賢者の孫(漫画版)の第1話

第0話


現代日本のとある会社。
社員「あぁ~~~終わったぁ~~~っ。そっちはどうよ?終わったんなら飲みに行かね?」
もう一人の社員「こっちは全然っすよ・・・お先にどうぞ」
社員「そっかぁ。じゃあお疲れ~」
もう一人の社員「・・・・」

残った方の社員「はあ・・・」
(・・・・・・・終わねぇ・・・・・)
(・・・・ま、早く帰ったところで家族や恋人が待ってるわけでもない。せいぜいゲームかDVDか・・・・)
(・・・・・むなしいなぁ・・・・)

10時になって、残った方の社員が会社から出た。
社員「やっと帰れる~~~~っ」
(――――・・・・)
(・・・何でこの地球に自分がーーー人間が生活しているんだろう?)
(・・・・っって何だそりゃ。なんで急にそんな事・・・)
社員が歩き出したが・・・

通行人「おい・・・危ないぞっ!!!」
社員「へ?」
社員がトラックに轢かれ・・・・



整地されてない野原を一人の老人が歩いていたが、雨が降り出した。
老人「降ってきおったか・・・この先に森があったな・・・雨宿りをしていくかの」

老人が森の中に入ったが・・・
老人「・・・・・!!」

森の奥には、破壊された馬車とその周りにズタズタに引き裂かれた数人の男女の亡骸があった。
老人「・・・・・これは・・・魔物にやられたのか。惨い事を・・・せめて弔って・・・」
?「ああーっ・・」
老人(赤ん坊の泣き声・・・!?)
「どこじゃ!?」

馬車の中に、一人の赤ん坊がいた。
赤ん坊「ああーっ」
老人「おお・・・魔物に襲われて生き残っておるとは・・・奇跡じゃ。ケガをしておるな、どれ・・・」
老人がかざした右手から光が溢れ出し、赤ん坊の顔に付いた傷が消え、
赤ん坊が眠った。

老人「・・・何と強い子じゃ」
(身元が判るものは何もない・・・・か・・・)
「この子を・・・育てろという事か・・・?」
(これは天命かのう・・―――――)

第1話


とある森。
木に止まる鳥を誰かが見ていた。
その手に風が収束されていく。

鳥が飛ぼうとした所へ、鳥を見ていた者が風の刃を放ち、鳥の頭を切り落とした。

シン「よっし食糧ゲット!!じいちゃん達喜ぶぞーっ!!」
風の刃を放った者は―――8歳の少年、シン=ウォルフォードだった。


シンイノシシやは鳥といった大量の獲物を、3人の男女―――その中にはあの時赤ん坊を拾った老人、マーリン=ウォルフォードがいた―――――の元に持ち帰った。
メリダ=ボーウェン「・・・・シン・・・あんた・・・これ全部自分で仕留めてきたのかい!?イノシシまでいるじゃないかい!!」
「危ない事はやめておくれ!!どこの世界に8歳でイノシシ仕留める子がいるんだい!!」
シン「ここ」
メリダ「おバカ!!」
シン「ごめんメリダおばあちゃん・・・」
メリダ「まったくもう・・・」
ミッシェル=コーリング「ははっ、元気で良いではないですかメリダ殿」
シン「ミッシェルおじさん」
ミッシェル「これも私が日頃仕込んだ武術のおかげかな?ふむ・・・・」
「・・・・・」
シン「・・・・はっ・・・・!!」
ミッシェル「・・・・・よし次の鍛錬はさらにレベルを上げて厳しくしよう」
シン「やっぱり!!最悪!!」


その後、シンは靴を抱えて木の枝の上に腰掛けていた。
シン(オレはシン=オルフォード。赤ん坊の頃、爺さん・・・――――マーリン=ウォルフリードに拾われ孫として育てられた。え?8歳のしゃべり方じゃないって?・・・・そりゃ仕方ない。だってオレ、前世での、星人の日本人だった時の記憶が残ってるんだから)
(記憶が蘇ったきっかけは恐らく馬車の事故。名前だとか前世でいつ死んだとか細かくは思い出せないけど)
(一つはっきりしているのは・・・オレが転生したのは`魔法`なんてものが存在する別の世界だったって事)
(ものすごく興奮した。だってゲームや映画と違って本物なんだからさ)
(この世界の言葉を覚えた頃から積極的に魔法を教わる事にした。ただ一つきっかけが)

