カーレース場。
雨の降る中、全日本新人グランプリが開催されている。
主人公の司馬 宙が、ライバルの通称・黒鷲のドンと、激しいデッドヒートを繰り広げる。
観客席では、宙の妹まゆみと、宙が若社長を務める司馬モータースの社員のチビが、歓声を送る。
まゆみ「お兄ちゃん、しっかり!」
チビ「若大将、その調子でやんす!」
司会「抜いた、抜きました! 司馬宙! 全日本新人グランプリ・レースも、いよいよ最後の一周にかかります。先頭は予想通り、司馬宙! その後を追っているのは関西のベテラン、明石始!」
ドン「くそぉ、このままでは宙に優勝をさらわれちゃう! パンチョ、打合せ通りやるんだぞ! どうぞ」
客席で、ドンの相棒のパンチョが無線で応答する。
パンチョ「了解、番長。僕ちゃんに任せといて。どうぞ」
ドン「バカモン! 番長じゃない、社長と言え! どうぞ」
パンチョ「ごみん、僕ちゃん間違えちゃったのよ~、どうぞ」
パンチョが路上に、バナナの皮を仕掛ける。
先頭を走っていた宙のマシンが、それにスリップして壁面に激突する。
宙が車外に投げ出され、スピンする自分のマシンに激突。
さらに後続のマシンにも撥ねられる。
まゆみ「あっ、お兄ちゃん!?」
チビ「若大将!?」
だが宙は、まったくの無傷のように立ち上がる。
宙「お、俺は生きている!? どうなってるんだ、これは!? あっ、いけねぇ!」
宙がマシンを立て直し、走り出す。
まゆみ「お…… お兄ちゃん!?」
司会「凄い、まったく凄い! 場内の観客は総立ちです! 司馬選手はかすり傷一つ負っていないようであります! まさに、奇跡としか言いようがありません!」
ドン「これで俺様が優勝と決まった! ……あれ?」
宙のマシンは他のマシンをどんどん抜き去り、再び先頭となり、ゴールを飾る。
司会「ゴールイン! 司馬選手、1着ゴールイン!」
まゆみ「わ~い!」
チビ「やったぁ! やったでやんす~!」
地底。
古代日本を支配していた邪魔大王国の女王ヒミカが、地中より目覚める。
配下の幹部、イキマ、ミマシ、アマソ、そして雑兵のハニワ兵士たちが、化石状態から甦ってゆく。
イキマ「ヒミカ様!」
ミマシ「我が邪魔大王国の女王!」
アマソ「古代日本の支配者!」
ヒミカ「聞け、忠実なる僕、イキマ、ミマシ、アマソどもよ。わらわが千数百年の眠りから醒めたのも、再び日本を支配するときが来たからじゃ。邪魔対応国の栄と繁栄を取り戻すために戦え! 逆らう者は皆殺しにせよ!」
宙の父、司馬遷次郎の勤めるビルド・ベース。
所長の大利、宙の幼馴染の卯月美和が研究にあたっている。
大利「博士、すごい磁気反応です」
司馬「多発地震に続いて磁気異常か。いよいよ、恐れていたことが現実になってきたようだな」
大利「えぇ……」
司馬「卯月くん、ちょっと」
美和「はい」
司馬が美和を、別室に招く。
美和「博士、何か?」
司馬「卯月くん。今の異常な磁気反応。私の心配したことが、近づいたのだ」
美和「博士、それじゃ……」
司馬「そう。宙に『鋼鉄ジーグ』のことを話すときが来たようだ」
美和「鋼鉄ジーグのことを!?」
司馬「予想していたより、時期は早まったがね」
崖道を司馬の車が行く。
突然、目の前の地面を突き破り、邪魔大王国のイキマが現れる。
司馬の車は衝突し、司馬は車外に投げ出される。
司馬「うわあぁっ! こ、これは!? 何者だ、貴様!?」
さらにハニワ兵士たちが現れ、司馬を捕える。
司馬「な、何をするのだ!?」
イキマ「ハハハ! 我々のことをよくご存じのはず、司馬博士」
司馬「貴様!? ま、まさかヒミカの!?」
イキマ「さすがは司馬博士。我々の邪魔大王国は復活したのだ!」
司馬「邪魔大王国!? ヒ、ヒミカが甦ったのか!?」
イキマ「その通りだ! 俺はヒミカ様に仕える3大幹部の1人、イキマ」
司馬「……それで私に、何の用があるのだ!?」
イキマ「知れたことよ。銅鐸の隠し場所を教えてもらいたい」
司馬「銅鐸!? ……何のことか、私にはわからん!」
イキマ「とぼけても駄目だ! あの銅鐸は、我々邪魔大王国再建にとっては、なくてはならぬ物。今の日本征服はおろか、全世界を我々の手中に収めるためにも、なくてはならぬのだ。さぁ、隠し場所を言え!」
