。あなたはまだ戦えるわ! 自分が何者なのか、その記憶さえ取り戻せば。私たちは3か月前にも、この地を訪れた。姿なき敵の正体を暴くために。でも……」
回想。
湖の上に架かる橋を、ジンとエレアが走る。
正面に敵が立ちふさがり、背後からも敵が追いかけてくる。
とっさにジンがエレアをかばい、銃撃の雨に貫かれる。
2人が橋から落ち、水しぶきがあがる。
2人が深い海の底へと沈んで行く。
銃撃を浴びたジンは意識がないまま、エレアの目の前で水底の闇へと飲み込まれてゆく。
エレア (ジン…… お願い、ジン。目を覚まして…… この世界を救って……)
謎の声「君の祈りは通じた」
エレア (……誰?)
暗い水底から、宇宙の星々を思わせる光が現れる。
謎の声「僕は君たちの世界とは平行して存在する、もう一つの世界で、この地球を守るために戦っている」
エレア (救世主……?)
謎の声「君の世界の支配者が、こちらの世界へ侵入を開始しようとしている。僕は君の世界とこちらの世界、二つの世界を救いたい」
光の中から、赤い光球が2人に近づいて来る。
謎の声「そのために、君の恋人の体を借りたいと思う」
エレア (ジンの体を……?)
謎の声「その青年と一心同体になることで、彼は甦り、僕は君たちの世界で活動することができる」
エレア (お願い……ジンを救って)
赤い光球が、ジンとエレアを包み込む。
エレア「その日、あなたは甦った。でもその代償として、赤い巨人の意思は封印され、あなたも過去の記憶を失ってしまった。赤い巨人の意思が覚醒したら、あなたの意思は消滅してしまう。そのときこそ……本当にあなたとのお別れ。あなたに救世主としての力が漲るそのときを、ずっと待ってた……」
次第にジンの体が光に包まれ、彼の中で何かが目覚め、その目が開かれる。
エレア「ジン……?」
ジン「君の祈りは通じた」
その手の中に、再びウルトラアイが姿を現す。
ジン「行って来る。君の想いは決して裏切らない」
ジンがウルトラアイを装着。
光の柱が立ち上り、ジンの変身した赤い巨人、ウルトラセブンの勇姿が現れる。
3体のメカグラキエスが奇声で威嚇し、再び糸を吐き出し、セブンを絡め捕る。
セブンが空高く飛翔。
糸に引きずられ、メカグラキエスたちも空へと運ばれていく。
そしてセブンが一気に急降下する。
メカグラキエスたちが大地に叩きつけられ、2体が爆死する。
残る1体がよろよろと身を起こし、火炎弾を放ってくる。
セブンが空を舞って攻撃をかわし、エメリウム光線を発射。
最後のメカグラキエスが爆死する。
そのままセブンが地上目がけて突っ込み、弾丸のように地中を突き進む。
エス「ジン、そっちはどう!?」
ケイ「……応答しろ、ジン!」
ジンからの応答がないことに、2人に顔に落胆の色が浮かぶ。
ケイ「ジン……」
2人の持っていた爆弾のケースは、レーザーの飛び交う中に置き去りにされている。
ケイが覚悟を決め、柱の陰から飛び出す。
エス「ケイ!?」
レーザーがケイの肩をえぐる。
ケイ「ぐわっ!?」
エス「ケイ!」
なおもレーザーの降り注ぐ中、ケイが必死に爆弾ケースを取り戻し、エスに助けられて再び柱の陰に逃げる。
セブンが地下深くへと突き進む。
やがて地中に、巨大な空洞が現れる。
一面をびっしりと、数え切れないほどの虫のような生物が埋め尽くし、不気味に蠢いている。
大群の中に、庭園の3人のイメージが浮かぶ。
これこそが、巧みな情報操作で人類を陰から支配していた者たち、グラキエスの正体である。
グラキエスたちがセブン目がけ、一斉に糸を吐きかける。
セブンが宙を舞ってそれをかわし、アイスラッガーを発射する。
銀の刃が次々に、グラキエスを斬り裂く。
さらにワイドショットを四方八方に発射する。
光線を浴びたグラキエスたちが次々に焼き払われ、大爆発する。
空洞内が一面の炎に包まれる。
庭園の3人のイメージが浮かび、歪み、消滅してゆく。
湖畔のアクア・プロジェクト施設が爆発し、崩壊してゆく。
ケイたちのもとでは、無数のモニターが次々に狂い出し、周囲に火花が飛び散っている。
ケイ「ジンの奴、やりやがった……!」
負傷した2人はもう、その場を脱出する力はない。
エス「最期の瞬間が、よりによってあなたと一緒だなんて…… 一生の不覚ね」
ケイ「そうか? 俺は光栄だな」
エス「えっ?」
ケイ「この世界のために、人知れず戦い、人知れず死ぬ。エージェントとしてはこれ以上ない最期だろ?」
エスは答の代わりに、愛用のチョコレートのケースを差し出す。
ケイとエスがチョコレートを1個ずつ手にし、乾杯するように口に含み、笑い合う。
覚悟を決めた2人が、爆弾の起爆スイッチに手をかけ、頷く。
炎が上がる。
瞬間、壁面を破ってウルトラセブンが駆け抜ける。
情報管理施設ビルが大爆発する。
その爆炎の中から、ウルトラセブンが飛び立つ。
夜が明ける。
能朱湖の波打ち際で、エレアが湖面を見つめている。
轟音と共にウルトラセブンが飛来し、大地に降り立つ。
その手に守っていたケイとエスを、地上に降ろす。
セブンの体が赤い光に変わり、その中から小さな光球が飛び出して地上に降り立ち、ジンの姿となる。
エレア「ジン……!」
エレアは、これまで見せたことのない笑顔で、ジンを迎える。
ジン「エレア…… あの日の約束、果たしたよ」
エレア「ジン!」
セブンが姿を変えた赤い光球が、湖面へと降りてゆく。
エレア「帰るのね…… 元の世界へ」
ジン「あぁ。二つの世界は、救われたんだ」
ケイ「まさかお前が、本当に救世主だったとはな」
エス「今までたった一人で戦ってきたのね。ありがとう、ジン」
ジン「いや…… みんながいてくれたからだ。ありがとう」
一同が笑顔を交わす。
ジン「そして…… 彼」
ジンが湖を指す。光球と化したセブンが、湖の底へと沈んでゆく。
ケイ「彼?」
ジン「あぁ。彼の名は…… ウルトラセブン」
どこかの別の世界。
湖の波打ち際で、白い服の女性が湖面を見つめている。
ウルトラセブンことモロボシ・ダンが、笑顔を携えて現れる。
ダンの愛した女性・
アンヌが、優しい笑顔で彼を迎える。
影の支配者は殲滅され、世界は救われた。 その事実を知る者は、 俺たちを除いて誰もいない。
人々は何も知らずに平和を謳歌している。
しかし 俺たちは決して忘れない。 一人の女性の想いが奇跡を呼び この世界を救ったのだということを──
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最終更新:2017年06月04日 06:04