魔法使い(想像)「炎よ!!この手に集いて敵を撃ち抜く力となり給え!!ファイヤーボール!!」

シン(ああいうのだけはゴメンだった。精神年齢大人で魔法詠唱なんてイタすぎる)

マーリン「イメーゾさえしっかりしていれば魔法は発動する。ワシは無詠唱派じゃ」
シン「おおー」

シン(・・・爺さんのおかげでその危機は免れた)
「・・・さて、今日も魔法の練習始めようかな。まずは`魔道具`の方からやるか」
シンは持ってきた靴に魔力を込めてから、靴を履いた。

メリダ「いいかいシン。魔道具はイメージした魔法をその道具に「書き込む」事で効果を付与出来る。文字数には制限があるから気を付けな」

シン(この世界の文字・・・一単語でも結構字数食うからね・・・こんなの書いてみたけど・・・効果あるのかな?)
シンが木の枝から降りようとしたが、靴に書き込んだ魔法により加速し過ぎてしまい、
バランスを崩した。
シン「!!?う、わっ!!?てっ、わっ、だあっ」
シンは地面に落ちた。
シン(・・・・・特訓しよう)

シンはメリダとマーリンが通りかかるのを見た。
シン(メリダばあちゃん・・・今から帰るのかな?)

メリダ「・・・・・・、・・・・・・」
「・・・気が早すぎるだろ?まだあの子には荷が重いよ」
マーリン「もちろんまだ修行を続けてからの話じゃ。しかしシンはそれだけの力を秘めておる。`魔物狩り`が出来るだけの力を・・・・」

シン(魔物・・―――――?)


そして2年の後・・・
マーリン「魔力が充満し生命活動にもその影響が及ぶこの世界では、全ての生物が魔力の恩恵を受けることが出来る。しかしその制御に失敗すると・・・生物は凶暴化――――魔物となってしまう。それは人間も・・・例外ではない」
シン「昔その魔物化した人間を倒したのがじいちゃんなんでしょ?聞いたよ何度も。そのおかげでじいちゃんは英雄扱いされてるんだよね」
マーリン「ほっほ、それでは始めようかのう」
シン「うん・・・・でもどうやって魔物を探すの?」
マーリン「`索敵魔法`を使う。まず――――魔力を周囲に薄く拡げていく。拡げた魔力に魔力があるものに触れると・・・その存在を感じ取れるのじゃ。生き物は全て魔力を持っているからどこにおるのかすぐわかるのじゃ」
シン「おお~」
マーリン「ただしこれはある程度魔力を制御出来んと使えん魔法じゃ。お前にはちとまだ・・・」

シンの放った魔力は森全体へと広がっていった。
シン(うおお~~~~っ!!すげ~~~~っ、森の中の生き物がまるで手に取る様に・・――――――!!)
マーリン「・・・一回で成功しよるか・・・・予想はしとったが・・・」

シン(!!?何だこの・・・禍々しい存在感は・・・―――――)
マーリン「ほ、見つけたの。それが魔物の魔力じゃ」
シン「やばいよじいちゃん早く行こう!!あんなの放っといたら大変な事になる!!」
マーリン(・・・・・・)
「確かにこれはちと不味いかもしれんの」

シンとマーリンが魔物の元へ向かう。
マーリンがシンの履くブーツに気づいた。
マーリン「シン・・・そのブーツ、魔道具か」
シン「うん、メリダばあちゃんい色々作り方教わったんだ。これはオレのオリジナルだけどね」
シンのブーツには「空気噴射」の四文字が書かれていた。
マーリン(・・・見た事のない文字じゃな・・・何て読むんじゃろ・・・)

シン「!!!」

シンとマーリンが駆けつけた場所に居たのは、猪の頭にかぶりつく、赤い目をした熊だった。
シン「う・・・」
(真っ赤な瞳・・・怖ええっ!?これが・・・魔物・・・けど・・!!)