司馬「断る! お前たちに言う必要はない!」
イキマ「何ぃ!? 言いたくなければ、こちらから言わせてやる! やれぇ!」
ハニワ兵士が、竹の鞭を司馬に叩きつける。
司馬「ぐぅっ! うわぁっ!」
イキマ「さぁ、言え! 言えぇ!」
司馬「日本の平和を守るためだ! 殺されても言わんぞ!」
イキマ「貴様ぁ…… まだまだ堪えていないようだな!? 打てぇ!!」
さらにハニワ兵士が、司馬を滅多打ちにする。
司馬がよろけ、足を踏み外し、崖下へと転落する。
司馬「わ、わぁ、わあぁぁ──っ!!」
イキマ「し、しまった!」
エンジン音が近づいてくる。
イキマ「誰か来るぞ。一旦、引き揚げるんだ!」
イキマや兵士たちが姿を消す。
美和のバイクがやって来て、無人の司馬の車に気づく。
美和「あれは!? ──やっぱり、博士の車だわ。博士、博士ぇ──っ!」
宙の家。
まゆみやチビ、母の菊江も交え、優勝記念パーティが開かれようとしている。
チビ「いやぁ、それにしても、あんな大事故を起こして、かすり傷一つないなんて一体、若大将の体はどうなってるんでやんすかねぇ?」
まゆみ「違うわ。神様が守ってくださったのよねぇ~! ねぇ、お母ちゃん?」
菊江「えっ? えぇ、そうね。神様のおかげよ」
宙「さぁて、そろそろ優勝記念パーティを開くとするか」
菊江「お待ちなさい、宙。お父様が帰って来るまで待つのよ」
宙「ちぇっ。いいよ。俺は親父になんか、祝ってもらおうとは思わないね」
菊江「宙……」
宙「母さん。親父はね、自分の家族より研究の方が大事なんだ。そういう冷たい人間なんだよ、親父は。だから俺はこの家を飛び出して、1人で暮してるんじゃないか」
声「宙さぁん! おばさま!」
美和が、傷だらけで虫の息の司馬を運んで来る。
宙「父さん!?」
菊江「あなた!?」
宙「父さん、どうしてこんなことに!?」
美和「宙さん、早く、早くお医者様を」
宙「あぁ!」
まゆみ「お父ちゃん!?」
菊江「あなた、しっかりして!」
司馬「ま、待て、宙…… 私はもう、助からん」
宙「えぇっ!?」
司馬「宙…… こ、これを……」
司馬は宙に紙包みを渡して、事切れる。
菊江「あなた……」
紙包みの中身は、ペンダントと一組の手袋。
宙 (一体、これは何の意味が!?)
宙がバイクを飛ばす。
宙 (親父のバカ野郎…… 勝手に死にやがってよ。くそぉ、ガキじゃあるまいし、こんなもの!)
ポケットに捻じ込んでいた手袋とペンダントを、投げ捨てようとする。
声「宙!」
宙「!?」
声「宙!」
宙 (確かに親父の声だ。でも、そんなバカなことが!? きっと空耳じゃ……?)
あのペンダントから、司馬の声が響いている。
司馬「宙、私だ」
宙 (親父だ! 親父の声だ)
司馬「宙!」
宙 (父さん、どこだ!? どこにいるんだ、父さん!?)
宙は声に導かれるように、ビルド・ベースへやって来る。
宙 (父さん、どこだ!? 父さん!)
司馬「宙! 宙、こっちだ!」
辿り着いた場所は、基地内のコンピュータールーム。
宙「コンピュータールーム? ここだ! 確かにここから聞こえて来たぞ」
室内に入る。
中央にある巨大コンピューターの画面に、司馬の姿が映る。
宙「と、父さん!?」
司馬「宙、驚かせてすまなかった。私の身に万一のことがあった時に備えて、このコンピューターへ私のすべてを記憶させておいたのだ。お前を呼んだのは他でもない。実はお前に、大事な話がある」
宙「話? 死んでまで、俺にお説教したいのかい!?」
司馬「宙、いいから聞くんだ! 今から25年前のこと──」
考古学者として日本の歴史、特にヒミカの研究をしていた私はある日、九州の古墳で1個の銅鐸を発見したのだ。 その銅鐸に刻まれた古代文字を解読したところ、大変なことがわかった。 即ち、かつて日本には恐るべき古代文明があったのだ。 それが、異次元科学を使う独裁者であるヒミカの支配する、邪魔大王国だ。 銅鐸に書かれた予言によれば、ヒミカは千数百年の後に眠りから醒めて、異次元科学の力を使い、再び日本を支配しようとしている!
