深夜、無人の街角。1人の青年が、何かに怯えたように逃げ惑っている。
立ち止まって後ろを振り返り、追っ手がいないことを確かめ、前方に向き直る。
目の前に主人公の1人、女性戦士・イクサー1が立ち塞がっている。
青年の顔の皮膚が張り裂け、怪物に変化する。
イクサー1が腕からエネルギー弾を発射し、怪物を撃破する。
地球上空、衛生軌道上。
永住の地を求めて宇宙を旅する隕石型巨大宇宙船「クトゥルフの月」が浮かんでいる。
その中の一室に、女性戦士のコバルトとセピア。
セピア「これが、この星が地球なの!?」
コバルト「そうよ、セピア」
セピア「こんなきれいなとこに住めるの、私たち?」
コバルト「じきにね」
セピア「この星の人類は、強いの? また戦争かしら……」
コバルト「それも調査済み。ヴェデムたちでケリがつくそうよ」
セピア「ヴェデムたちで? それじゃ、すぐね! 嬉しい!」
声「コバルト」
コバルト「は、はい!」
声「サー・バイオレットがお呼びです」
コバルト「はっ、すぐ参ります!」
クトゥルフの長、サー・バイオレット。
コバルト「お呼びですか? サー・バイオレット」
バイオレット「コバルト」
コバルト「はっ!」
バイオレット「あなたは、ディロスΘのコマンダーに選ばれました」
コバルト「私が…… 光栄です、サー・バイオレット。しかし、出撃するのですか? あの星に」
バイオレット「イクサー1の存在が、地球で確認されたのです」
コバルト「イクサー1が!?」
バイオレット「地球に派遣したヴェデムたちが、妨害を受けています。それに奴はパートナーも発見し、接触しようとしているそうです。パートナーとシンクロし、覚醒したイクサー1は、我々にとって手ごわい敵。今の内に叩かなければなりません。まず、そのパートナーを始末すること。もしそれが阻止されたら、コバルト、あなたが倒すのです! イクサー1を!」
一方、地球。主人公の1人、女子高生の加納 渚は、まだベッドの中にいる。
声「渚…… 渚……」
渚「う、うぅん……」
声「渚……」
寝ぼけまなこで時計を見る。
渚「……わぁっ、ヤバッ!」
着替えて居間に降りる。父は新聞を読み、母は台所に向かっている。
渚「おはよっ! ひどぉい、ママ。どうして起こしてくれないの!?」
母「いつまで寝てるの? ちゃんと呼んでいましたよ。いつもの時間に」
渚「うっそぉ!?」
父「昨日は遅かったのか?」
渚「えへへ。ちょっと深夜放送をね」
母「ちゃんと食べていきなさいよ、渚!」
渚「いい、遅刻したくないもん! 行ってきまぁ~す」
通学路の並木道を、渚が行く。イクサー1が立ち木にもたれ、こちらを見ている。
日本の住宅地とは相応しからぬ、レオタード状の戦闘服に、渚の目がとまる。
渚 (何、この子? おかしな格好。何かのコスプレかな?)
そこへ級友・まみが声をかける。
まみ「渚! 何してるの? 遅刻するわよ」
渚「おはよう、まみ。ほら!」
渚が指差すものの、イクサー1の姿はない。
渚「あれ? いない」
まみ「何なの? あっ、それどころじゃないわ! 行くよ!」
渚「わぁっ、待ってぇ!」
2人が駆け去る。イクサー1は木の上の枝に腰掛け、その姿を見送っている。
高校、渚の学級。
教師「それでは、10時30分まで。できた者は、教室を出てもよろしい」
声「渚…… 渚……」
渚「えっ?」
渚が窓の外を見ると、校庭でボールが、誰もいないのにひとりでに跳ねている。
突如、ボールがひとりでにこちらに飛んでくる。
渚「きゃあっ!?」
ガラスが割れる。直後、周囲が真っ暗になり、生徒たちが1人残らず消えている。
渚「ど、どうしたの!? み、みんな、どこ行っちゃったの!?」
何かが滴る音。目の前に、前の席の女生徒がおり、その頭部が怪物と化す。
渚「い、いやああっっ!!」
怪物が渚を襲おうとするものの、その動きを止める。窓の外で、イクサー1が怪物を睨みつけている。
声「加納くん!」
渚がその声に我に返ると、周囲は元の教室の光景に戻っている。
教師「テスト中ですよ。悪ふざけはおやめなさい!」
渚 (な……何!? どうなってんの、一体?)
教師「加納くん!」
渚「す、すいません! あ、あの、寝ぼけてたみたいで、あの……」
教師「寝ぼけてたぁ!?」
休憩時間。屋上で渚が、物思いにふける。
渚 (夢…… 夢だったのかな?)