シンが熊に突っ込んだ。
マーリン「つ・・・待つんじゃシン!!!」

熊がシンを狙って爪を振ったが、
シンはブーツの魔法で空中へ飛び退いた。
シン「あっ、危ねぇ~~~っ」
(魔道具なかったら死んでたかも・・・)

シン「よーし」
着地したシンは剣を抜いた。
マーリン「・・・!!あれもシンのオリジナルの魔道具か・・・・!?一体何の効果を付与・・―――――」

シンの剣には、「超音波」と「振動」の漢字が書かれていた。
マーリン(・・・・・!!読めん・・・・!!)

シンは熊の背後に回ったが、熊は振り返り、攻撃してきた。
シン「うおっ!!!」
(この敏捷性・・・魔法で身体強化してやがるな・・・・!!だったら先に・・・――――)

シンの剣の一撃が熊の両手を切り飛ばした。
シン「もう邪魔出来ねえだろ!!」
シンの追撃は熊の頭を切り落とし、熊は倒れた。

シン「やったよ!!じいちゃ・・・」
マーリン「・・・・・・・・」
シン「じいちゃん?お?おお!すまんすまん、ちょっとボーッとしてしもうた」
シン「あれで良かった?失敗してないよね?」
マーリン「もちろんじゃ!これ以上ない程完璧じゃったぞ」
シン「ホント!?家帰ろ!お腹空いちゃったよ」
マーリン(まさか・・・これ程とは・・・・フ・・・楽しみじゃの・・・――――)


その夜。
メリダ「何だって!?魔物化したレッドグリズリーを・・・シンが瞬殺した!?」
「・・・・・・・一体あの子は何者なんだろうねえ・・・魔法を習得するスピードも尋常じゃないし・・・武術だってミッシェルのシゴキにも付いていけてる。付与魔法に至ってはオリジナルの言語だ。案外あの子、別の世界か何かから来たんじゃないのかい?」
マーリン「はは・・・・・・何者でも構わんよ。ワシをじいちゃんと呼んでくれて、ワシが納めた魔法を悉く素直に吸収してくれておる。元は拾い子じゃが・・・ワシは本物の孫だと思っとる。ワシはあの子が可愛うてしょうがない。強くなるのはあの子自身が身を守る事にもなる。何も問題はありゃせんよ」

メリダ「かつて`破壊神‘と呼ばれた男のセリフとは思えないねェ」
マーリン「ぬあっ、やめてくれ、黒歴史を掘り返すのは・・・・」
メリダ「まぁ、あの子が可愛いのはアタシも同じさ。たまにしか会えないけど・・・それでも、アタシにとっても本当の孫だよ、あの子は」

マーリン・メリダ「「・・・・・・・・・・」」
ミッシェル「・・・・・・?しかし魔物を単独で撃破出来るとは!これはさらに稽古をグレードアップしても良さそうですな!」
マーリン・メリダ「「・・・・・・・・」」
ミッシェル「・・・ん?あれ?どうかしましたかな?」
メリダ「あの子も災難だねェ・・・こんな脳筋に気に入られちまって」

マーリン(・・・・そろそろ話す時期かのう・・・)


シン「じいちゃんの・・・本当の孫じゃない?オレが?」
マーリン「・・・スマンのう、今まで黙っておって・・・」
シン(・・・まー、知ってたけど)
マーリン「お前を見つけた時、馬車は無残に破壊されておっての・・・身元がわかるものは何もなかった。お前の両親が誰なのかも・・・」
シン「・・・・そっか」
マーリン「・・・・気にならんのか?」
シン「だって両親って言われても覚えてないし・・・それにオレには、じいちゃんがいるもの」
(実際、今こんなに幸せだし・・・思えば前世なんかよりも多分ずっと・・・――――)
「それにメリダばあちゃんもミッシェルおじさんもいる。他にも色んな人が家に来てくれるし・・・両親がいなくたって寂しいと思った事なんか一度もないよ」
「だからさ・・・ありがとうじいちゃん、オレを救ってくれて。ありがとう、いつもオレを可愛がってくれて」
(命を救ってくれて・・・――――――)
「オレ・・・じいちゃんに拾われて幸せだよ」
(ありがとう・・・これは本心だよ・・・爺さん)
マーリン「シン・・・う・・・うぐ・・・」
シン「あ、泣いちゃった」
マーリン「う、う、うおおおお~~~~~」