私は自由を愛する1人の人間として、ヒミカの野望を断じて許すわけにはいかない。 そこでヒミカと戦う基地として、このビルド・ベースを造ったのだ。 |
司馬「ヒミカはきっと、その秘密を知った我々に攻撃を仕掛けてくるに違いない。その攻撃を阻止できるのは、『鋼鉄ジーグ』だけだ!」
宙「鋼鉄ジーグ? 何です、それは?」
司馬「宙、落ち着いて聞いてくれ。鋼鉄ジーグとは、お前のことだ!」
宙「えぇっ!?」
司馬「私のプレゼントした手袋をはめ、その手袋を合せれば、おまえは鋼鉄ジーグに変身する! だが、お前1人では変身できん。そこにいる、卯月くんの協力が必要なのだ」
いつしか宙の背後に、美和と大利所長がいる。
司馬「宙! 卯月くんと力を合せてヒミカを倒し、日本を守ってくれ。だが、ヒミカは恐ろしい敵だ。日本の、いや世界中の地底に眠っているハニワを甦らせて、我々に挑戦して来るだろう。異次元科学を使って、石のようなものでも生き物にすることができるんだ」
大利「博士、そのことで気になることがあるんですが」
司馬「と言うと?」
大利「実は、空中に浮く磁気堂らしい石が発見されたんです。今、宇宙科学庁で分析を急いでいます」
司馬「何、空中に浮く磁気堂!? い、いかん!」
宙が外へ駆け出す。
美和「あっ、宙さん!? お父様の言ったことはわかったの!?」
司馬「卯月くん! 宙に構わず、早くビッグシューターを! 早く!」
美和「はい!」
美和「発進準備、OK!」
所員「発進!」
美和「ビッグシューター・ゴー!」
美和の操縦する双胴機・ビッグシューターが、ビルド・ベースから飛び立つ。
宙はあの手袋をはめ、バイクを飛ばしている。
宙 (父さん…… 父さんにそんな事情があるとは知らずに、逆らったりして悪かったよ。俺はやる。やるぜ! 父さんの代りにヒミカをやっつけてみせる! ヒミカ、貴様の思い通りにはさせないぞ!)
街中に邪魔大王国の巨大な怪物、ハニワ幻人ルゴンが出現する。
建物が砕け、火の手が上がり、人々が逃げ惑う。
宙のバイクが橋をわたって駆けて来る。
ルゴンが大岩を投げつけ、橋が砕け、宙が投げ出される。
宙「わぁぁっ!」
(司馬『宙! 手袋を合せ、『鋼鉄ジーグ』と叫べ! その時お前は、鋼鉄ジーグに変身する!!』)
宙「(手袋を合せる……!?) 鋼鉄ジ──グ!!」
宙が両拳を打ち鳴らすや、火花が飛び散り、服が裂け、宙は装甲に身を包んだ姿へと変身する。
司馬「卯月くん、今だ!」
美和「はい! ジーグパーツ・シュート!」
宙「ビルドア──ップ!!」
ビッグシューターが無数のパーツを射出する。
それらが合体し、脚や胴が組み上がり、巨大ロボットの体となってゆく。
だが、両腕の合体が失敗。
さらにルゴンが槍で宙を攻撃する。
宙「うわぁっ!」
美和「宙さん、何をしているの!? 急いで!」
宙「うるさいぜ、ミッチー! 初めてなんだ、仕方ねぇだろ!?」
ルゴンの妨害を受けつつも、腕が合体、宙が頭部となって合体し、巨大ロボット・鋼鉄ジーグが完成する。
宙「来い、ハニワ幻人! 鋼鉄ジーグが相手になるぞ!」
イキマ「あ、あれは何者!?」
ルゴンがジーグに矛先を向け、襲ってくる。
宙「来たな! スピンストーム!」
ジーグが磁流波の光線を放つが、ルゴンはかわし、光線は背後の建物に命中する。
宙「しまった!」
ルゴンの反撃が炸裂する。
宙「ナックルボンバー!」
ジーグが両拳を発射するが、ルゴンはこれも跳ね返す。
司馬「いかん! 宙の奴、焦っているぞ」
美和「はい! 宙さん、もっとしっかり狙うのよ」
ルゴンがジーグをとらえ、羽交い絞めにする。
司馬「宙!?」
美和「宙さん!?」
イキマ「ワハハハ! 口ほどにもない奴だ。ルゴン、とどめを刺してしまえ」
美和「危ない! ミサイル発射!」
ビッグシューターがミサイルでルゴンを狙撃し、ジーグは自由の身となる。
司馬「宙! 飾りのペンダントは、私とお前のシンボルマークなのだ。立て、宙!」
宙「ナックルボンバー!」
今度のナックルボンバーは、ルゴンにうまく命中する。
司馬「そうだ宙、落ち着いて行け」
宙「はい、お父さん」
司馬「危ない!」
ルゴンの反撃を、危ういところでジーグがかわす。
宙「マグネットパワー・オン!」「ジーグブリーカー!!」
ジーグが磁力でルゴンを引き寄せ、両腕で胴を強烈に締め上げる。
司馬「宙、いいぞ、あとひといきだ」
美和「宙さん!」
そしてついいに、ルゴンが胴を砕かれて大爆発──!
鋼鉄ジーグは初勝利をおさめた。
宙「やった、やったぞ!」
美和「宙さん、おめでとう!」
司馬「宙、よくやった! 初めての戦いとは言え、上出来だったぞ!」
邪魔大王国を相手に初勝利を飾った宙が、バイクを飛ばす。
その胸元には、父から贈られたペンダントが光っている。
宙 (父さん。俺、このペンダントに誓うよ。ヒミカを倒して、日本を守ってみせる! 必ず!)
最終更新:2017年11月23日 05:50