まみ「渚! 暗いね!」
渚「そりゃ、暗くもなるわさ」
まみ「めげるな、めげるな。でも、面白かったな。フフッ!」
渚「ひどぉい!」
まみ「だってさ、突然立ち上がって『イヤ~ン』なんてさ。やっぱ、笑えるじゃな~い。ウフフフ!」
渚「まみ、怒るぞ!」
まみ「ごめん、ごめん。ウフフフ!」
まみが背を向け、笑い続ける。
渚「まったくもう、こいつ。こら、まみ!」
渚がまみの肩にふれる。振り返ったまみの顔が、異形のものと化している。
渚「あ!? ま、まみ!?」
周囲のほかの生徒たちもまた、異形のものと化し、次第に渚を取り囲んでゆく。
渚「い、嫌ぁ! 来ないで! 嫌ぁぁ──っ!!」
渚が足を踏み外し、屋上から落下する。
あわやというとき、渚は光球に包まれて宙に浮き、ゆっくりと地上に降りる。
そのそばにイクサー1が現れる。
渚が意識を取り戻す。
渚「あぁっ!?」
イクサー1「大丈夫ですか、渚?」
渚「あ…… あ!? た、助けてぇぇ!!」
渚が混乱し、学校を飛び出す。
街外れで渚が息を切らしつつ、何気なくそばの塀に手をつく。
とたんに、渚は塀の中へと吸い込まれてゆく。
渚「きゃ、きゃあぁっ!?」
塀の向こうは真っ暗な異空間。数体の怪物が出現し、渚に襲いかかる。
イクサー1が現れ、ビーム剣で次々に怪物たちを斬り裂き、一掃する。
クトゥルフのサー・バイオレットが、クトゥルフを支配する機械生命体ビッグゴールドに謁見している。
バイオレット「申し訳ございません、ビッグゴールド…… まさか、イクサー1が我々より先に、あの星に潜入しているとは思いませんでした」
ビッグゴールド「── ── (機械音のような声)」
バイオレット「はっ、すでに手は打ってございます」
ビッグゴールド「── ── ──」
バイオレット「は、はい。でも、あの星の人間はひ弱で、腰抜けばかりです。たとえあの娘が合体したとしても、イクサー1が覚醒を果たせるとは思えません」
ビッグゴールド「── ── ──」
バイオレット「わ、わかりました。ただちにディロスΘの射出準備を整えましょう。イクサー1とあの小娘は、必ず抹殺してご覧にいれます!」
一方の加納家。
母「あら、渚。いつ帰ったの?」
渚「うん、あの、さっき」
母「お風呂、沸いてるわよ」
渚 (気がついたら、自分の部屋のベッドの上だなんて…… 一体、何がどうなってんのよ? 夢? いいえ、夢なんかじゃないわ。夢じゃないもん……)
その夜。渚が両親の寝室へ。
母「あら、渚。どうしたの?」
渚「ねぇ、ママ。今日は一緒に寝かせて。ねぇ、いいでしょう?」
母「えっ? 別に構わないけど…… おかしな子ね」
渚「サンキュー! フフッ、おやすみ」
家の外で、イクサー1が渚を見守るように佇んでいる。
夜が明ける。イクサー1は依然、加納家のそばにいるが、突如、周囲が異空間と化す。
イクサー1「異空間!? しまった!」
数体の怪物が、イクサー1を取り囲む。
渚が目覚めると、すでに両親の姿はない。
居間では父が新聞を読んでおり、母は台所に向かっている。
父「おはよう、渚」
渚「おはよう」
母「おはよう、甘えん坊さん」
渚「ひどぉい、ママったら」
父「ハハッ。渚、せっかくの日曜だ。3人でどこかへ出かけようか?」
渚「本当、パパ!? あはっ、やったね、ママ!」
母は無言で、台所で背を向けている。
渚「……ママ? ママったら!」
振り向いた母の姿が、皮膚が張り裂け、怪物と化す。
渚「マ、ママ……!? パパ、パパぁ!」
父も同様に、怪物と化す。
渚「いや、いやぁ! パパ……!? いやぁっ!」
怪物と化した両親が、渚を取り囲む。
渚「助けて、助けて…… パパ、ママぁ!」「嫌、やめてぇ!」
イクサー1は異空間で、苦戦の末に怪物たちを倒す。
渚「きゃあぁ──っっ!!」
イクサー1「渚!?」
瞬時に加納家に降り立ったイクサー1が、ビーム剣で怪物たちを斬り捨て、渚を救う。
イクサー1「渚!」
クトゥルフでは、コバルトが出撃せんとしている。
セピア「コバルト!」
コバルト「セピア……」
セピア「出撃するんでしょう? がんばってね、コバルト」
コバルト「任せて。イクサー1は、必ず倒してみせるから。それじゃ、行ってくるわ。いい子で待ってるのよ」
セピア「早く帰って来て…… コバルト」
加納家は平穏を取り戻したものの、渚は怯えきり、泣き崩れている。
イクサー1「大丈夫ですか、渚」
渚「誰…… 誰なの、あなた?」
イクサー1「私はイクサー1。あなたの味方よ」
渚「パパ…… ママ…… 教えて、パパとママはどうなったの?」
イクサー1「ごめんなさい、渚。私が油断したばかりに、ご両親があんな姿に──」