そして月日は流れた。
ディセウム「――――さて、我らが英雄マーリン殿のお孫さんがこの度めでたく15歳に鳴り、成人した。これを祝って乾杯したいと思う。皆、盃を持って頂きたい」
「それではシン君の15歳の誕生日を祝って、乾杯!」

マーリンたち「「「乾杯!!」」」

マーリン「あっという間に社会に出る歳になったんじゃな」
シン「生活するのに何の支障もないし・・・別に家を出なくてもいいのに」
メリダ「ダメだよ!大人になる為にも社会のルールは守りな!」

ディセウム「マーリン殿の魔法の卒業試験は見事クリアか、おめでとう」
シン「ありがとう、ディスおじさん」

トム=ハーグ(商人)「これからどうするかは決めたんですか?」
シン「オレ一度も森を出た事ないし・・・・とりあえず街へ行ってみようかなって思ってるよ」
トム「それから?」
シン「それから?」

青年、ジークフリード=マルケスと少女、クリスティーナ=ヘイデンがシンを凝視する。
ジーク「何かあるだろ?都に行けばシンなら魔物ハンターにもなれるだろうし、付与魔法で魔道具屋だって出来る。それに・・・・それだけ男前なら女の子と仲良くなって養ってもらえるかもしれないし・・・」
クリス「そんな考え持ってるのはアナタだけですね」

ジークとクリスがにらみ合い、火花を散らす。
メリダ「まあまあ、ジークもクリスもそう張り合わずに・・・・・」

シン「ハンター?魔物って討伐したらお金もらえるの?それに魔道具屋って・・・・すぐ店なんて持てないでしょ?」

トム達(・・・)

トム「・・・・・・まさかとは思いますが・・・シンさん、今まで買い物とかした事・・・あります?」
シン「買い物はトムさんからしかした事ないですね。お金のやり取りはじいちゃんがしてたからやった事ないです」

メリダ「マーリン・・・!?アンタ・・・・・」
ミッシェル「マーリン殿・・・・・・・これは・・・・・」

マーリン「そういえば、常識教えるの忘れとった。イッケネ!」

ディセウム達「「「何ぃ~~~~~~~~~~っ!!!」」」

シン(・・・確かにオレ魔法ばっかで、この世界の常識何も教えてもらってないわ・・・)

次の日―――――
シンとマーリンにメリダ達は荒れ地に来ていた。
シン「え?あれ?結局皆来たの?」
メリダ「ちょっと確かめときたいんだよ。この世間知らずの爺さんが一体どんな魔法を教えたのかをね」
シン(そーかばあちゃん、魔道具専門だったから・・・・)

メリダ「はあ~~~っ、こんな空間移動の魔法が使える辺りすでに・・・ああ考えたくないねぇ」
皆はシンの魔法によって、この荒れ地まで来ていた。
ディセウム「しかしメリダ師、社会に出た後彼がどんなトラブルに巻き込まれるか分かりません。あきらめて確認しましょう」

シン(そんなに皆、オレの魔法に興味あるのかな・・・?)
「とにかく魔法を見せればいいんだよね?・・・じゃ始めるよ」

シン(イメージは燃焼、火種を生み出し、酸素を加えて燃焼を促す)
シンの前で炎の渦が生まれ――――
放たれた炎は、大爆発を起こし、地面を大きく削り取った。

その威力にディセウム達は驚愕した。
メリダ「・・・マーリン・・・・・・ア・・・ア・・・アンタ・・・」

シン「あれ?どしたの皆」
シンは「何かやらかした」という自覚すら無く、平然としていた。


(つづく)

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最終更新:2019年09月06日 23:29