渚「嘘…… あれが!? そ、そんな……」
イクサー1「寄生されたのです。一度体を乗っ取られたら、もう助かりません」
渚「嫌よ! どうして、どうしてそんなことに? うっ、うぅ……」
イクサー1「私があなたを、パートナーに選んだからです。あなたとご両親は、絶対に守るつもりでした。」
渚「返して! パパとママを返してよ!」
イクサー1「渚、クトゥルフがこの星を狙っているのです。あなたの力を貸してください」
渚「嫌ぁ!」
イクサー1の頬に、渚の平手打ちが飛ぶ。
渚「パパとママを返してぇ!!」
街中。
人々「あれは何だ?」
上空から巨大ロボ・ディロスΘが現れ、地上に降り立つ。
人々「怪物だぁ!」「きゃあぁっ!!」
イクサー1「はっ、ディロス!? ディロスΘ! 渚、私と一緒に来て! 早くしないと──」
渚「嫌、嫌よぉ!」
イクサー1「あなたの気持ちはわかります。でも、今は──」
渚「離してぇ!」
イクサー1「行きます!」
コバルトの操縦するディロスΘが街中で暴れ、あちこちに火の手が上がっている。
コバルト「出て来い、イクサー1!」
自衛隊の空中戦艦、富士壱號が出撃する。
人々「富士壱號だ!」
コバルト「何だ!?」
富士壱號「攻撃開始!」
富士壱號が攻撃を放つが、ディロスにはまったく通用しない。
コバルト「ハハハ、可愛い奴!」
逆にディロスの攻撃が炸裂、富士壱號は炎に包まれて墜ちてゆく。
富士壱號「助けてくれぇ!!」
イクサー1と渚は瞬間移動で、街中に来ている。
渚「あっ、富士壱號が!?」
イクサー1「あの兵器ではディロスは倒せません。イクサーロボを呼びます。渚、一緒に戦いましょう」
渚「嫌よ! どうして私が、あんな化け物と!?」
イクサー1「さぁ、渚」
渚「嫌ぁ!!」
稲妻のような光と共に空間を裂いて、巨大ロボット・イクサーロボが出現する。
渚「ロ、ロボット!?」
イクサー1「私の分身なのです。さぁ、渚」
渚「駄目!」
イクサー1「この星でイクサーロボと合体できるのは、あなただけです。自分の星を守りたくないのですか!?」
渚「お断りよぉ!!」
渚が逃げ出す。
イクサー1が大きく跳躍し、イクサーロボの頭部に吸い込まれる。
渚は、イクサーロボが腹部から発した光線に捉われ、ロボの腹部へと吸い込まれる。
気がつくと渚は、イクサーロボ内部のコクピットにおり、全身にコードが接続されている。
渚「な、何よ、これ!?」
イクサー1「イクサーロボの中です。渚、私とシンクロしてください」
渚「ひどいわ! 降ろしてよぉ!!」
イクサー1「行きますよ、渚!」
コバルト「イクサーロボ!?」
イクサー1「やめなさい! あなたも、ここまでよ!」
コバルト「やっと出てきたな、イクサー1。待っていたぞ!」
ディロスの連続攻撃。イクサーがかわそうとするが、ディロスに吹っ飛ばされる。
コバルト「ハハハハ! しょせん、このディロスΘとはパワーが違う! イクサー1など、敵ではない!」
イクサー1「渚、私に力をください! 私に力を!」
渚「出して! ここから出してよぉ!!」
イクサー1「渚、なぜあなたは戦わないのです!? なぜ自分のことばかり考えるのです!? 自分の生まれた星を守りなさい。亡くなったご両親の仇をとるのです!」
渚「仇……? パパとママの、仇…… パパ、ママ!」
渚に次第に怒りの心が満ちると共に、イクサーロボが力強く立ち上がる。
渚「許さない…… 許さない、許さないから!!」
イクサーロボの全身にみるみる、パワーが満ちてゆく。
渚「出て行けええぇぇ──っっ!!」
イクサーロボの放った光球が、ディロスに痛烈に炸裂し、ディロスが大きく後ずさりする。
コバルト「な、何だ、このパワーは!?」
渚「わああぁぁ──っっ!!」
渚の絶叫と共に、イクサーロボの渾身のパンチがディロスの頭部に炸裂。
ディロス頭部、コバルトの乗っていたコクピットが粉々に粉砕される。
クトゥルフに、コバルト敗北の報せが届く。
バイオレット「可哀想なセピア…… でも、泣くのはおやめなさい。あなたも戦士なら、わかっているはず」
セピア「はい、サー・バイオレット。イクサー1は私が、私がこの手で!」
バイオレット「セピア、かわいい子……」
イクサーロボを降りたイクサー1と渚が、地上に降り立つ。
渚が大泣きし、イクサー1に抱きつく。
渚「パパぁ…… ママぁぁ……」
異星人クトゥルフの侵略は終わっていない。 がんばれ、渚。戦え、イクサー1!
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最終更新:2017年11月06日 06:14